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第11章 道化師は狩る
第242話 告げた想い
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「何の用だ? もう俺はお前には用はないんだが」
「そうは言っても、私には用があるのよ。わからないとは言わせないわよ」
翌日、再びクラウンを呼び出すとエキドナと二人だけの対談が始まった。互いに向き合ってソファに座り、その周りには誰一人としていない。
この状況はエキドナ自身が望んで作り出した状況であり、その他の者は一時外へで時間を潰してもらっている。
この状況になることをクラウンはなんとなく予感していた。しかし、想定よりもかなり早いことであったので、シルヴィーに呼び出された当初は驚きが隠せないでいた。
そして、一発目からこんな口調なのは言った手前、引くに引けない態度になっているからである。加えて、クラウン自身もエキドナの来る来ないに関しては考えがブレブレであったりする。
つまり、ここでのエキドナの返答次第で今後の動き方を少し考えなさなければいけない。その返答がどうであれそうと決まればそう動くつもりだ。
「そうだな。俺がお前に告げたことだろうな。しかし、俺の考えは変わらないぞ」
「私も考えを変えるつもりはないわ」
「それはついていくという意味でか?」
「ええ、そうなるわね。そもそもそれに対する返答って随分と前に何度かしたような気がしているような気がしているけど?」
「あの時はあの時だ。時間が経てば人の考えなど幾重にも変わる。まさしく俺がいい例だと思うがな」
「そうね。前に似たようなことを言った時には許可してくれたけど、今はこうなっているものね。それについて理由をずっと考えていたけど、私は随分と近場のものを見落としてみたいね。灯台下暗しって言うのかしら」
「何が言いたい?」
クラウンはエキドナの含みのある言い方に率直に尋ねていく。すると、エキドナはいつものような似たような笑みで答えていく。
「簡単よ。ここまで来て私を切り離そうだなんてこと前の旦那様なら絶対に言わなかったわ。ずっと必要としてくれていたから。そして、それは今も変わらない。そうよね?」
「.......」
「私には確かに守るべきものが多い。でもね、昨日シルヴィーと話してみて実感したのよ。私の見えないところでも私が望む通りにしっかりと成長してくれていると。それも私の手が要らないぐらい」
「なら、そいつらを見捨てるのか?」
「それは言い方が酷いわよ。それにそう言えば私が引き下がると思ったら大間違いよ。竜人族の女は強い男には執着するものだからね」
エキドナは鋭い目つきでクラウンを見る。その目はまるで獲物を狙っている捕食者のように感じた。そのことにクラウンは内心笑った。
「あの子たちは現在私の手を必要としていない。ならば、今私の手を必要としている人のために手を貸そうと思ったの。道理と思わない?」
「それはあくまで俺の意見を無視しての話だろ。俺は必要としていない」
「残念ながらそうするとあなたの道はその先から進まなくなるわよ」
「何?」
エキドナは机に置いてある紅茶を少しだけ飲むとすぐにクラウンに告げた。
「シルヴィーから聞いた話なんだけど、旦那様が向おうとしているあの空に浮かぶ島の周辺には結界が張られているらしいのよ。それも大規模な」
「お前が知らないってことはお前がこの国を出ていった後の話か。それでその結界はどういったやつなんだ?」
「竜の竜による竜に対しての結界――――――判別式竜用結界と竜王様は呼んでいたらしいわ。要するにあの島までは竜しか行けないということよ」
「なんだと.......」
「けど、絶対に他の種族が入れないわけではない。私達が通常の人型状態で入ろうとしても防がれ、竜の姿になれば入れる。ならば、背中に人を乗せた場合はどうなるのかと考えたのよ。恐らく他の種族の力も借りることを考えたのでしょうね。そして、結果から言えば入れたわ」
エキドナの説明を聞くとクラウンは思わず背もたれに寄り掛かりため息を吐いた。
「なんとなく言いたいことがわかった。つまり、その意味でお前は自分の存在が必要だと言っているのだな?」
「何言ってるの? そんなのあくまでサブの話題よ。そんな姑息な手なんか使わないわよ」
「何?」
クラウンはその言葉に思わず前のめりの姿勢に変えていく。てっきり自分の必要性の話題を提示するための話かと思っていればそうではないという。なら、エキドナの本題は一体なんなのか。
すると、エキドナはクラウンの疑問に対して話始める。
「やはりこういう話になってしまうのね.......前々から言っているけど、私は旦那様を支える一人でありたいの。現在もこうして迷惑をかけているのも百も承知で心の底から旦那様に寄り添いたいと思っているの」
「.......」
「私は恵まれているわ。シルヴィーやエギル、竜王様、妃様や国の人々が私を助けてくれる。でも、本当に助けを必要としている人は私じゃない。私の目の前にいる人。どこまでも強くなろうと足掻いて、どこまでも目的のために考えて、どこまでも仲間思いで、どこまでもどこまでも私の愛おしい人なの」
「まただな。また買いかぶっている」
「私だけが買いかぶるなら良いじゃない。それだけ過大評価しても手を伸ばして手に入れたいものってことなんだから.......私は自分が後悔しない道を選びたい。この国のことは竜王様に任せて、エギルのことはシルヴィーに任せたわ。それだけ私が背負ってきたものを一時的に捨ててまでの選んだ道なの。覚悟を決めた道なの。そう簡単に引き下がれると思わないで」
「つまり俺がどれだけ言おうと勝手についてくるということか?」
「極論はそうなるわね。こんな優良物件を逃す手はないじゃない。本当の私って涙もろくて執着深いのかもしれないわね」
「はあ、これ以上は疲れるだけだな。お前に魅入られた時点で俺は詰んでいたということか」
「理解が早くて助かるわ」
エキドナは嬉しそうにニコッと笑みを浮かべると紅茶を一口飲んでいく。その光景を見ながら疲れたように背もたれに寄り掛かるクラウンであったが、その表情は柔らかった。
正直、エキドナがこういう姿勢で言い負かしてくれたことにはありがたいと思っている。いわゆる引くに引けなくなった自分に引き際を作ってくれたのだ。
当然本人が気づいていることではないが、それでもクラウンはエキドナがそう言う姿勢でいてくれたことには少なからずの感謝の気持ちはあった。
それからしばらく、エキドナと他愛もない会話をしているとリリス達が帰って来る。リリス達は二人の様子を見るとすぐに口角を上げていく。
ベルとロキはまさしくペットのようにクラウンを押し倒しながらくっついていき、シルヴィーはエキドナの隣に座るとエギルをエキドナの膝上に乗せて「良かったなの」と嬉しそうに告げていく。
エキドナは瞳を軽く潤ませながらエギルとシルヴィーの頭をそっと優しく撫でていく。その撫でに二人とも気持ちよさそうに目を細める。
そして、リリス達が買ってきた食材で昼食を済ませると巨大なクッションと化したロキに寄り掛かって寝るエギルの傍らで大人の作戦会議が始まった。
そこでクラウンは改めてエキドナに空に浮かぶ島までの行き方について話させた。これで情報が全員に行き渡ると話し合いは始まる。
「ということは、私達が行くためには少なからず竜人族であるエキドナの力は必須であるということね。でも、それだけなら別にエキドナさえいてくれれば問題ないんじゃない?」
「実は問題があるなの。竜になると一度にたくさんの人を乗せられたりしてるけど、あの結界だと二人までが限度らしいなの」
「それは前に先行隊がその島に向かって行ったということです?」
「うん。けど、三十名近くいた先行隊で戻ってきたのは数名で、その数名も毒でやられてしまったなの」
「毒?」
