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第12章 道化師は集めきる
第257話 素材集め#1
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「ここがこの城の地下にある『精霊の試練』だ」
「普通のダンジョンのようだな」
クラウン達はラグナに連れられて洞窟の入り口までやって来ていた。そこは何の変哲もない土を掘ったような入り口で中から気配を感じる様子もない。
気配を感じようとも進むことは決定事項なのだが、ここでクラウンは一つ確認しておきたいことがあった。それは今現在も服の裾を引っ張っているシスティーナに対してだ。
「どうしてここにいるんだ?」
「そうです。ラグナ様は武術の心得があると聞いていましたのでまだわかりますが、この女はどう考えても戦闘員足り得ないです」
「なんですか! その言い方は! 言っておきますけど、私的にはあなたの方が要らなんですよ! それにこの洞窟は私達『水の語り部』がいないとたどり着けないんですよ!」
ベルはハッキリした物言いに思わずカチンときながらも、咄嗟にラグナにその言葉が本当か確認する。すると、また身内の恥が恥ずかしそうにしながらも大きく一回うなづいた。
そのことに思わずショックを受けたベルがもう一度システィーナを見ると勝ち誇ったような顔をしていた。その顔には我慢できなかったのかベルとシスティーナの取っ組み合いが始まる。
地面をゴロゴロと転がるようになり始めるとどちらもマウントを取ろうと必死である。この取っ組み合いも今に始まったことではないので、クラウンは無視しながらラグナに先ほどの言葉について尋ねた。
「『水の語り部』って言っていたがそれはどういう意味だ?」
「語り部というのはいわば精霊の言葉を代わりに僕達に伝えてくれる存在のことだ。本来、精霊は声や姿は見ることが出来ない。だが、特別精霊の声を聞ける者がいる。その者達を『語り部』と呼んでいるんだ』」
「それじゃあ、その語り部がいないとこの先には進めないということか?」
「別にそういうわけじゃないんですが、語り部の存在があるかないかだと素材の発見に大きく時間に差が出るという感じです。まあ、他にもありますが。それに上手くすれば、精霊様の場所に辿り着いて祝福を受ける可能性があります」
「.......その精霊って神の手先だったりしないよな?」
「ん? 精霊は古来より神の眷属と書物とかには記されてますが」
「いや、気にするな。ただの世迷言だ」
クラウンは思わずため息を吐いた。ラグナの言葉が本当なら、これから進む先は地獄への片道切符だというのだから。
精霊は書物では神の眷属。つまりは神の使徒とニアイコールということで、神殿に辿り着くまでに死闘を繰り広げる可能性があるかもしれないからだ。
もちろん、そうならないことを願うばかり。しかし、そうなるのだとすれば、覚悟しなければいけないのは確かだ。
クラウンは一先ず暴れている二人に拳骨を落とすとシスティーナに道案内をしてもらった。
最初の道は広い一本道であった。見たところ罠とかが仕掛けられている感じはない。システィーナを見てみると辺りをキョロキョロと見回している様子で、時折耳を澄ましている。
当然ながら、クラウン達には聞こえない。しかし、足取りに迷いが見られないことから恐らく聞こえているということなのだろう。
「ラグナ、お前が持っているその槍から強い魔力を感じる」
クラウンはシスティーナの行動を視界に入れながらラグナに話しかけた。それはラグナが持っている三又の槍について。
その槍に内包している魔力は常人の魔力量を超えていて、クラウンの<魔力感知>からは強い二本の魔力の線が槍を中心に螺旋状に渦巻いている。
そして、その魔力はその槍を持つラグナの手に宿る魔力と同調しているようで一つになるように魔力の境目が無くなっている。
「ああ、これは王家に伝わる伝説の槍さ。この槍の能力は所有者の潜在魔力を引き出したり、投げた時所有者に戻ってくる効果があるんだ。まあ、それでもあの化け物には勝てなかったが」
「そういえば、システィーナが戦ったとか言っていたな」
