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Version 1 - ヴァルケンヘクセ

Ver 1.15 初心者パーティを救え 1

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「イズルー?起きてるー?
「んー?起きてるよー。紅茶もう無くなったの?」

あれからしばらく冒険はお休みし、宿で新しい魔石の術式を考案しているところにリタがやってきた
扉を開け、顔だけひょっこりと覗かせる

「ねー、そろそろダンジョンいかない?」

2日ほど間を開けただけだがリタは我慢ができなくなってきたか

「わかった。どこいく?」
「小鬼の巣窟はもういいから次の難易度のとこ行ってみようよ」
「次か、大きい魔石も手に入るし行こうか」
「やった!じゃあギルドいこ」

冒険者ギルドへ行き、ペトラに事情を説明すると牙獣の巣というダンジョンがあるそうだ

「でしたら牙獣の巣がよいと思います、犬型の魔物が多いダンジョンですね」
「イズルに最初助けてもらったとこだよ」」
「あぁ、あそこ牙獣の巣っていうんだ」
「そう、今度は潜るよ」

ペトラが手元の羊皮紙をめくり始めた

「えーっと、あ、依頼も結構ありますね。血も使うので倒したらすぐ魔力鞄なりに保管してください。討伐してきた狼の数に合わせてこちらで適当に依頼を選んで達成にする事もできますが、依頼もご覧になりますか?」

冒険者と言えば依頼だが、正直選ぶのは面倒くさい
適当に倒して持って帰って勝手に清算してもらったほうがいいな

「俺は適当に処理してもらうほうが楽だな…リタは?」
「うん、アタシも適当でいい。依頼気にして潜るのめんどくさいもん」

気が合いますね

「では戻ってきた際に達成できそうな依頼のリストを作ってお渡ししますね。その中から達成したい依頼をお選びください。ギルドを信用していただけるのでしたら私が選んで手続きしてしまいます」
「なるほど、じゃあ一度リスト見てみたいな。結構な量達成できそうだったらお任せする」
「わかりました、ではお待ちしております」
「ありがと。リタ、行こう」
「待ってましたー!」

◆ ◆ ◆

牙獣の巣

ここも小鬼の巣と同様大きな洞窟で灯りがいらないくらいには明るい
見慣れた壁の落書きもあるので道に迷う心配もなさそうだ

「張り切っていこー!」
「おっけー、ちょっと新術式も試していくか」
「お、なんだろうな」

イズルは手を合わせた

「物理障壁、魔力障壁、展開」
「お?魔石選ばなくなったの?」
「そ、遠隔操作の術式を使ってその他の術式魔石とリンクさせてるんだ。いちいち全ての魔石に起動魔石を触れさせなくても遠隔操作の魔石経由で発動できる」
「へー便利になったねー」
「これから術式が増えるほどに管理が面倒になるからこれは必須だね。常時展開する障壁系もヨハナのお陰でかなり環境に優しくなったし」
「うんうん、パワーアップだ」
「ただまぁ、使う術式は魔力鞄に入れてられないのが欠点かな。今は腰に下げてある」
「なるほどー、まぁ魔力鞄も容量あるし、使う頻度が高いものは常に身に着けてる物だし、問題ないんじゃないかなー」
「たしかにね、じゃあ進もう」
「うんうん!行こう行こう」

