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第12章 道化師は集めきる
第260話 精霊との対談
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「私はあのような邪神の手下ではありません」
大精霊と思われる光の球体はその姿は眩く輝かせて、姿は人の形へと変えていく。その際、周囲に魔力の波動が伝わっていく。
その一回の振動から光の球体はまさに人間離れした美貌の女性へと変貌し、植物の蔦で作ったような服を着ている。
ブロンドの髪は艶やかに腰辺りまで伸びていて、少し白く見える肌はその色の違いをハッキリと強調していた。そして、背中にある大きな羽は精霊としての特徴を表しているようだった。
変化があったのは大精霊に限らず、周囲に浮いていた球体も手のひらサイズの精霊となっていて、髪型や髪色に違いはあれど、さながらピーターパンに出てくるティンカーベルのようである。
クラウンは目だけで周囲を見回していきながら、先ほどの言葉について考えていた。
「何をした? そして、あのクソ野郎を知っているのか?」
「話しやすいようにあなた達に魔法をかけました。私達の本当の姿が見える魔法です。そして、もう一つの質問の回答としては知っています」
「どの程度?」
「詳しいことはそれほど、私達は神に属する者でありながらその存在はもはや末端。故に、こうしてこの世界で済んでいる次第です。少し二人で話しませんか?」
大精霊はそう言うと指をパチンと鳴らした。その瞬間、映像が切り替わるように周りの景色が切り替わる。
泉の洞窟であったこの場所は突如として辺り一面の花畑となり、やや雲が残る青空と太陽が見える。風は心地よいそよ風で、ほのかに甘い花の匂いを運んでくる。それらが果てしなく続いている。
「ここは.......?」
「ここは現在のあなた様の心を表しているのですよ」
「ここが俺の精神?」
「大地はあなた様の安らぎの思い出を表し、空は現在のあなたの心のありようを表しています。太陽の有無はあなた様に光を届けてくれる存在がいるかを表し、風は心の揺らぎを表しています。そして、この空間の大きさはあなたの心の許容量を表しています」
「随分と広いものだな。まあ、一般的な広さがわからないから何とも言いようがないが」
「あなた様の世界表現で言えば学校のグラウンドぐらいでしょうか?」
「どうしてそれを知っている?」
クラウンは咄嗟に警戒心を高めた。それは明らかに俗世に触れていないような大精霊が俗世の人々でも知らないような言葉を使っていたからだ。
以前に同郷の人物と会ったことがあるのかわからないが、もし違うとして知っているとしたら、それは人の記憶を盗み見たと考えるのが普通だろう。
つまりこの大精霊が人の心に干渉できるのだとすれば、それは非常に厄介なことであり、危険なことなのだ。
そのクラウンの警戒に大精霊は頭を下げてすぐに答えた。
「申し訳ありません。あなた様と二人でお話しするためには精神世界が一番手っ取り早かったのでございます。しかし、それを使うとどうしても一部あなた様の記憶の一部が逆流してくるのです。それ先に説明しておくべきでした」
嘘偽りは感じられない。どうやら嫌疑は白で誠心誠意の言葉であるようだ。そう思うとクラウンは一先ず警戒を解いた。
「それで二人で話したいことってのはやはりあのクソ野郎でいいんだよな?」
「現神トウマのことで間違いありません。そして、先に申し上げておきますと。現状では私は神の眷属ではなく、一介の魔物と変わりありません」
「どういうことだ?」
「私達が神の眷属であったのは前神セイレーネ様の時でございます。私達が神の末端として眷属になるためには、再契約が必要なのです。もっとも神が変わると思っていませんでしたから、このような事態には何と言えばいいのかわかりませんが」
「『ただの魔物』ってのはそういうことか。だが、それはあくまで現段階で眷属になっていないだけでもとは神の末端なんだろう? それに眷属の時に使えていた力はそのまま引き継いでいたりするだろ?」
