88 / 480
第二章
褒賞授与
しおりを挟む
盛大に笑う皇帝陛下に謁見の間に集まった貴族や軍人達は困惑顔だ。
そりゃそうだろうな。
いくら田舎者である俺と対面したからって、ここまで笑う事はないだろう。
何人かが近くの者達とヒソヒソと話し始め、広間がにわかにざわめき始める。
「静粛にっ! これより陛下から両名の武勲に対する褒美が与えられるっ! しかと傾聴せよっ!」
陛下の前に立っていた宰相と思われる細身の男が、容姿に似合わない野太い声で一喝した。
周囲の騒めきは直ぐに消えさり、陛下も笑いを止め、威厳を取り戻すかのようにわざとらしい咳払いをしている。
「え~、ダウスター男爵よ。此度のオーマン伯爵の反逆行為に際し、迅速に行動した其方の働きは見事であった。また数日で反逆軍を鎮圧した手腕は陞爵に値すると認める。よって、アーベル・フォン・ダウスターを子爵へと陞爵する。また、現在帝国直轄領となっている旧ライエル領を与える。見事治めてみよ」
「はっ! 謹んでお受け致します。これからも帝国のために身命を賭して励む所存にございます」
陛下からの陞爵と領土の譲与に平伏して礼を述べる男爵様改め子爵様。
おめでとうございます。
「そして、リクト・シュナイデン軍曹。反逆者オーマン伯爵及び、共謀していたマックロン男爵を討ち取り、オーマンの精鋭騎士団を含む70名余りを単身で討伐した働きは、まさに獅子奮迅の働きと言えよう! その功績を認め、ここにヴァランタイン勲章を授けるものとする!」
隣の宰相がいつの間にか、金色に輝く星を象った大きな勲章を持って立っている。
いつの間に持ってたんだ?
それにしても周りがうるさいな。
急に列席者全員が騒めき始めたぞ。
「な、なんとっ!」
「たかが、名士如きにヴァランタイン勲章ですとっ!」
「へ、陛下! お、お待ち下さい!」
子爵様への陞爵や領地の下賜の際には特に反応が無かったのに、俺の勲章授与にら貴族や軍人達が異議を唱え始めた。
口々に発せられる悪態を含む驚嘆の声は、謁見の間中に瞬く間に広がり、場は騒然となっている。
そこまで大事なんだろうか?
ちょっと混乱に乗じて、こっそり子爵様に聞いてみるか。
「あの……何故、こんな事になっているのでしょうか?」
「と、当然だ。俺だって俄かには信じられん! 帝国には様々な勲章が存在するが、中でもヴァランタイン勲章は国の範となるべき人物に与えられる勲章だ。勲章のランクでいえば上から2番目。大変な栄誉なんだぞ!」
なんだ、1番じゃないのか。
まぁ、当然だよな。
あの伯爵弱かったし、せいぜい敵の数が多かったくらいじゃ2番目でも十分だろう。
というか、俺より列席している周りの人達の方が納得していないぞ。
この不満は陛下の評価に傷をつける事になるんじゃ……。
「黙れ」
それは小さな一言だった。
だが、その小さな一言がその場の全てを支配した。
そりゃそうだろうな。
いくら田舎者である俺と対面したからって、ここまで笑う事はないだろう。
何人かが近くの者達とヒソヒソと話し始め、広間がにわかにざわめき始める。
「静粛にっ! これより陛下から両名の武勲に対する褒美が与えられるっ! しかと傾聴せよっ!」
陛下の前に立っていた宰相と思われる細身の男が、容姿に似合わない野太い声で一喝した。
周囲の騒めきは直ぐに消えさり、陛下も笑いを止め、威厳を取り戻すかのようにわざとらしい咳払いをしている。
「え~、ダウスター男爵よ。此度のオーマン伯爵の反逆行為に際し、迅速に行動した其方の働きは見事であった。また数日で反逆軍を鎮圧した手腕は陞爵に値すると認める。よって、アーベル・フォン・ダウスターを子爵へと陞爵する。また、現在帝国直轄領となっている旧ライエル領を与える。見事治めてみよ」
「はっ! 謹んでお受け致します。これからも帝国のために身命を賭して励む所存にございます」
陛下からの陞爵と領土の譲与に平伏して礼を述べる男爵様改め子爵様。
おめでとうございます。
「そして、リクト・シュナイデン軍曹。反逆者オーマン伯爵及び、共謀していたマックロン男爵を討ち取り、オーマンの精鋭騎士団を含む70名余りを単身で討伐した働きは、まさに獅子奮迅の働きと言えよう! その功績を認め、ここにヴァランタイン勲章を授けるものとする!」
隣の宰相がいつの間にか、金色に輝く星を象った大きな勲章を持って立っている。
いつの間に持ってたんだ?
それにしても周りがうるさいな。
急に列席者全員が騒めき始めたぞ。
「な、なんとっ!」
「たかが、名士如きにヴァランタイン勲章ですとっ!」
「へ、陛下! お、お待ち下さい!」
子爵様への陞爵や領地の下賜の際には特に反応が無かったのに、俺の勲章授与にら貴族や軍人達が異議を唱え始めた。
口々に発せられる悪態を含む驚嘆の声は、謁見の間中に瞬く間に広がり、場は騒然となっている。
そこまで大事なんだろうか?
ちょっと混乱に乗じて、こっそり子爵様に聞いてみるか。
「あの……何故、こんな事になっているのでしょうか?」
「と、当然だ。俺だって俄かには信じられん! 帝国には様々な勲章が存在するが、中でもヴァランタイン勲章は国の範となるべき人物に与えられる勲章だ。勲章のランクでいえば上から2番目。大変な栄誉なんだぞ!」
なんだ、1番じゃないのか。
まぁ、当然だよな。
あの伯爵弱かったし、せいぜい敵の数が多かったくらいじゃ2番目でも十分だろう。
というか、俺より列席している周りの人達の方が納得していないぞ。
この不満は陛下の評価に傷をつける事になるんじゃ……。
「黙れ」
それは小さな一言だった。
だが、その小さな一言がその場の全てを支配した。
10
お気に入りに追加
961
あなたにおすすめの小説
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
勇者に幼馴染で婚約者の彼女を寝取られたら、勇者のパーティーが仲間になった。~ただの村人だった青年は、魔術師、聖女、剣聖を仲間にして旅に出る~
霜月雹花
ファンタジー
田舎で住む少年ロイドには、幼馴染で婚約者のルネが居た。しかし、いつもの様に農作業をしていると、ルネから呼び出しを受けて付いて行くとルネの両親と勇者が居て、ルネは勇者と一緒になると告げられた。村人達もルネが勇者と一緒になれば村が有名になると思い上がり、ロイドを村から追い出した。。
ロイドはそんなルネや村人達の行動に心が折れ、村から近い湖で一人泣いていると、勇者の仲間である3人の女性がロイドの所へとやって来て、ロイドに向かって「一緒に旅に出ないか」と持ち掛けられた。
これは、勇者に幼馴染で婚約者を寝取られた少年が、勇者の仲間から誘われ、時に人助けをしたり、時に冒険をする。そんなお話である
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる