9 / 303
最終章 道化師は神逆する
第295話 決戦の幕開け
しおりを挟む
陽が昇り始める。辺り一面に広がっていた暗がりは次第にその姿を消していき、オレンジ色の日差しの新しい一日が始まる。
時は明朝。空に昇る太陽はこの世界に希望の光をもたらすように隅々まで光で満たし、同時にこの日だけは最後の光になる可能性すらあった。
クラウン達は空中を眺める。誰しもが武器を手にして、始まる戦を今か今かと待ち続ける。空には竜人族が竜となっていつでも動けるように待機中だ。
―――――チャプンッ
水面に一つの滴を落としたような音が僅かに響く。すると、変化は一気に起き始めた。それは空中の空間が波紋を作りながら、大きく揺らいだのだ。
そして、その波紋の中心には半透明な両開きの扉が現れ、開いていく。その扉から膨大な気配がやってくる。
白い獣たち―――――神獣だ。天界に住むことが許された神聖なる生き物にして、魔物よりもはるかに優れた力と知能を持つ。さらに、使徒モドキもいる。
それが現れた扉を覆い隠すように一斉に飛び出してきたのだ。到底まともに相手にする数ではない。ということなので――――――
「第一射撃! 竜人族、放て!」
響の声とともに空を飛ぶ竜人族総数五十体にも及ぶ竜が一斉にブレスを放った。空に五十本の高威力ブレスが飛び交っていく。
一つが島半分を消し飛ぶと呼ばれているのだ。それが響の覚醒魔力<勇者に集え戦士達よ>によって、ステータスが上限まで解放されている。
なので、その威力は一つのブレスで中くらいの島なら一つは破壊できるほどのデタラメな威力となっている。
その死の一斉射撃は扉から出たばかりの神獣を次々と襲い、焼き殺していく。避けていても熱波で大ダメージを襲うそれはまさに死の一撃と言っても過言ではない。
だが、そのブレスでもってしても扉を壊すことは出来ず、扉の中にはただ吸い込まれていくのみ。加えて、神獣はそのブレスから避けるようにしながらも、その数を増やしていく。
「第二射撃。リルリアーゼさん、準備はいいですか?」
「システム、オールグリーン。魔力チャージ充填完了。敵の数及び魔法効果範囲の誤差情報、0.2から0.3の範囲、クリア。いつでも発射できます」
「よし。なら、魔術師部隊とリルリアーゼさんは放て!」
背中から触手のように生やしたいくつものコードの先には小さな砲台があり、さらに五つに先が分かれた主砲から放たれる高エネルギー砲が神獣を襲っていく。
魔術師部隊の方ではあらかじめ仕掛けてあった魔法陣からさらに大きめの魔法陣が浮かび上がり、太陽光を集めた高エネルギー方が神獣に放たれた。
リルリアーゼの高エネルギー方は一つ一つに貫通ホーミング性能があり、空中で対象物を狙ってそのエネルギーが尽きるまで縦横無尽に駆け抜ける。
それを辛うじて避けれたとしても、巨大な高エネルギー砲で跡形もなく消滅されていく。衝撃でも近ければ半身がもげる勢いだ。
しかし、それでも神獣と使徒モドキは際限なく扉から現れていく。消しても消しても溢れてくるので、とてもラチが明かない。
そして、その数を活かして強引にもクラウン達場所に詰め寄ってくる。そうなれば、さらに次の手を使うしかない。
「第三者撃! 放て!」
響がそう言った瞬間、一人一人銃火器を持った兵士達が一斉に上空に砲弾の雨を降らせていった。
マシンガンのようなものもあれば、ロケットランチャー、ミサイルランチャー、アサルトライフル、グレネードランチャー、スナイパーライフルと多種多様な銃火器に放たれる弾が、太陽の光に輝いて一つの黄金の生物が襲い掛かっていくように着弾していく。
その雨は一切の神獣と使徒モドキの侵入を許さなかった。小さくて、速くて、避けずらいものが隙間なく襲いかかってくるのだ。逃げる暇すら与えてくれない。
加えて、竜人族やリルリアーゼの砲撃、魔術師の砲撃も止んだわけではない。それがさらに隙間なく襲い、神獣と使徒モドキをただの肉片と変えて地上にばら撒いていく。
しかし、限界は来る。魔力に関しても、銃弾に関しても限界はやってくる。一時的に扉から溢れ出てくるところまで押し戻せたけど、弾が尽き初めてその数が衰え始めた時、再び神獣があふれ出し始めた。
加えて、ブレスや高エネルギー砲を撃つ魔力も尽き初めてきたので、流れを取り戻すように神獣と使徒モドキが向かって来る。
そうなれば、後は力比べと我慢比べだ。軍の数では神の方はほぼ無限に湧いてきそうなので、数で制圧するのは難しい。
そうなれば、どちらかが先に大将首を取るかで決着が着く戦いになる。加えて、数がもともとフル人数の世界同盟軍が神の軍勢に制圧される前にという制限時間つき。
「クラウン、準備はいいかしら? これで私達は立派な神逆者よ」
「そうだな。とてもいい響きだ。この日のこの時をずっと心待ちにしていたんだからな。もう後は全てを終わらせるだけだ」
「仁、気を付けて」
「ここの防衛なら任せろ」
「お前さんならやってくれると信じてるぜ」
「朱里達は帰って来るまで必ず耐えるから」
「皆さんに私の御加護を」
雪姫、ラグナ、カムイ、朱里、スティナの応援の声が飛んでくる。それは先陣メンバーであるクラウン、リリスとその道中を守護するエキドナ、ベル、響に対してだ。
神はきっと高みの見物しているだろうから、こっちから赴いて殺しに行くしかない。しかし、相手が天界に簡単に潜入させてくれないことは理解している。そのためのメンバーだ。
行くメンバーは必要最低限で機動力、攻撃力がともにあるもの。そして、残りのメンバーは一般兵ではてこずるであろう使徒モドキに討伐を任せてある。
防衛重視なのは神なら基本何でもありでえると踏んだからだ。そしたら案の定、ほぼ無限に湧き続ける神獣と使徒モドキが現れた。
いずれ数で押されるのは目に見えている。それでもせめてもの時間が稼げるような人選でもあるのだ。そして、何よりやってくれると信じているから。
「旦那様、早いとこ行きましょ。敵がもうすぐそこまで来てるわ」
「ああ、わかった。それじゃあ、お前達はアシストを頼む」
「わかりました。無事に通り抜けられるよう空間を維持しておきます」
クラウンは大精霊に扉の維持を頼むと大精霊は恭しくお辞儀した。それを見届けるとクラウン、リリス、ベル、響は竜化したエキドナ(空)に乗って飛び立っていく。
空中を最速で飛び回れるようにしてあるエキドナの竜化はまるでジェット機のように高速でい移動して敵陣に突っ込んでいく。
大抵の神獣や使徒モドキが高速の翼に打ち付けられて絶命していく。そして、正面にいるそれらはエキドナのブレスによって消滅する。
音速に近い速さで移動しているため、衝撃波で周囲のそれらは吹き飛ばされていく。それでもなお襲いに来る者はベルと響の斬撃の餌食になった。
「三人、強烈な存在感を放つ人がいるわ」
「恐らくトウマが言っていた残りの大罪シリーズだろう。ならば、運ぶのはここまででいい」
「後は私達でいくわ。別に飛べないわけじゃないんだし。あんた達だって魔力は必要でしょ?」
「わかったわ。気を付けて」
「主様の道は必ず作るです」
「仁、派手に決めてこい!」
「ああ、俺は道化師だからな」
正面から太めの男とガタイの良い男と荒々しい髪をした女が向かって来る。それに対し、エキドナがそのまま突っ込んでいくのを確認するとクラウンとリリスはエキドナの背中から離脱した。
そしてさらに、ベルと響が離脱してそれぞれの三人に相対する。
「オデ、お前、食う」
「邪魔はさせないです!」
スキンヘッドをした黒い修道服を着ている太った男―――――暴食を司る神の使徒ブラン対ベル。
「ふん、さすが竜人族というところか。大した力だ」
「こんなもんだと思わないで欲しいわね」
オールバックで四角い顔をし、黒い修道服を着たゴツイ筋肉隆々の男――――――憤怒を司る神の使徒アグリル対エキドナ。
「ああ! ああ! 羨ましい羨ましい羨ましい! あなたのそのサラサラの髪! つやのある肌! その全てが羨ましくて醜い!」
「あんまりヒステリックにならず、髪を大事にすることが一番だと思うよ」
黒く長いぼさぼさの髪をして黒い修道服を着ている細身の女―――――嫉妬を司る神の使徒ベネティス対響。
ブランとベルは長剣と二本の短剣を混じらわせ、アグリルと(闘)スタイルとなったエキドナは拳を突き合わせ、ベネティスと響は硬化したぼさぼさの髪と聖剣をぶつけている。
そして、三人がそれぞれを足止めしている間にクラウンとリリスは間を抜けて溢れ出る神獣と使徒モドキを退けながら、門の中に突入していく。
