91 / 480
第二章
授爵と改革
しおりを挟む
跪く俺の前に陛下が立ち、俺の肩に剣を置いた。
キラリと光る剣先が俺の首に添えられる。
「ヴァランタイン帝国皇帝アヌーク・フォン・ミリアルド・ヴァランタインの名の下に、リクト・シュナイデンを騎士爵に叙爵する。これからは『リクト・フォン・シュナイデン』と名乗るが良い。これが騎士爵を示す貴族証だ。大事に持っておけよ」
「はっ! 有り難く頂戴致します」
陛下が銀色に輝く指輪を俺にくれる。
やれやれ、急に跪けと言われた時は打ち首かと思ったけど、まさか授爵の儀だったとは思わなかった。
確かに授爵って聞いてたけど、さっきは勲章だけだったからな。
まぁ、勲章だけでも結構な騒ぎだったし、あの場でそのまま授爵の儀をするわけにもいかなかったんだろう。
それにしても、まさか平民の俺が成人して1年も経たないうちに貴族になるとは夢にも思わなかった。
「貴族証は常に身に付けておけ。ミスリル製だからそれほど邪魔にならんだろうしな」
「わかりました、陛下」
確かに指に嵌めてもそれ程気にはならない。
意識していなければ忘れてしまいそうなくらいだ。
「さて、これで授爵の儀は果たした。次は褒美だが、何がいい?」
「陛下。それなんですが、勲章に授爵と身に余る光栄が続いております。この上何か戴くというのは……」
謁見の間で何かくださると聞いて、新たに子爵となったダウスター様に相談したんだけど。
『これ以上何か貰うなど畏れ多い! 頼むから俺の胃痛を増やさんでくれ……』
って、懇願されちゃったんだよな。
でも、確かにヴァランタイン勲章なんて貰った上に授爵だろ?
普通に考えたらどちらか一方だけでも凄いことなのに、更に何か貰うのはマズい気がする。
「気にするな。それに卿のためだけではない。卿は今後はダウスター領軍ではなく、ウォーレイクの元帥府に配属になるんだろ? その餞別だ」
「餞別……ですか?」
「そうだ。ウォーレイクは有能な男だ。だが、今の帝国の中で平民出身のウォーレイクをよく思わない者は多いのだ」
そういえばそんな話があったな。
貴族の特権階級がのさばってるからだって。
「しかし、今は改革の時だ。貴族など血筋による縁故では国は弱体化するのみ。現に最近の貴族連中の横暴は目に余るものがある! 私としては無能は全て切り捨ててやりたいが、皇帝としてはそうもいかん。無能は無能なりの使い方があるからな」
「はぁ……小官にはよくわかりません」
「いや、卿にも関係はあるぞ。例えば貴族の馬鹿息子が軍に入り、手柄もないのに出世して要職に就けば、卿の出世は遅れるのだ。戦になって卿が前線に出ても、奴ら前線には出ず、後方で酒を飲んでいるばかりだ。面白くなかろう?」
面白くないね。
なるほど、確かに改革の必要性ありだな。
キラリと光る剣先が俺の首に添えられる。
「ヴァランタイン帝国皇帝アヌーク・フォン・ミリアルド・ヴァランタインの名の下に、リクト・シュナイデンを騎士爵に叙爵する。これからは『リクト・フォン・シュナイデン』と名乗るが良い。これが騎士爵を示す貴族証だ。大事に持っておけよ」
「はっ! 有り難く頂戴致します」
陛下が銀色に輝く指輪を俺にくれる。
やれやれ、急に跪けと言われた時は打ち首かと思ったけど、まさか授爵の儀だったとは思わなかった。
確かに授爵って聞いてたけど、さっきは勲章だけだったからな。
まぁ、勲章だけでも結構な騒ぎだったし、あの場でそのまま授爵の儀をするわけにもいかなかったんだろう。
それにしても、まさか平民の俺が成人して1年も経たないうちに貴族になるとは夢にも思わなかった。
「貴族証は常に身に付けておけ。ミスリル製だからそれほど邪魔にならんだろうしな」
「わかりました、陛下」
確かに指に嵌めてもそれ程気にはならない。
意識していなければ忘れてしまいそうなくらいだ。
「さて、これで授爵の儀は果たした。次は褒美だが、何がいい?」
「陛下。それなんですが、勲章に授爵と身に余る光栄が続いております。この上何か戴くというのは……」
謁見の間で何かくださると聞いて、新たに子爵となったダウスター様に相談したんだけど。
『これ以上何か貰うなど畏れ多い! 頼むから俺の胃痛を増やさんでくれ……』
って、懇願されちゃったんだよな。
でも、確かにヴァランタイン勲章なんて貰った上に授爵だろ?
普通に考えたらどちらか一方だけでも凄いことなのに、更に何か貰うのはマズい気がする。
「気にするな。それに卿のためだけではない。卿は今後はダウスター領軍ではなく、ウォーレイクの元帥府に配属になるんだろ? その餞別だ」
「餞別……ですか?」
「そうだ。ウォーレイクは有能な男だ。だが、今の帝国の中で平民出身のウォーレイクをよく思わない者は多いのだ」
そういえばそんな話があったな。
貴族の特権階級がのさばってるからだって。
「しかし、今は改革の時だ。貴族など血筋による縁故では国は弱体化するのみ。現に最近の貴族連中の横暴は目に余るものがある! 私としては無能は全て切り捨ててやりたいが、皇帝としてはそうもいかん。無能は無能なりの使い方があるからな」
「はぁ……小官にはよくわかりません」
「いや、卿にも関係はあるぞ。例えば貴族の馬鹿息子が軍に入り、手柄もないのに出世して要職に就けば、卿の出世は遅れるのだ。戦になって卿が前線に出ても、奴ら前線には出ず、後方で酒を飲んでいるばかりだ。面白くなかろう?」
面白くないね。
なるほど、確かに改革の必要性ありだな。
10
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる