食うために軍人になりました。

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第三章

静けさは当然に

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 昼間の喧騒が過ぎたようで、夜の静けさが異様に不気味だな。
 まぁ、敵の右翼は壊滅させられたし、とりあえずひと段落だろう。
 それにしてもまた呼び出しか。
 今回こそは怒られるかもな。
 突進と後退を繰り返しつつ、敵を引っ張っていき、隊列が伸びたところを伏せていた兵力で強襲するはずが、俺がジェラールを討ったために、敵の進軍止まってしまった。
 そのせいで左翼軍は全軍突撃する羽目になったんだからな。
 作戦通りに動かなかったんだから、怒られても仕方ないとはいえ、はぁ……気が重い。
 なんて考えてたら少将の天幕に着いちゃったよ。
 しゃあない、腹を括るか。

「第78小隊のリクト・フォン・シュナイデン大尉です」

「入りたまえ」

 少将の声が聞こえる。
 前によりちょっと硬いような気が……いや、気のせいだ。
 そういう事にしておこう。

「失礼します」

 天幕の中では少将と中佐、それに初めて見る将官、佐官が座ってこちらを見ていた。
 うん、確実に怒られるな。
 さっさと謝ろう。

「シュナイデン大尉……」

「はっ! 閣下、この度は私の勝手な……」

「本当によくやってくれたな」

「行動のせい……はいっ?」

 えっ? 何でこんなに和かなの?
 めっちゃ怒られると思って先に謝ったのに『よくやってくれた』って、どういう事だ?

「いやいや、閣下! 大尉の活躍は素晴らしかったですよ! 行先阻む者なし、無人の野を進むが如く、果ては百勇士を討ち取る大金星! 素晴らしい! 本当に素晴らしかった!」

 中佐が興奮しながら熱く語っている。
 ちょいと誇張し過ぎのような気もするけどね。

「共和国百勇士の一人、ジェラール・フェルドを討ったのは本当に大きい。お陰でこちらの損害は軽微だった。しかし、一騎討ちで討ち取るとは、陛下が気に入られるのも無理はないな」

 なんか、あのジェラールを討ち取ったことがめっちゃ評価されてるみたいだな。
 でも、よくわかんないんだよなぁ。
 何なんだ? 百勇士って。
 とりあえず近くの文官みたいな人にこそっと聞いてみた。
 共和国百勇士は国内で多大な功績を残した者に与えられる称号だそうだ。
 武力はもちろん魔法や技術、学問など様々な部門があるが、総数は百人と決まっていて、毎年入れ替わりがあるそうだ。
 ちなみにジェラールは冒険者上がりで最近百勇士になったばかりだそうだ。

「百勇士ともなれば富も名誉も手に入り、共和国内でも強い発言力があります。そのせいで増長して暴走する輩も少なくないと聞きます。おそらくジェラール・フェルドもそうだったのではないでしょうか」

 なるほどね。
 確かに尊大な奴だったからな。
 権力を手に入れて調子に乗ってた感はあった。
 それ以上に小物感が満載だったけどね。

「さて、大尉。明日からの作戦だが……」

 少将が次の作戦行動計画を話そうとした時、それは聞こえてきた。

「敵襲! 敵襲だぁあああ!」

 夜の静けさが去り、悲鳴と怒号がやって来たようだ。

 
 
 
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