少し粘り気のある膜のようなものを突破すると宇宙空間に誘われたかのような場所に映った。周囲は黒や紫、濃い青といった色が何重にも重なったような色をしていて、星のように光っているのもいくつか確認できる。
しかし、呼吸は出来るようだ。それにふと後ろを見ると扉の形をした膜の奥に地上の風景が見えている。ということは、これが次元の狭間を移動しているということなのか。
そして、移動していると次第に正面から同じように扉の形をした出口のようなものが見え、思わず手で光を遮るような眩い輝きを感じる。
その扉の先をそのまま抜けるとそこは空だった。いや、もっと正確に言えば空に浮かぶ巨大な雲の上。他に雲一つ見えない青空に浮かぶ巨大な積乱雲の上という感じだろうか。
その雲は少し特殊な構造をしていた。それは雲の床が地面のように固く、そして両端に巨大な柱があって高い天井の屋根を支えている。
それから、上げるべき特徴は目の前にあるいくつもの階段。その最上段の椅子に座る足を組みながら、見下ろす中性的な顔立ちとスタイルで、ブロンドの一つ縛りをした腕や頬に緑色の蔦のようなタトゥーがある男。
着ている袖のない修道服の姿はさながら真っ当な神をしていたと言わんばかりの神の使徒と真逆の白色をしている。
さながら、ここは王の間と言ったところだ。なるほど、決戦場所にはふさわしいところではないか。その醜い王の座を引きずり下ろすという意味でな!
「やあやあ、こんなにも早く来てくれて僕は嬉しいよ。ずっとこの日を待ち望んでいたんだ。希望を抱いて攻めに来る君達を絶望へと叩き落すという、ね」
「御託はいい。さっさと始めようぜ。お前が俺達で弄んだ報いの方が強いか、貴様の愉悦の方が強いか」
「そうだね、始めようか。神話に語り継がれる愚かな者どもの終焉の先をな!」
時は明朝。空に昇る太陽はこの世界に希望の光をもたらすように隅々まで光で満たし、同時にこの日だけは最後の光になる可能性すらあった。
クラウン達は空中を眺める。誰しもが武器を手にして、始まる戦を今か今かと待ち続ける。空には竜人族が竜となっていつでも動けるように待機中だ。
―――――チャプンッ
水面に一つの滴を落としたような音が僅かに響く。すると、変化は一気に起き始めた。それは空中の空間が波紋を作りながら、大きく揺らいだのだ。
そして、その波紋の中心には半透明な両開きの扉が現れ、開いていく。その扉から膨大な気配がやってくる。
白い獣たち―――――神獣だ。天界に住むことが許された神聖なる生き物にして、魔物よりもはるかに優れた力と知能を持つ。さらに、使徒モドキもいる。
それが現れた扉を覆い隠すように一斉に飛び出してきたのだ。到底まともに相手にする数ではない。ということなので――――――
「第一射撃! 竜人族、放て!」
響の声とともに空を飛ぶ竜人族総数五十体にも及ぶ竜が一斉にブレスを放った。空に五十本の高威力ブレスが飛び交っていく。
一つが島半分を消し飛ぶと呼ばれているのだ。それが響の覚醒魔力<勇者に集え戦士達よ>によって、ステータスが上限まで解放されている。
なので、その威力は一つのブレスで中くらいの島なら一つは破壊できるほどのデタラメな威力となっている。
その死の一斉射撃は扉から出たばかりの神獣を次々と襲い、焼き殺していく。避けていても熱波で大ダメージを襲うそれはまさに死の一撃と言っても過言ではない。
だが、そのブレスでもってしても扉を壊すことは出来ず、扉の中にはただ吸い込まれていくのみ。加えて、神獣はそのブレスから避けるようにしながらも、その数を増やしていく。
「第二射撃。リルリアーゼさん、準備はいいですか?」
「システム、オールグリーン。魔力チャージ充填完了。敵の数及び魔法効果範囲の誤差情報、0.2から0.3の範囲、クリア。いつでも発射できます」
「よし。なら、魔術師部隊とリルリアーゼさんは放て!」
背中から触手のように生やしたいくつものコードの先には小さな砲台があり、さらに五つに先が分かれた主砲から放たれる高エネルギー砲が神獣を襲っていく。
魔術師部隊の方ではあらかじめ仕掛けてあった魔法陣からさらに大きめの魔法陣が浮かび上がり、太陽光を集めた高エネルギー方が神獣に放たれた。
