食うために軍人になりました。

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第三章

ルーストレームの罠

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「ゲホゲホッ……」

「す、すまん……リクト、つい嬉しくて……」

「ごめんなさいぃ、リッくん……でも、本当に良かったぁ……」

 いつもより小さく感じるほど、2人は萎縮しながら謝ってくれている。
 なんとか復活したのに、絞め殺されたんじゃ情けないにも程があるからな。
 一緒にいた医療班の軍人が止めてくれなかったら本気でヤバかったよ。
 でも怒るわけにはいかないよな、これは。

「こちらこそ、ご無理をさせたみたいで申し訳ありません」

 少佐と中尉は回復魔法の連続使用で身体を酷使したせいか、髪が顔にへばりつくほど汗をかいていた。
 それに顔色も優れないし、今も座ったままで動くのも辛そうだ。
 まぁ、俺を絞め殺す力は残ってるから大丈夫だろうけど、それでも無理をさせた事実に変わりはない。

「本当にありがとうございました。お2人が踏ん張ってくださったなんとか復活する事が出来ました」

「そ、そうだ! お前は何で急に復活したんだ!?」

「それそれぇ! 全然聞かなかった回復魔法が急に効き始めたと思ったら、奇声を上げながら起きるんだもん! びっくりしたよぉ?」

 き、奇声って……
 気合と言って欲しいんだけど……

「実は敵の最後の悪あがきの罠に嵌っていたようでして……」

「最後の罠だと? それはなんだ?」

「それは……《魔眼》です」

「ま、魔眼ってぇ、陛下のお持ちになってるぉ?」

 《魔眼》
 生まれながら眼に特別な魔力が宿っている先天性特殊能力。
 魔眼の能力は1人につき1つだけで、同じ能力は無いと言われている。

「陛下の魔眼は《魅惑の魔眼チャームゲイズ》という魅了系でしたが、あいつ……ルーストレームの《魔眼》は全くの別物でした。身体の傷が回復しないようにする能力……なんらかの封印をかけていたのだと思われます」

 たぶん撤退前に恍惚の表情をしていた時に《魔眼》を仕掛けたんだろう。
 卑怯……とは言えないか。
 目の前で堂々とやられて気づかなかった俺が間抜けなんだから。
 腹が立つ事に変わりはないけどな!

「それは恐らく《封印の魔眼シールゲイズ》というやつだ。それなら回復しなかったのも納得できる」

「上位魔法にも回復阻害の封印魔法があるからねぇ。そんな能力の魔眼があってもおかしくないよぉ。それをリっくんが奇声で破ったから、かけられていた回復魔法が一気に効いて回復できたわけだねぇ」

「おそらく。おかしいと思ったんですよ。意識はあるのに身体だけが動かないなんて……まぁ、そのお陰で何らかの影響下にあるって事に気づけたんですけどね」

「そうか。意識は……ま、待て。い、意識はあったのか?」

「ええ。声は聴こえてましたから」

「こ、声が聴こえてぇ……あ、ああ、あの……ぜ、全部ぅ?」

「はい。お2人が命をかけて救おうとしてた事も知って……」

「うわぁああああああああ! わ、忘れろぉおおおおお!」

「こんなロマンティックじゃない告白はいやぁああああああああああ!」

「ぎゃあああ! な、何するんですか!? いきなり殴ろうとするなんて!」

「うるさい! うるさい! うるさあああい!」

「リッくんのばかぁああああああ!」

 結局、この後顔を真っ赤にした2人に小一時間も追い回された。
 一体なんだったんだ?
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