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第12章 道化師は集めきる
第265話 海流乗って移動中
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「何か思い出したのか?」
「まあな。クラウンが神殿のことについて聞いてくれたから思い出したって感じなんだが、確かにあの神殿なら何か生物が住み着いてもおかしくないと思うんだ」
「その神殿は『海底の箱舟』と呼ばれているというやつでいいのか?」
「ああ、それで間違いない。実際にバカでかい沈没船がそのまま神殿となっている感じだからな。それにああいう沈没船ってのは大きければ大きいほど、生物にとっていい隠れ家なんだよ。それにあそこは目まぐるしいほどにいくつもの水流が繋がっているから敵からも襲われにくいうえに、小魚は流されていくからな。良い餌場でもある」
「ならば、その神殿に行けば黒幕が見つかるということでいいんだよな」
「ああ、そうなるな」
グラムは紅茶を口に含む。少し興奮してしまった気を落ち着かせるために。
「まあ、だとすれば尚更守り神の手助けは必要になるな。なんせ、その神殿はクラーケンがいたあの海底にあるんだから。一匹だけであっても僕達の力ではどうにもならない。それこそ、クラウンさんがあと九人ぐらい増えてくれなければ」
「主様なら実はいけるです?」
「さすがに無理だぞ、ベル。俺もお前らから地味に人害みたいな扱いを受けているが、さすがにそこまでじゃない。やれるならばとっくに数の暴力で叩きまくってる」
とりあえずだが、今後の話はこれで決まったも同然だ。後はそれを実行に移すだけとなった。するとここで、システィーナがある疑問を投げかける。
「そう言えばなんですが、守り神を仲間に引き入れるっていうのは絶対条件だということは理解したんですが、そもそも守り神が後何体いて、何体来てくれるかわかりませんよね!? 最低数が化け物を突破するための九体とすると、黒幕とその身一つで戦わなければいけないわけになりますよ! それも化け物を従える化け物を!」
「まあ、確かに.......その想定は考えてなかったな。まあ、どちらにしてもクラウン頼りになってしまうのが申し訳ないんだが.......」
「利害の一致の上での判断だしそれは仕方のないことだ。そもそも俺が乗り気になっている時点で気にするな。それにそんな問題は簡単に解決する」
「どういう方法です?」
「九体以上連れて来ればいい。生物である以上、一桁なんて数はあり得ない」
「いや、だからそれが無理だった場合の話を――――――」
ラグナはとんちんかんなことを言い始めたクラウンに対して思わず苦言を告げようとした瞬間、クラウンはその場を立ち上がった。
そして、対角線上に座っているシスティーナに膝間づくとそっと手を取る。それから、ここぞとばかりに良い声で告げた。
「システィ、お前ならやってくれると信じている」
「必ずやってみせますわあああああああぁぁぁぁぁ!」
ガバッと立ち上がったシスティーナは思いっきりガッツポーズしながら顔を上気させた。その様子にベルは初めて気の毒そうな顔をして、ラグナは「妹を誑かさないでくれ......」と顔を手で覆った。
クラウンも少々良心の痛むところがあったが、現状を打破するには一番の有効打と理解したので使わせてもらった。もちろん、どこかでこの貸しは埋めないといけないが。
そして、クラウンは立ちあがるとさらに念押しするようにシスティーナの頭を撫でながら告げた。
「さて、早いとこ終わらせるぞ」
*****************************
翌日、クラウン達は先行して泳ぐシスティーナを護衛するように周囲を警戒しながら後を追っていく。
現在、再び荒れ狂う海にて「水の語り部」であるシスティーナに守り神である海蛇リヴァイアサンの場所を探してもらっているのだ。
時折止まっては耳を澄ませて声を聴き、その声がする方へと泳いでいく。さらに、時折そこら辺を泳いでいる魚へ話しかけている。
もちろん、それはシスティーナにしか聞くことが出来ず、クラウン達はシスティーナを襲いに来る魔物を斬り伏せる。
