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第11章 道化師は狩る
第237話 おかしいし、やっぱりお前は昔からおかしいのか
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クラウン達がたどり着いたのは三つの尖った山が連なる渓谷の一部。そこは人工的―――――いや、竜人工的に開拓されたような綺麗な土地が広がっていた。
その渓谷にある竜王国はカムイの故郷である鬼ヶ島が和風と捉えるなら、ここはさながら中華であった。
見るものを圧倒させるような豪華絢爛な門や建物、人族に負けず劣らずの精巧な装飾の数々。おおよそイメージしていた厳格さはあまりなく、むしろ華々しい程であった。
門を潜れば花街にも似た活気が溢れ、かといってただ色気ばかりが漂っているわけではなく、ある程度の線引きの内で楽しんでいるような感じだ。
「要するに一言で言えば皆ルール内で豊かな暮らしをしているわけよ。もっともここまで復興しているとは思わなかったけどね」
エキドナはようやく戻ってきた故郷の風景を見ながら、かつて変わる前の光景と重なったような気がして思わず笑みがこぼれる。
喧騒はあっても騒がしいだけで、喧嘩はない。そのような一触即発の雰囲気を見かけても、殴り合いにまで発展せず良識ある大人の対応をしている。
「なんというか、出来た国ね。民が争わずに喧嘩しても直ぐに手を取り合って協力できるとか、まさに国にとっての理想郷を突き詰めたような国ね」
「そうです。ただまあ、それはそれでストレスが溜まる一方なのではと思ってしまうです」
「そういう意味ではある意味息苦しそうだな。ストレスもなく、喧嘩も起こさずの両方を突き詰めようとするなら、紙一重のバランスを保つぐらいが一番ベストなんだろうな。片方に寄ってたらいずれガタがきそうだ。ロキもそう言ってるしな」
「ウォン!」
「まあ、それはそれでしっかりバランスは取っているわよ。ただ私達の喧嘩ってね、簡単には終わらないのよ。もしさっきの二人組が暴れたらこの国の四分の一は確実に消滅してしまうわ。だから、少し離れた場所にストレス発散のための島があるのよ。まあ、暴れちゃうとそう長くはもたないんだけどね」
「『ストレス発散のための島』って聞く限りじゃ凄いパワーワードよね。それ目的のために島を用意するのって。しかもそれが暴れるために存在するっていうんだから。想像し得るに十の数は確実に島を消し去ってるわ」
「しまいには暴れたりねぇとか言って二つ目の島も壊したりしてな」
「もう、そんなに私をいじめないでよ。とっても耳が痛い話なんだから」
「肯定する辺りが竜人族らしいです」
「ウォン(楽しいね)」
クラウン達はマイペースな会話をつづけていく。すると、一部の竜人族の奥様方がエキドナの姿を見るとすぐに誰かを呼ぶように走り出す。
その騒ぎは次第に大きくなり、見かけながらも気にしていなかったクラウン達もさすがに気にせざるを得ない雰囲気になっていく。
異邦人を連れていることが歓迎されていないのかはたまた全く別に理由なのか。どちらにせよ、面倒ごとは避けられそうにない感じであった。
その時、クラウンは前方にそびえ立つ「竜華蘭」という名前の入った門の方から勢いよく人――――――否、竜人が飛んでくるのことに気が付いた。
竜化もせず人型の状態の人物の目指す先は直線状にいるエキドナ。敵意は感じ取れないので、恐らく乱闘騒ぎにはならないだろうが、人を大砲で打ち出したような速度で向かって来るのはどう説明したらいいのか。
すると、さすがのエキドナも気づいたのかその向かって来る人物に目を向けて確認するとすぐにクラウン達に「大丈夫よ」と声をかけていく。
そして、次に取った行動は受け止めるかのように両腕を大きく広げたのだ。そのエキドナの行動に合わせるように向かって来る人物も抱きつくように両腕を広げていく。
「ね~~~~~え~~~~~さ~~~~~~ん~~~~~!」
―――――――ドンッ!
