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第11章 道化師は狩る
第236話 一時の別れ
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クラウンはリゼリアが彼方へと消えていくのを見届けるとすぐに雪姫へと声をかけた。
「雪姫、お前達はどうする?」
その質問の意図は先ほどのリゼリアの伝言を聞いた上でどうするかという意味であった。リゼリアの言葉から考えるに誰かが聖王国へと戻って響に教えてもらった事実を伝えた方がいいのは明白。
しかし、それはクラウン達ではできない。故に、それが出来るのは雪姫達だけであって、もはや選択肢もないような状況であるが念のため意見を聞いた感じだ。
すると、雪姫達はさも当然かのように言葉を告げていく。
「私達は聖王国へと戻るよ。そうしなければいけないのも事実だし、それしか選択肢もないのも事実。でも、それ以上に私達の力で皆を救えるのならたとえどんなに危険が高くても断るつもりは無い」
「雪姫にほとんど言われちゃったよ。ま、とにかくそういうこと。私は雪姫だけじゃ心配だし、力になりたいからついていく。それから、ここで解散で構わないから」
「いいのか? 割と距離があるし、少し遠回りしなければいけないぞ?」
「そこは安心しろ。俺達もついていくことにしたからな。こう見えても俺は各地を行きまくった男だ。遠回りになろうともその中での最短を俺は知っている」
「私は兄さんが野獣にならないための手綱役として同行します。クラウンさんほど貞操がしっかりしてなさそうですしね」
「ルナ、俺ってそこまで信用ない?」
「それと他に気になることもありますし.......」
ルナはそう言いながら朱里の方をチラッと見る。すると、目が合った朱里は冷汗をかきながらスーッと目を逸らしていき、その様子をルナは楽しそうに笑っている。
クラウンは一通りの意見を聞くと「そうか」とだけ告げて引き留めることはしなかった。それがそれぞれの意見なのだとしたらそれが正しいのだろう。そして同時に、引き留める意見も持ち合わせていないし。
とはいえ、さすがに戦力差というものには不安が残る。少なくとも、もう一人カムイ以外に交戦力となる人物は欲しいところだ。なので.......
「リル、お前はカムイ達へとついていけ。そして、全員を死なせるな」
「ふふっ、マスターはどうやら本格的に放置プレイがお好きのようですね.......というのは冗談なのでそんなイラっとした顔はしないでください。むしろ、そそりますから」
「いいから返事は? 『はい』か『了解』か『イエス』だ」
「それって全部同じじゃない」
「それならば、第四の選択肢の御意でいかせてもらいます。必ずやマスターの命令は完遂させます」
「ああ、そうすれば褒美をくれてやる」
「ほほう? 今の音声データは録音してさらにバックアップしましたからね? 言い逃れは出来ませんよ」
「チッ、その行動は無駄に早いな」
本来、リルリアーゼをその気にさせるだけの言葉であったが、どうやらクラウンが思っているよりも一枚上手だったらしい。言いっぱなしトンズラ作戦はすでに破綻したようだ。
クラウンは自分の失言に後悔しながらも、「任せた」と再度言葉を伝えていく。その言葉にリルリアーゼは体が一直線になるような奇麗な敬礼をして答えた。
それから、クラウンは雪姫に視線を移すと雪姫と目が合った。あの目は昔っから変わらない心配している目であった。
クラウンはその目に思わずため息を吐きながらも、前科がもとの世界も含めると数えきれないほどあるのでそっと雪姫の頭に手を置いた。そして、その頭をゆっくりと撫でていく。
「心配すんな......ってのはあんまし信用ない言葉だったよな?」
「うん、仁に限ってはね。そう言うときほど大体無茶しているような気がするから。でも、今回に限っては言わなくても無茶する臭いがプンプンするけどね」
