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第11章 道化師は狩る
第249話 リベンジマッチ#1
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「これで終わったのね」
「ああ、さすがにマグマから上がってくるのは無理だろ」
「感謝してた」
「大方主様と同じ感じだと思うです」
クラウン達はもう姿も見えない神竜が沈んでいったマグマを見ながら各々思ったことを口にしていく。その表情は勝ったことに対する晴れやかな態度ではなく、悲しさを帯びた顔であった。
「どうして毒のブレスを浴びせてこなかったなの?」
「恐らくせめてもの抵抗という感じだったんじゃないかしら。ただの憶測だけでね」
「嫌いじゃない憶測だ」
クラウンは手に持ってい宝玉をリリスに渡すとリリスはそれを指輪の中にしまっていく。これで残すところはあと一つというところになった。
あと一つ揃えればクラウン達は神トウマに挑むための力が手に入る。それに、もしかしたらその神殿に神のもとへと向かう手掛かりが見つかるかもしれない。
あくまで可能性だが、その可能性がある以上確かめるのは当然のことだ。そうじゃないと、弄ばれて死んだ人達が報われないから。
「!」
その時、クラウンは急速にこの島に向かってくる強大な気配に気づいた。その気配はこの島の南西側の方へと着陸しようとしている。
クラウンは思わず歯噛みする。そして、先ほど戦闘は終了したばかりだというのに、強烈で攻撃的な殺気を放ち始める。
そのことにリリス達は困惑して、その原因を尋ねようとする――――――が、その前にクラウンは空中を蹴って火口から外へ出るとそのまま走り出してしまった。
その突然の態度の変化に不安を抱えながらもクラウンの後を追っていく。そして、クラウンがいる開けた大地に辿り着くとそこにはクラウン以外にもう一人――――――
「ラ.......ズリ.......」
神の使い怠惰を司る、兵長を殺し雪姫までも殺そうとしたラズリの姿があった。しかし、ラズリは今までとは様子が違っていた。
それは怠惰など一切見せない攻撃的な視線に、イラ立つように歯噛みしている口。常に疲れているような猫背はしておらず、体もまっすぐ伸びている。
「おれっち、ここにいると思ったネ」
ラズリは頭を抱えると狂ったようにしゃべりだす。
「お前らのせいでおれっちのプライドはズタズタネ。二度も殺し損ねた挙句に、二度目は殺されかける。我らが主のおれっちへの評価は最低のものだったネ。このままではおれっちのプライドも、立場も全てが失われるネ。全部お前らのせいネ! お前らがおれっちに大人しく殺されていれば!」
「遺言がそれでいいのか? あいにく殺したがってるのはお前だけじゃねぇんだ」
クラウンは刀を両手で持つと上段に構えて、肩幅より少し広めに足を開いていく。それに合わせるように短剣を逆手にもったラズリは上半身を大きく前傾にさせていく。
「なんか言ったか? クソ人間が」
「ああ言ったぜ? ぜい弱なクソ野郎が」
その瞬間、クラウン達を覆うように周りから様々な魔物が現れた。ほとんどがキメラのような存在だが、その体毛は白く僅かに体から神々しいオーラを放っていた。
その魔物は恐らく神獣と呼ばれる類だろう。それが一斉にクラウン達に向かって襲ってくる。
「リリス!」
クラウンは叫んだ。
「周りを頼む」
「ええ、頼まれたわ」
瞬間、クラウンとラズリの姿は消え、再び現れた時には少し進んだ先で刀を交わらせていた。単純な力勝負はどちらにも軍配は上がらない。
二人は一旦離れる。しかし、ラズリがすぐさま攻撃を仕掛けてくる。
ラズリは短剣を振り下ろす。それをクラウンは刀で受け止めると顔面を狙った左脚の蹴りが迫ってきた。その攻撃を紙一重で体を反らして避けながら、後方へ下がる。
ラズリは再び迫ってくる。それに対して、クラウンも接近する。
クラウンは刀を振り下ろす。それはラズリの右手の短剣によって受け流され、反対の手が迫りくる。しかし、それをしゃがんで避けると体勢を半身にして肩で抉るようにタックルした。
ラズリは地面を転がっていくもすぐに体勢を立て直すとすぐに走り出す。地面を強く蹴り、砂埃を舞い上がらせながら。
クラウンは刀を下段に構えると一気に上へと振り上げた。その瞬間、放たれた斬撃は地を削り、瓦礫を吹き飛ばしながら進んでいく。
ラズリは跳躍してそれを避けながら、そのままクラウンへと向かっていく。しかし、辿り着く前にクラウンに糸を括り付けられ、そのまま地面へと叩き落される。
「おれっちの能力がこれだけだと思うなネ」
「ぐっ!―――――なめんな!」
「がっ!」
クラウンが地面が割れるほど勢い良く叩きつけたものはラズリではなく、熊のような神獣であった。そして、ラズリはクラウンに言葉を投げつけながら背後の左側に回ると脇腹を短剣で突き刺した。
その痛みに思わず声が漏れるクラウンだが、すぐに反撃へ出てラズリの右手首を掴むと引き寄せ、顔面に頭突きする。
そして、ラズリが怯んだところで脇腹短剣を抜き、投げる。それから、その短剣を追うように攻撃する。
だが、ラズリは短剣を右手で上手く柄だけを掴んでキャッチするとすぐさま刀の防御へ体を動かしていく。
ドンッと鈍い音が響く。それはクラウンの振り下ろした刀を受け流した際の地面に直撃した音だ。それによって、二人の間に砂煙が発生する。
距離を取るようにその砂煙から同時に外へ出る。そして、風が吹くとともに砂煙が散っていき、互いの顔が見えてくる。
「全く忌々しい顔ネ。お前らのせいで.......お前らのせいで.......おれっちは.......」
「しらねぇよ。お前らもさんざん俺達に恨まれることをやってんだ。今更そんなことを言っても無駄だろ」
「お前が言うセリフじゃないネ。ずっとずっと体が回復するまでの間、お前らを殺すことを考えていたネ。ああ、殺したい。殺したい。殺したい殺したい殺したい! 殺したくてたまらないネ!」
「同感だな。俺もお前を殺したい」
二人は再び高速の戦闘を繰り返していく。常人なら影を覆うことも出来ないほどの尋常ならざる力を持った二人だからの戦い。
クラウンは上段に振り下ろすと見せかけて、右腕を体ごと伸ばすような形で突きをした。しかし、それはラズリの左手の短剣を弾くだけで、右手の短剣で袈裟切りに斬られる。
血しぶきが舞う。胴体に鋭い痛みが走る。しかし、クラウンはその攻撃をすぐさま<超回復>で傷口を塞いでいくと同時に左手で拳を作って思いっきり殴った。
その一撃はラズリが殴られると同時に蹴った右脚と相打ちになり、二人は地面を転がっていく。だが、すぐに起き上がると二人は走り出す。
一閃、二閃、三閃とクラウンの残像が見えそうなほど速い攻撃は同じく残像が見えそうなほどの速く動くラズリの攻撃で捌いていく。
二人とももはや防御なぞしていない。攻撃こそが最大の防御と言わんばかりに、攻撃するついでに弾いている。
しかし、二人の力、強さは全く互角で打ち合う時になる金属音とオレンジ色の火花がいたるところで散っていく。
クラウンが振り下ろした刀がラズリの胴体を抉っても、ラズリは吹き飛ばされずにその場で耐え短剣を振り下ろす。
その短剣が肩と鎖骨の間に刺さっても気にすることなく刀を振るい、弾かれれば殴る。それによって、強制的に体が逆向きにされても、その勢いを逆に利用して後ろ回し蹴りをクラウンの首筋に叩き込む。
二人の戦いは一切の予断の許さない攻撃を戦闘経験と直感だけで判断していき、くらっていい攻攻撃とくらってはいけない攻撃を判断しながらコンマの世界を生きていく。
クラウンの赤い血とラズリの青い血が周囲にバケツをぶちまけたように飛び散っていく。地面にも空中にも赤と青の水滴が、溢れんばかりの量が舞っていく。
それでも二人の攻撃は止まらない。やがてクラウンの<超回復>が追いつかなくなっても、血が滴ろうと血反吐を吐こうと二人の一進一退の剣戟は続いていく。
