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最終章 道化師は神逆する
第293話 変化と約束
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―――――ねえ、私と一緒に悪魔にならない?
微笑しながらリリスがそう尋ねてくる。それがどういう意図で言ったのかは大体予想がつく。恐らく、この先にある何かを知ればもうもとの人として戻って来れない可能性があるからなのだろう。
竜宮城にいた精霊にも似たようなことを言われた。それにリゼリアが死ぬ間際に用意した秘策のようなものだ普通のわけがない。
「愚問だな」
クラウンはそう返答すると躊躇いもなく一歩を踏み出した。そして、リリスの横に並ぶとともに神殿の中へと入っていく。
最初に来た時とは違って少し一本道を歩くとひたすら下に続く階段を下りていった。どこまでもどこまでも続く長い階段は次第に入り口を遠くしていく。
僅かな光さえ通さなくなった暗闇に階段が包まれていくと突然前方からゴゴゴゴッと重たい何かが引きずられて動く音がした。
しかし、<気配察知>から特に魔物らしき存在は確認しなかったので、そのまま前に進んでいく。暗さの進度が増していく。
暗すぎて何も見えない。<夜目>の効果があるが、それはあくまでもとある光の吸収率を大きくするためであり、光そのものが無ければ見えることはない。
ということは、今は前後左右すらわからない。真っ暗の中に一人閉じ込められたような感覚だ。何もなくても暗さで恐怖が煽られる。
しかし、似たようなことならエルフの森にあった聖樹でも経験している。それに後ろから裾を掴まれている感覚がするので、なお安心だ。
その暗闇の中をもうどれぐらい歩いただろうか。五分? 十分? いや、体感的にはもう一時間すら経ったような気がする。
そんな時、前方から水のようなニオイが漂い、流れる音を聞き取った。そして、それに気付き始めてから、前に突如としてほのかな光が現れた。
後ろからビクッとした振動が伝わってくる。もしかして、突然の明りに驚いたのだろうか。オバケよりも恐ろしい存在と戦っている割には妙なところで怖がりらしい。
そんなリリスのちょっとした情報を仕入れつつ、その光の方へと少し歩みを速めていく。すると、その光はクラウンが近づくたびに一つ、また一つと光り始める。
その明りでわかったことは今は細く長い一本道を歩いているということ。ただし、洞窟のような感じではなく、開けた空間で下に巨大な水流がある橋の上だった。
橋の両端の手すりには漆で塗られたような艶やかな赤色をしていて、オーブのような、鬼火のような光によってツヤのある輝きをしている。足元は木で出来ていて、歩いているとほんのわずかに軋む音がする。
「相変わらず神殿というのはめちゃくちゃだな」
「そうね。でも、少し幻想的」
クラウンは思わずため息を吐いた。そして、思わず愚痴のような言葉を吐くが、その言葉に反応する割には先ほどまで怖がっていたリリスの評価は好印象だ。
橋の先は光が灯っていないのでよく見えない。そして、長く続く橋の上をひたすらに進んでいく。進んでいく度に一つ一つ明りが灯る。やがて、一つの明りのところで赤い扉が見えた。
その赤い扉の前に立つとその扉は勝手に開き、さらに道が続いている。その奥を少し警戒しながらクラウン達は進んでいく。
――――――チョロチョロチョロ
水が流れ落ちるような音が前に進むたびに大きくなっていく。その音に誘われるように足早に進んでいくと多くの明りが一斉に灯った。
目の前に現れたのは少し大きめの泉だった。中心に水瓶を持った女神が泉に水を流している。ただそれだけの場所。
すると、クラウンの後ろにいたリリスが隣に立つとリゼリアから渡された手紙に目を通し始めた。そして、それを見ながら告げる。
「どうやらここが目的の場所で合ってるみたい。そして、これを手ですくうのではなく、器ですくって飲むことが必要みたい。ただし、飲んだ後は根気勝負とのこと」
「根気勝負? 一体何と戦わせるってんだ」
「体の急激な変化に体自身が耐えられるかわからないとのこと。もちろん、やるかやらないかは私達の判断だけど、やるならばそれ相応の覚悟が必要ってことよ」
そう言いつつ、リリスは指輪から二つの小さめの器を取り出し、その一つはクラウンに渡した。どうやら相方はやる気満々らしい。まあ、もとより選択肢はないに等しいが。
クラウンとリリスは地面まで透けて見える泉の水を器ですくう。そして、互いに向き合った。
「これから向かう地獄に乾杯ってところか?」
「神に負ければ必然的にそうなるし......いや、そもそも神に挑む時点で罰当たりは間違いないからそうなのかもね。ってことで―――――」
「「乾杯」」
クラウンとリリスは器の水をグイっと飲み干す。その瞬間、二つの器は同時に地面へと落ちて、不幸を示唆するように器が割れた。
「「ああああああ!」」
水が喉を通り過ぎた瞬間、全身を灼熱の業火で炙られているかのように熱くなり始める。そして同時に、全身から痛みという感覚だけが駆けずり回る。
思わず二人は膝を崩れ落ちさせると悶えるようにその場でうずくまる。そして、全身が一定の周期をもって強い衝撃で打ち付けられたように、心臓の脈動を全身で感じる。
手や腕、首、顔と肌の見える部分は血管が浮き上がり、目は血走っていく。二人の顔も苦悶を浮かべるように口元が歪んでいく。
その時、二人の額にあざが浮かび上がった。
************************************************
「はあ、疲れた......けど、僕だけがこういうことを言えるわけじゃないんだよな」
聖王国の王城の一角のベランダにて、眼下に見える城下街では多くの人が行ったり来たり。魔族以外の全種族が普段の活気とは違う活気で色めき立っていた。
これから神話にも残るような戦が始まろうというのだ。活気のほとんどが戦に対してのことである。その決戦までの日が刻一刻と近づいていることに響はどことない焦りに駆られていた。
クラウンとリリスがどこかへ行ってしまってから、決戦まで残すところあと三日というところになっている。
そうあと三日で運命の戦いが始まってしまうのだ。未だに神トウマと対面したのが昨日のことのように思い出されるのだから、一週間とは早いものである。
「お疲れですか?」
「スティナか。まあ、ほんの少しね」
「お疲れの時にはハッキリ言ってもいいのですよ?」
「......そうかもね。ただ今は言いたくない気分なんだ。皆が頑張っている士気を下げてしまうような気がして」
「そうですか。なら、私は響さんに対して『お疲れ様』とでも言っておきましょう。これなら、個人に対してなので問題ないはずですよね?」
「......僕が一番敵わない相手かもしれないな」
響の隣に立つスティナは響と心地よいやり取りをしていく。そして、同じようなに眼下に広がる城下町を見ながら告げる。
「そういえば、たった今先ほどですが、仁さん達が帰ってきましたよ」
「本当か!?」
「はい。ただ、外傷はなくても、酷く衰弱している様子でしたので今は安静にしてもらっています。全く、大将なのにしているのやら」
「ははは、スティナがそういうのは珍しいね。まあでも、必要だからやっていることなんだよ。あいつは昔からそうなんだ。僕が勇者として重責に苦しんでいる時も、あいつは僕のために力になろうとしてくれた。その時に聞いたんだ、理由を。そしたら、『必要だと思ったから』って」
「よく見ているんですね。響さんだけじゃなく、雪姫さん、朱里さんのこともよく見ている感じでした。まあ、それは今の仁さんからの印象ですが」
「いや、その感覚は間違っていないと思うよ。あいつは何だかんだで見ている。そして、あくまで『自分が勝手にした』という呈で動くのさ。その癖に、あいつは肝心な自分が見えていない。人のことを言えた義理じゃないと思うけどさ。だから、あいつには理解者がいてくれて助かったと思っている」
「ふふっ、そうですね。そう考えると、やはり響さんと仁さんは似ているのかもしれませんね」
「やはりって......前からそんなことを思っていたのか?」
「なんとなく、ですが。仁さんが提案した教皇さ......レグリアを倒す時の作戦なんてまさに自己犠牲の上で成り立っているじゃないですか。そして、響さんも呪われた仲間を救うために自ら最悪の道を選んだ」
「あれはあれしか選択肢が無かったからだよ」
「......かもしれませんね。ですが、決して脅されて仕方なくだけではなかったと思うのですよ。仲間を助けたいという気持ちがあったからこそ、そっちの選択肢だけが傾いたとも考えられます。所詮、ただの後付けですけどね」
「僕は嫌いじゃないよ、その後付け。少なくとも、今少し報われたような気がした。あの時の選択が正解かどうかわからなかったし、結果的にこうなっているからいいとしても、未だにあの選択だけは迷いが生じていた。だから、スティナが僕の光の道を照らしてくれるのはとてもありがたいと思うよ」
「なら、これからも支え続けてあげましょうか?」
「え?」
スティナの突然の告白とも捉えられる発言に響は思わず顔を合わせながら、目を白黒させる。そんな反応を少し楽しんでいるかのように、スティナは聖女の立場とは違う少女らしい笑みを浮かべていた。
「なんだかんだで、二回目ですね。まあ、既に響さんの気持ちはもう一度知っていますが、なんとなくいい雰囲気だったのでもう一度言ってみたくなったんです」
「......そっか。きっとこのことをクラウンが知ったら『死亡フラグかよ』って笑いそうだな」
「ならば、そのフラグを折ればいいだけの話ですよ。たとえそういう話が一般的だとしても、それが呪いのように連鎖するわけじゃありません。いわば、そういうレッテルがそのようなことを引き起こさせているのだとしたら、響さんがその呪縛を解いてください」
「そうだね。僕も常々そういう言葉を言った人が、言われた人が報われないことに悲しさを感じていたんだ。一部様式美のような感覚になっているけど、幸せを誓ったんだったらそのまま幸せになってい欲しいと思う。なぜ、そういう人ばっかりが悲しい目に遭うのかと思う。だから、そのフラグは必ず折るよ」
「楽しみにしてます」
「よーし、休憩終了。また頑張ってくるよ」
「私も有意義な休息が取れましたので、途中までご一緒しますよ」
そして、二人は再び雑談しながら歩き始めた。背後に輝く太陽は今日もサンサンと輝く。
微笑しながらリリスがそう尋ねてくる。それがどういう意図で言ったのかは大体予想がつく。恐らく、この先にある何かを知ればもうもとの人として戻って来れない可能性があるからなのだろう。
竜宮城にいた精霊にも似たようなことを言われた。それにリゼリアが死ぬ間際に用意した秘策のようなものだ普通のわけがない。
「愚問だな」
クラウンはそう返答すると躊躇いもなく一歩を踏み出した。そして、リリスの横に並ぶとともに神殿の中へと入っていく。
最初に来た時とは違って少し一本道を歩くとひたすら下に続く階段を下りていった。どこまでもどこまでも続く長い階段は次第に入り口を遠くしていく。
僅かな光さえ通さなくなった暗闇に階段が包まれていくと突然前方からゴゴゴゴッと重たい何かが引きずられて動く音がした。
しかし、<気配察知>から特に魔物らしき存在は確認しなかったので、そのまま前に進んでいく。暗さの進度が増していく。
暗すぎて何も見えない。<夜目>の効果があるが、それはあくまでもとある光の吸収率を大きくするためであり、光そのものが無ければ見えることはない。
ということは、今は前後左右すらわからない。真っ暗の中に一人閉じ込められたような感覚だ。何もなくても暗さで恐怖が煽られる。
しかし、似たようなことならエルフの森にあった聖樹でも経験している。それに後ろから裾を掴まれている感覚がするので、なお安心だ。
その暗闇の中をもうどれぐらい歩いただろうか。五分? 十分? いや、体感的にはもう一時間すら経ったような気がする。
そんな時、前方から水のようなニオイが漂い、流れる音を聞き取った。そして、それに気付き始めてから、前に突如としてほのかな光が現れた。
後ろからビクッとした振動が伝わってくる。もしかして、突然の明りに驚いたのだろうか。オバケよりも恐ろしい存在と戦っている割には妙なところで怖がりらしい。
