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第12章 道化師は集めきる
第254話 起きたばかりでそのテンションは辛い
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「急げこっちも重症だ!」
「こんなにも傷だらけで一体何があったんでしょうか」
「わからない。しかし、少なからずあんな荒れた海からやってくるんだ。それに海には化け物もいる。そいつらにやられた感じだろう」
「それでも切り傷や刺し傷よりも火傷が主な原因だと思うんですが」
「いいから口よりも手を動かせ! この人があのお方の恩人であるならば、ここで助けられなかったら我々の沽券にかかわるぞ!」
目を閉じながら徐々に意識を取り戻し始めたクラウンは周囲から聞こえる声に耳を傾ける。何やら人の声と機材で慌ただしい雰囲気が伝わってきた。
そう思いつつもクラウンはすぐに目を開けようとしなかった。それはもう少しだけ忘れてしまいそうな出来事を脳裏に刻みつけたかったからだ。
長い夢だった。感覚的には夢とはほど遠いものだったけど、きっとこうして生きているということはそういうことになってしまうだろう。
ロキは言っていた。自分は「仮死状態」なのだと。確かにこうして意識を取り戻したらその言葉がとても実感できた。
数秒経ち、もうロキと話したことがふわふわとしてきた。思い出せるのは断片的なことでどんなことを話したのか全然思い出せない。
凄く大切で心に来るような言葉を聞いた気がする。またさらにロキと話したことが霞始める。一体どこまで霞むというのだろうか。
しかし、そんな状態でもわかることはある。それはロキがもうこの世界にいないということ。それを立証できるものはない。だが、ずっと一緒にいたからこそ感覚でわかってしまうのだ。
それはまるで双子が言葉を交わさずに相手のしたいことがわかるように。まあ、ロキが言っていることを正確に理解できるのだから当然と言えば当然だろう。
だからこそ、悲しみが胸の内側からせり上がってくる。自分の甘さが招いた悲劇であると。しかし、悲観的になり過ぎてはいけない。前を向かなければ。
それはロキが望んだことだ。決してロキの死をなかったものにするわけではない。ロキの死を胸に前へと進むのだ。
ロキの意志は自分の意志に乗せた。必ず自分の目的を果たして見せると。だからもう目覚めなければ。進むときが来たのだ。
「ここは.......?」
クラウンが目覚めると木で出来た天井が見えた。そして、右端に映るものを見てみるとそれは点滴であった。
点滴は自分の肘裏の血管に繋がっていて自分がどんな状態か把握するのに一目瞭然だった。さらに、その周囲に目を移して見ると自分の両腕は包帯でグルグル巻きにされていた。
両腕だけじゃない。胴体から首筋にまで包帯がしてあり、掛布団で見えないが脚にも包帯が巻かれているような感覚がした。
クラウンはふと顔に触れてみる。顔には包帯は巻かれておらず額辺りに包帯が巻かれていた。そう考えると、恐らく自分は爆発の時咄嗟に腕で顔面はガードしたのだと思われる。
上手く思い出せないのであくまで推測だ。しかし、ヒリヒリとした痛みがするのは看護師が言っていた「火傷」によるものなのだろう。
それから、ふと左を見るとベルの姿があった。ベルも同じように頭に包帯を巻いているが、自分よりは軽傷のようで巻かれている箇所は少ない。
そのことにクラウンは少しだけ安堵した。しかし、残りの部分で安堵できなかったのは、現在この病室にベルしかいないということだ。
この部屋は割と大きめでベッドは三つある。そう、三つなのだ。自分とベル、そして空きのベッド。ということは、あの爆発ではぐれてしまったらしい。
自分はリリス達やベル達から離れていたので一緒に回避することもできず、それはベルだって同じこと。
ベルがここにいてシルヴィーがここにいないことに不安を感じるし、リリス達が転移石で逃げようともあの爆発から咄嗟に逃げられるかも難しい。
少なからず今できることは無事を祈っておくことぐらいと早く体を治して探しに行くことというところか。