いや、「襲う」というのはここでは正確な表現ではないだろう。確かに「襲う」でも意味は通じるのだが、もっとも端的な言い方をすれば「犯す」だ。
「水の語り部」は精霊に気に入られた存在であり、その者には微弱ながら神聖な気を纏う。そして、その気が他の水生生物との会話を可能にしているのだ。
しかし、同時にその気はフェロモンのような気もであるために、周囲から生物を引き寄せてしまうのだ。いわば周囲を半ば強制的に発情させる水中版サキュバスとでも言ったところか。
なぜ発情させられるとかの原因は未だ明らかにされていないらしいが、一説によるとその気を纏うことで自身も神に近しい存在なろうとしているのかもと。
やはり水生生物の中にも格付けみたいなものが暗黙の了解で存在するらしく、自身の子が神に近しい存在ならばその子を作り出した親も評価されるとかなんとか。
まあ、魚が人型のシスティーナを犯しに来るという絵面的にももはや想像できない部類の話ではあるが、そのような感じなためであることがシスティーナが海に泳ぎに行けない理由の一つらしい。
クラーケンの解決方法の一つとしてはシスティーナがそのイカを説得するという方法もあったのだが、その場合システィーナを慰みものとして献上するに等しいので、思いついたラグナは断固としてなかったことにした。
ちなみに、同じ魚人族に通用しない理由も諸説あるらしいが、それはいまここで話すことではないだろう。
そういうわけで、クラウン達はそれなりに忙しなくシスティーナの護衛をしている。
システィーナに近づく魔物を斬るたびに、その魔物から溢れ出る血が海中に漂い遠くから肉食魚類を引き寄せて、斬って寄せてという最悪な悪循環を繰り返しているために少し急いで欲しいというのが本音であったりする。
とはいえ、システィーナもシスティーナで自分にしか出来ないやるべきことを全うしているので何も言わないが。
「皆さん! 今貴重な情報をいただきました! この海流を乗っていけば蛇流崖という場所に辿り着くそうで―――――すよ!?」
「少しは自身の身の安全も確保してくれ」
「クラウン様!」
システィーナが背後にいるクラウン達に情報共有しようとした瞬間、先ほどまで話していた二メートルほどの海蛇がシスティーナに襲いかかった。
しかし、すぐさまシスティーナを抱き寄せてクラウンがそれを斬り伏せる。せっかく情報をくれた生物を斬らなければいけない。まるで美人局でもやっているみたいだ。
まあ、やるべきことがあるわけで、急いでいるわけでもあるので、同情などかけている余裕もないのだが。
その一方で、システィーナはのんきに蕩けた顔をしている。もし背景が映るのなら絶賛ハート製造機と化しているだろう。ベルがイラつくのは言うまでもない。
クラウンは一先ずシスティーナを離すと案内するよう伝えた。システィーナも理解力のある姫ではあるので、すぐにその海流へと泳いでいく。
そして、少し移動した所でクラウンが見たものはこれこそ本物海の大蛇ではないのかと思うぐらいの巨大で流れで白く見える海流だった。
その海流はどこまでも長く太く続いていてどこにどこまで向かえばいいのか全く分からない。まあ、そこら辺はシスティーナが指示してくれるだろうが。
「行きますよ!」
システィーナの掛け声とともにその海流に突入していく。すると、背後から強烈な圧で、まさに押し流されていくような感覚に襲われた。
体を少しも動かさずに流されていく。というか、勢いで体が上手く動かせないというのが正直なところなのだが。
背中の余すところのない全部から均等な圧を感じて押されていく。一点で押されているわけではないので、背中から反るように曲がらないだけマシであるが、それでも酷く呼吸しづらい。
背中越しから肺が圧迫されているのがわかる。いくら水中に適した服を着ていてそのおかげで地上と同じような呼吸ができるとはいえ、まともに肺を動かせなければ意味がない。
無理に動かそうとすれば、動かせる範囲は腕や脚を上下や前に動かせるぐらい、後ろに動かすのは不可能近い。
すると、先行していたシスティーナが不意に近づいてくる。その様子はまるで重苦しい圧をかける水流を歯牙にもかけていない感じである。
そして、システィーナはクラウンの両手を取ると告げる。
