131 / 480
第二章
初めての権力
しおりを挟む
警備隊がヴィードとその場にいる冒険者達、それに達人のおっさんを拘束しようとしてる。
対して冒険者側も拘束されまいと徹底抗戦の構えだ。
多分達人のおっさんが途中で仲裁に入っていなかったら、とっくに乱闘騒ぎになってただろう。
何でこんなにピリピリしてるのかわからないけど、引越し初日に近所で騒ぎは御免だ。
「ちょいちょい、それはやり過ぎじゃないか?」
「なんだ、お前は!? お前も拘束されたいのかっ!」
いきなり喧嘩腰かよ。
ちょっと頭冷やさせる必要があるな。
「上官に向かってお前とは、随分といい度胸しているな。少尉」
「うっ……か、官姓名は?」
「ウォーレイク元帥閣下直属のリクト・フォン・シュナイデン大尉だ」
「なっ!? し、失礼しました!」
うわぁ……一瞬で全員が直立不動で敬礼したよ。
まぁ、軍では階級差は絶対だからな。
下手に逆らったら上官反抗罪で厳罰となる。
左遷降格なんか当たり前で、上官によっては処刑まであるってんだから恐ろしい話だよ。
「少尉。この場は俺が預かっていいか?」
「はっ! し、しかし……最近の冒険者達の横暴ぶりには目に余るものがありまして……」
「先のやり取りを見る限りではお互い様だ。ろくに状況把握もせずに軍が力を行使すれば、冤罪を起こしかねない。現に俺にも気づかず、拘束するとまで言ったんだぞ? もし、お前達が俺に刃を向けていたなら俺は容赦なく斬り捨てていたところだ」
「ひっ……」
ありゃ、ちょっと語気を強めたら怖がらせちゃったみたいだな。
顔色が悪くなってる。
流石にこのまま警備隊だけを責めるのは体面上マズいな。
「それとヴィードだったか?」
「な、なんだっ?」
「お前達はお前達でやり過ぎてる。通りすがりの俺にいきなり絡んできたんだからな。冒険者組合がこんな調子では組合はともかく、真面目にやってる冒険者達まで白い目で見られる事になる。組合員の評判を落とすような真似はよせ」
「へぇ、いい事言うじゃないの。この若い大尉さんは」
達人のおっさんに感心されてしまった。
でも、ヴィードは不満気な顔だな。
「も、元々は軍の奴等が権力を振りかざしているのが悪いんだっ! だから……」
「だから俺達も権力を振りかざした……か? 他人にされて嫌な事は他人にするなって知らないのか? とにかく、今回の件については俺が預かる。警備隊には事の顛末をまとめた報告書をあげる。冒険者組合には軍から正式に是正勧告書を送る。それでいいな?」
「はっ! 警備隊としてそれで異論ありません!」
警備隊の小隊長は納得してくれたけど、ヴィードの方は納得できないのか顔を歪めている。
やれやれ、折角丸く収めようとしてるのに困ったもんだよ。
「安心してくれ。大尉さん。俺からギルドマスターに報告しておくからよ。ヴィードの頑固は、このオフィリアンの顔に免じて許してやってくださいな」
達人のおっさんが俺の前に立って、そう言いながら頭を下げた。
相変わらず一部の隙もないな。
「わかった。では、くれぐれもギルドマスターによろしく言っておいてくれ。『貸し一つ』ってね」
「若いのに抜け目がないねぇ。でも、気に入ったよ、大尉さん。どうだい? 今夜にでも一杯行きませんか?」
おっと、近所の人からの飲み会のお誘いがきたぞ。
これは断れないね。
対して冒険者側も拘束されまいと徹底抗戦の構えだ。
多分達人のおっさんが途中で仲裁に入っていなかったら、とっくに乱闘騒ぎになってただろう。
何でこんなにピリピリしてるのかわからないけど、引越し初日に近所で騒ぎは御免だ。
「ちょいちょい、それはやり過ぎじゃないか?」
「なんだ、お前は!? お前も拘束されたいのかっ!」
いきなり喧嘩腰かよ。
ちょっと頭冷やさせる必要があるな。
「上官に向かってお前とは、随分といい度胸しているな。少尉」
「うっ……か、官姓名は?」
「ウォーレイク元帥閣下直属のリクト・フォン・シュナイデン大尉だ」
「なっ!? し、失礼しました!」
うわぁ……一瞬で全員が直立不動で敬礼したよ。
まぁ、軍では階級差は絶対だからな。
下手に逆らったら上官反抗罪で厳罰となる。
左遷降格なんか当たり前で、上官によっては処刑まであるってんだから恐ろしい話だよ。
「少尉。この場は俺が預かっていいか?」
「はっ! し、しかし……最近の冒険者達の横暴ぶりには目に余るものがありまして……」
「先のやり取りを見る限りではお互い様だ。ろくに状況把握もせずに軍が力を行使すれば、冤罪を起こしかねない。現に俺にも気づかず、拘束するとまで言ったんだぞ? もし、お前達が俺に刃を向けていたなら俺は容赦なく斬り捨てていたところだ」
「ひっ……」
ありゃ、ちょっと語気を強めたら怖がらせちゃったみたいだな。
顔色が悪くなってる。
流石にこのまま警備隊だけを責めるのは体面上マズいな。
「それとヴィードだったか?」
「な、なんだっ?」
「お前達はお前達でやり過ぎてる。通りすがりの俺にいきなり絡んできたんだからな。冒険者組合がこんな調子では組合はともかく、真面目にやってる冒険者達まで白い目で見られる事になる。組合員の評判を落とすような真似はよせ」
「へぇ、いい事言うじゃないの。この若い大尉さんは」