クラウンはその言葉にエキドナを見る。すると、エキドナも同じことを考えていたのか一回深く頷くとシルヴィーに聞いた。
「ねえ、その毒ってまさか―――――――」
「うん、私達を襲った黒竜の毒なの。あの島にある神殿は黒竜の巣穴みたいなの」
「―――――――!」
「エキドナ、抑えろ」
シルヴィーの言葉にエキドナは思わず殺意の念をまき散らそうとした。なぜなら、その黒竜こそがエキドナから大切な夫を奪い、息子のエギルまでも奪おうとした張本竜であるから。
しかし、クラウンはすぐに言葉をかけてエキドナを冷静にさせる。そして、チラッとエギルの方を見た。なんとか起こさずに済んだようだ。
「エキドナ、怒る気持ちはわかる。だが、抑えろ。お前がここで怒ったところで事態は解決しないし、息子に怒りっぽい母親って印象付けるのも悪いだろ?」
「.......そうね。確かに、今のは思わず冷静さをかいてしまったわ。でもまさか、どこかへ消えたと思っていた黒竜がすぐ近くにいたなんて.......よく襲われなかったものだわ」
「ほんとなの。そして、それは恐らくあの黒竜を操っていた人物がいないからなの。先行隊からもそのような会話をしていないし」
「あの男が.......」
エキドナはふと過去の記憶を思い出した。黒竜に乗った黒い法衣を着た男。それはこれまでにあったラズリやレグリアと一緒でその人物達をクラウンはこう言っていた。
『神の使徒』
エキドナのふと出た言葉が水面に波紋が出来たかのように静かに周囲に広がっていく。それだけ一瞬この場がとてつもなく冷たくなった。
そして、エキドナは思わずほくそ笑む。それは自分にもリリスやベルと全く変わらない別の目的があったとわかったから。
「ねえ、旦那様。私、今ここで諦めていた最大の目的を告げてもいいかしら?」
「それはお前の過去に関する内容のことか?」
「ええ、その通りよ。ずっと息子や国の皆を助けるために奔走していたけど、ずっと燻ぶっていた目的はしっかりとあったみたいなの」
「話してみろ。今なら、誰もお前の意見を止めないぞ」
「わかったわ」と言うとエキドナは鋭い目つきで全員に向かって告げた。
「私、黒竜を殺して、あの男も殺したい」
「そうは言っても、私には用があるのよ。わからないとは言わせないわよ」
翌日、再びクラウンを呼び出すとエキドナと二人だけの対談が始まった。互いに向き合ってソファに座り、その周りには誰一人としていない。
この状況はエキドナ自身が望んで作り出した状況であり、その他の者は一時外へで時間を潰してもらっている。
この状況になることをクラウンはなんとなく予感していた。しかし、想定よりもかなり早いことであったので、シルヴィーに呼び出された当初は驚きが隠せないでいた。
そして、一発目からこんな口調なのは言った手前、引くに引けない態度になっているからである。加えて、クラウン自身もエキドナの来る来ないに関しては考えがブレブレであったりする。
つまり、ここでのエキドナの返答次第で今後の動き方を少し考えなさなければいけない。その返答がどうであれそうと決まればそう動くつもりだ。
「そうだな。俺がお前に告げたことだろうな。しかし、俺の考えは変わらないぞ」
「私も考えを変えるつもりはないわ」
「それはついていくという意味でか?」
「ええ、そうなるわね。そもそもそれに対する返答って随分と前に何度かしたような気がしているような気がしているけど?」
「あの時はあの時だ。時間が経てば人の考えなど幾重にも変わる。まさしく俺がいい例だと思うがな」
「そうね。前に似たようなことを言った時には許可してくれたけど、今はこうなっているものね。それについて理由をずっと考えていたけど、私は随分と近場のものを見落としてみたいね。灯台下暗しって言うのかしら」
「何が言いたい?」
クラウンはエキドナの含みのある言い方に率直に尋ねていく。すると、エキドナはいつものような似たような笑みで答えていく。
「簡単よ。ここまで来て私を切り離そうだなんてこと前の旦那様なら絶対に言わなかったわ。ずっと必要としてくれていたから。そして、それは今も変わらない。そうよね?」
