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第一章

万年青銅級の男①

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 俺の名前はアルト!
 王都ローゼンダークで冒険者をやっている30歳のイケメン!
 今日も困っている人々のために街道沿いに現れる小鬼ゴブリンの討伐にやって来たんだが……これは聞いてないぞぉおおおおお!

 ブモォオオオオオオオオ!

豚鬼オークが出るなんて聞いてないぞぉおおおお! 俺は小鬼だから依頼を受けたんだぞ!」

 そう!
 俺は今、三体の豚鬼に追いかけられて、森の中を逃げ回っている!
 何で森に逃げたかって?
 街道を逃げたら他の旅人や行商人が襲われるかもしれないからな!
 そんな配慮が出来る俺って、やっぱり良い男だぜ!

 ブヒィイイイイイイイイイ!

「だぁああああああ! なんて言ってる場合じゃ無い! このままだと捕まっちゃうよぉおお!」

 そろそろ体力の限界だぞ!
 こ~んな事なら昨日エールなんかガブ飲みするんじゃなかったぁああああああ!

 プギャアアアアアア!

「うわぁああ! もう駄目だ! 誰か助けて……!?」

火の矢ファイヤーアロー

 うぎゃああ! 
 今度は突然、前から火の矢が飛んできたよ!
 しかも、三本も!

 ブルギャアアアアアア!!

 俺の掠めるように三本の火の矢は追いかけて来ていた豚鬼の眉間に一本ずつ刺さって、肉が焦げる臭いが広がってきた。
 ちょっと美味しそうな匂いだ。

「何やってるの!? 早くこっちに!」

 ハリのある声がする方に目を向けると、そこにはローブに身を包んだ女性がいた。
 キリッとした三白眼の瞳が印象的な美人さんで、こんな状況ながらディナーに誘いたくなるくらいだ!
 今晩お暇かな?

「アメリア、下がれ! 行くぞ、ゴードン!」

「おっしゃぁああああああ!」

 今度は美人さんの横から二人の男が飛び出して来た。
 1人は長剣ロングソードを持ったイケメンで、もう1人は戦斧バトルアックスを手に勇敢に突っ込んでいくガタイの良い無骨な男だった。
 二人は見事な腕前であっという間に俺を追いかけて来た豚鬼三体を討伐した。
 ほほぅ、なかなかのお手前。

「ふぅ、大した事ない相手でよかった。お怪我はありませんか?」

 長剣の金髪イケメンが悪意のない笑顔で俺を突き刺してきた。
 まだまだ若いな。
 俺の身を案じているようで、今の言葉はグサっときたぜ?
 
「おいおい、おっさんも冒険者だろ? 豚鬼みたいな雑魚に追いかけられるな」

 戦斧の長身マッチョは確実に悪意のある嫌味を刺してきた。
 『ふ、ふん! 助けてほしいなんて言ってないんだからね!』と、言うのはあまりにも大人気ないのでやめておくが、デリカシーの無い男は嫌われるぞ?

「た、助けてくれてありがとう。小鬼退治に来たら、いきなり豚鬼がいたもんだから焦ってしまって……とにかく助かったよ」

「小鬼退治? ああ、貴方が受付で聞いた例の……」

「万年青銅級ブロンズのおっさんって、あんたか?」

 美人さんがわざわざ伏せた言葉の続きをマッチョが悪びれもなく言い放った。
 こいつは本当にデリカシーがない。

「おい、ゴードン! すいません、うちのメンバーが失礼を……」

「何で頭を下げるんだよ、ハイド。このおっさんは十年以上も冒険者やってるのに最下級の青銅級ブロンズなんだぜ? それに比べて俺達は二ヶ月で銅級カッパーになって、もうすぐ銀級シルバー確実って言われてるんだ。どっちが敬われるべきかは一目瞭然だろ?」

「ゴードン! お前、いい加減に……」

「いや、いいんだよ。助けてもらったのは俺だからな」

 リーダーらしき金髪イケメンのハイド君がゴリマッチョのゴードン君に詰め寄りかけたので止めておいた。
 ゴードン君が言ってる事は間違ってはいない。
 冒険者は実力主義で、先輩とか後輩とかは関係ない。
 より上級である者に敬意を払うべきなのは当然だ。
 だからって下の者に無礼でいいわけじゃないけどね。

「本当に助かったよ。今は手持ちがなくて礼も出来ないけど、また酒場で見かけたら
声をかけてくれ。一杯くらい奢るよ」

「無理すんなよ、おっさん。万年青銅級じゃ金もないだろ?」

「ゴードン!」

「はははっ、手厳しいね。じゃあ、また」

 俺は彼らに礼を言ってから、その場を後にした。
 それにしても、あれが新進気鋭の冒険者チームの【陽の光サンライト】か。
 ちょっと気になるな。
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