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第10章 決戦
第233話 愛し愛され
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クラウンと雪姫はベランダにてしばらく沈黙の時間を過ごしていた。沈黙と言っても息苦しいものではなく、ゆったりとした時間が流れていくようなリラックスできる空間であった。
夜月の優しい光とそよ風のような夜風に当てられて二人は目を細める。その身に戻ってきた実感とどこか昂りそうな気持を抑えるため。
すると突然、雪姫はクラウンに告げる。
「仁、私はそろそろ部屋に戻るよ。仁が無事だと感じて安心できたし、仁も一人でゆっくりしたいだろうしね」
「俺は目が覚めちまってるから話し相手が欲しいんだが。眠たくないしな」
「それなら、うってつけの人物がいるよ。もっとも本当は今は会って欲しくないんだけどね」
「.......?」
雪姫のどこか含みがあるような言い方にクラウンは思わず怪訝な視線を送る。「どういう意味だ?」と視線で送っていく。
しかし、雪姫は恐らくその言葉の意味に気付いていながらも、答えるような素振りは見せなかった。つまりはその人物がこの部屋を尋ねるから自分で直接確かめろということなのか。
「ち、ちなみに、私があんなことを言ってしまったのは、その影響があったせいで! だ、だから......気をつけてね?」
「???」
雪姫は恥ずかしそうな表情をしながら颯爽と部屋に戻り、自室へと帰っていった。その光景をベランダ越しの窓から見ていたクラウンは増々怪訝な顔をしていく。
雪姫は影響を受けたと言ったが、それはどんな影響なのだろうか。しかも、あの口ぶりからするその影響源がこの部屋に訪れるということになるのだが。
――――――コンコンコン
部屋がノックされた音がした。雪姫が忘れ物でもしたのだろうか。いや、恐らく雪姫が言っていた人物が訪ねてきたのだろう。
クラウンはベランダから戻ると服を着ようか迷った。しかし、雪姫と話している時も結局そのままだったので、しかも来た人物になんとなく目星がついたのでその人物だったら別に気にすることもないかもしれない。
「起きてる。入っていいいぞ」
「そ、そう.......なら、失礼するわ」
そう言って入ってきたリリスは今まで見せたことないようなセンスティブなネグリジェを着ていた。まるでこちらを誘っているようにも見えなくない格好だ。
その恰好と恥ずかしそうに腕を抑えて縮こまったような姿を見て思わず唾を飲み込む。得体の知れない何かが胸の中からせり上がってくるような感じがする。
しばらく自分の肉体で見ていなかったせいかわからないが、いつもよりリリスの姿が美しく、儚げで、愛らしく、奇麗なように見えていく。
もちろん、リリスは素の状態でも十分に美少女なのだが、今はそれがさらに何倍にも美化されたように目に映る。
そのせいか少しずつ心臓の脈動が早くなっていく。見ただけにも関わらず呼吸が荒く、僅かに鼻息も強くなっていく。
この状態は何かおかしい。そう思ったクラウンは努めて冷静にリリスへと尋ねた。
「どうしたんだ? こんな時間に。さっき雪姫と会ったのか?」
「うん、そんな感じ.......でも、会ってなかったとしても、個人的に会うつもりだったわ」
そう言ってリリスは身をよじらす。その動きがいちいち男の獣と言うべき本能をくすぐっていく。これ以上、見続ければ何をしてしまうかわからない。
クラウンは「そうか」と言うと出来るだけ自然にベッドの上へと座った。そして、リリスにも「好きに座れ」と告げるとわざわざクラウンのすぐ隣に来て、腕が触れ合う距離で座った。
そのことにクラウンは思わず目頭を押さえる。リリスが近づいた瞬間、動悸が激しくなったのだ。それでいて何十倍にも可愛く見える。
そのあまりにも不自然な体の調子と目の補正に目が眩んだのだ。心臓を抑えるとリリスに余計な心配を抑えかねないので、せめてもの目頭にと。