「お! 患者が目覚めたぞ! 早く王子と姫に知らせてこい!」
白衣を着た男はクラウンが目覚めたことに気付くとすぐに周囲の人々に声をかけた。クラウンはその人物が思わず気になってマジマジと見つめる。
なぜなら、その男の耳にはヒレのようなものがあったからだ。そして指の間には水かきのような膜がある。
ということは、この男は医師でさらに魚人族ということになるのだろうか。他の看護師にも目を通すと全員同じような姿だった。
それから察するに何らかの形で自分は魚人族の住む島にやって来たということになる。しかし、自分が目覚めた瞬間に王子と姫を呼ぶ理由はわからなかった。
王子と姫に面識は当然ない。尋問をするにしても、王子とましてや姫がやって来る必要はなく、兵士が訪ねれば済むことだ。
それ以外に呼ぶとすればその王子と姫が尋問に長けた特殊な魔法を覚えているか、もしくは王様に代わって義理で助けた自分達に何かを通告しに来るのか。
「あああああ!」
「ダメだよ。起き上がっちゃ。君は傷がとにかく酷いんだ。生きていることが奇跡ぐらいなんだから、安静にしてなさい」
クラウンはおもむろに上半身を上げようとする。その瞬間、全身に激しい痛みが駆け巡り思わず叫んだ。そんな姿を見た医師は哀れそうな目でクラウンの体を押し戻す。
結局起き上がることは出来なかった。しかし、別の収穫はあった。それは医師の態度から嫌悪感を感じなかったからだ。
医師は善意で心配してくれているらしい。ということは、獣王国のような人族対するいざこざは特になかったと考えてもいいかもしれない。
そして、しばらく待っているといかにも王族であるという服装と首飾りをした王子と清楚でありながら有り余る元気を溢れ出させている姫が現れた。
「ダークプリンス~~~~!」
「ぐああああああ!」
すると、中学一年生ぐらいであろう見た目の姫はクラウンに向かっておてんばなままにダイブ。姫はクラウンの腹に乗った。
その瞬間、クラウンは痛みで叫び、思わず涙目になった。いっそのこと痛覚が死んでいればいいのにと思うほどズキズキした痛みが走る。
もはやその一撃はクラウンに対する痛恨の一撃とも言っていい。もともと赤ゲージでピコンピコンとなっていたHPは今の一撃で残り体力一となった。耐えたのは気合のハチマキならぬ気合のクラウンである。
「こら! 何をやってんだ! 恩人に向かって!」
「いったー! 何も頭を殴ることないじゃん! でも、今のは思わず嬉しくなってやり過ぎました! ごめんなさい!」
「き、気にするな.......」
クラウンはほんの一瞬だけ生死を彷徨ったような気がした。
それからクラウンがまともにしゃべれるようになる数分後、クラウンは改めて王子と姫と呼ばれる人物に尋ねた。
「それで? お前らは誰だ? 恩人とはどういうことだ?」
「本当は始めましてではないんですが、改めて。初めまして、僕はこの竜宮城の王子である【ラグナ・コロナ―ド】です。そして、こちらが妹の【システィーナ】です」
「初めまして! システィーナです! システィとお呼びください! 再びお会いできてとても嬉しいです!」
「俺はクラウンだ。横で寝ているのはベル。俺の連れだ」
「そうですか。是非ともよろしくお願いします」
「お願いします!」
落ち着いて聡明といった雰囲気を感じるラグナとやはりおてんばなハキハキとしゃべるシスティーナは恭しく頭を下げた。
しかし、システィーナはチラッチラッとクラウンを見ながら頬をほんのり赤く染めている。フリフリと振る尻尾が幻視出来る。
そのあまりの好感度の高さに若干引き気味のクラウンは恐らく「恩人」という言葉にその好感度の高さの原因があると思った。というより、そうでないと困る。
すると、頭を上げた王子はクラウンの話に対して説明し始めた。
「まあ、随分前のことですから覚えていないのは当然ですよね。実は――――――」
「実はあの時兄様はこの海を荒らしている元凶へと戦いに挑みに行ったのです! ですが、その敵は狂暴にして凶悪! さしもの兄様でも敵わずに深手を負い、荒れ狂う海に踊らされるままに果ての海へと流されてしまったのです!」
兄の話を奪って乱入してきた妹。とても活き活きした表情で話を続ける。
「私は兄様のことが心配で一人こっそりと城を飛び出しました!......あとでこってり怒られましたが。とにかく、心配で助けに行ったのです! そして、なんとか見つけることが出来ました! しかし、その傷を見た瞬間、私にはどうにもできないとすぐにでもわかるぐらいでとにかく助けてくれる人を探そうと本土の方へと兄様を運びました!」
妹の熱弁は続く。
「兄様の顔色は時間とともに悪くなっていく一方で、私は一人で探そうとしましたが、未知の場所が怖くて足元がすくんでしまい何もすることが出来ませんでした! しかし! そんな時に現れたのです! 私のダークプリンスが!」
「ダークプリンス? それってさっきも言ってたよな? それってもしかして......」
「そうもしかしなくてもあなた様です! あなた様から漂うダークなオーラを見た瞬間、私は思わず痺れました!」
「おい、それってただ恐怖しただけじゃ―――――――」
「しかし、私は勇気を振り絞って声を捻りだしました! 震えた声でありながら懇願した私の言葉にあなた様は快く応じてくれました! あなた様のおかげで兄様の体調はたちまち良くなり、すぐに動けるようになりました! 私達は王族という身分でありますからすぐに本国へ戻らなければいけません!」
「あー、わかったわかった。あの時のお前ら―――――――」
「 私は『恩返し』という気持ちとともに先ほどの痺れについて考えました! どうしてあんな痺れを起こしてしまったのか! あのズキズキした雰囲気に恐怖してしまったのかと!」
「だからそうだっ――――――――」
「しかし! そうであるならば助けるはずありません! ということは、私が勝手にそういう風に見てしまっていただけで、本当は優しい方なのではないかと思ったのです! それを私は直感的に気づいたのではないかと! となれば、あの痺れは恐怖による痺れではなく! そう! 恋の痺れなのだと―――――――」
「いい加減にしろ!」
全く人の話を聞かずに熱弁を振るう妹に兄からの鉄拳制裁。それによって、沈黙した妹を身内の恥が恥ずかしそうに病室を出ていくラグナであったが、クラウンには救世主に見えた。
「こんなにも傷だらけで一体何があったんでしょうか」
「わからない。しかし、少なからずあんな荒れた海からやってくるんだ。それに海には化け物もいる。そいつらにやられた感じだろう」
「それでも切り傷や刺し傷よりも火傷が主な原因だと思うんですが」
「いいから口よりも手を動かせ! この人があのお方の恩人であるならば、ここで助けられなかったら我々の沽券にかかわるぞ!」
目を閉じながら徐々に意識を取り戻し始めたクラウンは周囲から聞こえる声に耳を傾ける。何やら人の声と機材で慌ただしい雰囲気が伝わってきた。
そう思いつつもクラウンはすぐに目を開けようとしなかった。それはもう少しだけ忘れてしまいそうな出来事を脳裏に刻みつけたかったからだ。
長い夢だった。感覚的には夢とはほど遠いものだったけど、きっとこうして生きているということはそういうことになってしまうだろう。
ロキは言っていた。自分は「仮死状態」なのだと。確かにこうして意識を取り戻したらその言葉がとても実感できた。
数秒経ち、もうロキと話したことがふわふわとしてきた。思い出せるのは断片的なことでどんなことを話したのか全然思い出せない。
凄く大切で心に来るような言葉を聞いた気がする。またさらにロキと話したことが霞始める。一体どこまで霞むというのだろうか。
しかし、そんな状態でもわかることはある。それはロキがもうこの世界にいないということ。それを立証できるものはない。だが、ずっと一緒にいたからこそ感覚でわかってしまうのだ。
それはまるで双子が言葉を交わさずに相手のしたいことがわかるように。まあ、ロキが言っていることを正確に理解できるのだから当然と言えば当然だろう。
だからこそ、悲しみが胸の内側からせり上がってくる。自分の甘さが招いた悲劇であると。しかし、悲観的になり過ぎてはいけない。前を向かなければ。
それはロキが望んだことだ。決してロキの死をなかったものにするわけではない。ロキの死を胸に前へと進むのだ。