達人のおっさんに感心されてしまった。
でも、ヴィードは不満気な顔だな。
「も、元々は軍の奴等が権力を振りかざしているのが悪いんだっ! だから……」
「だから俺達も権力を振りかざした……か? 他人にされて嫌な事は他人にするなって知らないのか? とにかく、今回の件については俺が預かる。警備隊には事の顛末をまとめた報告書をあげる。冒険者組合には軍から正式に是正勧告書を送る。それでいいな?」
「はっ! 警備隊としてそれで異論ありません!」
警備隊の小隊長は納得してくれたけど、ヴィードの方は納得できないのか顔を歪めている。
やれやれ、折角丸く収めようとしてるのに困ったもんだよ。
「安心してくれ。大尉さん。俺からギルドマスターに報告しておくからよ。ヴィードの頑固は、このオフィリアンの顔に免じて許してやってくださいな」
達人のおっさんが俺の前に立って、そう言いながら頭を下げた。
相変わらず一部の隙もないな。
「わかった。では、くれぐれもギルドマスターによろしく言っておいてくれ。『貸し一つ』ってね」
「若いのに抜け目がないねぇ。でも、気に入ったよ、大尉さん。どうだい? 今夜にでも一杯行きませんか?」
おっと、近所の人からの飲み会のお誘いがきたぞ。
これは断れないね。
0
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
鉱石令嬢~没落した悪役令嬢が炭鉱で一山当てるまでのお話~
甘味亭太丸
ファンタジー
石マニアをこじらせて鉱業系の会社に勤めていたアラサー研究員の末野いすずはふと気が付くと、暇つぶしでやっていたアプリ乙女ゲームの悪役令嬢マヘリアになっていた。しかも目覚めたタイミングは婚約解消。最悪なタイミングでの目覚め、もはや御家の没落は回避できない。このままでは破滅まっしぐら。何とか逃げ出したいすずがたどり着いたのは最底辺の墓場と揶揄される炭鉱。
彼女は前世の知識を元に、何より生き抜くために鉱山を掘り進め、鉄を作るのである。
これは生き残る為に山を掘る悪役令嬢の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
聖弾の射手
平尾正和/ほーち
ファンタジー
会社が潰れたのを機に田舎へと帰った賢人(けんと)は、実家に住む祖母から土地の相続を持ちかけられる。
権利書には、自宅以外にも祖父が趣味でやっていた畑の住所がいくつか並んでいた。
マップアプリを使って場所を確認し、当時を懐かしんでいた賢人だったが、その中にひとつだけ、見知らぬ土地があった。
――気になるんなら見に行けばいいじゃないか。どうせ暇なんだろ?
という祖母の言葉もあり、賢人はその土地を訪れることに。
なぜか出発前に、祖父の形見のスーツと防災バッグを祖母に持たされた賢人は、その土地でパーカッションロック式のマスケット銃を発見する。
そして、その銃を手にした瞬間、賢人は異世界へと飛ばされたのだった。
禁煙パイプを吸って心を落ち着け、見知らぬ森を歩いていると、黒猫獣人の冒険者ルーシーと出会う。
ふたりに襲いかかる強敵を前にした賢人は、マスケット銃から発射される光の弾丸――聖弾――を駆使して魔物を討伐し、ルーシーとともに街を訪れ、冒険者となった。
この世界で冒険者となった者は『加護』を得られる。
それはHPやMP、魔法、スキルといった、ゲームのような能力だった。
加護板と呼ばれるステータスプレートには、【攻撃力】や【防御力】といった現地文字の項目が並んでいたが、その能力値を評価するA~Hの文字はアルファベットで、その世界では神代文字と呼ばれていた。
――あたし、【運】の値がおかしいんだよね。
そう言うルーシーの加護板に並ぶ最低評価『H』の文字。
その中にあって【運】だけが『S』だった。
この世界にあって失われた文字である『S』
そして賢人の加護板でルーシーも初めて目の当たりにする【SP】という項目。
彼は、その特殊な能力と《聖弾》を放つマスケット銃、そして日本の知識を駆使して、冒険者としてルーシーとともにこの世界を生きることに決めた。
元の世界と異世界とを行き来できること、そして彼が辞めた会社の跡地で新たな事件が起ころうとしていることを、賢人はまだ知らない……。
【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした
仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」
夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。
結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。
それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。
結婚式は、お互いの親戚のみ。
なぜならお互い再婚だから。
そして、結婚式が終わり、新居へ……?
一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる