食うために軍人になりました。

第三章

拳交わる

「何のつもりだっ！？　貴様ら！」

　……と言っても、相手は俺を見てから襲いかかってるんだから襲うつもり以外にないんだろうけどね。
　後で『そんなつもりじゃなかったんです』とか言われたら困るから一応言っておいた。
　相手も怯む事なく突っ込んでくるし、これはぶちのめしていいだろう。
　それで相手は8人で全員が……素手か。
　ふーん、なめられたもんだね。
　なら、俺も武器を持って来てないし、素手でお相手しよう。

「「はぁあああああああ！」」

　最初に仲良くハモって襲いかかって来たのは小柄な女性2人組だ。
　よく見れば顔がそっくりだ、双子かな？
　連携して俺に反撃の隙を与えないよう連撃を繰り出してくる。
　速度スピードは結構速いんだけど……

「攻撃に重さが足りない」

　拳にしても蹴りにしても軽すぎる。
　俺は2人が突き出した拳を掴んで、その場で思いっきり回転した後に階段中段から玄関に向かって思いっきり投げ飛ばした。
　2人は壁に背中を強打して床に落ちて声も発せずに悶えてる。
　うーん、痛そう。

「貴様ぁあああ！」

　今度は筋肉質のゴリラみたいなのがやってきた。
　今度は力パワーだけか、そんな大雑把な振りで……おっと！　危ない！
　でかい身体の影に細身の男と小柄な男が隠れていて危うく一撃もらうとこだった。
　なるほど、わざと大雑把に動いて俺の意識を逸らすのが目的だったのか。
　なかなか考えてるな。
　そういう奴らには……

「容赦はしないぞぉ！」

「ゲボッ！？」

　筋肉男の懐に飛び込んで鳩尾に肘を打ち込んでやると、さすがに効いたのか大きく目を見開いて、開いた口から涎が垂れ始める。
　次は細身の男の腕を掴んで、相手の力を応用して投げる。
　何をされたのかわからない細身の男は縦にグルンと一周させた後に床に叩きつけてやった。
　小さい男の方は臆する事なく突っ込んできたから思いっきり腹を蹴り上げた。
　小さい身体が宙に舞ってそのまま仰向けに寝ていた筋肉男の上に落ちる。
　3人とも立てないようだな。
　残りは3に……って、おいおい！
　奥の女の人2人が攻撃魔法使おうとしてんじゃないかっ！？
　冗談じゃない！
　こんな屋敷の中で攻撃魔法なんか使われたら屋敷がめちゃくちゃになっちゃう！

「仕方ない。悪く思うなよ！」

　俺は床に横たわっていた細身の男の首を掴むと、魔法を放とうとしている2人に向かってぶん投げた。

「なっ！？」

「じょ、冗談でしょ！？」

　急に大の大人が飛んで来たのに驚いた2人は慌ててその場から離れた。
　よし、今のうちに接近して当身を喰らわせて寝てもらおう。

「うっ……」

「あっ……」

　ふぅ、やれやれ……危うく屋敷が壊れるところだった。
　だけど安心はできない。
　最後に残った一人はヤバい雰囲気だからな。