ロキの意志は自分の意志に乗せた。必ず自分の目的を果たして見せると。だからもう目覚めなければ。進むときが来たのだ。
「ここは.......?」
クラウンが目覚めると木で出来た天井が見えた。そして、右端に映るものを見てみるとそれは点滴であった。
点滴は自分の肘裏の血管に繋がっていて自分がどんな状態か把握するのに一目瞭然だった。さらに、その周囲に目を移して見ると自分の両腕は包帯でグルグル巻きにされていた。
両腕だけじゃない。胴体から首筋にまで包帯がしてあり、掛布団で見えないが脚にも包帯が巻かれているような感覚がした。
クラウンはふと顔に触れてみる。顔には包帯は巻かれておらず額辺りに包帯が巻かれていた。そう考えると、恐らく自分は爆発の時咄嗟に腕で顔面はガードしたのだと思われる。
上手く思い出せないのであくまで推測だ。しかし、ヒリヒリとした痛みがするのは看護師が言っていた「火傷」によるものなのだろう。
それから、ふと左を見るとベルの姿があった。ベルも同じように頭に包帯を巻いているが、自分よりは軽傷のようで巻かれている箇所は少ない。
そのことにクラウンは少しだけ安堵した。しかし、残りの部分で安堵できなかったのは、現在この病室にベルしかいないということだ。
この部屋は割と大きめでベッドは三つある。そう、三つなのだ。自分とベル、そして空きのベッド。ということは、あの爆発ではぐれてしまったらしい。
自分はリリス達やベル達から離れていたので一緒に回避することもできず、それはベルだって同じこと。
ベルがここにいてシルヴィーがここにいないことに不安を感じるし、リリス達が転移石で逃げようともあの爆発から咄嗟に逃げられるかも難しい。
少なからず今できることは無事を祈っておくことぐらいと早く体を治して探しに行くことというところか。
「お! 患者が目覚めたぞ! 早く王子と姫に知らせてこい!」
白衣を着た男はクラウンが目覚めたことに気付くとすぐに周囲の人々に声をかけた。クラウンはその人物が思わず気になってマジマジと見つめる。
なぜなら、その男の耳にはヒレのようなものがあったからだ。そして指の間には水かきのような膜がある。
ということは、この男は医師でさらに魚人族ということになるのだろうか。他の看護師にも目を通すと全員同じような姿だった。
それから察するに何らかの形で自分は魚人族の住む島にやって来たということになる。しかし、自分が目覚めた瞬間に王子と姫を呼ぶ理由はわからなかった。
王子と姫に面識は当然ない。尋問をするにしても、王子とましてや姫がやって来る必要はなく、兵士が訪ねれば済むことだ。
それ以外に呼ぶとすればその王子と姫が尋問に長けた特殊な魔法を覚えているか、もしくは王様に代わって義理で助けた自分達に何かを通告しに来るのか。
「あああああ!」
「ダメだよ。起き上がっちゃ。君は傷がとにかく酷いんだ。生きていることが奇跡ぐらいなんだから、安静にしてなさい」
クラウンはおもむろに上半身を上げようとする。その瞬間、全身に激しい痛みが駆け巡り思わず叫んだ。そんな姿を見た医師は哀れそうな目でクラウンの体を押し戻す。
結局起き上がることは出来なかった。しかし、別の収穫はあった。それは医師の態度から嫌悪感を感じなかったからだ。
医師は善意で心配してくれているらしい。ということは、獣王国のような人族対するいざこざは特になかったと考えてもいいかもしれない。
そして、しばらく待っているといかにも王族であるという服装と首飾りをした王子と清楚でありながら有り余る元気を溢れ出させている姫が現れた。
「ダークプリンス~~~~!」
「ぐああああああ!」
すると、中学一年生ぐらいであろう見た目の姫はクラウンに向かっておてんばなままにダイブ。姫はクラウンの腹に乗った。
その瞬間、クラウンは痛みで叫び、思わず涙目になった。いっそのこと痛覚が死んでいればいいのにと思うほどズキズキした痛みが走る。
もはやその一撃はクラウンに対する痛恨の一撃とも言っていい。もともと赤ゲージでピコンピコンとなっていたHPは今の一撃で残り体力一となった。耐えたのは気合のハチマキならぬ気合のクラウンである。