そんなリリスのちょっとした情報を仕入れつつ、その光の方へと少し歩みを速めていく。すると、その光はクラウンが近づくたびに一つ、また一つと光り始める。
その明りでわかったことは今は細く長い一本道を歩いているということ。ただし、洞窟のような感じではなく、開けた空間で下に巨大な水流がある橋の上だった。
橋の両端の手すりには漆で塗られたような艶やかな赤色をしていて、オーブのような、鬼火のような光によってツヤのある輝きをしている。足元は木で出来ていて、歩いているとほんのわずかに軋む音がする。
「相変わらず神殿というのはめちゃくちゃだな」
「そうね。でも、少し幻想的」
クラウンは思わずため息を吐いた。そして、思わず愚痴のような言葉を吐くが、その言葉に反応する割には先ほどまで怖がっていたリリスの評価は好印象だ。
橋の先は光が灯っていないのでよく見えない。そして、長く続く橋の上をひたすらに進んでいく。進んでいく度に一つ一つ明りが灯る。やがて、一つの明りのところで赤い扉が見えた。
その赤い扉の前に立つとその扉は勝手に開き、さらに道が続いている。その奥を少し警戒しながらクラウン達は進んでいく。
――――――チョロチョロチョロ
水が流れ落ちるような音が前に進むたびに大きくなっていく。その音に誘われるように足早に進んでいくと多くの明りが一斉に灯った。
目の前に現れたのは少し大きめの泉だった。中心に水瓶を持った女神が泉に水を流している。ただそれだけの場所。
すると、クラウンの後ろにいたリリスが隣に立つとリゼリアから渡された手紙に目を通し始めた。そして、それを見ながら告げる。
「どうやらここが目的の場所で合ってるみたい。そして、これを手ですくうのではなく、器ですくって飲むことが必要みたい。ただし、飲んだ後は根気勝負とのこと」
「根気勝負? 一体何と戦わせるってんだ」
「体の急激な変化に体自身が耐えられるかわからないとのこと。もちろん、やるかやらないかは私達の判断だけど、やるならばそれ相応の覚悟が必要ってことよ」
そう言いつつ、リリスは指輪から二つの小さめの器を取り出し、その一つはクラウンに渡した。どうやら相方はやる気満々らしい。まあ、もとより選択肢はないに等しいが。
クラウンとリリスは地面まで透けて見える泉の水を器ですくう。そして、互いに向き合った。
「これから向かう地獄に乾杯ってところか?」
「神に負ければ必然的にそうなるし......いや、そもそも神に挑む時点で罰当たりは間違いないからそうなのかもね。ってことで―――――」
「「乾杯」」
クラウンとリリスは器の水をグイっと飲み干す。その瞬間、二つの器は同時に地面へと落ちて、不幸を示唆するように器が割れた。
「「ああああああ!」」
水が喉を通り過ぎた瞬間、全身を灼熱の業火で炙られているかのように熱くなり始める。そして同時に、全身から痛みという感覚だけが駆けずり回る。
思わず二人は膝を崩れ落ちさせると悶えるようにその場でうずくまる。そして、全身が一定の周期をもって強い衝撃で打ち付けられたように、心臓の脈動を全身で感じる。
手や腕、首、顔と肌の見える部分は血管が浮き上がり、目は血走っていく。二人の顔も苦悶を浮かべるように口元が歪んでいく。
その時、二人の額にあざが浮かび上がった。
************************************************
「はあ、疲れた......けど、僕だけがこういうことを言えるわけじゃないんだよな」
聖王国の王城の一角のベランダにて、眼下に見える城下街では多くの人が行ったり来たり。魔族以外の全種族が普段の活気とは違う活気で色めき立っていた。
これから神話にも残るような戦が始まろうというのだ。活気のほとんどが戦に対してのことである。その決戦までの日が刻一刻と近づいていることに響はどことない焦りに駆られていた。
クラウンとリリスがどこかへ行ってしまってから、決戦まで残すところあと三日というところになっている。
そうあと三日で運命の戦いが始まってしまうのだ。未だに神トウマと対面したのが昨日のことのように思い出されるのだから、一週間とは早いものである。
「お疲れですか?」
「スティナか。まあ、ほんの少しね」
「お疲れの時にはハッキリ言ってもいいのですよ?」
