穢れの螺旋

どーん

文字の大きさ
上 下
31 / 70
聖騎士と異端者

第31話 - 穢れた女たちの行方

しおりを挟む
廃墟を解放し、地下の女たちを救い出した
10人に及ぶ女たちが囚われており、聖騎士ギルドへ協力を要請して助けてもらった

女たちは皆人気のないところで強烈な眠気を感じ、起きると檻の中へ居たそうだ
全員オークの子を孕んでおりフルーフやクベアのようになるのではないかと心を痛めた

宿でマドロアを呼び、彼女たちがどうなるのか聞いた

「マドロア、彼女たちの処遇はどうなる?」

マドロアは目を閉じたまま答える

「子が産まれるまでは聖騎士ギルドで面倒を見ると思います。オークの子は隠され、処分されるでしょう。彼女たちは生き残ったこれからの方が大変かもしれませんね…」

具体的な救済措置は無かった
クベアが死を望むほどだ、よほど世間の風当たりが強いのだろう
彼女たちを助けてやったのは間違っていたのだろうか

「死んだほうがマシだったと思うだろうか」
「そうかもしれません、ですが私たちにできるのはここまでです」
「なぜだ?助けたのは俺だ、彼女らの意思を聞いてやるのも責任ではないのか?」

マドロアは目を閉じたまま首を振る

「聖騎士と言うのはこういう時に残酷です
 正義と高潔を貫くために、人命を助けなければなりません
 死を望んだとしても手を下せません、人を殺める事が罪だから
 修道女となっても後ろから指をさされる事はなくなりません
 穢れた人とそうでない人がいるからです
 穢れた女たちが生きたまま地獄を見るのを黙って見届けるしかありません」

救いはないのか
クベアが死を望むわけだ

「日々安全を保証されている人々は自分と違う者を見つけ、いたぶる事で自分の存在価値を慰めます。あいつより自分の方が優れていると、小さな優越感の虜になるのです。私も…そうでした…」

マドロア一人悔い改めたところで小さな優越感に浸る人々全てが改善されるわけではない、かといって殺してしまえば罪人となる
救ったはずなのに、彼女たちは死ぬより辛い現実を生きて行かねばならないのか
救いがなければ正義と高潔はただただ悪魔のように残酷だ
生かす事を選択したというよりは、しなければならなかった。と
かといってその責任から逃げていいわけではないはずだ、この国は何かがおかしい

オークと取引をしている人間を突き止めなければ
フルーフやクベアと同じ思いをする女たちが増えてしまう

「マドロア、聖騎士ギルドに信頼できる人はいるか?オークと取引している人間を突き止めたい。穢れる女が増える前に止めなければ」

マドロアは顔を上げ、強く話し出した

「そういう事でしたら、聖騎士ギルド長のフレデリク様でしょう。フルーフ様の件もあり、そういった事を許す事はないはずです。きっと力になってくれると思います」

あいつ聖騎士ギルド長だったのか
フルーフを悲しむ彼なら信用できる、早速相談しよう

「秘密裏に連絡は取れるか?大事になると街の人たちが混乱する」

マドロアは顎に手をあて、考える

「はい、できると思います。日時が決まり次第お伝えします」
「わかった」


◆ ◆ ◆

数日後

フレデリクとマドロア、俺の3人で外壁沿いの人気がない場所に集まった

「エーサー殿、オークと取引をしている人間がいるというのは本当か?マドロアの話を聞いたが信じられん…」
「本当だ、廃墟のオーク達がそう言っていた。これがオーク達の使っていた連絡用の小箱だ、中に取引の内容が記されている」

小さな小箱を渡し、フレデリクが中身を改める
オーク語で書かれている内容を一つ一つ代わりに読み上げた

「なんだと…大問題どころの騒ぎではない…だがもう廃墟はない。取引の現場を押さえるのは難しいな」

これは俺の落ち度だな、殲滅せずにドグを生かしたまま報告するべきだったか?
だがドグを倒さなければこの小箱を証拠として出せなかったんだ
仕方がないだろう

フレデリクは他に証拠がないかと小箱を入念に見ている
手紙を見て、何度も裏返しては眺め続け
何かを悟ったように目を閉じ首を振った

「思った以上に根が深い、盗賊もどきが悪さをしていると言った話ではないな。貴族が関わっている」

貴族?オークを利用して何かを企んでいるという事か
何のために?誰が得をするんだ

フレデリクは話し続ける

「巧妙に出所を隠してあるが紙とインクは上等なものだ、貴族が使うものだろう。それに全てオークの言葉で印してある、オークの言葉がわかるものがいるという事だ。オーレオン様がこのような真似を見逃すはずがない、敵は手ごわいぞ。オーレオン様の目をかいくぐるほどだ」

