穢れの螺旋

どーん

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穢れた女と呪われた少年

第1話 - 襲撃

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水の滴る音で目が覚める

目を開くと俺はうつ伏せに地面へ伏せていた
頭が重い、ボーっとする

なぜここに伏せているのかわからなかった
ゆっくりと上体を起こすと激痛が走る

「いっ…て…」

額に手をあてるとぬるっとする、手を見ると赤い液体がついていた

「なんで俺ここにいるんだっけ…」

ゆっくりと座り、周りを見渡した
ここは土の壁に囲まれた空間だ、日差しが差し込んでいる
ふと、差し込む光の元を辿ると草で覆われた穴がある

「俺は、あそこから落ちたのか…?」

昨日何をしてたっけ…

◆ ◆ ◆

流民村

10人程度の人が集まった村だ
ここに住む人たちは何かしらの理由で国から追放された人たち
窃盗、強姦、殺人、裏切りなど理由は様々

俺は流民村で生まれた人間の一人だ
この村は正式に国に認められた村ではない
追放された人々が勝手に集まって村を成している
村に名前はなく、国中のあちこちに似たような村がある

国は3つあり、戦争もなく一見平和に暮らしているが問題はある
世界はオークとゴブリンが溢れ、今や人間達の住む領土の方が少ないと言っても過言ではない
無論、竜や他の魔物もいるが繁殖力が桁違いのゴブリンとオークがあっという間に世界を覆ってしまったのだ

ゴブリンとオークは人間の女を攫い、子を産ませる
一人攫われれば数百という魔物が産まれる
年齢は関係ない、受精は必要なく子宮をただ使われるだけだ

増えすぎた魔物たちがたびたびスウォームという大軍を形成して街や王都へ攻め込むため人同士で争っている場合ではないのだ
無論人同士にも確執があり、水面下で争っている

流民はそんな人間の領土と魔物の領土の境目に村を作る
流民には人権がないので見つかれば質の悪い冒険者たちにも襲われる
当然魔物にも襲われる

だが境界であれば村を作ることは許される
村が焼かれれば魔物が来たという狼煙代わりになるからだ

その性質から流民村は移動を繰り返す
テントを主体とした簡易住居を使って生活する
俺の村も先日移動したばかりだ

◆ ◆ ◆

そうだ…思い出した
俺たちの村は移動した場所が悪く、明け方オーク達に襲われた

オークは豚の頭に人型の巨体を持つ魔物
直進限定なら人よりも遥かに早い速力を見せる

村が襲われてからみんな散り散りに逃げた
俺も森へ入り走っていたところ、この穴に落ちたんだ

もう一度落ちてきた穴を見る、とても登れそうな高さではなかった
右へ左へと首を振り、周りをもう一度よく見る

よくよく目を凝らしてみると通路があった
なんとか人が通れそうな大きさだ

重い頭を抱えて通路へ進んだ
通路には一切光が届かず、手探りで長い長い通路を這いつくばって進んだ
どれくらいの時間が過ぎたかわからないが光が見える

「外だ!」

俺は全力で外へ向かって這い続けた
外に出ると日は落ちかけている、襲われてから随分時間が経った
近くに川があり、顔と傷を洗う
周辺に自生していた薬草を額に張り付け、布で縛る

水を飲み座り込むと村のみんなの事が気になった

「みんなうまく逃げれたかな…」

日は落ち、すっかり暗くなっていた
村の様子を見に行きたいがこのままでは迷ってしまう
その日は木の上に登り、ツタで体を縛り付けて寝た

翌日

朝目を覚ますと早速村へ行く準備を始めた
森を出てあたりを見渡すと遠くに煙があがっているのが見える

「結構遠いな…」

しかしもう行く当てはない、逃げた村の人たちと合流しなければ
一人で暮らしていくには環境が厳しすぎる

魔物を警戒しながら村へ向かって進んだ

しばらく歩いていると馬の蹄の音が聞こえてきた

ドドッ ドドッ ドドッ

俺はとっさに木の陰に隠れて様子を見る
領主の私兵だろう

流民を助けに来たのではない、オークの侵略規模を見に来ただけだ
遠巻きに村の様子を見ると帰って行った

私兵が十分に遠くまで進んだのを見届けてまた歩き始めた

流民村へ着くとオーク達が使ったであろう焚火がある
いくつかのテントは燃やされており物資も一緒に炭になっていた

ぐるっと遠巻きに様子を見たがオークは一見いない
村人も誰も帰ってきていない

「まだみんな帰ってないのかな…それとももう出発したのかな…」

残っているものはないかとあちこち探し、干し肉と鞄、ナイフを手に入れた
燃えていないテントも念のため見て回る

するとオークがまだ残っていた、女たちを確保し、犯している最中だった
いくつかの肉塊も側に見える、すさまじい異臭だった
肉の塊には見慣れた顔がある、父親の顔だ

体が固まり、動悸が早くなる
今にも声が出そうになった時、オークと目が合った

俺は恐怖に支配され、頭が真っ白になった
その場を脱兎のごとく逃げ出し、森へ入った

ヴィィィィィ!! ヴィィィィィ!!

オークの警戒音だ、俺の存在が知らされた
本格的に追手がかかる

息が切れても木にぶつかってもひたすら走った、とにかく見つからない場所へ
森へ、山へ、高所へ

息を切らしながら走っていると足を滑らし、斜面を滑落した
足は震え、踏ん張りがきかない

体勢を維持する事も出来ないほど疲弊していた
ゴロゴロと転がり、木に頭を強打して気を失った
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