「......そうかもね。ただ今は言いたくない気分なんだ。皆が頑張っている士気を下げてしまうような気がして」
「そうですか。なら、私は響さんに対して『お疲れ様』とでも言っておきましょう。これなら、個人に対してなので問題ないはずですよね?」
「......僕が一番敵わない相手かもしれないな」
響の隣に立つスティナは響と心地よいやり取りをしていく。そして、同じようなに眼下に広がる城下町を見ながら告げる。
「そういえば、たった今先ほどですが、仁さん達が帰ってきましたよ」
「本当か!?」
「はい。ただ、外傷はなくても、酷く衰弱している様子でしたので今は安静にしてもらっています。全く、大将なのにしているのやら」
「ははは、スティナがそういうのは珍しいね。まあでも、必要だからやっていることなんだよ。あいつは昔からそうなんだ。僕が勇者として重責に苦しんでいる時も、あいつは僕のために力になろうとしてくれた。その時に聞いたんだ、理由を。そしたら、『必要だと思ったから』って」
「よく見ているんですね。響さんだけじゃなく、雪姫さん、朱里さんのこともよく見ている感じでした。まあ、それは今の仁さんからの印象ですが」
「いや、その感覚は間違っていないと思うよ。あいつは何だかんだで見ている。そして、あくまで『自分が勝手にした』という呈で動くのさ。その癖に、あいつは肝心な自分が見えていない。人のことを言えた義理じゃないと思うけどさ。だから、あいつには理解者がいてくれて助かったと思っている」
「ふふっ、そうですね。そう考えると、やはり響さんと仁さんは似ているのかもしれませんね」
「やはりって......前からそんなことを思っていたのか?」
「なんとなく、ですが。仁さんが提案した教皇さ......レグリアを倒す時の作戦なんてまさに自己犠牲の上で成り立っているじゃないですか。そして、響さんも呪われた仲間を救うために自ら最悪の道を選んだ」
「あれはあれしか選択肢が無かったからだよ」
「......かもしれませんね。ですが、決して脅されて仕方なくだけではなかったと思うのですよ。仲間を助けたいという気持ちがあったからこそ、そっちの選択肢だけが傾いたとも考えられます。所詮、ただの後付けですけどね」
「僕は嫌いじゃないよ、その後付け。少なくとも、今少し報われたような気がした。あの時の選択が正解かどうかわからなかったし、結果的にこうなっているからいいとしても、未だにあの選択だけは迷いが生じていた。だから、スティナが僕の光の道を照らしてくれるのはとてもありがたいと思うよ」
「なら、これからも支え続けてあげましょうか?」
「え?」
スティナの突然の告白とも捉えられる発言に響は思わず顔を合わせながら、目を白黒させる。そんな反応を少し楽しんでいるかのように、スティナは聖女の立場とは違う少女らしい笑みを浮かべていた。
「なんだかんだで、二回目ですね。まあ、既に響さんの気持ちはもう一度知っていますが、なんとなくいい雰囲気だったのでもう一度言ってみたくなったんです」
「......そっか。きっとこのことをクラウンが知ったら『死亡フラグかよ』って笑いそうだな」
「ならば、そのフラグを折ればいいだけの話ですよ。たとえそういう話が一般的だとしても、それが呪いのように連鎖するわけじゃありません。いわば、そういうレッテルがそのようなことを引き起こさせているのだとしたら、響さんがその呪縛を解いてください」
「そうだね。僕も常々そういう言葉を言った人が、言われた人が報われないことに悲しさを感じていたんだ。一部様式美のような感覚になっているけど、幸せを誓ったんだったらそのまま幸せになってい欲しいと思う。なぜ、そういう人ばっかりが悲しい目に遭うのかと思う。だから、そのフラグは必ず折るよ」
「楽しみにしてます」
「よーし、休憩終了。また頑張ってくるよ」
「私も有意義な休息が取れましたので、途中までご一緒しますよ」
そして、二人は再び雑談しながら歩き始めた。背後に輝く太陽は今日もサンサンと輝く。
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