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聖騎士と異端者
第38話 - オーク軍団 3
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朝になった
結局マドロアは寝床に潜り込んできて初仕事を終えた
周りにオークしかいないこの状況で突っぱねるのはさすがに可哀想に思えて断れなかった
出来る限り守ろうと思う
二人で朝起きた後はマドロアが朝食を準備し、二人で食べた
テーブルでくつろぎながら昨日要望のあったオーク語の学習についてフルーフに貰ったメモをマドロアに渡し、今日の予定について考える
まずはシンラ軍団以外のオーク達を争わせなければならない
情報収集をして他の軍団がどうなっているか確かめよう
顔を知られているとは言え人間の姿だ、他の軍団の縄張りを歩くときは隠れるとしよう
気が付いたら囲まれているなんて事もあり得る
遺跡は真ん中に巨大な塔が一つあり、四隅にそれぞれの軍団が住む寝床がある
骨と松明で飾られた禍々しい雰囲気の建物を拠点としている
それ以外の場所は腰ほどの高さの壁、半壊した二階建て家屋の跡
壊れた塔などがあちこちにある
隠れる場所には困らないため調査は簡単だった
◆ ◆ ◆
”爛れた”モルの陣営
モルは焼けただれた皮膚が黒く炭化した顔をもつオークジェネラルだった
ひときわ巨大で気性が荒く、目の前にいるという理由で部下を殴りつけていた
荒い主の性格なのか強さを求める者が多いのかモルの部下にはバーサーカーが多い
部下の話を注意深く聞き、モルの評判を伺う
「《はぁ…今日は”爛れた”モル様機嫌悪いなぁ》」
「《シンラのとこに人間が来たのが気に入らないらしいぞ》」
「《あー、シンラに勝ったって奴か。決戦が近いのにジェネラルが増えるようなもんだからなぁ…かなりシンラ有利だよな。俺もシンラのとこいこうかなぁ》」
「《おい行くときは俺にも言えよ、一緒に行くから…あと小声で話せ》」
モルが通り過ぎた後の壁の端っこで鍋をつつきながらオーク達は愚痴をこぼしていた
寝返るという事もあり得るようだ
これはうまく利用して引き込みたい、できれば戦闘中に寝返らせたいところだ
そうすれば敵は配置していた味方の場所に穴が開く
ジェネラルに一気に近づくチャンスになるだろう
後で決戦がどんな戦闘になるかシンラに聞いてから作戦を考えよう
”屑拾い”ズールの陣営
”屑拾い”ズールは小柄だが拾ったものをあちこちにつける癖があるようで全身が棘のような鎧で覆われていた
武器も6本ほど槍や剣、大剣など種類の違うものをたくさん身に着けていた
その名の通りゴミを漁るのが趣味なようで死んだオーク達から武器を集めては持ち帰るようだ
軍団はシャーマンが多い
複数あるオークの集団の中から鍋をつついている集団の陰へ忍び寄る
「《聞いたかー?シンラのとこのニンゲン》」
「《あー?聞いた、シンラを倒して軍団長になったんだってな》」
「《気に入らねーのはシンラよ、生きてるって事は命乞いしたんだ》」
「《あいつの二つ名って自分で名乗り始めたらしいぞ?高潔が命乞いなんてしないだろう。あいつはオークの恥さらしだ、馬鹿だ、俺たちが拾うゴミにも劣る》」
「《んー、だがシンラは馬鹿でゴミだが強い。ニンゲンには気を付けないといけないな》」
シンラのやつ…自分で二つ名名乗り出したのか
だが実力は認められているな、なぜ高潔などと名乗り出したのか聞きたいところだ
ここは北西で、シンラの寝床は南東
おそらく決戦では最も遠い位置になるためほとんど関わることはないだろう
戦い方次第ではモルとゴズのどっちかに食わせる事になるな
”強欲”ゴズの陣営
上位種が最も少ない軍団だ
二つ名は性格や見た目を現すことが多いようだ、拠点にはモノが溢れ返り部下たちの装備は一番貧弱だ
よく今まで生き残ってこれたな、よほど軍団長が強いのだろうか
ここも鍋をつついているオーク達の陰で話を聞いた
「《今日はズールのところにいっぱいモノ持ってかれたなぁ》」
「《何とかして奪わねーと”強欲”ゴズ様なんもくれねーぞ》」
「《そうなんだよなぁ…ズールのとこいこうかなぁ…俺もう何も残ってねーよ》」
「《俺たちが一番上位種少ねーからなぁ…威張られなくていいけどよ》」
シンラの所に来るならいいがズールのところか、ズールを生かしてこいつらを食わせるのも手だ
ズールのところに下位種が集まりモル軍団をシンラが吸収出来れば最後の決戦も楽になる
兵士たちの士気が低いのも難点だな、こいつらを使うのは難しいぞ
モル軍団は隣だしきっとシンラ軍団もそちらに注力するだろう
ゴズ軍団は今のところ相手にするまでもないだろう、適当に誰か立たせておけばいいんじゃないだろうか
軍団を弱らせるのは楽だろうな
みんな鍋が好きなのか怪しげな鍋をつつく文化がある
何を混ぜ込んでいるか知らないが雑な煮物スープで色も変だ、逆に毒を混ぜてもわからんだろう
中身も確認せずに木の皿でスープをすくって飲む
なぜあれで腹を壊さないのか不思議だ
慎重に移動したせいでもう日が暮れる
一度拠点に帰って情報を整理しよう、シンラも呼んで決戦がどういうぶつかり合いになるのか確認しなければ
