食うために軍人になりました。

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第二章

褒賞授与

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 盛大に笑う皇帝陛下に謁見の間に集まった貴族や軍人達は困惑顔だ。
 そりゃそうだろうな。
 いくら田舎者である俺と対面したからって、ここまで笑う事はないだろう。
 何人かが近くの者達とヒソヒソと話し始め、広間がにわかにざわめき始める。

「静粛にっ! これより陛下から両名の武勲に対する褒美が与えられるっ! しかと傾聴せよっ!」

 陛下の前に立っていた宰相と思われる細身の男が、容姿に似合わない野太い声で一喝した。
 周囲の騒めきは直ぐに消えさり、陛下も笑いを止め、威厳を取り戻すかのようにわざとらしい咳払いをしている。

「え~、ダウスター男爵よ。此度のオーマン伯爵の反逆行為に際し、迅速に行動した其方の働きは見事であった。また数日で反逆軍を鎮圧した手腕は陞爵に値すると認める。よって、アーベル・フォン・ダウスターを子爵へと陞爵する。また、現在帝国直轄領となっている旧ライエル領を与える。見事治めてみよ」

「はっ! 謹んでお受け致します。これからも帝国のために身命を賭して励む所存にございます」

 陛下からの陞爵と領土の譲与に平伏して礼を述べる男爵様改め子爵様。
 おめでとうございます。

「そして、リクト・シュナイデン軍曹。反逆者オーマン伯爵及び、共謀していたマックロン男爵を討ち取り、オーマンの精鋭騎士団を含む70名余りを単身で討伐した働きは、まさに獅子奮迅の働きと言えよう! その功績を認め、ここにヴァランタイン勲章を授けるものとする!」

 隣の宰相がいつの間にか、金色に輝く星を象った大きな勲章を持って立っている。
 いつの間に持ってたんだ?
 それにしても周りがうるさいな。
 急に列席者全員が騒めき始めたぞ。

「な、なんとっ!」

「たかが、名士如きにヴァランタイン勲章ですとっ!」

「へ、陛下! お、お待ち下さい!」

 子爵様への陞爵や領地の下賜の際には特に反応が無かったのに、俺の勲章授与にら貴族や軍人達が異議を唱え始めた。
 口々に発せられる悪態を含む驚嘆の声は、謁見の間中に瞬く間に広がり、場は騒然となっている。
 そこまで大事なんだろうか?
 ちょっと混乱に乗じて、こっそり子爵様に聞いてみるか。

「あの……何故、こんな事になっているのでしょうか?」

「と、当然だ。俺だって俄かには信じられん! 帝国には様々な勲章が存在するが、中でもヴァランタイン勲章は国の範となるべき人物に与えられる勲章だ。勲章のランクでいえば上から2番目。大変な栄誉なんだぞ!」

 なんだ、1番じゃないのか。
 まぁ、当然だよな。
 あの伯爵弱かったし、せいぜい敵の数が多かったくらいじゃ2番目でも十分だろう。
 というか、俺より列席している周りの人達の方が納得していないぞ。
 この不満は陛下の評価に傷をつける事になるんじゃ……。

「黙れ」

 それは小さな一言だった。
 だが、その小さな一言がその場の全てを支配した。
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