牙獣の巣は冒険者ランク11~41程度のようで特に苦戦する事もなく奥へ進んでいく

1時間ほど狩りをしているとダンジョンの奥から叫び声が聞こえてきた

「おい!どこまで逃げればいいんだよ!」
「知らないよ!とにかく走れ!」
「やだー!誰か助けてー!!」

イズルとリタは顔を見合わせた

「他の冒険者だ」
「追われてるんだな。どうする?」
「助けられるなら助けよう、走るよ」

声のする方へ走り、先回りするようにダンジョンを走っていくと3人ほどの若い冒険者たちが魔物を大量に引き連れて走っている

「うわっ多すぎ!」

声に気づいた若い冒険者たちが助けを求めてリタの後ろに隠れる

「すいません!助けてください!!僕たちじゃ手に負えないんです」

イズルがフラフラになりながらリタにやっと追いついた

「ハァ…ハァ…もう無理、なんて不便な身体なの…体力無しヤバすぎない…」

リタがイズルを見るなり声を張った

「イズル!逃げるよ!!30匹はいる」

は?どういう事なの
俺もう走れないんだが

リタと若い冒険者たちがイズルとすれ違い、走っていく

「あ…イズルは体力が…、ちょっとあんた達先行ってて!」

追われていたパーティーを先に行かせ、リタがイズルの元へ駆け寄り、手を取った

「イズル!お願い走って!」
「あ、ちょっと待って。やつけよ、俺はもう走れない…」
「え?」

イズルは両手を合わせ、状況に適切な術式を選んでいく

「土槍罠x5、突風x5…展開」

魔物たちの向かい風になるように強風が吹き荒れ、地面から飛び出る土の槍に次々と魔物たちが倒れていく
興奮状態に陥っている魔物たちは罠にかかった魔物を踏み越え更になだれ込んでくる

「拡散x3、魔力矢x5…行け」

いくつも枝分かれして魔力矢がさらに魔物を減らす

「残り10体くらいかな?」
「追跡、拡散x4、魔力矢x10…これで最後!」

目の前に魔物の群れが横たわる

「終わったかな…魔力使わないのはこういう時回転率がよくて便利だ」
「まって!まだ動いているのがいる」

横たわる魔物の群れから大型の熊がよろよろと起き上がってきた
熊は力を振り絞り大きな声で吠える
ダンジョン内に咆哮が響き渡り、まだ十分に力を残していることが伺える

「まだいたか、魔力矢x10…行け!」

………

「あ…」
「え?短時間で魔法使いすぎたの?ちょっと魔石!!早く!!」
「あ、ちょ…待って」

イズルは腰に下げた、魔力補給用の魔石を取り出した

「あっ」

慌てて取り出し、予備の魔石がボロボロとこぼれていく

「ちょっと……おりゃぁぁぁあ!」

リタが手ごろな魔石を手に取り、力いっぱい握りしめると勢いよく魔石は砕けた

「ありがと。魔力矢x10…今度こそ!」

魔力矢はようやく発動し、熊の身体を貫き、熊はようやく倒れた

「あっぶなぁ…はー…あの初心者パーティ後で説教してやろ」

リタがヘナヘナと力が抜けるように座り込んだ

いくらダンジョンと言えどあれだけ魔法を一気に使えばさすがに一時的に枯渇するんだな
俺の体力もちょっと問題が多すぎる、短距離を移動しつつ魔力をそれほど使わないような術式がいるな

「とりあえず今日はこれくらいにしようか…魔物回収して出よう。あのパーティも気になるし」
「そうね、疲れた…」
「あぁ…ごめんね。すっかり忘れてた、そこで休んでて。魔物回収してくる」

イズルは座り込み、手を挙げてひらひらさせるとリタは魔物たちを回収して回った

◆ ◆ ◆

冒険者ギルドへ戻ると先ほど終われていたパーティが先に帰っており
ペトラが慌てて駆け寄ってきた

「イズルさん、リタさん大丈夫ですか!?たくさんの魔物に追われたと聞いて捜索隊を出そうかと」
「んー?大丈夫だったよ。その子たちにはちょっと説教するけど」

リタが初心者パーティを睨むと皆姿勢を正し、うつむいて整列した
皆若い、おそらく成人したばかりであろう15歳くらいのパーティだ

「あんたたちずいぶん若いけどなんであんなとこいたの」
「小鬼の巣窟が楽勝だって聞いたから…ランク上げようと思って…」
「ランクはいくつなの?」
「みんな1です」
「はぁ?足りてないじゃん、牙獣の巣は11からだよ。ギルド通してきたの?」
「いえ…小鬼の巣窟行くって言って出ました」

ペトラは小さなため息をついた

「リタさんすみません、ギルドの管理不行き届きです」
「まぁ、イズルと一緒にいるあたしがそこんとこ追及する資格はないけどさ」

初心者パーティはうつむいたままそれぞれが謝った

「「「すいません」」」

騒ぎを聞きつけたドゥアルトが二階から降りてくる
状況を見て何かを察したようでペトラの元へ行くとペトラから状況を説明された

「あぁ、よかったなお前ら。助けてもらえたんだな」
「え?どういう事ですか??」

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