***************************************************
その一方で、リリス達も圧倒的な物量戦に苦戦を強いられていた。
現在、エキドナの背中にリリス、シルヴィーの背中にロキとベルが乗っている。そして、相手の神獣は空中を駆けまわって突っ込んでくるものもいれば、遠距離攻撃してくるものもいる。
砂漠の時以来の連戦だからかリリス達には慣れがあったが、それでも一撃が重かった神竜を倒した後では疲労が襲ってきていた。特に、シルヴィーはその疲労が顕著であった。
高度が安定しないのだ。シルヴィー本人は敵を倒すことに夢中になっているせいか自分の変化に気付いていない。
そこが狙い目だと感じているのか多くの神獣がシルヴィーを落とそうと向かって来る。遠距離攻撃なんかは仲間ともどもである。
ロキとベルはすぐ近くの敵を落としながら、エキドナとリリスはシルヴィーの回りをグルグルと回りながら遠距離攻撃を仕掛けている神獣をブレスで焼き殺したり、重力で圧殺しながら倒している。
しかし、いくら倒しても数が一向に減らない。どこからともなく空間からスーッと現れているのが原因だろう。
とはいえ、幸いなのはその神獣が一向にクラウンの方へと向かって行かないことか。恐らくは司令塔であるラズリが寄り付かないよう指示を出している可能性もある。
だが、結局のところこのままではジリ貧であることは否めない。ラズリを倒せばこの神獣らは引きそうだが、ラズリの戦いに参戦するとロキやベル達の負担が大きくなってしまう。
つまりはこの現状を打破するにはクラウンが出来るだけ速やかにラズリを倒さなければいけないということ。
見ている限りでは互角と言ったところで、どちらも全く一方的な攻撃権を譲る気はなさそうな感じでどんな体勢からでも少なからず一撃は与えている。
それは普通の感覚を持っている人から見れば痛みにひるまないことをどうかしていると思うかもしれないが、リリスにはわかっている。
それだけ互いを「殺したがっている」ということを。勇者と魔王の時とは違い、クラウンは純粋な殺意である。
だからこそ、リリスは願った。もう一度あの殺意を目覚めさせてはいけないと。
「ああ、さすがにマグマから上がってくるのは無理だろ」
「感謝してた」
「大方主様と同じ感じだと思うです」
クラウン達はもう姿も見えない神竜が沈んでいったマグマを見ながら各々思ったことを口にしていく。その表情は勝ったことに対する晴れやかな態度ではなく、悲しさを帯びた顔であった。
「どうして毒のブレスを浴びせてこなかったなの?」
「恐らくせめてもの抵抗という感じだったんじゃないかしら。ただの憶測だけでね」
「嫌いじゃない憶測だ」
クラウンは手に持ってい宝玉をリリスに渡すとリリスはそれを指輪の中にしまっていく。これで残すところはあと一つというところになった。
あと一つ揃えればクラウン達は神トウマに挑むための力が手に入る。それに、もしかしたらその神殿に神のもとへと向かう手掛かりが見つかるかもしれない。
あくまで可能性だが、その可能性がある以上確かめるのは当然のことだ。そうじゃないと、弄ばれて死んだ人達が報われないから。
「!」
その時、クラウンは急速にこの島に向かってくる強大な気配に気づいた。その気配はこの島の南西側の方へと着陸しようとしている。
クラウンは思わず歯噛みする。そして、先ほど戦闘は終了したばかりだというのに、強烈で攻撃的な殺気を放ち始める。
そのことにリリス達は困惑して、その原因を尋ねようとする――――――が、その前にクラウンは空中を蹴って火口から外へ出るとそのまま走り出してしまった。
その突然の態度の変化に不安を抱えながらもクラウンの後を追っていく。そして、クラウンがいる開けた大地に辿り着くとそこにはクラウン以外にもう一人――――――
「ラ.......ズリ.......」
神の使い怠惰を司る、兵長を殺し雪姫までも殺そうとしたラズリの姿があった。しかし、ラズリは今までとは様子が違っていた。
それは怠惰など一切見せない攻撃的な視線に、イラ立つように歯噛みしている口。常に疲れているような猫背はしておらず、体もまっすぐ伸びている。
