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可哀想な村娘
第20話 - 太陽の剣
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宿に戻るとクベアが既に待っていた
「あ、おかえりなさい。本当によかったんですか?ご迷惑じゃないですか?」
俺を見るなり申し訳なさそうに寄ってくると、うつむきがちに上目遣いでチラチラと顔を覗き込んでくる
「いいよ。そう言っただろ、荷物をまとめるのを手伝ってくれ」
「はい」
宿のカウンターではリンネがニヤニヤしながら俺たちを見ていた
趣味が悪い笑顔だ
クベアの家に荷物を移して今の資金などを確認する
金貨は残り1枚、宿代がいらなくなったので食費以外で減ることはないが、熊にボロボロにされた防具なんかも買い替えたい
明日からまたギルドで稼がなければ
クベアがパンとスープを持ってきて夕食にしようと準備を始めた
誰かが一緒にいる生活は久しぶりだった
クベアの食事はまずくはなかったが、質素で宿の食事に比べると食べた気がしなかった
こんな生活をずっと続けていたのか
「あの、満足できました?少ないですけどお代わりありますよ」
「うん?あるなら欲しい」
するとクベアは自分の分を差し出してくる
「どういうこと?」
「お代わり…です…」
それはお代わりとは言わないだろ
「いや、そういう事ならいらない…お金は金貨渡すから明日食材を買い込んできてくれ…」
「はい、すいません」
「いいよ、気にしないで。冒険者が稼ぎすぎるだけだ」
「そんな、命を賭けた報酬ですから」
食事を終えると金貨を渡し、装備の点検をしてベッドで横になる
深夜になると隣に誰か潜り込んでくる感覚で目が覚めた
服を脱いだクベアが潜り込んで来ている
「あ…起こしちゃいましたか…」
「そうだね…で…これは…」
「あはは…私にできる事なんてあまりないですから…不快でなければ、貰ってください」
気の済むようにさせてあげよう
と、言いたいところだけれど俺も男なので据え膳は頂く
これもまたすぐに噂が広まるんだろうな
誰か壁に穴開けて覗いてるんじゃないだろうか?
こうなると旅立つときに置いていくのは気が引けるな
フルーフの事を話してクベアが納得するなら一緒に旅を続ける事も考えておこう
◆ ◆ ◆
翌朝
朝起きるとクベアが朝食の準備をしていた
昨日の夕食とは違いパン、スープ、腸詰め、ハム
急に豪華になった
どうしたのかと聞くといろんな人が朝から持ってきてくれたそうだ
もはや逃げられない気がする、完全に結婚騒ぎだ
朝食を終えて冒険者ギルドでベロニカに話をすると笑われた
「腕の立つ冒険者がいると街が安全になりますからね…みんな身を固めて欲しいんですよ」
やられた…街ぐるみの犯行だった
たまたまクベアが身寄りを無くしたのを利用されたという事か
逞しい事だ、とはいえクベアとの生活は不快ではない
むしろ今までよりもずっといい
話し相手にもなるし、孤独感もない
ゴブリンスウォームの事もある、しっかり守ってやろう
「そういう事か…防具を買い替えるためにお金がいるんだ。近況を教えてくれ」
「はい、お待ちください」
諦めたように近況を聞くとベロニカは手元の羊皮紙をめくり出した
「先日東の森でオークの集落が発見されたようです、数は30ほどでシャーマンもいるみたいですね」
オークの集落か…一人でやるには少し時間がかかるな
馬も放っておけば夜には帰ってしまう、準備をする日と狩る日は別にしなければならないか
新しい義手もあるし罠を仕掛けて少しずつ誘い出せば三日くらいで全滅させられるだろう
オークを殺すのに理由はいらない、殲滅する
「受けよう、殲滅してくる」
ベロニカはきょとんとした顔をして聞き返す
「え?お一人でですか??」
「一人だが…」
「いやいや、普通はパーティで挑むものですよ」
「一人で殲滅できる。三日ほど時間をくれ」
ギルドの中が騒然とし、ざわざわと俺の噂話をしているのが手に取るようにわかる
ベロニカが怒った顔でまくしたてる
「ちょ…何言ってるんですかさすがに一人で行かせられませんよ。死にに行くんですか?クベアを残していくなんて許しませんよ」
「いや…死にに行く気はないぞ」
「ダメです!ここにも冒険者の方がいるんですからちゃんとパーティ組んでください」
見かねた冒険者たちが寄ってきて俺の肩を叩くと困った顔で話し出した
「狂戦士殿とお見受けするがいかがかな?」
話しかけてきたのは男で上等な槍を持つ中装の冒険者
後ろには巨大な盾を持つ屈強な男と弓を背中にかけた女が並んでいた
「そう呼ばれているな、俺はエーサーだ。君たちは?」
「俺はポール、剣士だ。後ろのごついのはブライアン、重騎士。女はケイ、弓使いだ。あんたのパーティに入れてくれないか?足手まといにはならない」
ベロニカは冒険者たちを見ると是非とも協力してもらえと言わんばかりに紹介を始めた
「太陽の剣の方々ですね!エーサーさんこの方たちと一緒に行ってください。実績もある腕利きの冒険者たちです、オーク討伐は合計で50体を超える歴戦の猛者たちですよ」
50体とは…フルーフと二人で100体を超える討伐をしてきたのになぜ今更パーティを組まなければならないのか
「一人でできるんだが…」
「ダメです!でなきゃ受理しません!」
これはまた言う事聞かないパターンだな…しかたない
「はぁ…わかった、受理してくれ」
「あ、おかえりなさい。本当によかったんですか?ご迷惑じゃないですか?」
俺を見るなり申し訳なさそうに寄ってくると、うつむきがちに上目遣いでチラチラと顔を覗き込んでくる
「いいよ。そう言っただろ、荷物をまとめるのを手伝ってくれ」
「はい」
宿のカウンターではリンネがニヤニヤしながら俺たちを見ていた
趣味が悪い笑顔だ
クベアの家に荷物を移して今の資金などを確認する
金貨は残り1枚、宿代がいらなくなったので食費以外で減ることはないが、熊にボロボロにされた防具なんかも買い替えたい
明日からまたギルドで稼がなければ
クベアがパンとスープを持ってきて夕食にしようと準備を始めた
誰かが一緒にいる生活は久しぶりだった
クベアの食事はまずくはなかったが、質素で宿の食事に比べると食べた気がしなかった
こんな生活をずっと続けていたのか
「あの、満足できました?少ないですけどお代わりありますよ」
「うん?あるなら欲しい」
するとクベアは自分の分を差し出してくる
「どういうこと?」
「お代わり…です…」
それはお代わりとは言わないだろ
「いや、そういう事ならいらない…お金は金貨渡すから明日食材を買い込んできてくれ…」
「はい、すいません」
「いいよ、気にしないで。冒険者が稼ぎすぎるだけだ」
「そんな、命を賭けた報酬ですから」
食事を終えると金貨を渡し、装備の点検をしてベッドで横になる
深夜になると隣に誰か潜り込んでくる感覚で目が覚めた
服を脱いだクベアが潜り込んで来ている
「あ…起こしちゃいましたか…」
「そうだね…で…これは…」
「あはは…私にできる事なんてあまりないですから…不快でなければ、貰ってください」
気の済むようにさせてあげよう
と、言いたいところだけれど俺も男なので据え膳は頂く
これもまたすぐに噂が広まるんだろうな
誰か壁に穴開けて覗いてるんじゃないだろうか?
こうなると旅立つときに置いていくのは気が引けるな
フルーフの事を話してクベアが納得するなら一緒に旅を続ける事も考えておこう
◆ ◆ ◆
翌朝
朝起きるとクベアが朝食の準備をしていた
昨日の夕食とは違いパン、スープ、腸詰め、ハム
急に豪華になった
どうしたのかと聞くといろんな人が朝から持ってきてくれたそうだ
もはや逃げられない気がする、完全に結婚騒ぎだ
朝食を終えて冒険者ギルドでベロニカに話をすると笑われた
「腕の立つ冒険者がいると街が安全になりますからね…みんな身を固めて欲しいんですよ」
やられた…街ぐるみの犯行だった
たまたまクベアが身寄りを無くしたのを利用されたという事か
逞しい事だ、とはいえクベアとの生活は不快ではない
むしろ今までよりもずっといい
話し相手にもなるし、孤独感もない
ゴブリンスウォームの事もある、しっかり守ってやろう
「そういう事か…防具を買い替えるためにお金がいるんだ。近況を教えてくれ」
「はい、お待ちください」
諦めたように近況を聞くとベロニカは手元の羊皮紙をめくり出した
「先日東の森でオークの集落が発見されたようです、数は30ほどでシャーマンもいるみたいですね」
オークの集落か…一人でやるには少し時間がかかるな
馬も放っておけば夜には帰ってしまう、準備をする日と狩る日は別にしなければならないか
新しい義手もあるし罠を仕掛けて少しずつ誘い出せば三日くらいで全滅させられるだろう
オークを殺すのに理由はいらない、殲滅する
「受けよう、殲滅してくる」
ベロニカはきょとんとした顔をして聞き返す
「え?お一人でですか??」
「一人だが…」
「いやいや、普通はパーティで挑むものですよ」
「一人で殲滅できる。三日ほど時間をくれ」
ギルドの中が騒然とし、ざわざわと俺の噂話をしているのが手に取るようにわかる
ベロニカが怒った顔でまくしたてる
「ちょ…何言ってるんですかさすがに一人で行かせられませんよ。死にに行くんですか?クベアを残していくなんて許しませんよ」
「いや…死にに行く気はないぞ」
「ダメです!ここにも冒険者の方がいるんですからちゃんとパーティ組んでください」
見かねた冒険者たちが寄ってきて俺の肩を叩くと困った顔で話し出した
「狂戦士殿とお見受けするがいかがかな?」
話しかけてきたのは男で上等な槍を持つ中装の冒険者
後ろには巨大な盾を持つ屈強な男と弓を背中にかけた女が並んでいた
「そう呼ばれているな、俺はエーサーだ。君たちは?」
「俺はポール、剣士だ。後ろのごついのはブライアン、重騎士。女はケイ、弓使いだ。あんたのパーティに入れてくれないか?足手まといにはならない」
ベロニカは冒険者たちを見ると是非とも協力してもらえと言わんばかりに紹介を始めた
「太陽の剣の方々ですね!エーサーさんこの方たちと一緒に行ってください。実績もある腕利きの冒険者たちです、オーク討伐は合計で50体を超える歴戦の猛者たちですよ」
50体とは…フルーフと二人で100体を超える討伐をしてきたのになぜ今更パーティを組まなければならないのか
「一人でできるんだが…」
「ダメです!でなきゃ受理しません!」
これはまた言う事聞かないパターンだな…しかたない
「はぁ…わかった、受理してくれ」
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