リルリアーゼの高エネルギー方は一つ一つに貫通ホーミング性能があり、空中で対象物を狙ってそのエネルギーが尽きるまで縦横無尽に駆け抜ける。
それを辛うじて避けれたとしても、巨大な高エネルギー砲で跡形もなく消滅されていく。衝撃でも近ければ半身がもげる勢いだ。
しかし、それでも神獣と使徒モドキは際限なく扉から現れていく。消しても消しても溢れてくるので、とてもラチが明かない。
そして、その数を活かして強引にもクラウン達場所に詰め寄ってくる。そうなれば、さらに次の手を使うしかない。
「第三者撃! 放て!」
響がそう言った瞬間、一人一人銃火器を持った兵士達が一斉に上空に砲弾の雨を降らせていった。
マシンガンのようなものもあれば、ロケットランチャー、ミサイルランチャー、アサルトライフル、グレネードランチャー、スナイパーライフルと多種多様な銃火器に放たれる弾が、太陽の光に輝いて一つの黄金の生物が襲い掛かっていくように着弾していく。
その雨は一切の神獣と使徒モドキの侵入を許さなかった。小さくて、速くて、避けずらいものが隙間なく襲いかかってくるのだ。逃げる暇すら与えてくれない。
加えて、竜人族やリルリアーゼの砲撃、魔術師の砲撃も止んだわけではない。それがさらに隙間なく襲い、神獣と使徒モドキをただの肉片と変えて地上にばら撒いていく。
しかし、限界は来る。魔力に関しても、銃弾に関しても限界はやってくる。一時的に扉から溢れ出てくるところまで押し戻せたけど、弾が尽き初めてその数が衰え始めた時、再び神獣があふれ出し始めた。
加えて、ブレスや高エネルギー砲を撃つ魔力も尽き初めてきたので、流れを取り戻すように神獣と使徒モドキが向かって来る。
そうなれば、後は力比べと我慢比べだ。軍の数では神の方はほぼ無限に湧いてきそうなので、数で制圧するのは難しい。
そうなれば、どちらかが先に大将首を取るかで決着が着く戦いになる。加えて、数がもともとフル人数の世界同盟軍が神の軍勢に制圧される前にという制限時間つき。
「クラウン、準備はいいかしら? これで私達は立派な神逆者よ」
「そうだな。とてもいい響きだ。この日のこの時をずっと心待ちにしていたんだからな。もう後は全てを終わらせるだけだ」
「仁、気を付けて」
「ここの防衛なら任せろ」
「お前さんならやってくれると信じてるぜ」
「朱里達は帰って来るまで必ず耐えるから」
「皆さんに私の御加護を」
雪姫、ラグナ、カムイ、朱里、スティナの応援の声が飛んでくる。それは先陣メンバーであるクラウン、リリスとその道中を守護するエキドナ、ベル、響に対してだ。
神はきっと高みの見物しているだろうから、こっちから赴いて殺しに行くしかない。しかし、相手が天界に簡単に潜入させてくれないことは理解している。そのためのメンバーだ。
行くメンバーは必要最低限で機動力、攻撃力がともにあるもの。そして、残りのメンバーは一般兵ではてこずるであろう使徒モドキに討伐を任せてある。
防衛重視なのは神なら基本何でもありでえると踏んだからだ。そしたら案の定、ほぼ無限に湧き続ける神獣と使徒モドキが現れた。
いずれ数で押されるのは目に見えている。それでもせめてもの時間が稼げるような人選でもあるのだ。そして、何よりやってくれると信じているから。
「旦那様、早いとこ行きましょ。敵がもうすぐそこまで来てるわ」
「ああ、わかった。それじゃあ、お前達はアシストを頼む」
「わかりました。無事に通り抜けられるよう空間を維持しておきます」
クラウンは大精霊に扉の維持を頼むと大精霊は恭しくお辞儀した。それを見届けるとクラウン、リリス、ベル、響は竜化したエキドナ(空)に乗って飛び立っていく。
空中を最速で飛び回れるようにしてあるエキドナの竜化はまるでジェット機のように高速でい移動して敵陣に突っ込んでいく。
大抵の神獣や使徒モドキが高速の翼に打ち付けられて絶命していく。そして、正面にいるそれらはエキドナのブレスによって消滅する。
音速に近い速さで移動しているため、衝撃波で周囲のそれらは吹き飛ばされていく。それでもなお襲いに来る者はベルと響の斬撃の餌食になった。
「三人、強烈な存在感を放つ人がいるわ」
「恐らくトウマが言っていた残りの大罪シリーズだろう。ならば、運ぶのはここまででいい」