「ああ、奴も海中生物だからな。俺達が水中戦を得意としていても簡単にマウントを取らせてくれない。それに、巨大なうねる足がとても邪魔だった。一撃でも当たればひとたまりもないそれを避けながら攻撃するのは難しかった。的は大きいから当てるのは簡単なんだが、そもそも攻撃すること自体がって意味だ」
「それじゃあ、俺が助けた時にお前の槍を持っていなかったのは?」
「恐らく海流に乗って俺が遠くに流されたんだろうな。君に助けてもらって戻っている時に槍が戻ってきていたから。おっと、流されたと言えば、こんなものを君の近くで拾ったのだがそうかい?」
そう言って渡してきたのはエメラルドに深く割れたヒビが目立つペンダントであった。
それは雪姫から貰ったもので、このペンダントでレグリアによって操られていたクラスメイトの攻撃を防ぐことが出来た。
よく見るとそのペンダントは以前よりも欠けている。そのペンダントから魔力的な何かを感じる様子はない。
以前もただ首につけていただけだったので魔道具的な何かなのかは判断がつかないが、もしかしたらその可能性が近いと思われた。
それはラズリの爆発が起きた距離にある。クラウンはもとよりラズリに捕まって爆心地にいる状況であった。
しかし、ロキの捨て身の行動でラズリはロキの方へと爆心地を移動していき、クラウンはロキに後ろ足で思いっきり蹴られて吹き飛ばされた。
とはいえ、それでも爆心地に対して非常に近い位置にいることは変わりない。つまりは死んでいることが当たり前なのだ。
しかし、現在はこうしてクラウンは五体満足で行動している。そうであるならば、このペンダントの効果かもしれないということだ。
そもそも一度致死確実の攻撃を受けているのでもう効力は切れていると思われていたのだが.......どうやら雪姫にまたもや助けられてしまったらしい。
クラウンはそのペンダントを大切そうに見つめると首にかけていく。たとえもう効力を失っていようとも、もう手放してはいけない大切なものとなっているのだ。
「そろそろ! 来るよ!」
しばらく歩いていると、システィーナが何かを聞いたのか突然前方を指し始めた。すると、そこには二手に分かれる道がある。
恐らく次にどちらかを進むということなのだろ。しかし、それはシスティーナがいれば問題ない.....と思われたが、なぜかシスティーナは怪訝な顔を浮かべる。
「どうしたんだ? システィ」
「ラグナ兄様.......なんかおかしいんです! 道は二つしかないのに、精霊の声だと二つの道とは関係ない壁を指しているのです!」
「壁?」
そう言ってラグナはシスティーナが指を向けた左手側にある壁に手を触れる。しかし、その壁を触った感じも、叩いた感じもただの壁である。
クラウンは咄嗟に<気配察知>を発動させる。すると、ラグナが触れている壁には不自然な気配を感じる。
そこでラグナをその場から下がらせると代わりに前に出たクラウンは左手で刀の鍔を押し上げた。そして、居合切りの要領で一気に抜刀。何かがあるとされている壁を斬り砕いた。
すると、その壁を覆うようにいたのは水色のボディをした巨大なスライムであった。そのスライムの大きさは三メートルほどあり、ボディの中には明らかに弱点であろう赤い核が見える。
「そいつはウォータースライム。水の膜で覆われた変形生物だ。そして、そのスライムがまず一つ目の素材だ。そいつの水膜が必要なんだ」
「水膜ってどのあたりを指しているんだ?」
「あいつの水を覆っているボディのことだ。あいつに物理攻撃は通用しない。斬れば分裂するし、一つになることもある。加えて、弱点は魔法なのだが、魔法を使うと水膜を回収できない」
「なら、どうするです?」
「何体かに分裂することで中の水分を少しずつ減らしていく。しかし、斬った瞬間に水膜がすぐに体を回復させるから中の水を捨てさせる量も微々たるものだ。核を狙った方がいい。核を壊せば当然水膜は回復しないし、空けた穴から中の水分も出る」
「核を貫けってことか」
クラウンが思わずめんどくさそうにため息を吐くとスライムはクラウン達に向かって体から突起を突き出し、それを一気に解放した。
その瞬間、その突起は伸びて壁を容易に貫いていく。それをクラウンは咄嗟にシスティーナを抱えて避ける。
システィーナが色々なんかを言っているがそれを無視しながら、ベルに放り投げ、守るように指示すると加速して間合いを詰める。
そして、中心の核に向かって刀を突いた。しかし、その核はまるで生きているかのように中心からズレると伸ばしていた水の突起を戻し始めた。
その際、その水の突起同士はクラウンを囲うように互いを繋げると一部を薄い刃物のような形状変えた。それを引き戻すことでクラウンの頭を刈り取るつもりらしい。
しかし、クラウンは咄嗟にその場に跳躍して天井に脚をつける。それから蹴って、その勢いのまま地面へ刀を振り下ろした。
それによってスライムの体は二つに分裂。水が僅かに空中に飛び散り、クラウンの刀は濡れる。
核は右側へと移動した。狙いを絞ることに変更したようだ。多少水膜の量が減ってしまうような気がしなくもないが、倒せなければ意味がない。
そして、クラウンが右側へと攻め込もうとして足の向きを変えた瞬間、クラウンの背後から斬られた左側がタックルしようと動き出した。
どうやら核が無くても動けるらしい。それを尻目で見ていたクラウンは咄嗟に前足でブレーキをかけると背面跳びをするかの如く跳躍していく。
クラウンが跳び超えていく間に左側のスライムは右側のスライムに合流して、再び一つのスライムとなり始めた。
「そこだ! 投げろ!」
「わかった」
その瞬間をただジッと狙っていたクラウンは咄嗟にラグナに指示を出す。すると、狙いを定めるように左手を掲げていたラグナは槍を右手に思いっきり投げる。
投げられた槍は空中で三又から一本やりに変形し始めるとそのままスライムの核を捉え、貫通し壁に突き刺さった。
「キィ――――――!」
奇声のような音ともにスライムのボディは槍が抜けた場所から中の水を溢れ流し始める。どうやら無事に水膜を確保できたようだ。
そして、クラウンがベルの方へとふと見るとたくさんの小さいスライムに、中くらいのスラムに囲まれていた。さらに、奧からも何体ものスライムが大きなボディを揺らしながら跳ねてくる。
「どうやら僕達が倒したスライムは死に際に仲間を呼んだらしい。だが、どちらにせよもう一体からなければならなかったのだが.......これは多すぎる。最悪スライム同士がくっついてここが水中戦に早変わりするぞ。すぐに倒さなければ君達は窒息死だ」
「チッ、めんどくせぇ」
クラウンは思わず溢れた愚痴を吐き捨てると向かって来るスライムに駆けていった。そしてしばらくの間、スライムとの戦闘が続いた。
「普通のダンジョンのようだな」
クラウン達はラグナに連れられて洞窟の入り口までやって来ていた。そこは何の変哲もない土を掘ったような入り口で中から気配を感じる様子もない。
気配を感じようとも進むことは決定事項なのだが、ここでクラウンは一つ確認しておきたいことがあった。それは今現在も服の裾を引っ張っているシスティーナに対してだ。
「どうしてここにいるんだ?」
「そうです。ラグナ様は武術の心得があると聞いていましたのでまだわかりますが、この女はどう考えても戦闘員足り得ないです」
「なんですか! その言い方は! 言っておきますけど、私的にはあなたの方が要らなんですよ! それにこの洞窟は私達『水の語り部』がいないとたどり着けないんですよ!」
ベルはハッキリした物言いに思わずカチンときながらも、咄嗟にラグナにその言葉が本当か確認する。すると、また身内の恥が恥ずかしそうにしながらも大きく一回うなづいた。
そのことに思わずショックを受けたベルがもう一度システィーナを見ると勝ち誇ったような顔をしていた。その顔には我慢できなかったのかベルとシスティーナの取っ組み合いが始まる。
地面をゴロゴロと転がるようになり始めるとどちらもマウントを取ろうと必死である。この取っ組み合いも今に始まったことではないので、クラウンは無視しながらラグナに先ほどの言葉について尋ねた。
「『水の語り部』って言っていたがそれはどういう意味だ?」
「語り部というのはいわば精霊の言葉を代わりに僕達に伝えてくれる存在のことだ。本来、精霊は声や姿は見ることが出来ない。だが、特別精霊の声を聞ける者がいる。その者達を『語り部』と呼んでいるんだ』」
「それじゃあ、その語り部がいないとこの先には進めないということか?」
「別にそういうわけじゃないんですが、語り部の存在があるかないかだと素材の発見に大きく時間に差が出るという感じです。まあ、他にもありますが。それに上手くすれば、精霊様の場所に辿り着いて祝福を受ける可能性があります」
「.......その精霊って神の手先だったりしないよな?」
「ん? 精霊は古来より神の眷属と書物とかには記されてますが」
「いや、気にするな。ただの世迷言だ」
クラウンは思わずため息を吐いた。ラグナの言葉が本当なら、これから進む先は地獄への片道切符だというのだから。
精霊は書物では神の眷属。つまりは神の使徒とニアイコールということで、神殿に辿り着くまでに死闘を繰り広げる可能性があるかもしれないからだ。
もちろん、そうならないことを願うばかり。しかし、そうなるのだとすれば、覚悟しなければいけないのは確かだ。
クラウンは一先ず暴れている二人に拳骨を落とすとシスティーナに道案内をしてもらった。
最初の道は広い一本道であった。見たところ罠とかが仕掛けられている感じはない。システィーナを見てみると辺りをキョロキョロと見回している様子で、時折耳を澄ましている。
当然ながら、クラウン達には聞こえない。しかし、足取りに迷いが見られないことから恐らく聞こえているということなのだろう。
「ラグナ、お前が持っているその槍から強い魔力を感じる」
クラウンはシスティーナの行動を視界に入れながらラグナに話しかけた。それはラグナが持っている三又の槍について。
その槍に内包している魔力は常人の魔力量を超えていて、クラウンの<魔力感知>からは強い二本の魔力の線が槍を中心に螺旋状に渦巻いている。
そして、その魔力はその槍を持つラグナの手に宿る魔力と同調しているようで一つになるように魔力の境目が無くなっている。
「ああ、これは王家に伝わる伝説の槍さ。この槍の能力は所有者の潜在魔力を引き出したり、投げた時所有者に戻ってくる効果があるんだ。まあ、それでもあの化け物には勝てなかったが」
「そういえば、システィーナが戦ったとか言っていたな」
「ああ、奴も海中生物だからな。俺達が水中戦を得意としていても簡単にマウントを取らせてくれない。それに、巨大なうねる足がとても邪魔だった。一撃でも当たればひとたまりもないそれを避けながら攻撃するのは難しかった。的は大きいから当てるのは簡単なんだが、そもそも攻撃すること自体がって意味だ」
「それじゃあ、俺が助けた時にお前の槍を持っていなかったのは?」
「恐らく海流に乗って俺が遠くに流されたんだろうな。君に助けてもらって戻っている時に槍が戻ってきていたから。おっと、流されたと言えば、こんなものを君の近くで拾ったのだがそうかい?」
そう言って渡してきたのはエメラルドに深く割れたヒビが目立つペンダントであった。
それは雪姫から貰ったもので、このペンダントでレグリアによって操られていたクラスメイトの攻撃を防ぐことが出来た。
よく見るとそのペンダントは以前よりも欠けている。そのペンダントから魔力的な何かを感じる様子はない。
以前もただ首につけていただけだったので魔道具的な何かなのかは判断がつかないが、もしかしたらその可能性が近いと思われた。
それはラズリの爆発が起きた距離にある。クラウンはもとよりラズリに捕まって爆心地にいる状況であった。
しかし、ロキの捨て身の行動でラズリはロキの方へと爆心地を移動していき、クラウンはロキに後ろ足で思いっきり蹴られて吹き飛ばされた。
とはいえ、それでも爆心地に対して非常に近い位置にいることは変わりない。つまりは死んでいることが当たり前なのだ。
しかし、現在はこうしてクラウンは五体満足で行動している。そうであるならば、このペンダントの効果かもしれないということだ。
そもそも一度致死確実の攻撃を受けているのでもう効力は切れていると思われていたのだが.......どうやら雪姫にまたもや助けられてしまったらしい。
クラウンはそのペンダントを大切そうに見つめると首にかけていく。たとえもう効力を失っていようとも、もう手放してはいけない大切なものとなっているのだ。
「そろそろ! 来るよ!」
しばらく歩いていると、システィーナが何かを聞いたのか突然前方を指し始めた。すると、そこには二手に分かれる道がある。
恐らく次にどちらかを進むということなのだろ。しかし、それはシスティーナがいれば問題ない.....と思われたが、なぜかシスティーナは怪訝な顔を浮かべる。
「どうしたんだ? システィ」
「ラグナ兄様.......なんかおかしいんです! 道は二つしかないのに、精霊の声だと二つの道とは関係ない壁を指しているのです!」