「はい、そうです。ただし『世界の調和を正す』という目的のために作られた特別な存在です。あなた様の世界風に言うと『RPGで魔王討伐する際に見つければ戦闘が楽になりますよ』的な役割です。それから、二つ目の質問に対しても『道化師で覚えていた技は賢者に転職した後でも使うことは可能』という感じです。制約はありますが」
「お前、その言い方少し気に入ってるだろ」
「おや、バレました?」
大精霊は少し茶目っ気を見せながら笑みを浮かべる。固い雰囲気も取り付きにくかったが、これはこれでめんどくさい。ともあれ、聞いたことにはしっかりと答えてくれるようだ。
「それじゃあ、神のところへ行くにはどうしたらいい?」
クラウンは大精霊が自分の目的を知っている前提で質問した。それに対して、大精霊は誠実に答えた。
「行く方法は三つです。ですが、実質一つしか無理ですね」
「全て言ってくれ」
「一つ目は神の場所に続く道を見つけること。この世界は不安定です。どこもかしこも空間が揺らいでいている状態です。そして、天界とはこの世界とは一次元違う場所にありますので、その空間の揺らぎから天界に行くことは可能です。しかし、そもそも空間の揺らぎというのが観測できなければ、そして干渉できなければ意味がありません」
「それは神の力を持っていないとわからないのか? それにお前はその揺らぎの場所は知っているのか?」
「私はその揺らぎを見つけることが出来ます。しかし、干渉するには神の力が必要です。普通の人は空を殴っても何も起きませんから」
「二つ目は?」
「二つ目は神自身にこちら側に天界とのパスを繋げさせることです。そうすれば、空間に干渉する必要はないので、後は探すだけになります。それに探すこともそう難しくはないでしょう。なぜなら、人が一人通れる分の干渉ではなく、いわば天界という一つの世界がこの世界に干渉するわけですから、光の柱などが立ってすぐに見つけられます」
「しかし、それをするってことは相手側にこちらの世界に干渉させる理由を作らなければいけないよな?」
「その通りです。神トウマは狂乱と絶望を好みます。しかし、それでこの世界に興味を引かせようとすれば、神トウマを呼び寄せる前に世界が滅んでしまいます。加えて、神自身が出張ることはなく大抵神の使徒が現れるぐらいでしょう」
「なら、挑発か。しかし、その見え透いた手にクソ野郎が乗るとは思えないな」
「案外そうでもありませんよ。神トウマが望む狂乱と絶望はより強い光を持ったものが闇へと堕ちる時のことを指します。神トウマは強い光程自身の手で壊したがる。それで幾重もの違う世界の勇者が殺されていきました」
「奴が出張るほど強くなるってことか.......」
「つまるところそうなりますね。ですが、神の使い怠惰を司るラズリを倒しただけでは神トウマは出て来ません。一番早く出張らせたいのならば、神トウマのお気に入りである神の使い傲慢を司るレグリアを倒すほかないでしょう。あくまで可能性なので断定はできないですが、それが大きな影響を与えることになるのは確かです」
「三つ目は?」
「三つ目はあなた方が神の力を得ることです。とある言い伝えでは『八つの玉を集めし者、神聖にして清廉なる泉への行かん』とあります。『泉』に対しての詳細は聞き及んでいませんが、『八つの玉』というのは、現在進行形であなた様が集めなさっている宝玉のことで間違いないでしょう」
「俺達が集めた宝玉で道が切り開けるのか.......だが、どこにこの宝玉を使えばいいのかはわからないんだよな?」
「はい。おおよそは神殿かと思われますが、もしかしたら全く別の可能性もなくはありません」
「神の力って言っていたが、それは響のようなものか?」
「いえ、恐らくあれほどまでに奇麗な<神格化>とはいかないと思われます。あれは勇者の役職としての神聖魔力と本人の資質が上手くかみ合っていたものです。その言い伝えでは『その泉の水を飲みし者、天によってその身を神へと変化す』と続きがありますが、実際の事例は私も知りません。そもそも触れるのはタブーなのですから」
「どういうことだ?」
