266 / 480
第四章
続・リンテール家騒動
しおりを挟む
「この馬鹿姉ぇ! 少しはまともになったかと思ったのにぃ!」
「失礼ねぇ! 私は元々まともよぉ! ファナちゃんの方が野蛮なんでしょぉ!」
「誰が野蛮よっ! この陰湿女!」
馬鹿姉に掴みかかろうとした時、私の前に大きな影が覆うように現れた。
「ふ、2人とも止めなさい!」
「お、お父様っ!」
私達の間に割り込んできたのはお父様だった。
慌てて走って来たのか、肩で息をしている姿が私をなんとも申し訳ない気分にさせた。
「ち、違うのぉ……こ、これは……その……」
「べ、別に喧嘩してたわけじゃないんですよぉ? ねっ? ファナちゃん」
誤魔化そうとする私達を、ため息を吐きながらもお父様は優しく撫でてくれた。
「南方は過酷な地だ。そんな場所で2人がいがみ合っていたら、共倒れになってしまうよ」
「うっ……」
「ご、ごめんなさぁい……」
お父様の言う通りだ。
明日の朝には南方に向けて出立しないといけないんだから、最初から2人とも行くしかない。
私もお姉様も現実逃避をしていたに過ぎないんだ。
「2人とも仲良くね。そして必ず無事に帰ってくるんだよ」
「はい。お姉様ぁ、ごめんなさい……」
「ううん。私が悪かったのよぉ。ファナちゃん、お父様の言う通り、姉妹で協力して乗り切りましょう」
そう言ってお姉様は私の手を握ってくれた。
優しい温もりに心が癒される気がしてくる。
やっぱり姉妹で仲良く……
「そうそう、シュナイデン卿から手紙が届いていたんだ。それを……」
「「貸してぇええええ!」」
「あべしっ!」
突き飛ばされたお父様が変な声を上げたけど、今はそれどころじゃない!
リ、リッくんからの手紙!?
何で早く渡してくれないのよぉ!
お父様のばかばかばかばかぁ!!
「ファナちゃん! 早く手紙をぉ!」
お姉様が目をギラつかせて迫ってくる。
手紙が破られたらたまらないわ!
早く読んでみよ!
えっと……
クリスティーヌ殿、ファンティーヌ殿
突然、手紙を送る無礼をお許しください。
急な勅命と聴き、不躾にも慌てて筆を走らせてしまった次第です。
南方へ転属とお聞きしました。
急に会えなくなる事、とても寂しく思いますが、私も高等士官学校で軍人として成長し、いつか貴女と肩を並べられればと思っています。
2人の輝かしい未来のためにも頑張りましょう。
どうか健康に留意しつつ、研鑽に励まれますように。
帝国軍少佐
リクト・フォン・シュナイデン
「…………」
「…………」
私もお姉様も何も言えなかった。
2人の輝かしい未来?
それって、それってまさかのプ、プ、プ、プロポーズゥウウウウウ!?
えええええええええええ!
きゅ、急にそんな事言われてもこ、心の準備が出来てないよぉおおおおおお!
「ああ……リクト様ぁ、そんなに私を想っていただけてたなんて……クリスは嬉しゅうございます」
「はい?」
幸せな気持ちを掻き消すお姉様の不穏な一言を私は聞き逃せなかった。
何を言ってるんだろ?