「まあ、その、なんだ、悪いな。お前が見ていない間でもきっと無茶するな。それが今の俺の性に合ってるから。だから、これからも心配かけると思う」
「はあ、全く最低な言葉だよね。心配させる前提で動くとか.......でも、きっとそれが仁なんだってわかってるから。私は仁を止めない。だって、仁も私を心配してくれるだろうしね」
「...........まあ」
「なんか妙に間が長かったんだけど?」
雪姫は思わずムッとしたように頬を膨らませ睨んだ目をする。しかし、その目からは怒気のような感情は微塵も感じず、クラウンの間が長かったのは心配もいらないほど無事であると確信していることだとわかっているから。
言葉もいらずに会話が成立する。それが幼馴染というものだ。最もそれでも多少の心配はして欲しかった気もするが、それを仁に求めても仕方ないだろう。
そう思うと雪姫は頭にあるクラウンの手を両手にとってゆっくりと頬まで動かしていく。そして、少し潤んだ瞳でその手に頭を預けるように首を傾げる。
その行動にクラウンも思わず目が優しくなり、柔らかい笑みを浮かべていく。まるで二人だけの空間だ―――――周囲の仲間達を置き去りにして。
すると、ロキがその空間に割って入るかのようにクラウンの肩に手を置いて、頭に顎を乗せる。そしてまた、リリスがゴホンとわざとらしく一回咳払い。
その隙に雪姫はハッとするとすぐさまクラウンの手を放し、途端に真っ赤に顔を染め上げる。周囲の存在を忘れてしまうほどドップリクラウンとの時間を楽しんでいたようだ。穴があったら入りたいような顔をしている。
リリスは「先ほどの空気は触れないようにしよう」と思いつつ、雪姫に告げていく。
「安心して、たとえクラウンが無茶しようとも私達が止めるから」
「そうです。主様が暴走したならまた止めるだけです」
「ふふっ、それが支える妻の役目というわけかしら。ね、リリスちゃん?」
「わ、私に今更同意を求めないでよ」
「ツンに見せかけたデレですね」
「リルは黙ってなさい」
「でも正直なところ、朱里的にはクラウンが無茶をするなら三人とも止めるというより、その無茶についていくような気がするんだけど」
「「「.......」」」
「そこは否定してよ! リリスちゃん、ベルちゃん、エキドナさん!!!」
「ははは、相変わらず締まらねぇな」
「ウォン」
「『いつも通り』とロキ様が言ってるです」
「ふふっ、賑やかですね」
終わりに向かっていた話がちょっとしたことからゴロゴロと進んですぐに脱線。いつも通りであり、もう慣れたことでもある。
目的の宝玉も残すところあと二つとなり、終わりも近づいているというのにこの体たらく。いや、むしろ終わりが近づいているからこそ、無理に気張らずにいつも通りということなのだろうか。
クラウンは二回ほど手を叩き「お前ら、一旦落ち着け」と言うと改めて雪姫達に伝える。
「それじゃあ、お前達.......行ってこい」
「うん、仁達もいってらっしゃい」
そう告げると互いに背を向けて歩き出す。そして、雪姫達はシュリエールに用意してもらった馬車に乗り込み、これからエキドナの故郷である竜王国に行くクラウン達は竜化したエキドナの背中へと乗っていく。
馬車が出発するとともにエキドナも大きく空へと羽ばたいていく。下にいる馬車は途端に小さくなっていき、やがて遠く見えないほどの点となって消えた。
「私達も残すところ後二つというところに来たのね」
「だが、それはあくまで通過点だ。それを集めてようやく神に挑む挑戦権を得るってことだ。全く気が長い話だ」
エキドナの背中の上で丸くなったロキ(通称ロキ枕)に寄り掛かるリリスは膝の上にベルを乗っけたクラウンと思わず出会った頃のことを思い出しながら話していく。
すると、クラウンに耳を撫でられてむず痒そうな表情しているベルは二人の会話を聞いて思わず質問する。
「そういえば、宝玉を集めた後はどうすれば神へと行けるです?」
「あー、そういえばベルは知らなかったわね.......って、あれ? そもそも神への挑戦権だっけ?」
「違ったか?」
「待って、少し確かめて見る」
そう言うとリリスは指輪から一番最初の森にあった神殿の最深部に置いてあった手紙を取り出して中を読み始めた。そして、読み終わると手紙をゆっくりと折りたたんで指輪にしまった。
「あー、なんというかね......その―――――」
「どうした?」
「その宝玉を全て集めて一番最初の神殿に戻れば『望む力が手に入る』と書かれてたわ。逆に言えば、神に関することは一切書かれていなかったわ」
リリスはなんとも気まずそうな顔をする。それもそうだここまで来ておいて未だに神に関する情報が不十分だとわかったのだから。
これまで神殿を行くのは全て神へと戦いを挑むための準備だと思っていた。まあ、「力を得る」という点では間違っていないのだろうが、少なくとも思っていたのとは違うのは確かだ。
そして、それを知って今まで勘違いしていたことにリリスは思わず頭を悩ませた。それから、これを聞いたことに対するクラウンの反応にも恐怖を感じていた。
しかし、リリスが思うほどクラウンの反応はあまりにも淡泊で「そうか」とだけだった。その表情からも怒っているような感じはせず、ありのままの事実を受け入れているようだ。
そのことにリリスは思わず拍子抜けする。また同時に、理由を尋ねてみたくなった。
「随分と反応薄くない?」
「まあ、正直がっかりはしているが、勘違いしていたのは俺も同じだ。キレても仕方ないだろう。それに結局のところ神の使徒は全滅させるつもりだ。手先を全滅させればさすがに総大将も現れてくるだろう。リゼリアが体を乗っ取った色欲の後釜が未だいないことから考えて、そうそうに人数は補充出来ない。それに獣王国のような神の使徒モドキが何人来ようとも今の俺達の敵じゃないしな」
「.......そうね、確かにその通りね」
「私達は強いです!」
「ウォン!」
「ああ、そうだなロキ。かましやろうぜ」
「ふふっ、私達は今更そんなことでへこたれないわよ」
未だ神へと行く方法が見つからないままでも四人と一匹の絆は固かった。それはもはや揺るぎようのないほどに。
それから数日後、クラウン達は遠くへと尖った山が三つ連なる竜王国へと辿り着いた。
「雪姫、お前達はどうする?」
その質問の意図は先ほどのリゼリアの伝言を聞いた上でどうするかという意味であった。リゼリアの言葉から考えるに誰かが聖王国へと戻って響に教えてもらった事実を伝えた方がいいのは明白。
しかし、それはクラウン達ではできない。故に、それが出来るのは雪姫達だけであって、もはや選択肢もないような状況であるが念のため意見を聞いた感じだ。
すると、雪姫達はさも当然かのように言葉を告げていく。
「私達は聖王国へと戻るよ。そうしなければいけないのも事実だし、それしか選択肢もないのも事実。でも、それ以上に私達の力で皆を救えるのならたとえどんなに危険が高くても断るつもりは無い」
「雪姫にほとんど言われちゃったよ。ま、とにかくそういうこと。私は雪姫だけじゃ心配だし、力になりたいからついていく。それから、ここで解散で構わないから」
「いいのか? 割と距離があるし、少し遠回りしなければいけないぞ?」
「そこは安心しろ。俺達もついていくことにしたからな。こう見えても俺は各地を行きまくった男だ。遠回りになろうともその中での最短を俺は知っている」
「私は兄さんが野獣にならないための手綱役として同行します。クラウンさんほど貞操がしっかりしてなさそうですしね」
「ルナ、俺ってそこまで信用ない?」
「それと他に気になることもありますし.......」
ルナはそう言いながら朱里の方をチラッと見る。すると、目が合った朱里は冷汗をかきながらスーッと目を逸らしていき、その様子をルナは楽しそうに笑っている。
クラウンは一通りの意見を聞くと「そうか」とだけ告げて引き留めることはしなかった。それがそれぞれの意見なのだとしたらそれが正しいのだろう。そして同時に、引き留める意見も持ち合わせていないし。
とはいえ、さすがに戦力差というものには不安が残る。少なくとも、もう一人カムイ以外に交戦力となる人物は欲しいところだ。なので.......