しかし、それで変わったような気はあまりにもしない。むしろ、「どうしたの?」と心配そうに下から見上げるように見るリリスが愛おしくてたまらない。
熱ぼったく潤んだ瞳に、上気した頬、あざとくも可愛さが勝ってしまう表情や視線の送り方。そして、触れたら壊れてしまうのではないかと思うような華奢な体。
するとその時、リリスはクラウンの耳元にそっと顔を近づけ、囁くように言った。
「耳が赤くなってるよ?」
「―――――――!」
クラウンは咄嗟に耳を抑え、距離を取るように体を反らした。すぐ近くから聞こえた声は吐息とともに耳をザワザワと掻き立て、なんとも言えない気持ちを昂らせる。
これ以上はまずい。クラウンは直感的に理解した。また理解したことはそれだけではなく、リリスの様子も明らかにおかしいということも。
いや、それはどことなく思っていたのだが、確証がなかった。しかし、囁いた後のリリスの顔をチラッと見た時、その顔はもはや獣を彷彿とさせるような捕食者の目をしていた。ここで言う捕食者は言わずもがなだろう。
「待て、落ち着け」
「私はずっと落ち着いてるわ」
「そんなはずがない」とクラウンが言おうとするよりも先に、リリスがガッとクラウンに襲いかかり両肩を掴んで押し倒す。
そして、馬乗りになるとどこかギラついた目で左手で右わき腹を擦り、右手で自身の左胸を鷲掴む。妖艶な雰囲気も醸し出しながらも、それとはまた違う攻撃性を持ったリリスの様子はクラウンを動揺させる。
「リリス、お前は落ち着いてない。本来のお前なら恥ずかしがってこんなことはしないはずだ」
「なら、本来じゃないってだけじゃない。それで終わり。互いを愛おしく思う同士。やることは一つじゃないかしら?」
かなりまずい状況になってきた。このままでは本当にやりかねない。やりたくないというわけではないが、ここでやってしまったらなぜかダメな気がする。
目的とか倒すべき相手とかまだ何一つ果たせてない今、ここでやってしまったらそれら諸々が崩れてしまうような気がする。
ここで勢い任せにやるべきではない。死亡フラグかもしれないが、全てを成し終えた時にこれらのやるか否かをハッキリさせた方がいい。
それにこの状態はどこか見覚えがあった。そうそれはバリエルートに向かう前の街でリゼリアと会った時のこと。
リゼリアによって勝手に予約させられていた部屋でエキドナ、ベル、リリスと全員で寝た時に朝目覚めるとリリスが馬乗りになっていたことを。
あの時のリリスもどこかおかしかったが、もしかするとこの症状は.......
「リリス、サキュバスには性欲が高まる周期があるのか?」
「.......はあ、バレちゃ仕方ないわね。確かにあるわよ。でも、今回はその日じゃなくて全く別の理由よ」
「別の理由?」
「クラウンは私が古代サキュバスの力を使った時のことを覚えてるかしら? あれってね、使った時の副作用として性欲が著しく高まるのよ。そして、同時にあの時は赤い月だった。その月は魔族の性質を著しく高めるのよ。簡単に言えば全員が先祖返りと言ったところかしら」
「つまり今のお前はその副作用と月の影響というわけか」
「そうね。長く使い過ぎたのもあるし、その時の月明かりも浴び過ぎたせいもある。そして、何より今は夜。夜はサキュバスのホームなのよ。それら三つが合わさっての相乗効果やらなんやらでい―――――――今すっごくしたい♡」
「本音過ぎるだろ.......」
リリスは赤みを帯びた表情でニヤついた笑みをしながら、クラウンの頭の横に手を突き立てる。その構図をクラウンは「雪姫の時と全く逆になったな」と思わず頭を抱えた。
あの時雪姫を見た時は少しサディスティックな気持ちにもなったが、今は襲われる気しかしない。当然、マゾというわけではないが、そうでなくても今のリリスを御せるのは難しいだろう。
「クラウンの筋肉質の体はとても触り心地がいいわね.......触ってるだけでゾクゾクしちゃう♡」
「なら、触るな」
クラウンはまさぐられるように触られる上半身になんとも言えない気持ちを抱えながらも、思わずピカーンと閃いた。
