食うために軍人になりました。

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第二章

高級ボロ屋

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 や、やばい……。
 中将からもらったテーブルセット。
 買い直すからお古でよかったらって感じで貰ったのに、それが金貨100枚って……。
 
「言っておくが、だからな。私も詳しくはわからんが、もしかしたらもっと値が張るものかもしれんぞ」

 マジか?
 家賃金貨8枚の家で100枚以上のテーブル使うってどんな酔狂だよ。
 ガタついてても前のテーブルの方が良いかも……。

「シュ、シュナイデン様……あの絨毯が……」

「えっ? ああ、それは少佐から貰った物で、床に敷けって……」

 マルグリットさん、絨毯が床に敷いてあるのを見て驚いたみたいだな。
 俺だって壁に飾る物だと思ってたからその気持ちはわかりますよ。

「おい……この絨毯はディピカじゃないのか?」

「デ、ディピカ?」

 なんだそれ? 
 絨毯に名前があるなんて知らないぞ?

「ディピカ絨毯。ラクーラ国のディピカ地方で作られる絨毯の事でございます。非常に緻密かつ精巧に織られた手織りの絨毯で、この大きさですと金貨50枚はする高級品です」

「き、金貨50枚っ!? で、でも安物かも……」

「ディピカ絨毯に安物はございません。伝統と格式を持って織られる一品に妥協などありませんから、大きさ以外に値段が上下しないのもディピカ絨毯の特徴です」

 うわぁ……金貨50枚を床に敷いちゃったよ。
 おまけに何回も踏んでるし、今更壁に飾るわけにもいかないし。

「なんとなく状況が読めたからついでに言っておくぞ。このソファも高級品だ。王都で流行しているホワイトグースという魔物の羽根を使った物で、この3人掛けなら……金貨40から50と言ったところだろう」

 はぁ……金貨40枚? 
 中将も少佐も中尉も貴族出身だったのをまた忘れてたよ。
 まさか、こんな高級品ばかり……待てよ。
 そういえばあと3人俺にお祝いをくれた人がいたような。

「それからお前が用意してくれたお茶のカップ。これもだ。これはボイムラーと呼ばれるブランド品で金貨20枚はする代物だ」

 ほっ、良かった。
 最初ならビビったけど、さっきのを聞いた後じゃそんなに驚かないぞ。
 さすが閣下だな。
 良識家でいらっしゃる。

「言っておくが、ティーカップ一客が。だからな? つまりこのティーセットは少なくとも金貨100枚以上の代物だ」

 いゃああああああ! 
 中将! 貴方もわかってないじゃないですかっ!
 なんちゅう物ホイっと渡してるんですか!?

「極めつけはこの絵画ですね。これは名画《混濁の湖畔》です。戦争で生死の境を彷徨ったウッツが見た夢か現かわからない情景を描いた作品であり、画家として活躍するキッカケとなった作品でもあります。オークションで落札された時の価格は……金貨1200枚です」

 せ、せ、せ、せ、1200枚ぃいいいいいいいいいいい!
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