竜人とはいえおおよそ鳴ってはいけない音がした瞬間、エキドナは向かってきた人物を受け止めるとそのまま勢いを流していくように回転していく。
その回転はまるで竜巻かのように周囲の砂埃を巻き上げてグルグルグルグルと激しく回転していく。声からしてエキドナの妹なのだろうがどうしてこう普通の会い方が出来ないものだろうか。
そのことにクラウンとリリスは吹き荒れる風に髪を揺らしながら、どこか諦めたような目でエキドナ達の光景を眺めていた。
その視線は「どうせまともな妹じゃない」という目だ。まあ、エキドナが予想外を超える変態なので同じ血筋ならそう考えてもおかしくあるまい。
そんな二人が眺める中、回転の勢いは次第になくなっていく。すると、砂埃で見えなかったエキドナとその妹の姿が見えて来た。
妹の姿は茶色いポニーテールに特徴的な八重歯、そして汚れなど一切なさそうな眩しい笑顔であった。言うなれば、エキドナとは対照的な存在とも思えてくる。
見た目はクリアした。しかし、問題は中身である。そんな品定めでもするような目にクラウンとリリスはなってしまう。なぜなら、エキドナがアレだから。
そんな二人の姿を悲いそうな人を見るような目をするベルとロキは揃ってため息を吐いた。
「姉さん、姉さん姉さん姉さん!」
「はいはい、落ち着きなさいシルヴィー。久々の再会で私もとっても嬉しいわ。けど、私の大切な人達の前なの。もう少し律儀にね」
「む、そうなの?」
エキドナはシルヴィーを優しく抱きしめ、背中を叩きながらなだめる。すると、シルヴィーはその状態のままエキドナの背後にいるクラウン達を見た。
そして、目を二回ほどパチクリさせるとエキドナから離れてクラウン達へと挨拶をする。
「初めましてなの。私はシルヴィー。エキドナ姉さんの妹で人族年齢にすると同い年くらいなの。よろしくなの」
シルヴィーは屈託ない笑顔をクラウン達に向ける。その笑顔はピカーッと光っていて、背後には後光が刺しているように見えた。
眩しい、眩し過ぎる。どう考えてもエキドナの妹とは思えない。本人も「エキドナの妹」と言っているが、それが信用できないほど――――――汚れが見えない。
クラウンとリリスは失礼なほどにエキドナとシルヴィーを見比べるとエキドナに質問する。
「エキドナ、何をしたの? この子どこから拾って妹にしたの?」
「もしお前の下にこんな妹がいたとしたら、どうしてお前の言葉からは『濡れる』だの『下腹部が熱くなる』だの言葉が出てくるんだ?」
「なあなあ、その『濡れる』や『下腹部が熱くなる』ってなんなの? 私はこれぐらいじゃ汗はかかないし、下腹部が熱くなることなんて知らないなの? どういう意味なの?」
「「ま、眩しい.......!」」
クラウンとリリスはそんな質問をしてくるシルヴィーに思わず目を眩む。そして同時に、この子だけには汚い世界を見せたくないと庇護欲のようなものが働き始めた。
リリスはシルヴィーを抱き寄せると「大丈夫よ、あなたは私が守るから」と言って背中をさすり、クラウンは無言であったが、手は自然とシルヴィーの頭を撫でている。
そんな二人の行動にシルヴィーは疑問の表情をしながらも、だんだんとリラックスしていくように表情が緩んでいく。
その光景を見ていたベルとロキはジェラシーが湧き起こる。そして、ベルはクラウンのもう片方の手を取ると頭に乗せて、ロキはクラウンにおぶさるようにクラウンの頭に顎を乗っけていく。
いろいろとおかしくなってきた構図にエキドナは微笑ましそうに笑い、先ほどのクラウンの質問に答えていく。
「ふふっ、そうねー。そこが私にも謎なのよね。まあ、この子の前では意図的に使わないようにしていたけど、ここまで純粋になるとはねー」
「意図的使わないとしても、限度があるだろ。それにお前の場合はもとが酷過ぎるから、すぐにボロが出そうなんだが」
「こう見えても私隠し上手なのよ? いずれ旦那様の立派な竿も私の体内に隠して見せるから」
「ド下ネタじゃねぇか」
「そうね。でも、この感想をシルヴィーに聞いてみるとね........シルヴィー、今の私の言葉をどう思った?」