「おれっち、ここにいると思ったネ」
ラズリは頭を抱えると狂ったようにしゃべりだす。
「お前らのせいでおれっちのプライドはズタズタネ。二度も殺し損ねた挙句に、二度目は殺されかける。我らが主のおれっちへの評価は最低のものだったネ。このままではおれっちのプライドも、立場も全てが失われるネ。全部お前らのせいネ! お前らがおれっちに大人しく殺されていれば!」
「遺言がそれでいいのか? あいにく殺したがってるのはお前だけじゃねぇんだ」
クラウンは刀を両手で持つと上段に構えて、肩幅より少し広めに足を開いていく。それに合わせるように短剣を逆手にもったラズリは上半身を大きく前傾にさせていく。
「なんか言ったか? クソ人間が」
「ああ言ったぜ? ぜい弱なクソ野郎が」
その瞬間、クラウン達を覆うように周りから様々な魔物が現れた。ほとんどがキメラのような存在だが、その体毛は白く僅かに体から神々しいオーラを放っていた。
その魔物は恐らく神獣と呼ばれる類だろう。それが一斉にクラウン達に向かって襲ってくる。
「リリス!」
クラウンは叫んだ。
「周りを頼む」
「ええ、頼まれたわ」
瞬間、クラウンとラズリの姿は消え、再び現れた時には少し進んだ先で刀を交わらせていた。単純な力勝負はどちらにも軍配は上がらない。
二人は一旦離れる。しかし、ラズリがすぐさま攻撃を仕掛けてくる。
ラズリは短剣を振り下ろす。それをクラウンは刀で受け止めると顔面を狙った左脚の蹴りが迫ってきた。その攻撃を紙一重で体を反らして避けながら、後方へ下がる。
ラズリは再び迫ってくる。それに対して、クラウンも接近する。
クラウンは刀を振り下ろす。それはラズリの右手の短剣によって受け流され、反対の手が迫りくる。しかし、それをしゃがんで避けると体勢を半身にして肩で抉るようにタックルした。
ラズリは地面を転がっていくもすぐに体勢を立て直すとすぐに走り出す。地面を強く蹴り、砂埃を舞い上がらせながら。
クラウンは刀を下段に構えると一気に上へと振り上げた。その瞬間、放たれた斬撃は地を削り、瓦礫を吹き飛ばしながら進んでいく。
ラズリは跳躍してそれを避けながら、そのままクラウンへと向かっていく。しかし、辿り着く前にクラウンに糸を括り付けられ、そのまま地面へと叩き落される。
「おれっちの能力がこれだけだと思うなネ」
「ぐっ!―――――なめんな!」
「がっ!」
クラウンが地面が割れるほど勢い良く叩きつけたものはラズリではなく、熊のような神獣であった。そして、ラズリはクラウンに言葉を投げつけながら背後の左側に回ると脇腹を短剣で突き刺した。
その痛みに思わず声が漏れるクラウンだが、すぐに反撃へ出てラズリの右手首を掴むと引き寄せ、顔面に頭突きする。
そして、ラズリが怯んだところで脇腹短剣を抜き、投げる。それから、その短剣を追うように攻撃する。
だが、ラズリは短剣を右手で上手く柄だけを掴んでキャッチするとすぐさま刀の防御へ体を動かしていく。
ドンッと鈍い音が響く。それはクラウンの振り下ろした刀を受け流した際の地面に直撃した音だ。それによって、二人の間に砂煙が発生する。
距離を取るようにその砂煙から同時に外へ出る。そして、風が吹くとともに砂煙が散っていき、互いの顔が見えてくる。
「全く忌々しい顔ネ。お前らのせいで.......お前らのせいで.......おれっちは.......」
「しらねぇよ。お前らもさんざん俺達に恨まれることをやってんだ。今更そんなことを言っても無駄だろ」
「お前が言うセリフじゃないネ。ずっとずっと体が回復するまでの間、お前らを殺すことを考えていたネ。ああ、殺したい。殺したい。殺したい殺したい殺したい! 殺したくてたまらないネ!」
「同感だな。俺もお前を殺したい」
二人は再び高速の戦闘を繰り返していく。常人なら影を覆うことも出来ないほどの尋常ならざる力を持った二人だからの戦い。