「.......」
「私には確かに守るべきものが多い。でもね、昨日シルヴィーと話してみて実感したのよ。私の見えないところでも私が望む通りにしっかりと成長してくれていると。それも私の手が要らないぐらい」
「なら、そいつらを見捨てるのか?」
「それは言い方が酷いわよ。それにそう言えば私が引き下がると思ったら大間違いよ。竜人族の女は強い男には執着するものだからね」
エキドナは鋭い目つきでクラウンを見る。その目はまるで獲物を狙っている捕食者のように感じた。そのことにクラウンは内心笑った。
「あの子たちは現在私の手を必要としていない。ならば、今私の手を必要としている人のために手を貸そうと思ったの。道理と思わない?」
「それはあくまで俺の意見を無視しての話だろ。俺は必要としていない」
「残念ながらそうするとあなたの道はその先から進まなくなるわよ」
「何?」
エキドナは机に置いてある紅茶を少しだけ飲むとすぐにクラウンに告げた。
「シルヴィーから聞いた話なんだけど、旦那様が向おうとしているあの空に浮かぶ島の周辺には結界が張られているらしいのよ。それも大規模な」
「お前が知らないってことはお前がこの国を出ていった後の話か。それでその結界はどういったやつなんだ?」
「竜の竜による竜に対しての結界――――――判別式竜用結界と竜王様は呼んでいたらしいわ。要するにあの島までは竜しか行けないということよ」
「なんだと.......」
「けど、絶対に他の種族が入れないわけではない。私達が通常の人型状態で入ろうとしても防がれ、竜の姿になれば入れる。ならば、背中に人を乗せた場合はどうなるのかと考えたのよ。恐らく他の種族の力も借りることを考えたのでしょうね。そして、結果から言えば入れたわ」
エキドナの説明を聞くとクラウンは思わず背もたれに寄り掛かりため息を吐いた。
「なんとなく言いたいことがわかった。つまり、その意味でお前は自分の存在が必要だと言っているのだな?」
「何言ってるの? そんなのあくまでサブの話題よ。そんな姑息な手なんか使わないわよ」
「何?」
クラウンはその言葉に思わず前のめりの姿勢に変えていく。てっきり自分の必要性の話題を提示するための話かと思っていればそうではないという。なら、エキドナの本題は一体なんなのか。
すると、エキドナはクラウンの疑問に対して話始める。
「やはりこういう話になってしまうのね.......前々から言っているけど、私は旦那様を支える一人でありたいの。現在もこうして迷惑をかけているのも百も承知で心の底から旦那様に寄り添いたいと思っているの」
「.......」
「私は恵まれているわ。シルヴィーやエギル、竜王様、妃様や国の人々が私を助けてくれる。でも、本当に助けを必要としている人は私じゃない。私の目の前にいる人。どこまでも強くなろうと足掻いて、どこまでも目的のために考えて、どこまでも仲間思いで、どこまでもどこまでも私の愛おしい人なの」
「まただな。また買いかぶっている」
「私だけが買いかぶるなら良いじゃない。それだけ過大評価しても手を伸ばして手に入れたいものってことなんだから.......私は自分が後悔しない道を選びたい。この国のことは竜王様に任せて、エギルのことはシルヴィーに任せたわ。それだけ私が背負ってきたものを一時的に捨ててまでの選んだ道なの。覚悟を決めた道なの。そう簡単に引き下がれると思わないで」
「つまり俺がどれだけ言おうと勝手についてくるということか?」
「極論はそうなるわね。こんな優良物件を逃す手はないじゃない。本当の私って涙もろくて執着深いのかもしれないわね」
「はあ、これ以上は疲れるだけだな。お前に魅入られた時点で俺は詰んでいたということか」
「理解が早くて助かるわ」
エキドナは嬉しそうにニコッと笑みを浮かべると紅茶を一口飲んでいく。その光景を見ながら疲れたように背もたれに寄り掛かるクラウンであったが、その表情は柔らかった。