聖騎士たちのいる街で、正義と高潔が尊ばれる街で、大胆なやつがいたものだ
人類の敵であるはずのオークを利用するなどどうやって思いついたのだ
手に負えなくなったらどうするつもりだったんだ

「貴族がオークを利用してどんな得があるんだ?」
「わからん…通商の安全でも確保しているのだろうか。捕まった女たちの身元を調べておく、エーサー殿も何かわかったら教えてくれ」
「わかった」

◆ ◆ ◆

翌日

マドロアと一緒に修道院へ行くことにした
フレデリクが身元を調べているが、それとは別に助けてしまった者として何か彼女たちに救いがあればと思った
救われないまま放っておくのは心が痛む
救った者の責任として何かできる事はないだろうか
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】幼馴染の男3人にノリで乳首当てゲームされて思わず感じてしまい、次々と告白されて予想外の展開に…【短縮版】

うすい
恋愛
【ストーリー】 幼馴染の男3人と久しぶりに飲みに集まったななか。自分だけ異性であることを意識しないくらい仲がよく、久しぶりに4人で集まれたことを嬉しく思っていた。 そんな中、幼馴染のうちの1人が乳首当てゲームにハマっていると言い出し、ななか以外の3人が実際にゲームをして盛り上がる。 3人のやり取りを微笑ましく眺めるななかだったが、自分も参加させられ、思わず感じてしまい―――。 さらにその後、幼馴染たちから次々と衝撃の事実を伝えられ、事態は思わぬ方向に発展していく。 【登場人物】 ・ななか 広告マーケターとして働く新社会人。純粋で素直だが流されやすい。大学時代に一度だけ彼氏がいたが、身体の相性が微妙で別れた。 ・かつや 不動産の営業マンとして働く新社会人。社交的な性格で男女問わず友達が多い。ななかと同じ大学出身。 ・よしひこ 飲食店経営者。クールで口数が少ない。頭も顔も要領もいいため学生時代はモテた。短期留学経験者。 ・しんじ 工場勤務の社会人。控えめな性格だがしっかり者。みんなよりも社会人歴が長い。最近同棲中の彼女と別れた。 【注意】 ※一度全作品を削除されてしまったため、本番シーンはカットしての投稿となります。 そのため読みにくい点や把握しにくい点が多いかと思いますがご了承ください。 フルバージョンはpixivやFantiaで配信させていただいております。 ※男数人で女を取り合うなど、くっさい乙女ゲーム感満載です。 ※フィクションとしてお楽しみいただきますようお願い申し上げます。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

【R18】やがて犯される病

開き茄子(あきなす)
恋愛
『凌辱モノ』をテーマにした短編連作の男性向け18禁小説です。 女の子が男にレイプされたり凌辱されたりして可哀そうな目にあいます。 女の子側に救いのない話がメインとなるので、とにかく可哀そうでエロい話が好きな人向けです。 ※ノクターンノベルスとpixivにも掲載しております。 内容に違いはありませんので、お好きなサイトでご覧下さい。 また、新シリーズとしてファンタジーものの長編小説(エロ)を企画中です。 更新準備が整いましたらこちらとTwitterでご報告させていただきます。

淫らなお姫様とイケメン騎士達のエロスな夜伽物語

瀬能なつ
恋愛
17才になった皇女サーシャは、国のしきたりに従い、6人の騎士たちを従えて、遥か彼方の霊峰へと旅立ちます。 長い道中、姫を警護する騎士たちの体力を回復する方法は、ズバリ、キスとH! 途中、魔物に襲われたり、姫の寵愛を競い合う騎士たちの様々な恋の駆け引きもあったりと、お姫様の旅はなかなか困難なのです?!

連続寸止めで、イキたくて泣かされちゃう女の子のお話

まゆら
恋愛
投稿を閲覧いただき、ありがとうございます(*ˊᵕˋ*)   「一日中、イかされちゃうのと、イケないままと、どっちが良い?」 久しぶりの恋人とのお休みに、食事中も映画を見ている時も、ずっと気持ち良くされちゃう女の子のお話です。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

【R18】僕の筆おろし日記(高校生の僕は親友の家で彼の母親と倫ならぬ禁断の行為を…初体験の相手は美しい人妻だった)

幻田恋人
恋愛
 夏休みも終盤に入って、僕は親友の家で一緒に宿題をする事になった。  でも、その家には僕が以前から大人の女性として憧れていた親友の母親で、とても魅力的な人妻の小百合がいた。  親友のいない家の中で僕と小百合の二人だけの時間が始まる。  童貞の僕は小百合の美しさに圧倒され、次第に彼女との濃厚な大人の関係に陥っていく。  許されるはずのない、男子高校生の僕と親友の母親との倫を外れた禁断の愛欲の行為が親友の家で展開されていく…  僕はもう我慢の限界を超えてしまった… 早く小百合さんの中に…

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

処理中です...