「壁?」
そう言ってラグナはシスティーナが指を向けた左手側にある壁に手を触れる。しかし、その壁を触った感じも、叩いた感じもただの壁である。
クラウンは咄嗟に<気配察知>を発動させる。すると、ラグナが触れている壁には不自然な気配を感じる。
そこでラグナをその場から下がらせると代わりに前に出たクラウンは左手で刀の鍔を押し上げた。そして、居合切りの要領で一気に抜刀。何かがあるとされている壁を斬り砕いた。
すると、その壁を覆うようにいたのは水色のボディをした巨大なスライムであった。そのスライムの大きさは三メートルほどあり、ボディの中には明らかに弱点であろう赤い核が見える。
「そいつはウォータースライム。水の膜で覆われた変形生物だ。そして、そのスライムがまず一つ目の素材だ。そいつの水膜が必要なんだ」
「水膜ってどのあたりを指しているんだ?」
「あいつの水を覆っているボディのことだ。あいつに物理攻撃は通用しない。斬れば分裂するし、一つになることもある。加えて、弱点は魔法なのだが、魔法を使うと水膜を回収できない」
「なら、どうするです?」
「何体かに分裂することで中の水分を少しずつ減らしていく。しかし、斬った瞬間に水膜がすぐに体を回復させるから中の水を捨てさせる量も微々たるものだ。核を狙った方がいい。核を壊せば当然水膜は回復しないし、空けた穴から中の水分も出る」
「核を貫けってことか」
クラウンが思わずめんどくさそうにため息を吐くとスライムはクラウン達に向かって体から突起を突き出し、それを一気に解放した。
その瞬間、その突起は伸びて壁を容易に貫いていく。それをクラウンは咄嗟にシスティーナを抱えて避ける。
システィーナが色々なんかを言っているがそれを無視しながら、ベルに放り投げ、守るように指示すると加速して間合いを詰める。
そして、中心の核に向かって刀を突いた。しかし、その核はまるで生きているかのように中心からズレると伸ばしていた水の突起を戻し始めた。
その際、その水の突起同士はクラウンを囲うように互いを繋げると一部を薄い刃物のような形状変えた。それを引き戻すことでクラウンの頭を刈り取るつもりらしい。
しかし、クラウンは咄嗟にその場に跳躍して天井に脚をつける。それから蹴って、その勢いのまま地面へ刀を振り下ろした。
それによってスライムの体は二つに分裂。水が僅かに空中に飛び散り、クラウンの刀は濡れる。
核は右側へと移動した。狙いを絞ることに変更したようだ。多少水膜の量が減ってしまうような気がしなくもないが、倒せなければ意味がない。
そして、クラウンが右側へと攻め込もうとして足の向きを変えた瞬間、クラウンの背後から斬られた左側がタックルしようと動き出した。
どうやら核が無くても動けるらしい。それを尻目で見ていたクラウンは咄嗟に前足でブレーキをかけると背面跳びをするかの如く跳躍していく。
クラウンが跳び超えていく間に左側のスライムは右側のスライムに合流して、再び一つのスライムとなり始めた。
「そこだ! 投げろ!」
「わかった」
その瞬間をただジッと狙っていたクラウンは咄嗟にラグナに指示を出す。すると、狙いを定めるように左手を掲げていたラグナは槍を右手に思いっきり投げる。
投げられた槍は空中で三又から一本やりに変形し始めるとそのままスライムの核を捉え、貫通し壁に突き刺さった。
「キィ――――――!」
奇声のような音ともにスライムのボディは槍が抜けた場所から中の水を溢れ流し始める。どうやら無事に水膜を確保できたようだ。
そして、クラウンがベルの方へとふと見るとたくさんの小さいスライムに、中くらいのスラムに囲まれていた。さらに、奧からも何体ものスライムが大きなボディを揺らしながら跳ねてくる。
「どうやら僕達が倒したスライムは死に際に仲間を呼んだらしい。だが、どちらにせよもう一体からなければならなかったのだが.......これは多すぎる。最悪スライム同士がくっついてここが水中戦に早変わりするぞ。すぐに倒さなければ君達は窒息死だ」
「チッ、めんどくせぇ」
クラウンは思わず溢れた愚痴を吐き捨てると向かって来るスライムに駆けていった。そしてしばらくの間、スライムとの戦闘が続いた。
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