このままだと押しに負けてやりかねない。ならば、リリスが正常になるまで動けなくさせるのが一番じゃんないだろうか。
「リリス、こっちこい」
「ん? 何かしら―――――――!」
クラウンはリリスが顔を近づけた瞬間に背中をホールドした。そして、自身の体にリリスを押し付けるように抱きついていく。
そのことにリリスは驚き、咄嗟に離れようとしたが秒で鎮静化した。やはりというべきか、態度は変わっても中身はリリスのままらしい。
「全く、お前らしくないな」
「うっさいわよ、バカ......心配かけたくせに」
「それは......悪かった」
クラウンはそっとリリスの頭を撫でていく。リリスは文句たらたらといった感じであるが、その顔はとても安心しきっていた。
「それで? 本当の用はなんだったんだ?」
「それは単純にあんたの様子を尋ねに来ただけよ。といっても、私の頭の中がピンクすぎてこれ以上は言葉にしたくないけれど」
「ピンクって.......そんなに俺とやりたかったのか?」
「いちいち口に出す必要はないでしょ!」
リリスは恥ずかしいと怒りが混じったような顔をしていた。どちらかというと恥ずかしさが勝っている感じで、そんなリリスの様子をクラウンは少し楽しんだように笑っている。
「まあまあ、そんなに怒るなよ.......たとえ俺がお前の効果に当てられていたとしても、同じ気持ちだったからな」
「気づいてたの?」
「お前が説明した時にな。見た瞬間、動悸が激しくなったからおかしいと思って」
「それって私を見て胸が高まるのはおかしいって言ってるのと一緒なんだけど?」
リリスはムッとした顔でクラウンを睨む。すると、クラウンはリリスから少し距離を取り、体を横に寝かせたままリリスを見た。
そして、リリスの頭をそっと撫でながら笑顔で告げた。
「おかしいさ。だって、俺はずっと前からお前に胸が高まりっぱなしなんだ。今更上がる余地なんて残ってない」
「~~~~~~~!」
リリスはボッと音が出るかのように顔が真っ赤になった。そして、顔を抑えながら恥ずかしそうに悶えていく。
そんな様子をクラウンは楽し気な様子で見つめていた。
夜月の優しい光とそよ風のような夜風に当てられて二人は目を細める。その身に戻ってきた実感とどこか昂りそうな気持を抑えるため。
すると突然、雪姫はクラウンに告げる。
「仁、私はそろそろ部屋に戻るよ。仁が無事だと感じて安心できたし、仁も一人でゆっくりしたいだろうしね」
「俺は目が覚めちまってるから話し相手が欲しいんだが。眠たくないしな」
「それなら、うってつけの人物がいるよ。もっとも本当は今は会って欲しくないんだけどね」
「.......?」
雪姫のどこか含みがあるような言い方にクラウンは思わず怪訝な視線を送る。「どういう意味だ?」と視線で送っていく。
しかし、雪姫は恐らくその言葉の意味に気付いていながらも、答えるような素振りは見せなかった。つまりはその人物がこの部屋を尋ねるから自分で直接確かめろということなのか。
「ち、ちなみに、私があんなことを言ってしまったのは、その影響があったせいで! だ、だから......気をつけてね?」
「???」
雪姫は恥ずかしそうな表情をしながら颯爽と部屋に戻り、自室へと帰っていった。その光景をベランダ越しの窓から見ていたクラウンは増々怪訝な顔をしていく。
雪姫は影響を受けたと言ったが、それはどんな影響なのだろうか。しかも、あの口ぶりからするその影響源がこの部屋に訪れるということになるのだが。
――――――コンコンコン
部屋がノックされた音がした。雪姫が忘れ物でもしたのだろうか。いや、恐らく雪姫が言っていた人物が訪ねてきたのだろう。
クラウンはベランダから戻ると服を着ようか迷った。しかし、雪姫と話している時も結局そのままだったので、しかも来た人物になんとなく目星がついたのでその人物だったら別に気にすることもないかもしれない。
「起きてる。入っていいいぞ」
「そ、そう.......なら、失礼するわ」
そう言って入ってきたリリスは今まで見せたことないようなセンスティブなネグリジェを着ていた。まるでこちらを誘っているようにも見えなくない格好だ。