「リル、お前はカムイ達へとついていけ。そして、全員を死なせるな」
「ふふっ、マスターはどうやら本格的に放置プレイがお好きのようですね.......というのは冗談なのでそんなイラっとした顔はしないでください。むしろ、そそりますから」
「いいから返事は? 『はい』か『了解』か『イエス』だ」
「それって全部同じじゃない」
「それならば、第四の選択肢の御意でいかせてもらいます。必ずやマスターの命令は完遂させます」
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「ほほう? 今の音声データは録音してさらにバックアップしましたからね? 言い逃れは出来ませんよ」
「チッ、その行動は無駄に早いな」
本来、リルリアーゼをその気にさせるだけの言葉であったが、どうやらクラウンが思っているよりも一枚上手だったらしい。言いっぱなしトンズラ作戦はすでに破綻したようだ。
クラウンは自分の失言に後悔しながらも、「任せた」と再度言葉を伝えていく。その言葉にリルリアーゼは体が一直線になるような奇麗な敬礼をして答えた。
それから、クラウンは雪姫に視線を移すと雪姫と目が合った。あの目は昔っから変わらない心配している目であった。
クラウンはその目に思わずため息を吐きながらも、前科がもとの世界も含めると数えきれないほどあるのでそっと雪姫の頭に手を置いた。そして、その頭をゆっくりと撫でていく。
「心配すんな......ってのはあんまし信用ない言葉だったよな?」
「うん、仁に限ってはね。そう言うときほど大体無茶しているような気がするから。でも、今回に限っては言わなくても無茶する臭いがプンプンするけどね」
「まあ、その、なんだ、悪いな。お前が見ていない間でもきっと無茶するな。それが今の俺の性に合ってるから。だから、これからも心配かけると思う」
「はあ、全く最低な言葉だよね。心配させる前提で動くとか.......でも、きっとそれが仁なんだってわかってるから。私は仁を止めない。だって、仁も私を心配してくれるだろうしね」
「...........まあ」
「なんか妙に間が長かったんだけど?」
雪姫は思わずムッとしたように頬を膨らませ睨んだ目をする。しかし、その目からは怒気のような感情は微塵も感じず、クラウンの間が長かったのは心配もいらないほど無事であると確信していることだとわかっているから。
言葉もいらずに会話が成立する。それが幼馴染というものだ。最もそれでも多少の心配はして欲しかった気もするが、それを仁に求めても仕方ないだろう。
そう思うと雪姫は頭にあるクラウンの手を両手にとってゆっくりと頬まで動かしていく。そして、少し潤んだ瞳でその手に頭を預けるように首を傾げる。
その行動にクラウンも思わず目が優しくなり、柔らかい笑みを浮かべていく。まるで二人だけの空間だ―――――周囲の仲間達を置き去りにして。
すると、ロキがその空間に割って入るかのようにクラウンの肩に手を置いて、頭に顎を乗せる。そしてまた、リリスがゴホンとわざとらしく一回咳払い。
その隙に雪姫はハッとするとすぐさまクラウンの手を放し、途端に真っ赤に顔を染め上げる。周囲の存在を忘れてしまうほどドップリクラウンとの時間を楽しんでいたようだ。穴があったら入りたいような顔をしている。
リリスは「先ほどの空気は触れないようにしよう」と思いつつ、雪姫に告げていく。
「安心して、たとえクラウンが無茶しようとも私達が止めるから」
「そうです。主様が暴走したならまた止めるだけです」
「ふふっ、それが支える妻の役目というわけかしら。ね、リリスちゃん?」
「わ、私に今更同意を求めないでよ」
「ツンに見せかけたデレですね」
「リルは黙ってなさい」
「でも正直なところ、朱里的にはクラウンが無茶をするなら三人とも止めるというより、その無茶についていくような気がするんだけど」
「「「.......」」」
「そこは否定してよ! リリスちゃん、ベルちゃん、エキドナさん!!!」
「ははは、相変わらず締まらねぇな」
「ウォン」
「『いつも通り』とロキ様が言ってるです」
「ふふっ、賑やかですね」
終わりに向かっていた話がちょっとしたことからゴロゴロと進んですぐに脱線。いつも通りであり、もう慣れたことでもある。
目的の宝玉も残すところあと二つとなり、終わりも近づいているというのにこの体たらく。いや、むしろ終わりが近づいているからこそ、無理に気張らずにいつも通りということなのだろうか。
クラウンは二回ほど手を叩き「お前ら、一旦落ち着け」と言うと改めて雪姫達に伝える。
「それじゃあ、お前達.......行ってこい」
「うん、仁達もいってらっしゃい」
そう告げると互いに背を向けて歩き出す。そして、雪姫達はシュリエールに用意してもらった馬車に乗り込み、これからエキドナの故郷である竜王国に行くクラウン達は竜化したエキドナの背中へと乗っていく。
馬車が出発するとともにエキドナも大きく空へと羽ばたいていく。下にいる馬車は途端に小さくなっていき、やがて遠く見えないほどの点となって消えた。
「私達も残すところ後二つというところに来たのね」
「だが、それはあくまで通過点だ。それを集めてようやく神に挑む挑戦権を得るってことだ。全く気が長い話だ」
エキドナの背中の上で丸くなったロキ(通称ロキ枕)に寄り掛かるリリスは膝の上にベルを乗っけたクラウンと思わず出会った頃のことを思い出しながら話していく。
すると、クラウンに耳を撫でられてむず痒そうな表情しているベルは二人の会話を聞いて思わず質問する。
「そういえば、宝玉を集めた後はどうすれば神へと行けるです?」
「あー、そういえばベルは知らなかったわね.......って、あれ? そもそも神への挑戦権だっけ?」
「違ったか?」
「待って、少し確かめて見る」
そう言うとリリスは指輪から一番最初の森にあった神殿の最深部に置いてあった手紙を取り出して中を読み始めた。そして、読み終わると手紙をゆっくりと折りたたんで指輪にしまった。
「あー、なんというかね......その―――――」
「どうした?」
「その宝玉を全て集めて一番最初の神殿に戻れば『望む力が手に入る』と書かれてたわ。逆に言えば、神に関することは一切書かれていなかったわ」
リリスはなんとも気まずそうな顔をする。それもそうだここまで来ておいて未だに神に関する情報が不十分だとわかったのだから。
これまで神殿を行くのは全て神へと戦いを挑むための準備だと思っていた。まあ、「力を得る」という点では間違っていないのだろうが、少なくとも思っていたのとは違うのは確かだ。
そして、それを知って今まで勘違いしていたことにリリスは思わず頭を悩ませた。それから、これを聞いたことに対するクラウンの反応にも恐怖を感じていた。
しかし、リリスが思うほどクラウンの反応はあまりにも淡泊で「そうか」とだけだった。その表情からも怒っているような感じはせず、ありのままの事実を受け入れているようだ。
そのことにリリスは思わず拍子抜けする。また同時に、理由を尋ねてみたくなった。
「随分と反応薄くない?」
「まあ、正直がっかりはしているが、勘違いしていたのは俺も同じだ。キレても仕方ないだろう。それに結局のところ神の使徒は全滅させるつもりだ。手先を全滅させればさすがに総大将も現れてくるだろう。リゼリアが体を乗っ取った色欲の後釜が未だいないことから考えて、そうそうに人数は補充出来ない。それに獣王国のような神の使徒モドキが何人来ようとも今の俺達の敵じゃないしな」
「.......そうね、確かにその通りね」
「私達は強いです!」
「ウォン!」
「ああ、そうだなロキ。かましやろうぜ」
「ふふっ、私達は今更そんなことでへこたれないわよ」
未だ神へと行く方法が見つからないままでも四人と一匹の絆は固かった。それはもはや揺るぎようのないほどに。
それから数日後、クラウン達は遠くへと尖った山が三つ連なる竜王国へと辿り着いた。
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