「神は聖なるものにして清らかなるもの。その身は誰に汚されることもなく、誰に犯されることもない。それ以外の汚れし者は天界を追放され、下界へ落ちる。それがいわばこの世界の種族であり、魔物であるのです。とはいえ、神に至る泉など現界の者が触れれば汚れて効力を失うか、もしくはその神聖さに魂が成仏されるのどちらかと思われますが......」
「つまり試してみないとわからないってことか」
「はい、そうなります.......ってその反応でよろしいのですか?」
大精霊が初めて驚いたような顔を見せた。その反応にクラウンは不敵な笑みを見せる。
「ああ、当然だ。俺の目的は今も昔も変わらない。クソ野郎を殺す。ただそれだけだ。それにお前は言っただろ? それが天界へと行く『実質一つ』の方法だと」
「ですが、こう言っては何ですが、話しているうちに止めた方がいいと思われまして.......」
「やるかどうかは俺次第だ。お前はその案を出してくれただけ、それだけだ。お前には被害が及ばないし、俺の独断で実行したんだ自己責任は当たり前だろ」
「私が提案したことであなた様がおかしくなってしまうのを見過ごせないんです! 確かに、神トウマをどうにかして欲しいという気持ちはあります! そして、また私が使えていた天界に戻らないかと望むこともあります! ですが、あまりに荷が重すぎます!」
大精霊はハッとすると思わず声を荒げてしまったことに恥ずかしそうな態度を取る。そんな大精霊を見たクラウンは思わずため息を吐いた。
「何か文句でもあるんですか?」
「別に気にしなくてもいいことを随分と気にするもんだと思ってな」
「それは当然心配だから―――――――」
「だからこそ、俺は行く。俺は必ず奴を殺す。それとお前、随分と素が出てるぞ」
「!」
「俺はまあ、いろいろあって説得力はないし、こんな主人公キャラが言うようなセリフを吐く柄でもねぇんだが――――――」
クラウンはギラついた瞳に不敵な笑みを見せる。その笑みに大精霊は思わずドキッと頬を赤らめる。柔らかな風が吹く。その風に花畑の地面が左右に揺れていく。
「俺を信じろ」
「.......分かりました」
大精霊はこれ以上の説得は無理と判断したのか、ため息を吐きながら承諾した。
「それでは、神トウマに勝った暁には是非とも使えさせてください」
「ん? それはどういう意味だ――――――」
「精霊のご加護があらんことを」
その瞬間、二人のいた空間は真っ暗になった。
大精霊と思われる光の球体はその姿は眩く輝かせて、姿は人の形へと変えていく。その際、周囲に魔力の波動が伝わっていく。
その一回の振動から光の球体はまさに人間離れした美貌の女性へと変貌し、植物の蔦で作ったような服を着ている。
ブロンドの髪は艶やかに腰辺りまで伸びていて、少し白く見える肌はその色の違いをハッキリと強調していた。そして、背中にある大きな羽は精霊としての特徴を表しているようだった。
変化があったのは大精霊に限らず、周囲に浮いていた球体も手のひらサイズの精霊となっていて、髪型や髪色に違いはあれど、さながらピーターパンに出てくるティンカーベルのようである。
クラウンは目だけで周囲を見回していきながら、先ほどの言葉について考えていた。
「何をした? そして、あのクソ野郎を知っているのか?」
「話しやすいようにあなた達に魔法をかけました。私達の本当の姿が見える魔法です。そして、もう一つの質問の回答としては知っています」
「どの程度?」
「詳しいことはそれほど、私達は神に属する者でありながらその存在はもはや末端。故に、こうしてこの世界で済んでいる次第です。少し二人で話しませんか?」
大精霊はそう言うと指をパチンと鳴らした。その瞬間、映像が切り替わるように周りの景色が切り替わる。
泉の洞窟であったこの場所は突如として辺り一面の花畑となり、やや雲が残る青空と太陽が見える。風は心地よいそよ風で、ほのかに甘い花の匂いを運んでくる。それらが果てしなく続いている。
「ここは.......?」
「ここは現在のあなた様の心を表しているのですよ」
「ここが俺の精神?」
「大地はあなた様の安らぎの思い出を表し、空は現在のあなたの心のありようを表しています。太陽の有無はあなた様に光を届けてくれる存在がいるかを表し、風は心の揺らぎを表しています。そして、この空間の大きさはあなたの心の許容量を表しています」
「随分と広いものだな。まあ、一般的な広さがわからないから何とも言いようがないが」
「あなた様の世界表現で言えば学校のグラウンドぐらいでしょうか?」
「どうしてそれを知っている?」
クラウンは咄嗟に警戒心を高めた。それは明らかに俗世に触れていないような大精霊が俗世の人々でも知らないような言葉を使っていたからだ。
以前に同郷の人物と会ったことがあるのかわからないが、もし違うとして知っているとしたら、それは人の記憶を盗み見たと考えるのが普通だろう。
つまりこの大精霊が人の心に干渉できるのだとすれば、それは非常に厄介なことであり、危険なことなのだ。
そのクラウンの警戒に大精霊は頭を下げてすぐに答えた。
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嘘偽りは感じられない。どうやら嫌疑は白で誠心誠意の言葉であるようだ。そう思うとクラウンは一先ず警戒を解いた。
「それで二人で話したいことってのはやはりあのクソ野郎でいいんだよな?」
「現神トウマのことで間違いありません。そして、先に申し上げておきますと。現状では私は神の眷属ではなく、一介の魔物と変わりありません」
「どういうことだ?」
「私達が神の眷属であったのは前神セイレーネ様の時でございます。私達が神の末端として眷属になるためには、再契約が必要なのです。もっとも神が変わると思っていませんでしたから、このような事態には何と言えばいいのかわかりませんが」
「『ただの魔物』ってのはそういうことか。だが、それはあくまで現段階で眷属になっていないだけでもとは神の末端なんだろう? それに眷属の時に使えていた力はそのまま引き継いでいたりするだろ?」
「はい、そうです。ただし『世界の調和を正す』という目的のために作られた特別な存在です。あなた様の世界風に言うと『RPGで魔王討伐する際に見つければ戦闘が楽になりますよ』的な役割です。それから、二つ目の質問に対しても『道化師で覚えていた技は賢者に転職した後でも使うことは可能』という感じです。制約はありますが」
「お前、その言い方少し気に入ってるだろ」
「おや、バレました?」
大精霊は少し茶目っ気を見せながら笑みを浮かべる。固い雰囲気も取り付きにくかったが、これはこれでめんどくさい。ともあれ、聞いたことにはしっかりと答えてくれるようだ。
「それじゃあ、神のところへ行くにはどうしたらいい?」
クラウンは大精霊が自分の目的を知っている前提で質問した。それに対して、大精霊は誠実に答えた。
「行く方法は三つです。ですが、実質一つしか無理ですね」
「全て言ってくれ」
「一つ目は神の場所に続く道を見つけること。この世界は不安定です。どこもかしこも空間が揺らいでいている状態です。そして、天界とはこの世界とは一次元違う場所にありますので、その空間の揺らぎから天界に行くことは可能です。しかし、そもそも空間の揺らぎというのが観測できなければ、そして干渉できなければ意味がありません」
「それは神の力を持っていないとわからないのか? それにお前はその揺らぎの場所は知っているのか?」
「私はその揺らぎを見つけることが出来ます。しかし、干渉するには神の力が必要です。普通の人は空を殴っても何も起きませんから」
「二つ目は?」
「二つ目は神自身にこちら側に天界とのパスを繋げさせることです。そうすれば、空間に干渉する必要はないので、後は探すだけになります。それに探すこともそう難しくはないでしょう。なぜなら、人が一人通れる分の干渉ではなく、いわば天界という一つの世界がこの世界に干渉するわけですから、光の柱などが立ってすぐに見つけられます」
「しかし、それをするってことは相手側にこちらの世界に干渉させる理由を作らなければいけないよな?」
「その通りです。神トウマは狂乱と絶望を好みます。しかし、それでこの世界に興味を引かせようとすれば、神トウマを呼び寄せる前に世界が滅んでしまいます。加えて、神自身が出張ることはなく大抵神の使徒が現れるぐらいでしょう」
「なら、挑発か。しかし、その見え透いた手にクソ野郎が乗るとは思えないな」