「なんかよくわからないけど、面白かったのだ~」
「こうなるのよ」
「解せねぇ。というか、そこまで無知なのか? 普通は一般教養ぐらい教えるだろ」
「教えてこれなのよ。それでいて未だにワイバーンが赤ちゃんを運んでくると思っているのよ」
「ワイバーンが赤ちゃんを運んでくる」とはこの世界で――――――否、竜人族の中で使われる「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」的な意味合いである。
どう考えても殺伐な空気しかしないような言い回しの表現にクラウンが突っ込まないのはその言葉があることを知っていたのと無駄な労力を避けるためである。こんな言葉にいちいち突っ込んでいたら、エキドナの下ネタに耐えられない。
すると、その話を聞いていたベルは未だリリスに撫でまわされているシルヴィーをチラッと見てエキドナに告げる。
「まるでシルヴィー様のそういう性的な感情がほぼ全てエキドナ様に吸われたのような感じに思うです」
「言い得て妙だな」
「そうね、今までで一番しっくりくる説明かもしれないわ。だとすると、私が激しく淫乱なのも検討が作ってものね」
「自覚があるのならもう少し抑えてあげると助かるのだけど。それと雪姫や朱里にも変なことを教えてたの私知ってるんだからね!」
リリスはビシッとエキドナに指を指す。するとふと、その指先の方向――――――エキドナの背後――――――から大勢の竜人族が一斉にこちらへと向かっていることに気付いた。
砂煙で視界が悪くなっているであろうにもかかわらず、お構いなしに老若男女関係なくエキドナに向かって一直線。
そして、エキドナの体を担ぎ上げるとそのまま胴上げをし始めた。その光景を見ていたクラウン達は思わず呆然とする。
しかし、すぐにその行動の意味を理解する。
「「「「「淫乱娘がついに男を連れて帰って来たぞー! これでこの国にもう淫乱娘に無意味な誘惑をされることがなくなるぞー! バンザーイ!」」」」」
クラウンとリリスは「昔っから淫乱なのか.......」と思わず遠い目をしながら、その一部泣いた人も見られるエキドナの胴上げを眺めていた。
その渓谷にある竜王国はカムイの故郷である鬼ヶ島が和風と捉えるなら、ここはさながら中華であった。
見るものを圧倒させるような豪華絢爛な門や建物、人族に負けず劣らずの精巧な装飾の数々。おおよそイメージしていた厳格さはあまりなく、むしろ華々しい程であった。
門を潜れば花街にも似た活気が溢れ、かといってただ色気ばかりが漂っているわけではなく、ある程度の線引きの内で楽しんでいるような感じだ。
「要するに一言で言えば皆ルール内で豊かな暮らしをしているわけよ。もっともここまで復興しているとは思わなかったけどね」
エキドナはようやく戻ってきた故郷の風景を見ながら、かつて変わる前の光景と重なったような気がして思わず笑みがこぼれる。
喧騒はあっても騒がしいだけで、喧嘩はない。そのような一触即発の雰囲気を見かけても、殴り合いにまで発展せず良識ある大人の対応をしている。
「なんというか、出来た国ね。民が争わずに喧嘩しても直ぐに手を取り合って協力できるとか、まさに国にとっての理想郷を突き詰めたような国ね」
「そうです。ただまあ、それはそれでストレスが溜まる一方なのではと思ってしまうです」
「そういう意味ではある意味息苦しそうだな。ストレスもなく、喧嘩も起こさずの両方を突き詰めようとするなら、紙一重のバランスを保つぐらいが一番ベストなんだろうな。片方に寄ってたらいずれガタがきそうだ。ロキもそう言ってるしな」
「ウォン!」
「まあ、それはそれでしっかりバランスは取っているわよ。ただ私達の喧嘩ってね、簡単には終わらないのよ。もしさっきの二人組が暴れたらこの国の四分の一は確実に消滅してしまうわ。だから、少し離れた場所にストレス発散のための島があるのよ。まあ、暴れちゃうとそう長くはもたないんだけどね」
「『ストレス発散のための島』って聞く限りじゃ凄いパワーワードよね。それ目的のために島を用意するのって。しかもそれが暴れるために存在するっていうんだから。想像し得るに十の数は確実に島を消し去ってるわ」
「しまいには暴れたりねぇとか言って二つ目の島も壊したりしてな」
「もう、そんなに私をいじめないでよ。とっても耳が痛い話なんだから」
「肯定する辺りが竜人族らしいです」
「ウォン(楽しいね)」
クラウン達はマイペースな会話をつづけていく。すると、一部の竜人族の奥様方がエキドナの姿を見るとすぐに誰かを呼ぶように走り出す。
その騒ぎは次第に大きくなり、見かけながらも気にしていなかったクラウン達もさすがに気にせざるを得ない雰囲気になっていく。
異邦人を連れていることが歓迎されていないのかはたまた全く別に理由なのか。どちらにせよ、面倒ごとは避けられそうにない感じであった。
その時、クラウンは前方にそびえ立つ「竜華蘭」という名前の入った門の方から勢いよく人――――――否、竜人が飛んでくるのことに気が付いた。
竜化もせず人型の状態の人物の目指す先は直線状にいるエキドナ。敵意は感じ取れないので、恐らく乱闘騒ぎにはならないだろうが、人を大砲で打ち出したような速度で向かって来るのはどう説明したらいいのか。
すると、さすがのエキドナも気づいたのかその向かって来る人物に目を向けて確認するとすぐにクラウン達に「大丈夫よ」と声をかけていく。
そして、次に取った行動は受け止めるかのように両腕を大きく広げたのだ。そのエキドナの行動に合わせるように向かって来る人物も抱きつくように両腕を広げていく。
「ね~~~~~え~~~~~さ~~~~~~ん~~~~~!」
―――――――ドンッ!
竜人とはいえおおよそ鳴ってはいけない音がした瞬間、エキドナは向かってきた人物を受け止めるとそのまま勢いを流していくように回転していく。
その回転はまるで竜巻かのように周囲の砂埃を巻き上げてグルグルグルグルと激しく回転していく。声からしてエキドナの妹なのだろうがどうしてこう普通の会い方が出来ないものだろうか。
そのことにクラウンとリリスは吹き荒れる風に髪を揺らしながら、どこか諦めたような目でエキドナ達の光景を眺めていた。
その視線は「どうせまともな妹じゃない」という目だ。まあ、エキドナが予想外を超える変態なので同じ血筋ならそう考えてもおかしくあるまい。
そんな二人が眺める中、回転の勢いは次第になくなっていく。すると、砂埃で見えなかったエキドナとその妹の姿が見えて来た。
妹の姿は茶色いポニーテールに特徴的な八重歯、そして汚れなど一切なさそうな眩しい笑顔であった。言うなれば、エキドナとは対照的な存在とも思えてくる。
見た目はクリアした。しかし、問題は中身である。そんな品定めでもするような目にクラウンとリリスはなってしまう。なぜなら、エキドナがアレだから。
そんな二人の姿を悲いそうな人を見るような目をするベルとロキは揃ってため息を吐いた。
「姉さん、姉さん姉さん姉さん!」
「はいはい、落ち着きなさいシルヴィー。久々の再会で私もとっても嬉しいわ。けど、私の大切な人達の前なの。もう少し律儀にね」
「む、そうなの?」
エキドナはシルヴィーを優しく抱きしめ、背中を叩きながらなだめる。すると、シルヴィーはその状態のままエキドナの背後にいるクラウン達を見た。
そして、目を二回ほどパチクリさせるとエキドナから離れてクラウン達へと挨拶をする。
「初めましてなの。私はシルヴィー。エキドナ姉さんの妹で人族年齢にすると同い年くらいなの。よろしくなの」
シルヴィーは屈託ない笑顔をクラウン達に向ける。その笑顔はピカーッと光っていて、背後には後光が刺しているように見えた。
眩しい、眩し過ぎる。どう考えてもエキドナの妹とは思えない。本人も「エキドナの妹」と言っているが、それが信用できないほど――――――汚れが見えない。
クラウンとリリスは失礼なほどにエキドナとシルヴィーを見比べるとエキドナに質問する。
「エキドナ、何をしたの? この子どこから拾って妹にしたの?」
「もしお前の下にこんな妹がいたとしたら、どうしてお前の言葉からは『濡れる』だの『下腹部が熱くなる』だの言葉が出てくるんだ?」
「なあなあ、その『濡れる』や『下腹部が熱くなる』ってなんなの? 私はこれぐらいじゃ汗はかかないし、下腹部が熱くなることなんて知らないなの? どういう意味なの?」
「「ま、眩しい.......!」」
クラウンとリリスはそんな質問をしてくるシルヴィーに思わず目を眩む。そして同時に、この子だけには汚い世界を見せたくないと庇護欲のようなものが働き始めた。
リリスはシルヴィーを抱き寄せると「大丈夫よ、あなたは私が守るから」と言って背中をさすり、クラウンは無言であったが、手は自然とシルヴィーの頭を撫でている。
そんな二人の行動にシルヴィーは疑問の表情をしながらも、だんだんとリラックスしていくように表情が緩んでいく。
その光景を見ていたベルとロキはジェラシーが湧き起こる。そして、ベルはクラウンのもう片方の手を取ると頭に乗せて、ロキはクラウンにおぶさるようにクラウンの頭に顎を乗っけていく。
いろいろとおかしくなってきた構図にエキドナは微笑ましそうに笑い、先ほどのクラウンの質問に答えていく。
「ふふっ、そうねー。そこが私にも謎なのよね。まあ、この子の前では意図的に使わないようにしていたけど、ここまで純粋になるとはねー」
「意図的使わないとしても、限度があるだろ。それにお前の場合はもとが酷過ぎるから、すぐにボロが出そうなんだが」
「こう見えても私隠し上手なのよ? いずれ旦那様の立派な竿も私の体内に隠して見せるから」
「ド下ネタじゃねぇか」
「そうね。でも、この感想をシルヴィーに聞いてみるとね........シルヴィー、今の私の言葉をどう思った?」
「なんかよくわからないけど、面白かったのだ~」
「こうなるのよ」
「解せねぇ。というか、そこまで無知なのか? 普通は一般教養ぐらい教えるだろ」
「教えてこれなのよ。それでいて未だにワイバーンが赤ちゃんを運んでくると思っているのよ」
「ワイバーンが赤ちゃんを運んでくる」とはこの世界で――――――否、竜人族の中で使われる「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」的な意味合いである。
どう考えても殺伐な空気しかしないような言い回しの表現にクラウンが突っ込まないのはその言葉があることを知っていたのと無駄な労力を避けるためである。こんな言葉にいちいち突っ込んでいたら、エキドナの下ネタに耐えられない。
すると、その話を聞いていたベルは未だリリスに撫でまわされているシルヴィーをチラッと見てエキドナに告げる。
「まるでシルヴィー様のそういう性的な感情がほぼ全てエキドナ様に吸われたのような感じに思うです」
「言い得て妙だな」
「そうね、今までで一番しっくりくる説明かもしれないわ。だとすると、私が激しく淫乱なのも検討が作ってものね」
「自覚があるのならもう少し抑えてあげると助かるのだけど。それと雪姫や朱里にも変なことを教えてたの私知ってるんだからね!」
リリスはビシッとエキドナに指を指す。するとふと、その指先の方向――――――エキドナの背後――――――から大勢の竜人族が一斉にこちらへと向かっていることに気付いた。
砂煙で視界が悪くなっているであろうにもかかわらず、お構いなしに老若男女関係なくエキドナに向かって一直線。
そして、エキドナの体を担ぎ上げるとそのまま胴上げをし始めた。その光景を見ていたクラウン達は思わず呆然とする。
しかし、すぐにその行動の意味を理解する。
「「「「「淫乱娘がついに男を連れて帰って来たぞー! これでこの国にもう淫乱娘に無意味な誘惑をされることがなくなるぞー! バンザーイ!」」」」」
クラウンとリリスは「昔っから淫乱なのか.......」と思わず遠い目をしながら、その一部泣いた人も見られるエキドナの胴上げを眺めていた。
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