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第四章
イリアの想い
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はぁはぁ!
くそっ! こんなに我が屋敷は遠かったか!?
一刻を争う時だと言うのに!
父上から珍しく通信が入ったかと思えばイリアの様子がおかしいというではないか!
リクトのやつに決闘を申し込んだ時は痛い目をみればいいと思っていたが、無事に終わってホッとした。
それなのに終わってから後遺症か?
それともあっという間に負けたショックが大きかった?
いや、それも無理のない話だ。
圧倒的過ぎた。
リクトのやつ、私と戦った時より格段に強くなっている。
イリアと私が戦っても私が負ける事はないが、それでもあそこまで圧倒出来るわけじゃない。
正直、今のリクトに一太刀浴びせられるかどうか……
本当に強くなっている。
それでこそ、私が……
「ハッ! わ、私は何を考えているのだっ! イ、イリアの一大事だというのに破廉恥な! は、恥を知れ!」
なんという事だっ!
イリアの身を案じていたはずがいつもの間にかリクトの事を考えていたとは! 私としたことがなんと情けない!
とにかく余計な事は考えないでおこう!
よし、屋敷が見えてきた!
門の前に誰かいるが……メイドのルルーシュか。
「アリシア様! お急ぎを! イリア様はサロンにいらっしゃいます!」
「わかった! ご苦労!」
ルルーシュの横を走り抜けて、屋敷に入り、階段を駆け上がってサロンの扉を蹴り破る勢いで中に入る。
「父上っ! イリアは……イリアは大丈夫なのですかっ!?」
「アリシアかっ!? よく戻った! イ、イリアが……イリアが!」
狼狽する父上を見るのは初めてだ。
一体、イリアに何があったというのだ。
イリアは……なんだ? 何をしている?
イリアはサロンの端にある椅子に座っていた。
そして手鏡で顔を見ながら、時々右手を見ては少し笑い、また手鏡を見るを繰り返している。
おかしい。
誰が見てもおかしい。
イリアは病んでしまったのか?
それ程までに思い詰めて……
「あっ! 姉上! 帰っていらしていたのですか?」
「あ、あぁ。今し方な。それよりイリア、お前……」
「あ、あの! 姉上にお聞きしたい事があるんですが!?」
「な、なんだ?」
おかしい。
そもそもイリアは私にこんな風に話しかけてこなかった。
なんというか、もっと堅苦しい感じだった筈だ。
「その……あ、あの方はどんな女性が好みなんでしょうか?」
「……はっ? あ、あの方? あの方とは誰だ?」
「そ、その……シュ、シュナイデン卿……」
「リクトの事か? むぅ、悪いがそんな話は……」
「お待ちを」
今度はなんだ? それにさっきまで恥じらう様に話していたイリアから全く別の気迫を感じる。
「リクト? 姉上はシュナイデン卿の事をリクトと呼んでおられるのですか?」
「ま、まぁな。公式の場ではせんが、私はリクトが平民の頃からの付き合いだからな。つい、リクトと呼んでしまうのだ。本人も公式でなければ私は構わないと言ってくれて……」
「……付き合い……私は構わない……そうですか? ふーん……」
な、なんだ?
イリアから今度は禍々しい気配を感じる。
一体、どうしたというのだ?
「姉上はシュナイデン卿と随分と仲がよろしいようで……」
「べ、別に仲がいいわけではないぞ! あ、あいつは危なっかしいところがあるから側にいるだけで……」
「その割には嬉しそうですよね? そういえばシュナイデン卿に出会ってからでしょうか? 部屋に化粧道具なんか起き始めたのは」
「あ、あれは! その……しゅ、淑女の嗜みだから……」
「淑女の嗜みですか? 母上とルルーシュがあれ程勧めたのに断っていたのに、急に」
「うっ……わ、私の事はどうでもいい! それよりお前はどうなんだ!?」
「……あの方は背は私より低いのに力強いんですね。手を握られて抵抗したのに押し倒されてしまいました……ああ、淫らです」
「いや、あれはお前が持っていた短刀を奪っただけで、押し倒しては……」
「キッ!」
「うっ! す、すまん……」
なんという事だ。
父上を人睨みで竦ませるとは……
「ふふふっ、姉上? あの方ってとっても力持ちなんですよ?」
「ああ、知ってる。あいつの身体はかなり鍛えられてるからな。一度見たが、均整のとれた素晴らしい肉体で……」
「あーねーうーえぇえええええええ! 見た? 見たのですか? あの方の裸を! ふ、不潔です!」
「ち、違う! た、たまたま服屋で服を破いてしまった時に偶然……」
「服を破いたっ!? 信じられません! やっぱりおかしいと思ったんです! あんな強くてかっこよくて素晴らしい方が付き纏いなんてするわけないって! 姉上がリクト様に付き纏ってたんですね! 不潔です!」
「だ、誰が付き纏うかっ! そんな事しなくても私とリクトの関係は!」
「私とリクトの関係!? お、おのれ! リクト様を誑かす破廉恥姉めっ! この場で成敗してくれるわ!」
「お前こそ、礼儀知らずにもいきなり決闘なんかしおって! そのくせリクト様だと? このコロコロと態度を変える尻軽妹めっ! その性根を叩き直してくれるわ!」
その後、私とイリアの初めての姉妹喧嘩は明け方まで続いた。
それにしてもイリアもリクトのことを……
これ以上のライバルは勘弁してくれ!
くそっ! こんなに我が屋敷は遠かったか!?
一刻を争う時だと言うのに!
父上から珍しく通信が入ったかと思えばイリアの様子がおかしいというではないか!
リクトのやつに決闘を申し込んだ時は痛い目をみればいいと思っていたが、無事に終わってホッとした。
それなのに終わってから後遺症か?
それともあっという間に負けたショックが大きかった?
いや、それも無理のない話だ。
圧倒的過ぎた。
リクトのやつ、私と戦った時より格段に強くなっている。
イリアと私が戦っても私が負ける事はないが、それでもあそこまで圧倒出来るわけじゃない。
正直、今のリクトに一太刀浴びせられるかどうか……
本当に強くなっている。
それでこそ、私が……
「ハッ! わ、私は何を考えているのだっ! イ、イリアの一大事だというのに破廉恥な! は、恥を知れ!」
なんという事だっ!
イリアの身を案じていたはずがいつもの間にかリクトの事を考えていたとは! 私としたことがなんと情けない!
とにかく余計な事は考えないでおこう!
よし、屋敷が見えてきた!
門の前に誰かいるが……メイドのルルーシュか。
「アリシア様! お急ぎを! イリア様はサロンにいらっしゃいます!」
「わかった! ご苦労!」
ルルーシュの横を走り抜けて、屋敷に入り、階段を駆け上がってサロンの扉を蹴り破る勢いで中に入る。
「父上っ! イリアは……イリアは大丈夫なのですかっ!?」
「アリシアかっ!? よく戻った! イ、イリアが……イリアが!」
狼狽する父上を見るのは初めてだ。
一体、イリアに何があったというのだ。
イリアは……なんだ? 何をしている?
イリアはサロンの端にある椅子に座っていた。
そして手鏡で顔を見ながら、時々右手を見ては少し笑い、また手鏡を見るを繰り返している。
おかしい。
誰が見てもおかしい。
イリアは病んでしまったのか?
それ程までに思い詰めて……
「あっ! 姉上! 帰っていらしていたのですか?」
「あ、あぁ。今し方な。それよりイリア、お前……」
「あ、あの! 姉上にお聞きしたい事があるんですが!?」
「な、なんだ?」
おかしい。
そもそもイリアは私にこんな風に話しかけてこなかった。
なんというか、もっと堅苦しい感じだった筈だ。
「その……あ、あの方はどんな女性が好みなんでしょうか?」
「……はっ? あ、あの方? あの方とは誰だ?」
「そ、その……シュ、シュナイデン卿……」
「リクトの事か? むぅ、悪いがそんな話は……」
「お待ちを」
今度はなんだ? それにさっきまで恥じらう様に話していたイリアから全く別の気迫を感じる。
「リクト? 姉上はシュナイデン卿の事をリクトと呼んでおられるのですか?」
「ま、まぁな。公式の場ではせんが、私はリクトが平民の頃からの付き合いだからな。つい、リクトと呼んでしまうのだ。本人も公式でなければ私は構わないと言ってくれて……」
「……付き合い……私は構わない……そうですか? ふーん……」
な、なんだ?
イリアから今度は禍々しい気配を感じる。
一体、どうしたというのだ?
「姉上はシュナイデン卿と随分と仲がよろしいようで……」
「べ、別に仲がいいわけではないぞ! あ、あいつは危なっかしいところがあるから側にいるだけで……」
「その割には嬉しそうですよね? そういえばシュナイデン卿に出会ってからでしょうか? 部屋に化粧道具なんか起き始めたのは」
「あ、あれは! その……しゅ、淑女の嗜みだから……」
「淑女の嗜みですか? 母上とルルーシュがあれ程勧めたのに断っていたのに、急に」
「うっ……わ、私の事はどうでもいい! それよりお前はどうなんだ!?」
「……あの方は背は私より低いのに力強いんですね。手を握られて抵抗したのに押し倒されてしまいました……ああ、淫らです」
「いや、あれはお前が持っていた短刀を奪っただけで、押し倒しては……」
「キッ!」
「うっ! す、すまん……」
なんという事だ。
父上を人睨みで竦ませるとは……
「ふふふっ、姉上? あの方ってとっても力持ちなんですよ?」
「ああ、知ってる。あいつの身体はかなり鍛えられてるからな。一度見たが、均整のとれた素晴らしい肉体で……」
「あーねーうーえぇえええええええ! 見た? 見たのですか? あの方の裸を! ふ、不潔です!」
「ち、違う! た、たまたま服屋で服を破いてしまった時に偶然……」
「服を破いたっ!? 信じられません! やっぱりおかしいと思ったんです! あんな強くてかっこよくて素晴らしい方が付き纏いなんてするわけないって! 姉上がリクト様に付き纏ってたんですね! 不潔です!」
「だ、誰が付き纏うかっ! そんな事しなくても私とリクトの関係は!」
「私とリクトの関係!? お、おのれ! リクト様を誑かす破廉恥姉めっ! この場で成敗してくれるわ!」
「お前こそ、礼儀知らずにもいきなり決闘なんかしおって! そのくせリクト様だと? このコロコロと態度を変える尻軽妹めっ! その性根を叩き直してくれるわ!」
その後、私とイリアの初めての姉妹喧嘩は明け方まで続いた。
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