その恰好と恥ずかしそうに腕を抑えて縮こまったような姿を見て思わず唾を飲み込む。得体の知れない何かが胸の中からせり上がってくるような感じがする。
しばらく自分の肉体で見ていなかったせいかわからないが、いつもよりリリスの姿が美しく、儚げで、愛らしく、奇麗なように見えていく。
もちろん、リリスは素の状態でも十分に美少女なのだが、今はそれがさらに何倍にも美化されたように目に映る。
そのせいか少しずつ心臓の脈動が早くなっていく。見ただけにも関わらず呼吸が荒く、僅かに鼻息も強くなっていく。
この状態は何かおかしい。そう思ったクラウンは努めて冷静にリリスへと尋ねた。
「どうしたんだ? こんな時間に。さっき雪姫と会ったのか?」
「うん、そんな感じ.......でも、会ってなかったとしても、個人的に会うつもりだったわ」
そう言ってリリスは身をよじらす。その動きがいちいち男の獣と言うべき本能をくすぐっていく。これ以上、見続ければ何をしてしまうかわからない。
クラウンは「そうか」と言うと出来るだけ自然にベッドの上へと座った。そして、リリスにも「好きに座れ」と告げるとわざわざクラウンのすぐ隣に来て、腕が触れ合う距離で座った。
そのことにクラウンは思わず目頭を押さえる。リリスが近づいた瞬間、動悸が激しくなったのだ。それでいて何十倍にも可愛く見える。
そのあまりにも不自然な体の調子と目の補正に目が眩んだのだ。心臓を抑えるとリリスに余計な心配を抑えかねないので、せめてもの目頭にと。
しかし、それで変わったような気はあまりにもしない。むしろ、「どうしたの?」と心配そうに下から見上げるように見るリリスが愛おしくてたまらない。
熱ぼったく潤んだ瞳に、上気した頬、あざとくも可愛さが勝ってしまう表情や視線の送り方。そして、触れたら壊れてしまうのではないかと思うような華奢な体。
するとその時、リリスはクラウンの耳元にそっと顔を近づけ、囁くように言った。
「耳が赤くなってるよ?」
「―――――――!」
クラウンは咄嗟に耳を抑え、距離を取るように体を反らした。すぐ近くから聞こえた声は吐息とともに耳をザワザワと掻き立て、なんとも言えない気持ちを昂らせる。
これ以上はまずい。クラウンは直感的に理解した。また理解したことはそれだけではなく、リリスの様子も明らかにおかしいということも。
いや、それはどことなく思っていたのだが、確証がなかった。しかし、囁いた後のリリスの顔をチラッと見た時、その顔はもはや獣を彷彿とさせるような捕食者の目をしていた。ここで言う捕食者は言わずもがなだろう。
「待て、落ち着け」
「私はずっと落ち着いてるわ」
「そんなはずがない」とクラウンが言おうとするよりも先に、リリスがガッとクラウンに襲いかかり両肩を掴んで押し倒す。
そして、馬乗りになるとどこかギラついた目で左手で右わき腹を擦り、右手で自身の左胸を鷲掴む。妖艶な雰囲気も醸し出しながらも、それとはまた違う攻撃性を持ったリリスの様子はクラウンを動揺させる。
「リリス、お前は落ち着いてない。本来のお前なら恥ずかしがってこんなことはしないはずだ」
「なら、本来じゃないってだけじゃない。それで終わり。互いを愛おしく思う同士。やることは一つじゃないかしら?」
かなりまずい状況になってきた。このままでは本当にやりかねない。やりたくないというわけではないが、ここでやってしまったらなぜかダメな気がする。
目的とか倒すべき相手とかまだ何一つ果たせてない今、ここでやってしまったらそれら諸々が崩れてしまうような気がする。
ここで勢い任せにやるべきではない。死亡フラグかもしれないが、全てを成し終えた時にこれらのやるか否かをハッキリさせた方がいい。
それにこの状態はどこか見覚えがあった。そうそれはバリエルートに向かう前の街でリゼリアと会った時のこと。
リゼリアによって勝手に予約させられていた部屋でエキドナ、ベル、リリスと全員で寝た時に朝目覚めるとリリスが馬乗りになっていたことを。
あの時のリリスもどこかおかしかったが、もしかするとこの症状は.......