「後は私達でいくわ。別に飛べないわけじゃないんだし。あんた達だって魔力は必要でしょ?」
「わかったわ。気を付けて」
「主様の道は必ず作るです」
「仁、派手に決めてこい!」
「ああ、俺は道化師だからな」
正面から太めの男とガタイの良い男と荒々しい髪をした女が向かって来る。それに対し、エキドナがそのまま突っ込んでいくのを確認するとクラウンとリリスはエキドナの背中から離脱した。
そしてさらに、ベルと響が離脱してそれぞれの三人に相対する。
「オデ、お前、食う」
「邪魔はさせないです!」
スキンヘッドをした黒い修道服を着ている太った男―――――暴食を司る神の使徒ブラン対ベル。
「ふん、さすが竜人族というところか。大した力だ」
「こんなもんだと思わないで欲しいわね」
オールバックで四角い顔をし、黒い修道服を着たゴツイ筋肉隆々の男――――――憤怒を司る神の使徒アグリル対エキドナ。
「ああ! ああ! 羨ましい羨ましい羨ましい! あなたのそのサラサラの髪! つやのある肌! その全てが羨ましくて醜い!」
「あんまりヒステリックにならず、髪を大事にすることが一番だと思うよ」
黒く長いぼさぼさの髪をして黒い修道服を着ている細身の女―――――嫉妬を司る神の使徒ベネティス対響。
ブランとベルは長剣と二本の短剣を混じらわせ、アグリルと(闘)スタイルとなったエキドナは拳を突き合わせ、ベネティスと響は硬化したぼさぼさの髪と聖剣をぶつけている。
そして、三人がそれぞれを足止めしている間にクラウンとリリスは間を抜けて溢れ出る神獣と使徒モドキを退けながら、門の中に突入していく。
少し粘り気のある膜のようなものを突破すると宇宙空間に誘われたかのような場所に映った。周囲は黒や紫、濃い青といった色が何重にも重なったような色をしていて、星のように光っているのもいくつか確認できる。
しかし、呼吸は出来るようだ。それにふと後ろを見ると扉の形をした膜の奥に地上の風景が見えている。ということは、これが次元の狭間を移動しているということなのか。
そして、移動していると次第に正面から同じように扉の形をした出口のようなものが見え、思わず手で光を遮るような眩い輝きを感じる。
その扉の先をそのまま抜けるとそこは空だった。いや、もっと正確に言えば空に浮かぶ巨大な雲の上。他に雲一つ見えない青空に浮かぶ巨大な積乱雲の上という感じだろうか。
その雲は少し特殊な構造をしていた。それは雲の床が地面のように固く、そして両端に巨大な柱があって高い天井の屋根を支えている。
それから、上げるべき特徴は目の前にあるいくつもの階段。その最上段の椅子に座る足を組みながら、見下ろす中性的な顔立ちとスタイルで、ブロンドの一つ縛りをした腕や頬に緑色の蔦のようなタトゥーがある男。
着ている袖のない修道服の姿はさながら真っ当な神をしていたと言わんばかりの神の使徒と真逆の白色をしている。
さながら、ここは王の間と言ったところだ。なるほど、決戦場所にはふさわしいところではないか。その醜い王の座を引きずり下ろすという意味でな!
「やあやあ、こんなにも早く来てくれて僕は嬉しいよ。ずっとこの日を待ち望んでいたんだ。希望を抱いて攻めに来る君達を絶望へと叩き落すという、ね」
「御託はいい。さっさと始めようぜ。お前が俺達で弄んだ報いの方が強いか、貴様の愉悦の方が強いか」
「そうだね、始めようか。神話に語り継がれる愚かな者どもの終焉の先をな!」
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
死んだのに異世界に転生しました!
drop
ファンタジー
友人が車に引かれそうになったところを助けて引かれ死んでしまった夜乃 凪(よるの なぎ)。死ぬはずの夜乃は神様により別の世界に転生することになった。
この物語は異世界テンプレ要素が多いです。
主人公最強&チートですね
主人公のキャラ崩壊具合はそうゆうものだと思ってください!
初めて書くので
読みづらい部分や誤字が沢山あると思います。
それでもいいという方はどうぞ!
(本編は完結しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる