穢れの螺旋

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理想と現実

第53話 - クレマリー=ミリエンヌ

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オルレンヌ皇国解放軍が全滅してから5日後

王都に誰一人として帰ってこない解放軍へ調査隊が派遣された
上級聖騎士で編成された隊は解放軍の向かったオークの砦へ向かう

私はクレマリー=ミリエンヌ 25歳 女
厳しい訓練を重ねて上級聖騎士隊長となり、今回の任に抜擢された

解放軍が編成されてから聖騎士ギルド長の行方不明と共に妹まで消えた
数日前に結婚したと浮かれた手紙を寄こしてから何の音沙汰もない

結婚相手は異端者エーサー
解放軍に加わったと思えば出発して数日経った頃異端者とされた
オーク軍団を指揮し王都を襲撃する計画が発覚したそうだ

信じられん男だ、いったいどうやってオークの軍団を率いていたのか
私が奴に正義を知らしめてやる

調査隊と共に解放軍の馬車を見つける

馬車は荒らされており食料や衣類、医療品を中心に強奪されていた
隊員のデリックが馬車をひとつひとつ検めていく

「なんだこりゃ、全部奪うわけでもなく武具類は置いてある。どこか遠くに逃げるために奪ったような感じだ」

先行して解放軍の様子を見に行ったザールが戻ってきた
息を切らし、悪魔でも見たかのように青ざめている

「た、隊長!奥!奥がヤバイ!見てくれ!早く!!」
「何?悪魔でも見たか?少し落ち着いたらどうだ。我々は聖騎士だぞ」

調査隊全員で警戒しながらザールについていくとおびただしい聖騎士の死体とオークの死体があった
死体は全て腐敗が始まっており凄まじい匂いを放ち、蛆が湧いている

聖騎士の死体を検めながらデリックが進んでいく

「解放軍に参加した聖騎士たちで間違いないな…」

気が遠くなるような腐敗臭に布で口を覆い進んでいくと拠点の入り口付近で数百と言う死体の山を見つける

ザールが吐き気を催し、崖まで走って吐いた
私はゆっくりとさらに奥へと進む

オークジェネラルの死体とオーレオンの死体を見つけた

「オーレオン様…」
「こりゃひでぇ…腸を引きずり出されてやがる…しかもこりゃ素手か?」

デリックが検分すると切り傷などではなく素手で引き裂かれ、引きちぎられたような跡があるという

周りを見ると激しい戦闘の跡があった

「上級騎士たちが10人もいて全滅したのか…オークジェネラルの死体も2匹分ある」
「隊長、異端者エーサーの死体が無い」

あいつ…生きているのか
この惨状の中でどうやって…

「オーレオン様が死んでいるのにあいつが生きている理由はなんだ…」
「オークの軍団を率いる男だという話ですね、これを見るに裏切ってオーレオン様を殺したとしか…」

ザールが青い顔をして戻ってくるとオーレオンの死体を見て顔を背けた
目を閉じふらふらと近寄ってくる
拳を突き出し、何かを握りしめているようだった

ザールの拳を優しく両手で包み、ザールが手を開くと中は聖騎士証だった

「聖騎士ロスベール…こいつもエーサーの目付け役だったはずだ…」
「隊長、これはヤバイ。確実に裏切ってますよ」
「マドロアはどうした…妹も目付け役だったはずだ…」

ザールは吐きそうになりながら話す

「離れたところに…野営地の跡が…死体はそれだけです」

言い終えるとザールはまた崖へ走っていく

「マドロアはまだ生きているのか…?」
「異端者エーサーが拉致している可能性がありますね」

おのれ!聖騎士とは言え女を盾にオーレオン様を殺したのか!
このような非人道的な殺し方までする…やつは人ではない

頭に血が上り、歯を食いしばる
ロスベールの聖騎士証を握りしめ、ギリギリと音が鳴った

「異端者エーサー、妹を救い出し、絶対に貴様を捕えてやる…」

震えるクレマリーにそっとデリックが近寄る

「一度降りましょう、ここでは何か病を貰ってしまいそうです」

私たちは山を降り、解放軍の馬車が置かれたところまで戻った

「デリック、私は妹を救い出したい」
「はい、一度王都へ使いを出しましょう」
「任せる」
「承知」

デリックは隊員の一人に手紙を持たせ、王都へ向かわせる
戻ってくるなり馬車の轍の跡を調べ始めた

「結構時間が経ってて何もわかりゃしないな…だがもう王都に戻れはしないとなれば既に国境を越えている可能性が高い」

あいつは西の遺跡にオーク軍団を隠しているという話だった
オーレオン様が討伐なされ、既に軍団は壊滅している

「デリック、西の遺跡を調べよう」
「は?………なるほど、隠れている可能性があると」
「そうだ、一度見に行こう」
「そうですな、痕跡を追うのが難しいのでそちらに寄りましょうか」

◆ ◆ ◆

西の遺跡

遺跡につくとこちらは既に骨となったオークの死体が山ほどあった
グリフォンが北西の一角に巣を作っており、刺激しないようデリックと二人でゆっくりと中へ入る

後に続くデリックが額に汗を浮かべながら引き止めてくる

「隊長…グリフォンはやべえ、引き返しましょう…。断言します、あいつがいるのにエーサーがここにいるはずがありません」
「そんなことはわかっている、だが何の痕跡も見つかっていないんだ。手ぶらで帰れるわけがないだろう」
「マジかよそんな理由で連れてきたんですか?帰らせてください、俺帰りますよ」

デリックを見ると今まで見たこともないような不安な表情をしていた

「頼む、ここを見なければもう他に手がかりがないんだ」
「はぁ…」

デリックは頭を抱え首を振る

「なら早く行ってください、生きた心地がしない」

私たちはそこでまた信じられないものを見た
南東の拠点の地下で無数の女の腐乱死体がある

「これは…囚われていた女たちか…オーレオン様が来たならなぜ連れ帰らなかったんだ」

デリックが女たちの死体をひとつひとつ調べていく

「おかしいですね、ひとつの部屋に集められている。さらに首に切断痕があります、オーレオン様が来た頃には全員死んでたんじゃないでしょうか」
「異端者エーサー…外道め…ここに集めて一人ずつ殺したという事か!」

クレマリーは拳を握りしめ、ギリギリと音が響く

「ちょっと不思議ですね、オークの軍団を率いていたなら軍団を増やすために生かしておくでしょう」
「だが事実殺された痕跡があるのだろう!オーレオン様はそんなことなどしない!ならば犯人は他に一人しかいないだろう!」
「まぁ…そうですね…」
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