「リリス、サキュバスには性欲が高まる周期があるのか?」
「.......はあ、バレちゃ仕方ないわね。確かにあるわよ。でも、今回はその日じゃなくて全く別の理由よ」
「別の理由?」
「クラウンは私が古代サキュバスの力を使った時のことを覚えてるかしら? あれってね、使った時の副作用として性欲が著しく高まるのよ。そして、同時にあの時は赤い月だった。その月は魔族の性質を著しく高めるのよ。簡単に言えば全員が先祖返りと言ったところかしら」
「つまり今のお前はその副作用と月の影響というわけか」
「そうね。長く使い過ぎたのもあるし、その時の月明かりも浴び過ぎたせいもある。そして、何より今は夜。夜はサキュバスのホームなのよ。それら三つが合わさっての相乗効果やらなんやらでい―――――――今すっごくしたい♡」
「本音過ぎるだろ.......」
リリスは赤みを帯びた表情でニヤついた笑みをしながら、クラウンの頭の横に手を突き立てる。その構図をクラウンは「雪姫の時と全く逆になったな」と思わず頭を抱えた。
あの時雪姫を見た時は少しサディスティックな気持ちにもなったが、今は襲われる気しかしない。当然、マゾというわけではないが、そうでなくても今のリリスを御せるのは難しいだろう。
「クラウンの筋肉質の体はとても触り心地がいいわね.......触ってるだけでゾクゾクしちゃう♡」
「なら、触るな」
クラウンはまさぐられるように触られる上半身になんとも言えない気持ちを抱えながらも、思わずピカーンと閃いた。
このままだと押しに負けてやりかねない。ならば、リリスが正常になるまで動けなくさせるのが一番じゃんないだろうか。
「リリス、こっちこい」
「ん? 何かしら―――――――!」
クラウンはリリスが顔を近づけた瞬間に背中をホールドした。そして、自身の体にリリスを押し付けるように抱きついていく。
そのことにリリスは驚き、咄嗟に離れようとしたが秒で鎮静化した。やはりというべきか、態度は変わっても中身はリリスのままらしい。
「全く、お前らしくないな」
「うっさいわよ、バカ......心配かけたくせに」
「それは......悪かった」
クラウンはそっとリリスの頭を撫でていく。リリスは文句たらたらといった感じであるが、その顔はとても安心しきっていた。
「それで? 本当の用はなんだったんだ?」
「それは単純にあんたの様子を尋ねに来ただけよ。といっても、私の頭の中がピンクすぎてこれ以上は言葉にしたくないけれど」
「ピンクって.......そんなに俺とやりたかったのか?」
「いちいち口に出す必要はないでしょ!」
リリスは恥ずかしいと怒りが混じったような顔をしていた。どちらかというと恥ずかしさが勝っている感じで、そんなリリスの様子をクラウンは少し楽しんだように笑っている。
「まあまあ、そんなに怒るなよ.......たとえ俺がお前の効果に当てられていたとしても、同じ気持ちだったからな」
「気づいてたの?」
「お前が説明した時にな。見た瞬間、動悸が激しくなったからおかしいと思って」
「それって私を見て胸が高まるのはおかしいって言ってるのと一緒なんだけど?」
リリスはムッとした顔でクラウンを睨む。すると、クラウンはリリスから少し距離を取り、体を横に寝かせたままリリスを見た。
そして、リリスの頭をそっと撫でながら笑顔で告げた。
「おかしいさ。だって、俺はずっと前からお前に胸が高まりっぱなしなんだ。今更上がる余地なんて残ってない」
「~~~~~~~!」
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