「案外そうでもありませんよ。神トウマが望む狂乱と絶望はより強い光を持ったものが闇へと堕ちる時のことを指します。神トウマは強い光程自身の手で壊したがる。それで幾重もの違う世界の勇者が殺されていきました」
「奴が出張るほど強くなるってことか.......」
「つまるところそうなりますね。ですが、神の使い怠惰を司るラズリを倒しただけでは神トウマは出て来ません。一番早く出張らせたいのならば、神トウマのお気に入りである神の使い傲慢を司るレグリアを倒すほかないでしょう。あくまで可能性なので断定はできないですが、それが大きな影響を与えることになるのは確かです」
「三つ目は?」
「三つ目はあなた方が神の力を得ることです。とある言い伝えでは『八つの玉を集めし者、神聖にして清廉なる泉への行かん』とあります。『泉』に対しての詳細は聞き及んでいませんが、『八つの玉』というのは、現在進行形であなた様が集めなさっている宝玉のことで間違いないでしょう」
「俺達が集めた宝玉で道が切り開けるのか.......だが、どこにこの宝玉を使えばいいのかはわからないんだよな?」
「はい。おおよそは神殿かと思われますが、もしかしたら全く別の可能性もなくはありません」
「神の力って言っていたが、それは響のようなものか?」
「いえ、恐らくあれほどまでに奇麗な<神格化>とはいかないと思われます。あれは勇者の役職としての神聖魔力と本人の資質が上手くかみ合っていたものです。その言い伝えでは『その泉の水を飲みし者、天によってその身を神へと変化す』と続きがありますが、実際の事例は私も知りません。そもそも触れるのはタブーなのですから」
「どういうことだ?」
「神は聖なるものにして清らかなるもの。その身は誰に汚されることもなく、誰に犯されることもない。それ以外の汚れし者は天界を追放され、下界へ落ちる。それがいわばこの世界の種族であり、魔物であるのです。とはいえ、神に至る泉など現界の者が触れれば汚れて効力を失うか、もしくはその神聖さに魂が成仏されるのどちらかと思われますが......」
「つまり試してみないとわからないってことか」
「はい、そうなります.......ってその反応でよろしいのですか?」
大精霊が初めて驚いたような顔を見せた。その反応にクラウンは不敵な笑みを見せる。
「ああ、当然だ。俺の目的は今も昔も変わらない。クソ野郎を殺す。ただそれだけだ。それにお前は言っただろ? それが天界へと行く『実質一つ』の方法だと」
「ですが、こう言っては何ですが、話しているうちに止めた方がいいと思われまして.......」
「やるかどうかは俺次第だ。お前はその案を出してくれただけ、それだけだ。お前には被害が及ばないし、俺の独断で実行したんだ自己責任は当たり前だろ」
「私が提案したことであなた様がおかしくなってしまうのを見過ごせないんです! 確かに、神トウマをどうにかして欲しいという気持ちはあります! そして、また私が使えていた天界に戻らないかと望むこともあります! ですが、あまりに荷が重すぎます!」
大精霊はハッとすると思わず声を荒げてしまったことに恥ずかしそうな態度を取る。そんな大精霊を見たクラウンは思わずため息を吐いた。
「何か文句でもあるんですか?」
「別に気にしなくてもいいことを随分と気にするもんだと思ってな」
「それは当然心配だから―――――――」
「だからこそ、俺は行く。俺は必ず奴を殺す。それとお前、随分と素が出てるぞ」
「!」
「俺はまあ、いろいろあって説得力はないし、こんな主人公キャラが言うようなセリフを吐く柄でもねぇんだが――――――」
クラウンはギラついた瞳に不敵な笑みを見せる。その笑みに大精霊は思わずドキッと頬を赤らめる。柔らかな風が吹く。その風に花畑の地面が左右に揺れていく。
「俺を信じろ」
「.......分かりました」
大精霊はこれ以上の説得は無理と判断したのか、ため息を吐きながら承諾した。
「それでは、神トウマに勝った暁には是非とも使えさせてください」
「ん? それはどういう意味だ――――――」
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