正直、エキドナがこういう姿勢で言い負かしてくれたことにはありがたいと思っている。いわゆる引くに引けなくなった自分に引き際を作ってくれたのだ。
当然本人が気づいていることではないが、それでもクラウンはエキドナがそう言う姿勢でいてくれたことには少なからずの感謝の気持ちはあった。
それからしばらく、エキドナと他愛もない会話をしているとリリス達が帰って来る。リリス達は二人の様子を見るとすぐに口角を上げていく。
ベルとロキはまさしくペットのようにクラウンを押し倒しながらくっついていき、シルヴィーはエキドナの隣に座るとエギルをエキドナの膝上に乗せて「良かったなの」と嬉しそうに告げていく。
エキドナは瞳を軽く潤ませながらエギルとシルヴィーの頭をそっと優しく撫でていく。その撫でに二人とも気持ちよさそうに目を細める。
そして、リリス達が買ってきた食材で昼食を済ませると巨大なクッションと化したロキに寄り掛かって寝るエギルの傍らで大人の作戦会議が始まった。
そこでクラウンは改めてエキドナに空に浮かぶ島までの行き方について話させた。これで情報が全員に行き渡ると話し合いは始まる。
「ということは、私達が行くためには少なからず竜人族であるエキドナの力は必須であるということね。でも、それだけなら別にエキドナさえいてくれれば問題ないんじゃない?」
「実は問題があるなの。竜になると一度にたくさんの人を乗せられたりしてるけど、あの結界だと二人までが限度らしいなの」
「それは前に先行隊がその島に向かって行ったということです?」
「うん。けど、三十名近くいた先行隊で戻ってきたのは数名で、その数名も毒でやられてしまったなの」
「毒?」
クラウンはその言葉にエキドナを見る。すると、エキドナも同じことを考えていたのか一回深く頷くとシルヴィーに聞いた。
「ねえ、その毒ってまさか―――――――」
「うん、私達を襲った黒竜の毒なの。あの島にある神殿は黒竜の巣穴みたいなの」
「―――――――!」
「エキドナ、抑えろ」
シルヴィーの言葉にエキドナは思わず殺意の念をまき散らそうとした。なぜなら、その黒竜こそがエキドナから大切な夫を奪い、息子のエギルまでも奪おうとした張本竜であるから。
しかし、クラウンはすぐに言葉をかけてエキドナを冷静にさせる。そして、チラッとエギルの方を見た。なんとか起こさずに済んだようだ。
「エキドナ、怒る気持ちはわかる。だが、抑えろ。お前がここで怒ったところで事態は解決しないし、息子に怒りっぽい母親って印象付けるのも悪いだろ?」
「.......そうね。確かに、今のは思わず冷静さをかいてしまったわ。でもまさか、どこかへ消えたと思っていた黒竜がすぐ近くにいたなんて.......よく襲われなかったものだわ」
「ほんとなの。そして、それは恐らくあの黒竜を操っていた人物がいないからなの。先行隊からもそのような会話をしていないし」
「あの男が.......」
エキドナはふと過去の記憶を思い出した。黒竜に乗った黒い法衣を着た男。それはこれまでにあったラズリやレグリアと一緒でその人物達をクラウンはこう言っていた。
『神の使徒』
エキドナのふと出た言葉が水面に波紋が出来たかのように静かに周囲に広がっていく。それだけ一瞬この場がとてつもなく冷たくなった。
そして、エキドナは思わずほくそ笑む。それは自分にもリリスやベルと全く変わらない別の目的があったとわかったから。
「ねえ、旦那様。私、今ここで諦めていた最大の目的を告げてもいいかしら?」
「それはお前の過去に関する内容のことか?」
「ええ、その通りよ。ずっと息子や国の皆を助けるために奔走していたけど、ずっと燻ぶっていた目的はしっかりとあったみたいなの」
「話してみろ。今なら、誰もお前の意見を止めないぞ」
「わかったわ」と言うとエキドナは鋭い目つきで全員に向かって告げた。
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