クラウンは上段に振り下ろすと見せかけて、右腕を体ごと伸ばすような形で突きをした。しかし、それはラズリの左手の短剣を弾くだけで、右手の短剣で袈裟切りに斬られる。
血しぶきが舞う。胴体に鋭い痛みが走る。しかし、クラウンはその攻撃をすぐさま<超回復>で傷口を塞いでいくと同時に左手で拳を作って思いっきり殴った。
その一撃はラズリが殴られると同時に蹴った右脚と相打ちになり、二人は地面を転がっていく。だが、すぐに起き上がると二人は走り出す。
一閃、二閃、三閃とクラウンの残像が見えそうなほど速い攻撃は同じく残像が見えそうなほどの速く動くラズリの攻撃で捌いていく。
二人とももはや防御なぞしていない。攻撃こそが最大の防御と言わんばかりに、攻撃するついでに弾いている。
しかし、二人の力、強さは全く互角で打ち合う時になる金属音とオレンジ色の火花がいたるところで散っていく。
クラウンが振り下ろした刀がラズリの胴体を抉っても、ラズリは吹き飛ばされずにその場で耐え短剣を振り下ろす。
その短剣が肩と鎖骨の間に刺さっても気にすることなく刀を振るい、弾かれれば殴る。それによって、強制的に体が逆向きにされても、その勢いを逆に利用して後ろ回し蹴りをクラウンの首筋に叩き込む。
二人の戦いは一切の予断の許さない攻撃を戦闘経験と直感だけで判断していき、くらっていい攻攻撃とくらってはいけない攻撃を判断しながらコンマの世界を生きていく。
クラウンの赤い血とラズリの青い血が周囲にバケツをぶちまけたように飛び散っていく。地面にも空中にも赤と青の水滴が、溢れんばかりの量が舞っていく。
それでも二人の攻撃は止まらない。やがてクラウンの<超回復>が追いつかなくなっても、血が滴ろうと血反吐を吐こうと二人の一進一退の剣戟は続いていく。
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その一方で、リリス達も圧倒的な物量戦に苦戦を強いられていた。
現在、エキドナの背中にリリス、シルヴィーの背中にロキとベルが乗っている。そして、相手の神獣は空中を駆けまわって突っ込んでくるものもいれば、遠距離攻撃してくるものもいる。
砂漠の時以来の連戦だからかリリス達には慣れがあったが、それでも一撃が重かった神竜を倒した後では疲労が襲ってきていた。特に、シルヴィーはその疲労が顕著であった。
高度が安定しないのだ。シルヴィー本人は敵を倒すことに夢中になっているせいか自分の変化に気付いていない。
そこが狙い目だと感じているのか多くの神獣がシルヴィーを落とそうと向かって来る。遠距離攻撃なんかは仲間ともどもである。
ロキとベルはすぐ近くの敵を落としながら、エキドナとリリスはシルヴィーの回りをグルグルと回りながら遠距離攻撃を仕掛けている神獣をブレスで焼き殺したり、重力で圧殺しながら倒している。
しかし、いくら倒しても数が一向に減らない。どこからともなく空間からスーッと現れているのが原因だろう。
とはいえ、幸いなのはその神獣が一向にクラウンの方へと向かって行かないことか。恐らくは司令塔であるラズリが寄り付かないよう指示を出している可能性もある。
だが、結局のところこのままではジリ貧であることは否めない。ラズリを倒せばこの神獣らは引きそうだが、ラズリの戦いに参戦するとロキやベル達の負担が大きくなってしまう。
つまりはこの現状を打破するにはクラウンが出来るだけ速やかにラズリを倒さなければいけないということ。
見ている限りでは互角と言ったところで、どちらも全く一方的な攻撃権を譲る気はなさそうな感じでどんな体勢からでも少なからず一撃は与えている。
それは普通の感覚を持っている人から見れば痛みにひるまないことをどうかしていると思うかもしれないが、リリスにはわかっている。
それだけ互いを「殺したがっている」ということを。勇者と魔王の時とは違い、クラウンは純粋な殺意である。
だからこそ、リリスは願った。もう一度あの殺意を目覚めさせてはいけないと。
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