「こら! 何をやってんだ! 恩人に向かって!」
「いったー! 何も頭を殴ることないじゃん! でも、今のは思わず嬉しくなってやり過ぎました! ごめんなさい!」
「き、気にするな.......」
クラウンはほんの一瞬だけ生死を彷徨ったような気がした。
それからクラウンがまともにしゃべれるようになる数分後、クラウンは改めて王子と姫と呼ばれる人物に尋ねた。
「それで? お前らは誰だ? 恩人とはどういうことだ?」
「本当は始めましてではないんですが、改めて。初めまして、僕はこの竜宮城の王子である【ラグナ・コロナ―ド】です。そして、こちらが妹の【システィーナ】です」
「初めまして! システィーナです! システィとお呼びください! 再びお会いできてとても嬉しいです!」
「俺はクラウンだ。横で寝ているのはベル。俺の連れだ」
「そうですか。是非ともよろしくお願いします」
「お願いします!」
落ち着いて聡明といった雰囲気を感じるラグナとやはりおてんばなハキハキとしゃべるシスティーナは恭しく頭を下げた。
しかし、システィーナはチラッチラッとクラウンを見ながら頬をほんのり赤く染めている。フリフリと振る尻尾が幻視出来る。
そのあまりの好感度の高さに若干引き気味のクラウンは恐らく「恩人」という言葉にその好感度の高さの原因があると思った。というより、そうでないと困る。
すると、頭を上げた王子はクラウンの話に対して説明し始めた。
「まあ、随分前のことですから覚えていないのは当然ですよね。実は――――――」
「実はあの時兄様はこの海を荒らしている元凶へと戦いに挑みに行ったのです! ですが、その敵は狂暴にして凶悪! さしもの兄様でも敵わずに深手を負い、荒れ狂う海に踊らされるままに果ての海へと流されてしまったのです!」
兄の話を奪って乱入してきた妹。とても活き活きした表情で話を続ける。
「私は兄様のことが心配で一人こっそりと城を飛び出しました!......あとでこってり怒られましたが。とにかく、心配で助けに行ったのです! そして、なんとか見つけることが出来ました! しかし、その傷を見た瞬間、私にはどうにもできないとすぐにでもわかるぐらいでとにかく助けてくれる人を探そうと本土の方へと兄様を運びました!」
妹の熱弁は続く。
「兄様の顔色は時間とともに悪くなっていく一方で、私は一人で探そうとしましたが、未知の場所が怖くて足元がすくんでしまい何もすることが出来ませんでした! しかし! そんな時に現れたのです! 私のダークプリンスが!」
「ダークプリンス? それってさっきも言ってたよな? それってもしかして......」
「そうもしかしなくてもあなた様です! あなた様から漂うダークなオーラを見た瞬間、私は思わず痺れました!」
「おい、それってただ恐怖しただけじゃ―――――――」
「しかし、私は勇気を振り絞って声を捻りだしました! 震えた声でありながら懇願した私の言葉にあなた様は快く応じてくれました! あなた様のおかげで兄様の体調はたちまち良くなり、すぐに動けるようになりました! 私達は王族という身分でありますからすぐに本国へ戻らなければいけません!」
「あー、わかったわかった。あの時のお前ら―――――――」
「 私は『恩返し』という気持ちとともに先ほどの痺れについて考えました! どうしてあんな痺れを起こしてしまったのか! あのズキズキした雰囲気に恐怖してしまったのかと!」
「だからそうだっ――――――――」
「しかし! そうであるならば助けるはずありません! ということは、私が勝手にそういう風に見てしまっていただけで、本当は優しい方なのではないかと思ったのです! それを私は直感的に気づいたのではないかと! となれば、あの痺れは恐怖による痺れではなく! そう! 恋の痺れなのだと―――――――」
「いい加減にしろ!」
全く人の話を聞かずに熱弁を振るう妹に兄からの鉄拳制裁。それによって、沈黙した妹を身内の恥が恥ずかしそうに病室を出ていくラグナであったが、クラウンには救世主に見えた。
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