「お姉様ぁ? これはぁ、リッくんから私宛ての手紙ですよぉ? 何で入ってくるんですかぁ?」
「あらあら、ファナちゃん? どこにファナちゃん宛とあるのかしらぁ? それに私の名前が先に書いてあるんだからぁ、これは私宛でしょぉ?」
「名前の順番なんてただの歳の差でしょぉ? それぐらい常識ですよぉ? 教養ない人はリッくんには相応しくないですねぇ」
「あら~? さっきから男爵家の当主をくん付けで呼んでる愚妹に教養なんてあるのかしらぁ?」
「ふふふふふっ」
「おほほほほっ」
最初は互いに笑顔を浮かべていたけど、段々と苛立ちが隠しきれなくなっていた。
そして、半壊していた屋敷は結局全壊し、私とお姉様は明朝、瓦礫と化した屋敷を背に南方へと出立した。
「失礼ねぇ! 私は元々まともよぉ! ファナちゃんの方が野蛮なんでしょぉ!」
「誰が野蛮よっ! この陰湿女!」
馬鹿姉に掴みかかろうとした時、私の前に大きな影が覆うように現れた。
「ふ、2人とも止めなさい!」
「お、お父様っ!」
私達の間に割り込んできたのはお父様だった。
慌てて走って来たのか、肩で息をしている姿が私をなんとも申し訳ない気分にさせた。
「ち、違うのぉ……こ、これは……その……」
「べ、別に喧嘩してたわけじゃないんですよぉ? ねっ? ファナちゃん」
誤魔化そうとする私達を、ため息を吐きながらもお父様は優しく撫でてくれた。
「南方は過酷な地だ。そんな場所で2人がいがみ合っていたら、共倒れになってしまうよ」
「うっ……」
「ご、ごめんなさぁい……」
お父様の言う通りだ。
明日の朝には南方に向けて出立しないといけないんだから、最初から2人とも行くしかない。
私もお姉様も現実逃避をしていたに過ぎないんだ。
「2人とも仲良くね。そして必ず無事に帰ってくるんだよ」
「はい。お姉様ぁ、ごめんなさい……」
「ううん。私が悪かったのよぉ。ファナちゃん、お父様の言う通り、姉妹で協力して乗り切りましょう」
そう言ってお姉様は私の手を握ってくれた。
優しい温もりに心が癒される気がしてくる。
やっぱり姉妹で仲良く……
「そうそう、シュナイデン卿から手紙が届いていたんだ。それを……」
「「貸してぇええええ!」」
「あべしっ!」
突き飛ばされたお父様が変な声を上げたけど、今はそれどころじゃない!
リ、リッくんからの手紙!?
何で早く渡してくれないのよぉ!
お父様のばかばかばかばかぁ!!
「ファナちゃん! 早く手紙をぉ!」
お姉様が目をギラつかせて迫ってくる。
手紙が破られたらたまらないわ!
早く読んでみよ!
えっと……
クリスティーヌ殿、ファンティーヌ殿
突然、手紙を送る無礼をお許しください。
急な勅命と聴き、不躾にも慌てて筆を走らせてしまった次第です。
南方へ転属とお聞きしました。
急に会えなくなる事、とても寂しく思いますが、私も高等士官学校で軍人として成長し、いつか貴女と肩を並べられればと思っています。
2人の輝かしい未来のためにも頑張りましょう。
どうか健康に留意しつつ、研鑽に励まれますように。
帝国軍少佐
リクト・フォン・シュナイデン
「…………」
「…………」
私もお姉様も何も言えなかった。
2人の輝かしい未来?
それって、それってまさかのプ、プ、プ、プロポーズゥウウウウウ!?
えええええええええええ!
きゅ、急にそんな事言われてもこ、心の準備が出来てないよぉおおおおおお!
「ああ……リクト様ぁ、そんなに私を想っていただけてたなんて……クリスは嬉しゅうございます」
「はい?」
幸せな気持ちを掻き消すお姉様の不穏な一言を私は聞き逃せなかった。
何を言ってるんだろ?
「お姉様ぁ? これはぁ、リッくんから私宛ての手紙ですよぉ? 何で入ってくるんですかぁ?」
「あらあら、ファナちゃん? どこにファナちゃん宛とあるのかしらぁ? それに私の名前が先に書いてあるんだからぁ、これは私宛でしょぉ?」
「名前の順番なんてただの歳の差でしょぉ? それぐらい常識ですよぉ? 教養ない人はリッくんには相応しくないですねぇ」
「あら~? さっきから男爵家の当主をくん付けで呼んでる愚妹に教養なんてあるのかしらぁ?」
「ふふふふふっ」
「おほほほほっ」
最初は互いに笑顔を浮かべていたけど、段々と苛立ちが隠しきれなくなっていた。
そして、半壊していた屋敷は結局全壊し、私とお姉様は明朝、瓦礫と化した屋敷を背に南方へと出立した。
0
お気に入りに追加
962
あなたにおすすめの小説
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える
ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─
これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる