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第一章
リクト全開
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抜刀の構えの俺を中心に広がる凄まじい衝撃の奔流は練兵場内に張られた障壁の中を駆け巡っていた。
それに晒された中将や男爵達はやや押され気味だけど、大丈夫かな?
「な、なんだっ! この圧倒的な力はっ! ダウスター卿! 卿は一体、どこでこんな怪物を手に入れたのだっ!」
「し、知らん! 今年の入隊希望者の1人で抜きん出た才能を持っている。私が知っているのはそれだけだ!」
「く、くぅうううう! な、なんという威圧感だっ! あ、あいつめっ! 私と戦っていた時は本気ではなかったと言うのかっ!」
「きゃあああああああっ! と、飛ぶっ! 飛んじゃうよぉおおおお! なんなのよぉ! この突風はぁ!」
中将と男爵はなんとか耐えているが、戦い疲れている大尉と少尉は既に地面に伏せている状態だ。
大丈夫かな?
【あの技】を出すにはこれくらいじゃダメだ。
もっともっと魔力を込めないといけないから、衝撃波も更に強くなるんだけどなぁ。
まぁ、いいか。
「はぁああああああああああああ!」
俺は更に魔力を高めて刀に込める。
そうそう、こうなってくると霞状だった白いやつが光となって身体から迸るんだよね。
代わりに周りに出る衝撃波は今みたいに爆音を響かせながら更に強くなって、地面が軋むような音を出すんだ。
そういえば前に使った時は周囲にあった大木が根こそぎ吹っ飛んじゃったんだよなぁ。
いやぁ、懐かしい思い出だ。
「ぐぅうううう! こ、これ以上はマズい! 魔法壁盾! 大尉と少尉は私の後ろに来い!」
「ぬぅうううう! なんという衝撃だ!
眼を開けておれん! 我が軍にこんな猛者がいたとは……」
「だ、大丈夫か? ファンティーヌ! あの白い光はなんだっ? 強化魔法か?」
「う、うそぉ……あ、あれは純粋な魔力? そ、そんなぁ……魔力は詠唱による属性付与で初めて可視化するのに……魔力自体が可視化してるって事はそれだけ魔力の密度が濃いってことぉ? だとすると、閣下ぁ! このままだと危険ですよぉ!」
中将の後ろに移動した大尉と少尉だったが、何故か少尉の方が慌てているように見えるな。
どうしたんだろ?
「な、なんだとっ! このままだとこの辺り一帯が吹き飛ぶだとっ!」
「は、はいっ! 私はあの氷山が出た時に軍曹の側にいましたがぁ、これほどの魔力は感じませんでしたぁ! つまりぃ、あの氷山を出した時の数倍以上の魔力を軍曹は出してるんですぅ! 何の技かはわかりませんがぁ、このまま放たれたらこの辺りは一瞬で崩壊しますよぉ!」
「冗談ではないっ! 軍曹のやつ、なんて技をっ! 閣下! 早くあいつを止めないと危険です!」
止める?
なんか止めるとかどうとかって言ってるな。
何を止めるんだ?
もしかして衝撃波か? なら、技を出せば止まるから、このまま撃てばいいだろう。
ボチボチ魔力も溜まってきて、今で半分くらいかな?
このくらいの魔力ならあの氷山くらい壊すのは大丈夫だろう。
あとはうまく撃てる事を祈るだけだ。
「極剣……」
技を撃とうした時、また横から大声が聞こえてくる。
「いやぁああああああ! 閣下っ! 軍曹が撃とうとしてますぅ! この辺りを吹っ飛ばす技を本当に撃とうとしてますぅ!」
「チッ! こうなったらやむ得ん! 私が雷の涙を全開で放って止める!」
「無理だ、大尉! この膨大な魔力の中では焼け石に水にしかならんぞっ!」
ああ、もう!
さっきから少尉といい大尉といい、中将まで横からごちゃごちゃと!
集中しないと使えないってのに!
もう、あの人達の声は無視しよう。
「天上天下……」
「えぇい! こうなったら全員の最大攻撃を軍曹に向けて放てっ! 少々の怪我をさせてでも止めるしかないっ! いくぞっ! 災厄の大嵐!」
「軍曹すまん! 斧技・剛力旋斧!」
「魔剣雷の涙最大の奥義! 龍撃雷!」
「魔力は少ししか回復してないけどぉ……お願いぃ、届いてっ! 氷の重装槍!」
無視しようとしていたが、あまりにもうるさ過ぎて俺は視線を中将達に向けた。
文句の一つも言わないと気が済まないよ!
「もう! さっきからごちゃごちゃとうるさいですよぉ! こっちはちゃんとやってるんです! ちゃんと見てるんですか…………って! うわぁあああああああ! 黒い竜巻と巨大な斧と龍の形した雷とぶっとい氷の槍が飛んでくるぅうううう!」
流石にこれはヤバい!
直撃したら怪我だけじゃ済まない!
慌てて俺はその場から跳び退いて攻撃が飛んできた方向の後ろに跳んだ。
あ、危なかったぁ……あっ、今のドタバタで集中してた魔力が霧散してしまった。
あ~ぁ、せっかく最大最強の技を撃つところだったのに。
邪魔したのは中将達だな!
言われたからやろうとしたのに、邪魔するなんてどういうつもりだ!
文句言って……あれ? 何で皆んなそんなに疲れてるんだ?
「ハァハァハァハァ……な、なんとか止まった……か?」
「ぜぇぜぇ……と、とりあえず衝撃の波は止まったからな。他に変わったところもないし、無事と言っていいだろう」
「し、しっかりしろ……ファンティーヌ……傷は浅いぞ……」
「ふにゅぅ……また魔力切れだよぉ……もう、ダメ……」
中将達4人は肩で息をしながらグッタリしていた。
皆んな、何かあったのかな?
それに晒された中将や男爵達はやや押され気味だけど、大丈夫かな?
「な、なんだっ! この圧倒的な力はっ! ダウスター卿! 卿は一体、どこでこんな怪物を手に入れたのだっ!」
「し、知らん! 今年の入隊希望者の1人で抜きん出た才能を持っている。私が知っているのはそれだけだ!」
「く、くぅうううう! な、なんという威圧感だっ! あ、あいつめっ! 私と戦っていた時は本気ではなかったと言うのかっ!」
「きゃあああああああっ! と、飛ぶっ! 飛んじゃうよぉおおおお! なんなのよぉ! この突風はぁ!」
中将と男爵はなんとか耐えているが、戦い疲れている大尉と少尉は既に地面に伏せている状態だ。
大丈夫かな?
【あの技】を出すにはこれくらいじゃダメだ。
もっともっと魔力を込めないといけないから、衝撃波も更に強くなるんだけどなぁ。
まぁ、いいか。
「はぁああああああああああああ!」
俺は更に魔力を高めて刀に込める。
そうそう、こうなってくると霞状だった白いやつが光となって身体から迸るんだよね。
代わりに周りに出る衝撃波は今みたいに爆音を響かせながら更に強くなって、地面が軋むような音を出すんだ。
そういえば前に使った時は周囲にあった大木が根こそぎ吹っ飛んじゃったんだよなぁ。
いやぁ、懐かしい思い出だ。
「ぐぅうううう! こ、これ以上はマズい! 魔法壁盾! 大尉と少尉は私の後ろに来い!」
「ぬぅうううう! なんという衝撃だ!
眼を開けておれん! 我が軍にこんな猛者がいたとは……」
「だ、大丈夫か? ファンティーヌ! あの白い光はなんだっ? 強化魔法か?」
「う、うそぉ……あ、あれは純粋な魔力? そ、そんなぁ……魔力は詠唱による属性付与で初めて可視化するのに……魔力自体が可視化してるって事はそれだけ魔力の密度が濃いってことぉ? だとすると、閣下ぁ! このままだと危険ですよぉ!」
中将の後ろに移動した大尉と少尉だったが、何故か少尉の方が慌てているように見えるな。
どうしたんだろ?
「な、なんだとっ! このままだとこの辺り一帯が吹き飛ぶだとっ!」
「は、はいっ! 私はあの氷山が出た時に軍曹の側にいましたがぁ、これほどの魔力は感じませんでしたぁ! つまりぃ、あの氷山を出した時の数倍以上の魔力を軍曹は出してるんですぅ! 何の技かはわかりませんがぁ、このまま放たれたらこの辺りは一瞬で崩壊しますよぉ!」
「冗談ではないっ! 軍曹のやつ、なんて技をっ! 閣下! 早くあいつを止めないと危険です!」
止める?
なんか止めるとかどうとかって言ってるな。
何を止めるんだ?
もしかして衝撃波か? なら、技を出せば止まるから、このまま撃てばいいだろう。
ボチボチ魔力も溜まってきて、今で半分くらいかな?
このくらいの魔力ならあの氷山くらい壊すのは大丈夫だろう。
あとはうまく撃てる事を祈るだけだ。
「極剣……」
技を撃とうした時、また横から大声が聞こえてくる。
「いやぁああああああ! 閣下っ! 軍曹が撃とうとしてますぅ! この辺りを吹っ飛ばす技を本当に撃とうとしてますぅ!」
「チッ! こうなったらやむ得ん! 私が雷の涙を全開で放って止める!」
「無理だ、大尉! この膨大な魔力の中では焼け石に水にしかならんぞっ!」
ああ、もう!
さっきから少尉といい大尉といい、中将まで横からごちゃごちゃと!
集中しないと使えないってのに!
もう、あの人達の声は無視しよう。
「天上天下……」
「えぇい! こうなったら全員の最大攻撃を軍曹に向けて放てっ! 少々の怪我をさせてでも止めるしかないっ! いくぞっ! 災厄の大嵐!」
「軍曹すまん! 斧技・剛力旋斧!」
「魔剣雷の涙最大の奥義! 龍撃雷!」
「魔力は少ししか回復してないけどぉ……お願いぃ、届いてっ! 氷の重装槍!」
無視しようとしていたが、あまりにもうるさ過ぎて俺は視線を中将達に向けた。
文句の一つも言わないと気が済まないよ!
「もう! さっきからごちゃごちゃとうるさいですよぉ! こっちはちゃんとやってるんです! ちゃんと見てるんですか…………って! うわぁあああああああ! 黒い竜巻と巨大な斧と龍の形した雷とぶっとい氷の槍が飛んでくるぅうううう!」
流石にこれはヤバい!
直撃したら怪我だけじゃ済まない!
慌てて俺はその場から跳び退いて攻撃が飛んできた方向の後ろに跳んだ。
あ、危なかったぁ……あっ、今のドタバタで集中してた魔力が霧散してしまった。
あ~ぁ、せっかく最大最強の技を撃つところだったのに。
邪魔したのは中将達だな!
言われたからやろうとしたのに、邪魔するなんてどういうつもりだ!
文句言って……あれ? 何で皆んなそんなに疲れてるんだ?
「ハァハァハァハァ……な、なんとか止まった……か?」
「ぜぇぜぇ……と、とりあえず衝撃の波は止まったからな。他に変わったところもないし、無事と言っていいだろう」
「し、しっかりしろ……ファンティーヌ……傷は浅いぞ……」
「ふにゅぅ……また魔力切れだよぉ……もう、ダメ……」
中将達4人は肩で息をしながらグッタリしていた。
皆んな、何かあったのかな?
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