食うために軍人になりました。

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第三章

難航する編成

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「そうですか。遂に北方戦線が開きましたか」

「はっ! 魔導通信によれば敵である共和国軍の戦力はおよそ50000。北方方面軍は約30000ですから数の勝負で言えば圧倒的に不利な状況と言えます」

 緊急召集と言われて慌てて来てみれば、遂に北方戦線が開いたようだ。
 ウォーレイク元帥をはじめ、ジェニングス中将、アンダーソン大佐、ヴォルガング少佐にリンテール中尉と着任したばかりのファーレンハイト大尉が揃っている。
 俺も末席で話を聞いているが、戦況はよくないようだ。

「しかし、北方方面軍の拠点は堅城で知られるファルケンウッド城です。容易に落ちるとは思えません」

「でも物資や食料がなくなったら終わりだよぉ。援軍を送らないともたないと思うなぁ」

「少佐と中尉の言う通りだ。軍令部でも援軍を送る事は決まっているんだがな……」

 おや? 中将にしては歯切れの悪い物言いだな。
 それに元々北方戦線が開けば援軍を送るって話だったはずだ。

「ジェニングス中将。ここは私から説明します。実は軍令部内で北方戦線に送る軍隊編成について揉めているのです。最初は中央軍が出る予定だったのですが、それに対して東方方面軍司令官が異議を申し立てたのです」

 東方方面軍司令官? 
 それってジェニングス辺境伯じゃないかっ! 
 ジェニングス中将の父親が援軍を止めたってことか?
 道理で皆んなあまり話したがらないわけだ。 
 中将の身内の事であれば非難のしようもないからな。
 
「東方方面軍司令官の言い分は『海洋国家フェンドラの軍艦が領海付近を航行しており、油断ならぬ状況である。中央軍が帝都を離れれば好機と見て攻勢に出る可能性あり。よって中央軍の出陣に異議を申し立てる』です。決して私的な都合ではないと……」

「大佐。気を遣わなくていい。東西方面軍は元より険悪で知られている。今回の事もそれが原因で東方方面軍司令官が嫌がらせをしているのだと噂になっているのも知っているさ」

「ジェニングス閣下……」

 嫌な噂だ。
 中将も辛いだろうなぁ。
 
「ウォーレイク閣下! そのような噂はデマに決まっています! 有事の際にそのような噂を流すなど、噂の出所を突き止めて不敬罪で処罰すべきです!」

「少佐ぁ、落ち着いてぇ。今はそれどころじゃないよぉ。閣下ぁ、私達だけでも先に行けないんですかぁ?」

 中尉が俺と同じ考えを提案してくれたけど、ウォーレイク閣下の表情は冴えないままだ。

「リンテール中尉。私達の軍が先行する事は可能ですが、援軍の本隊が決まらなければ戦場で足並みが揃わず、結果として場を混乱させることに繋がりかねません。軽はずみに進軍させるわけにもいかないのですよ」

「そ、そうですよねぇ……すいません……」

 うーん、用兵って難しいな……
 でも、どうするんだ?
 このまま援軍が決まらないと北方方面軍の被害が大きくなるばかりじゃないか。
 
 
 
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