他にももしシンラ軍団が負けそうになった場合、マドロアを逃がすルートも考えておかないといけないな
結局マドロアは寝床に潜り込んできて初仕事を終えた
周りにオークしかいないこの状況で突っぱねるのはさすがに可哀想に思えて断れなかった
出来る限り守ろうと思う
二人で朝起きた後はマドロアが朝食を準備し、二人で食べた
テーブルでくつろぎながら昨日要望のあったオーク語の学習についてフルーフに貰ったメモをマドロアに渡し、今日の予定について考える
まずはシンラ軍団以外のオーク達を争わせなければならない
情報収集をして他の軍団がどうなっているか確かめよう
顔を知られているとは言え人間の姿だ、他の軍団の縄張りを歩くときは隠れるとしよう
気が付いたら囲まれているなんて事もあり得る
遺跡は真ん中に巨大な塔が一つあり、四隅にそれぞれの軍団が住む寝床がある
骨と松明で飾られた禍々しい雰囲気の建物を拠点としている
それ以外の場所は腰ほどの高さの壁、半壊した二階建て家屋の跡
壊れた塔などがあちこちにある
隠れる場所には困らないため調査は簡単だった
◆ ◆ ◆
”爛れた”モルの陣営
モルは焼けただれた皮膚が黒く炭化した顔をもつオークジェネラルだった
ひときわ巨大で気性が荒く、目の前にいるという理由で部下を殴りつけていた
荒い主の性格なのか強さを求める者が多いのかモルの部下にはバーサーカーが多い
部下の話を注意深く聞き、モルの評判を伺う
「《はぁ…今日は”爛れた”モル様機嫌悪いなぁ》」
「《シンラのとこに人間が来たのが気に入らないらしいぞ》」
「《あー、シンラに勝ったって奴か。決戦が近いのにジェネラルが増えるようなもんだからなぁ…かなりシンラ有利だよな。俺もシンラのとこいこうかなぁ》」
「《おい行くときは俺にも言えよ、一緒に行くから…あと小声で話せ》」
モルが通り過ぎた後の壁の端っこで鍋をつつきながらオーク達は愚痴をこぼしていた
寝返るという事もあり得るようだ
これはうまく利用して引き込みたい、できれば戦闘中に寝返らせたいところだ
そうすれば敵は配置していた味方の場所に穴が開く
ジェネラルに一気に近づくチャンスになるだろう
後で決戦がどんな戦闘になるかシンラに聞いてから作戦を考えよう
”屑拾い”ズールの陣営
”屑拾い”ズールは小柄だが拾ったものをあちこちにつける癖があるようで全身が棘のような鎧で覆われていた
武器も6本ほど槍や剣、大剣など種類の違うものをたくさん身に着けていた
その名の通りゴミを漁るのが趣味なようで死んだオーク達から武器を集めては持ち帰るようだ
軍団はシャーマンが多い
複数あるオークの集団の中から鍋をつついている集団の陰へ忍び寄る
「《聞いたかー?シンラのとこのニンゲン》」
「《あー?聞いた、シンラを倒して軍団長になったんだってな》」
「《気に入らねーのはシンラよ、生きてるって事は命乞いしたんだ》」
「《あいつの二つ名って自分で名乗り始めたらしいぞ?高潔が命乞いなんてしないだろう。あいつはオークの恥さらしだ、馬鹿だ、俺たちが拾うゴミにも劣る》」
「《んー、だがシンラは馬鹿でゴミだが強い。ニンゲンには気を付けないといけないな》」
シンラのやつ…自分で二つ名名乗り出したのか
だが実力は認められているな、なぜ高潔などと名乗り出したのか聞きたいところだ
ここは北西で、シンラの寝床は南東
おそらく決戦では最も遠い位置になるためほとんど関わることはないだろう
戦い方次第ではモルとゴズのどっちかに食わせる事になるな
”強欲”ゴズの陣営
上位種が最も少ない軍団だ
二つ名は性格や見た目を現すことが多いようだ、拠点にはモノが溢れ返り部下たちの装備は一番貧弱だ
よく今まで生き残ってこれたな、よほど軍団長が強いのだろうか
ここも鍋をつついているオーク達の陰で話を聞いた
「《今日はズールのところにいっぱいモノ持ってかれたなぁ》」
「《何とかして奪わねーと”強欲”ゴズ様なんもくれねーぞ》」
「《そうなんだよなぁ…ズールのとこいこうかなぁ…俺もう何も残ってねーよ》」
「《俺たちが一番上位種少ねーからなぁ…威張られなくていいけどよ》」
シンラの所に来るならいいがズールのところか、ズールを生かしてこいつらを食わせるのも手だ
ズールのところに下位種が集まりモル軍団をシンラが吸収出来れば最後の決戦も楽になる
兵士たちの士気が低いのも難点だな、こいつらを使うのは難しいぞ
モル軍団は隣だしきっとシンラ軍団もそちらに注力するだろう
ゴズ軍団は今のところ相手にするまでもないだろう、適当に誰か立たせておけばいいんじゃないだろうか
軍団を弱らせるのは楽だろうな
みんな鍋が好きなのか怪しげな鍋をつつく文化がある
何を混ぜ込んでいるか知らないが雑な煮物スープで色も変だ、逆に毒を混ぜてもわからんだろう
中身も確認せずに木の皿でスープをすくって飲む
なぜあれで腹を壊さないのか不思議だ
慎重に移動したせいでもう日が暮れる
一度拠点に帰って情報を整理しよう、シンラも呼んで決戦がどういうぶつかり合いになるのか確認しなければ
他にももしシンラ軍団が負けそうになった場合、マドロアを逃がすルートも考えておかないといけないな
応援ありがとうございます!
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