食うために軍人になりました。

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第三章

一撃粉砕

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「大尉さんよぉ。今なんて言ったかもう一度教えていただけませんか?」

「デカい図体は役に立たない空っぽか? 俺と立ち合えって言ったんだよ」

 俺の言葉に周りの至るところから嘲笑が起こった。
 うん、ちょっとカチンとくるね。

「やれやれ、これだから貴族は……大尉さんよ。俺たちはあんたの命令に逆らったりしてないぜ? それでいいじゃねえか? たまに耳が遠くなるくらいは見逃してくれれば、それでお互い平和でいられるだろ? な? そうしましょうぜ」

「アホか。大事な作戦の時に役立たずが更に役立たずになったら困るだろ? 特にお前みたいに普段はデカいこというくせに、危なくなったら一目散に逃げ出す奴等はな」

 おや? さっきまでクスクス聞こえてた嘲笑が消えたな。
 逆に殺意がチラホラと感じられる。
 さっきの嘲笑よりはマシだけど、上官に面と向かってする態度じゃないな。

「おい……下手に出てるうちに引いとけや。訓練中の不幸な事故ってのはあるんだぞ」

「上官に対する口の利き方じゃないな。下手に出てるうちに謝っといた方がいいんじゃない?」

 あらら、ちょいと挑発しただけでもう取り繕えなくなってるよ。
 未熟者め。

「上等じゃねえか! 貴族の小僧が調子に乗りやがって! こうなりゃテメェをぶちのめして、軍からおさらばしてやるぜ! 覚悟しろや!」

 デカい図体にお似合いのデカいハルバード。
 典型的なパワー型と見た。
 っと、思ったら案の定真っ直ぐに突っ込んできた。

「うぉりゃああああああああ! 死ねぇええええええええ!」

 殺す気なんかい!?
 まぁいいんだけど、それならそれ相応の対応をしないとね。
 狙いは右肩からの左胴に向けての逆袈裟か。
 なら少し前に出て左腕をゆっくり上げるだけで……。

「なっ!? ば、馬鹿なっ!?」

 おいおい……驚き過ぎだよ? フェルナンくん。
 ただ君のハルバードのポールを握って受け止めただけだよ。

「くっ! うぉおおおおおお! う、動かねえ……」

 力不足だな。
 これで全力か? 
 それともナメているのか?
 こんな程度の力で調子に乗っていたとは……軍の腐敗は上から下まで進んでいるようだな。

「少尉。こんなものか? やり残したことがあるなら早くやれ。いつまでも待っててやるほど俺は優しくないぞ?」

「く、くそがぁあああああ!」

 俺の左手一本に対して全力で両手使って、更に全体重を乗せてこんなもんか。
 これ以上は時間の無駄だな。

「次は俺の番だな……死にたくなかったら気合入れとけよ」

「なっ!? ちょ、ちょっと待っ……ゲフアッ!」

 あっ……モロに急所に入っちゃった……拳が鳩尾にめり込んじゃってるよ。
 ぶっ飛ばすつもりだったのに、俺がハルバードを握ってたから衝撃が後ろに逃げずにクリーンヒットしたようだな。
 少尉は……あらら、目ん玉はこれでもかってくらいに見開いてるし、口は開いたまま涎と血が混じった物を垂れ流してる。
 しかも身体は固まった動かない。
 仕方ないから医務室に運んで軍医に診せたら胸骨及び肋骨の粉砕骨折、一部は臓物に刺さっていたそうだ。
 更に他の臓物も衝撃で損傷していて、その場で緊急治療が施されていたよ。
 軍医やら衛星兵やら総動員で治療にあたり、命は取り止めたけど危ない状態だったそうだ。
 お陰で俺は後からジェニングス中将とアンダーソン大佐からやり過ぎだと怒られたよ。
 理不尽な話だ。
 


 




 
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