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Ver 2.04 迷子 1

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毒牙の森 冒険者ランク 30~61

ゲルマニア北部に位置するダンジョン
その名の通り毒を有する魔物が多く

蜘蛛、蛇、樹木や植物類などの魔物が生息する
ここから環境の難易度も合わさり攻略が一気に難しくなる
逆を言えばここに慣れれば一人前と認められると言ってもいい
また、この森は地図はあるが宛てにできない

「イズル~、見えてきたよ」
「あ…あの森が動いてるやつ?」

遠目で目を凝らして森を見るイズル

大きな山に向かって数キロは続く森の木々がちょくちょく揺れている
揺れるどころか横に歩いているようにさえ見える

「そう、ここは地図がほとんど宛てにならない。道があるようでないから気を付けてね」
「え…どうやって出るの?」
「ここはダンジョンの境界がわからない開放型ってやつらしくてさ、まっすぐ進めば出れるよ」
「へー、なんか簡単そうだな」
「魔物も出るし方向もわからなくなるし最初は絶望するって聞いた、簡単そうに見えるけどそうじゃないのかも」

なるほど…魔物が出て戦ってたら確かに方向を気にする余裕なんてない

「ちゃんと目印つけながらいかないとな…」
「そうだねー、木は動くからあてにできないし」
「レーダー開発しといてよかったな」
「ほんとだね、仲間の位置がわかるのは発明でしょ」
「一応リタが持ってて、俺同じ術式使えるし」
「わかった」

レーダーを渡し、ふと気になった

「リタはここ来たことは?」
「ないよ~」

これはますます気を付けないとな…

森へ足を踏み入れると、絶望すると言われた理由がすぐにわかった
獣道らしい道はある、大きく開けた空間もある、日光も届くため明るい
だが音もなく来た道が塞がるのだ

振り返るといつの間にか塞がっている

「これは…やばいな…不安になる」
「すごいね…もしかしてこの森の木って全部…」
「わかる、もしかすると既に囲まれてるんじゃないかって気になるね」
「うん…怖い」

樹木系の魔物だらけなのだろうか?だが攻撃してくるわけではない
静かすぎる、それが逆に恐ろしい

「手ぶらじゃ帰りたくないし、一旦忘れて前に進もうか」
「そ…うだね…」

魔物なら燃やしてしまえば魔石になるんじゃないかとも思ったけどやめた
一斉に周りの樹木たちが敵意をむき出しにするとやられるのは俺たちだ
道を塞ぐだけで大人しいならあまり刺激しないようにしておこう

毒蜘蛛の魔物、食人植物などを倒しながら進むと、ごつごつとした岩場にたどり着いた
岩場であるにも関わらず相変わらず背の高い樹木に覆われた森だ
どこに根を張っているんだろうか

「ひゃっ!」

驚くリタの声にイズルも驚き、リタがイズルの腕を掴む

「びっくりした~洞窟だ」

リタの見る方向へ目をやるとツタが垂れ下がり、大きく口をあけた動物の顔にも見える洞窟があった

「ほんとだ、これを不意に見つけるとびっくりするな」
「びっくりしたよ~」
「でも道が塞がらないなら洞窟の方がいいなぁ…」
「あーそれはわかる」

動く木にうんざりしていたイズルとリタは迷わず洞窟へ入った

「あー暗いね」
「ちょっと待ってて、…光球」

リタの手から小さな光の球が現れ、周りを照らす
照らされた光を頼りに周りを見ると地下水があるのか、壁も床も水が絶えず流れている

「ちょっと冷えるね、それに常に水が流れてる。苔が生えないわけだ」
「足元も滑るね、気を付けて進もう」
「うん」

洞窟内は蜘蛛と蛇が多い、襲ってくる魔物だけ倒し、回収しながら進んでいると大きな空間に出た
大きな岩の亀裂のような空間だ
天井も岩、床も岩、巨大な剣で叩き割られたかのような場所で床が斜めになっている
流れる水のせいで足が滑りやすい

「ここは歩きにくいな…」
「うーん…どうする?引き返す?」
「そうするか…」
「あっ…」
「ん?」

後ろを振り返るとリタが居なかった

「あれ?リタ?」

リタが照らしてくれていたので一瞬で周りが真っ暗になり何も見えなくなった

不安を抑え、注意深く観察していると目の前で空気がかすかに揺れる気がした

「リタ?」

そっと足を出すと大きな壁のような物がイズルに衝突し、吹き飛ばされて洞窟を滑るように落ちていく

「いって…なんだ」

あたりは真っ暗で何も見えない
ふっと身体が軽くなった感覚を覚える

軽くなったんじゃない、落ちている

「やばい、どこまで落ちるんだ?激突したら俺じゃ確実に死ぬ」

イズルは両手を合わせる

「物理障壁、足場…展開」

障壁を張り、新術式の足場を空中に作り、着地した
反発させる作用を持つ魔法の出力を弱め、足場代わりにしている
反発作用を強めて移動に使う事も出来る

「これ開発しといてよかったな…なかったら死んでたぞ…」

リタを探知しようと術式を選ぶ準備をしていると声が聞こえてくる

「へへ…下で死んだかな?」

ぶつかってきたのは壁じゃなくてこいつらか

「無駄口叩くな、回収に行くぞ」
「へいへい、まーでも軽装だったよなぁ。売れる装備つけてるといいが」
「ここに来るまでの魔物くらい収納してるだろ、それでも十分だ」
「まぁ…そうだな」

こいつら常習犯か…少なくとも3人はいる
懲らしめてやりたいが今は先にリタを探そう

「生物探知…展開」

波紋が広がるような感覚がある
波紋に振れた生命体の位置が頭に流れ込んで来た

やっぱりさっきのやつらは3人か

「おい、魔法使ってるぞ」
「ちっ生きてんのか」
「急げ、無事じゃないはずだ。トドメ刺すぞ」

くっ…余計な事をしてしまった…しかも魔道具の方は高度な設計にしてあるから仲間が色分けして表示されるが今はそんな準備もない
漠然と生物の位置がわかっただけだ
リタにレーダーを持たせたので見つけてもらったほうが早そうだが

あいつらと一緒にいる感じじゃなかった
ってことはリタも落とされたのか
まずいな、急いで合流しなきゃ

「光球、展開」

光が上に行かないよう遮りながら下を見るも底が見えない

「やばいな…どこまで落ちるかわからないのか…リタ…」

こうしていても始まらない
俺も降りよう

「浮遊…展開」

イズルは足場から飛び降り、ゆっくりと落ち始めた

◆ ◆ ◆

5分ほど降りただろうか、着地する事ができた

人骨が散乱しており、ここで何人も犠牲になっている事がわかる
最悪なのは10歩ほど進んだ先に崖の続きがある事だ

軽く周りを見渡す限りリタの気配はない
さらに下に落ちた可能性がある

「あいつら絶対許さんぞ…リタ…どこだ…」

数分散策し、同じ階にリタが居ない事を祈って更に下へ降りた

次の崖はそれほど深くは無く、すぐに着地できた
水がくるぶしまで来るほど貯まっており
周りに壁は無い
天井も高く、光球では見通せなかった

「デカイ空間に落ちたのか…まずは壁を探さなきゃな…」

しばらく歩いていると壁を見つけ、扉を発見した
明らかに人口の扉だ
人一人がやっと通れるほどの大きさ

「なんだありゃ…人工物?誰か住んでるのか…まぁさっきのやつらだろうな」
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