「リラックスしてください! 海流は身を任せるだけで勝手に進んでいきます! それに力が入ると余計に体を動かせなくなります! 脱力です! 海岸に打ち上げられた魚のようにただなすすべもなく力尽きた感じになってください!」
それは魚人族なりのアドバイスなのだろうか。それとも、システィーナの個人的なアドバイスなのだろうか。
どちらにしても、アドバイスのセンスは致命的な気がするが、一先ず力を抜けばいいということはわかった。
クラウンは言われた通りに体を流れに身を任せるままに脱力されていく。すると、体の向きは自然と水流の向きと平行になり、足元から押されて進んでいく。
先ほどのような全身にかかる圧力はなく、むしろ軽くすら感じる。息苦しさはないし、とても呼吸が楽になった。
動きやすさも楽になった。以前後ろには逆らって泳げない感じだが、少し重心をかけるだけで上下前へと自由に移動でき、後ろに移動する時は先ほどのように全身に水流の抵抗を受け止めれば泳ぐことはできずとも、少しずつ下がれるらしい。
そのまま流されていくこと十数分、先ほどまで暗い曇天の下であったため暗く感じていた海中から光を感じ始めた。
流れている海流が光の反射でより白く見えてくる。ふと上を見上げれば太陽らしき白い光の球体が確認できた。
「おい、システィーナ。ここはあの嵐の場所を抜けているんじゃないか?」
「抜けていますけど、ここからは抜けれませんよ! ここは自然が作り出した海の一方通行です! それに蛇流崖はさらにいくつもの海流が繋がっている魔の海域らしいです! 正しい道を知らなければ行く先は地獄! 正解を知っているのは守り神様だけです!」
悲しきかな。ようやく見えたと思った光はどうやらまやかしであるようだ。いや、本物ではあるのだが、クラウンとベルに限っては一時的に見える光は安易な希望を見せているに過ぎないのだ。
どちらにせよ、神殿に行くことが決まった以上は戻るのだが、やや精神的にダメージは負ってしまうものだ........出来る限り急いでいる二人にとっては。
そして、辿り着いたのが岩が東洋の龍にも見えなくない造形をしたいくつもの海流のゴール地点。
「ここが蛇流崖です!」
「まあな。クラウンが神殿のことについて聞いてくれたから思い出したって感じなんだが、確かにあの神殿なら何か生物が住み着いてもおかしくないと思うんだ」
「その神殿は『海底の箱舟』と呼ばれているというやつでいいのか?」
「ああ、それで間違いない。実際にバカでかい沈没船がそのまま神殿となっている感じだからな。それにああいう沈没船ってのは大きければ大きいほど、生物にとっていい隠れ家なんだよ。それにあそこは目まぐるしいほどにいくつもの水流が繋がっているから敵からも襲われにくいうえに、小魚は流されていくからな。良い餌場でもある」
「ならば、その神殿に行けば黒幕が見つかるということでいいんだよな」
「ああ、そうなるな」
グラムは紅茶を口に含む。少し興奮してしまった気を落ち着かせるために。
「まあ、だとすれば尚更守り神の手助けは必要になるな。なんせ、その神殿はクラーケンがいたあの海底にあるんだから。一匹だけであっても僕達の力ではどうにもならない。それこそ、クラウンさんがあと九人ぐらい増えてくれなければ」
「主様なら実はいけるです?」
「さすがに無理だぞ、ベル。俺もお前らから地味に人害みたいな扱いを受けているが、さすがにそこまでじゃない。やれるならばとっくに数の暴力で叩きまくってる」
とりあえずだが、今後の話はこれで決まったも同然だ。後はそれを実行に移すだけとなった。するとここで、システィーナがある疑問を投げかける。
「そう言えばなんですが、守り神を仲間に引き入れるっていうのは絶対条件だということは理解したんですが、そもそも守り神が後何体いて、何体来てくれるかわかりませんよね!? 最低数が化け物を突破するための九体とすると、黒幕とその身一つで戦わなければいけないわけになりますよ! それも化け物を従える化け物を!」
「まあ、確かに.......その想定は考えてなかったな。まあ、どちらにしてもクラウン頼りになってしまうのが申し訳ないんだが.......」
「利害の一致の上での判断だしそれは仕方のないことだ。そもそも俺が乗り気になっている時点で気にするな。それにそんな問題は簡単に解決する」
「どういう方法です?」
「九体以上連れて来ればいい。生物である以上、一桁なんて数はあり得ない」
「いや、だからそれが無理だった場合の話を――――――」
ラグナはとんちんかんなことを言い始めたクラウンに対して思わず苦言を告げようとした瞬間、クラウンはその場を立ち上がった。
そして、対角線上に座っているシスティーナに膝間づくとそっと手を取る。それから、ここぞとばかりに良い声で告げた。
「システィ、お前ならやってくれると信じている」
「必ずやってみせますわあああああああぁぁぁぁぁ!」
ガバッと立ち上がったシスティーナは思いっきりガッツポーズしながら顔を上気させた。その様子にベルは初めて気の毒そうな顔をして、ラグナは「妹を誑かさないでくれ......」と顔を手で覆った。
クラウンも少々良心の痛むところがあったが、現状を打破するには一番の有効打と理解したので使わせてもらった。もちろん、どこかでこの貸しは埋めないといけないが。
そして、クラウンは立ちあがるとさらに念押しするようにシスティーナの頭を撫でながら告げた。
「さて、早いとこ終わらせるぞ」
*****************************
翌日、クラウン達は先行して泳ぐシスティーナを護衛するように周囲を警戒しながら後を追っていく。
現在、再び荒れ狂う海にて「水の語り部」であるシスティーナに守り神である海蛇リヴァイアサンの場所を探してもらっているのだ。
時折止まっては耳を澄ませて声を聴き、その声がする方へと泳いでいく。さらに、時折そこら辺を泳いでいる魚へ話しかけている。
もちろん、それはシスティーナにしか聞くことが出来ず、クラウン達はシスティーナを襲いに来る魔物を斬り伏せる。
いや、「襲う」というのはここでは正確な表現ではないだろう。確かに「襲う」でも意味は通じるのだが、もっとも端的な言い方をすれば「犯す」だ。
「水の語り部」は精霊に気に入られた存在であり、その者には微弱ながら神聖な気を纏う。そして、その気が他の水生生物との会話を可能にしているのだ。
しかし、同時にその気はフェロモンのような気もであるために、周囲から生物を引き寄せてしまうのだ。いわば周囲を半ば強制的に発情させる水中版サキュバスとでも言ったところか。
なぜ発情させられるとかの原因は未だ明らかにされていないらしいが、一説によるとその気を纏うことで自身も神に近しい存在なろうとしているのかもと。
やはり水生生物の中にも格付けみたいなものが暗黙の了解で存在するらしく、自身の子が神に近しい存在ならばその子を作り出した親も評価されるとかなんとか。
まあ、魚が人型のシスティーナを犯しに来るという絵面的にももはや想像できない部類の話ではあるが、そのような感じなためであることがシスティーナが海に泳ぎに行けない理由の一つらしい。
クラーケンの解決方法の一つとしてはシスティーナがそのイカを説得するという方法もあったのだが、その場合システィーナを慰みものとして献上するに等しいので、思いついたラグナは断固としてなかったことにした。
ちなみに、同じ魚人族に通用しない理由も諸説あるらしいが、それはいまここで話すことではないだろう。
そういうわけで、クラウン達はそれなりに忙しなくシスティーナの護衛をしている。
システィーナに近づく魔物を斬るたびに、その魔物から溢れ出る血が海中に漂い遠くから肉食魚類を引き寄せて、斬って寄せてという最悪な悪循環を繰り返しているために少し急いで欲しいというのが本音であったりする。
とはいえ、システィーナもシスティーナで自分にしか出来ないやるべきことを全うしているので何も言わないが。
「皆さん! 今貴重な情報をいただきました! この海流を乗っていけば蛇流崖という場所に辿り着くそうで―――――すよ!?」
「少しは自身の身の安全も確保してくれ」
「クラウン様!」
システィーナが背後にいるクラウン達に情報共有しようとした瞬間、先ほどまで話していた二メートルほどの海蛇がシスティーナに襲いかかった。
しかし、すぐさまシスティーナを抱き寄せてクラウンがそれを斬り伏せる。せっかく情報をくれた生物を斬らなければいけない。まるで美人局でもやっているみたいだ。
まあ、やるべきことがあるわけで、急いでいるわけでもあるので、同情などかけている余裕もないのだが。
その一方で、システィーナはのんきに蕩けた顔をしている。もし背景が映るのなら絶賛ハート製造機と化しているだろう。ベルがイラつくのは言うまでもない。
クラウンは一先ずシスティーナを離すと案内するよう伝えた。システィーナも理解力のある姫ではあるので、すぐにその海流へと泳いでいく。
そして、少し移動した所でクラウンが見たものはこれこそ本物海の大蛇ではないのかと思うぐらいの巨大で流れで白く見える海流だった。
その海流はどこまでも長く太く続いていてどこにどこまで向かえばいいのか全く分からない。まあ、そこら辺はシスティーナが指示してくれるだろうが。
「行きますよ!」
システィーナの掛け声とともにその海流に突入していく。すると、背後から強烈な圧で、まさに押し流されていくような感覚に襲われた。
体を少しも動かさずに流されていく。というか、勢いで体が上手く動かせないというのが正直なところなのだが。
背中の余すところのない全部から均等な圧を感じて押されていく。一点で押されているわけではないので、背中から反るように曲がらないだけマシであるが、それでも酷く呼吸しづらい。
背中越しから肺が圧迫されているのがわかる。いくら水中に適した服を着ていてそのおかげで地上と同じような呼吸ができるとはいえ、まともに肺を動かせなければ意味がない。
無理に動かそうとすれば、動かせる範囲は腕や脚を上下や前に動かせるぐらい、後ろに動かすのは不可能近い。
すると、先行していたシスティーナが不意に近づいてくる。その様子はまるで重苦しい圧をかける水流を歯牙にもかけていない感じである。
そして、システィーナはクラウンの両手を取ると告げる。
「リラックスしてください! 海流は身を任せるだけで勝手に進んでいきます! それに力が入ると余計に体を動かせなくなります! 脱力です! 海岸に打ち上げられた魚のようにただなすすべもなく力尽きた感じになってください!」
それは魚人族なりのアドバイスなのだろうか。それとも、システィーナの個人的なアドバイスなのだろうか。
どちらにしても、アドバイスのセンスは致命的な気がするが、一先ず力を抜けばいいということはわかった。
クラウンは言われた通りに体を流れに身を任せるままに脱力されていく。すると、体の向きは自然と水流の向きと平行になり、足元から押されて進んでいく。
先ほどのような全身にかかる圧力はなく、むしろ軽くすら感じる。息苦しさはないし、とても呼吸が楽になった。
動きやすさも楽になった。以前後ろには逆らって泳げない感じだが、少し重心をかけるだけで上下前へと自由に移動でき、後ろに移動する時は先ほどのように全身に水流の抵抗を受け止めれば泳ぐことはできずとも、少しずつ下がれるらしい。
そのまま流されていくこと十数分、先ほどまで暗い曇天の下であったため暗く感じていた海中から光を感じ始めた。
流れている海流が光の反射でより白く見えてくる。ふと上を見上げれば太陽らしき白い光の球体が確認できた。
「おい、システィーナ。ここはあの嵐の場所を抜けているんじゃないか?」
「抜けていますけど、ここからは抜けれませんよ! ここは自然が作り出した海の一方通行です! それに蛇流崖はさらにいくつもの海流が繋がっている魔の海域らしいです! 正しい道を知らなければ行く先は地獄! 正解を知っているのは守り神様だけです!」
悲しきかな。ようやく見えたと思った光はどうやらまやかしであるようだ。いや、本物ではあるのだが、クラウンとベルに限っては一時的に見える光は安易な希望を見せているに過ぎないのだ。
どちらにせよ、神殿に行くことが決まった以上は戻るのだが、やや精神的にダメージは負ってしまうものだ........出来る限り急いでいる二人にとっては。
そして、辿り着いたのが岩が東洋の龍にも見えなくない造形をしたいくつもの海流のゴール地点。
「ここが蛇流崖です!」
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