77 / 303
第10章 決戦
第227話 奪った者と奪われた者
しおりを挟む
一人は孤独だ。その漢字にも含まれているように一人ぼっちの独りよがりだ。どれほど一人になれば気が済むのだろうか。
その一人を否定したとしても今の自分に出来ることなどなにもない。気が付けば周囲から人が消えていって、最終的には何も残らない。
自分が何をしたわけでもなく消されて、今度は自分が消した。そこに明確な自分の意志が含まれていなくても、その事実だけがこの世界の現実として現れている。
今は鉄格子の中だ。自分以外の誰からも観測されない狭い鉄格子の中。自分以外の誰もが話しかけてくることのない空虚な白い空間。そう、自分以外だ。
「くくくっ、ははははは! 惨めだなぁ、その姿はよ」
「.......」
「まあ、睨むなって。オレとお前の立場が入れ替わっただけの話じゃねぇか。オレは随分と長い間お前に待たされ続けたと思うぜ? そして、その精神の中でもオレはお前に話しかけすらされなかった。今思えば、こうして俺が話しかけてやってることに感謝の言葉すら欲しいぐらいだ」
黒髪で左目に傷がある鋭い目つきをした少年は鉄格子の中にいる黒髪の少年に話しかけていく。その二人の顔立ちは正確無比なほど揃っていて、傷があるかないかや目つきの違いを除けばドッペルゲンガーと言っても差し支えない。
当然だ。その二人は同時に【クラウン】であり、【海堂 仁】なのだから。しかし、その二人に区別をつけるとするならば、目つきの悪い方がクラウンで、どこにでもいそうな方が仁であるだろう。
そして、クラウンは鉄格子の中にいる仁をを見て思わず嘲笑った。どこも面白い要素はない。しかし、クラウン本人は仁が鉄格子の中にいるという時点で滑稽なのだ。
「で? お前はいつまでそんな中でジッとしてるつもりだ? 少しは暴れて楽しませてみろよ。こっちはあいにく捕らえられちまって退屈だからよ」
「.......」
「だんまりか。まあいい。お前が何を言おうと何を行動しようと俺には一切届かない。なぜなら、お前はオレに負けたからな。その結果は今更言うことでもないよな」
「―――――――ない」
「あ?」
「俺はまだ負けてない。それに、お前が勝つこともない」
「はあ? お前ついに頭でもおかしくなったのか? お前がこうして体とのリンクの主導権をお前に握られている時点で終わりだ。勝負はついたんだよ。お前が動かないのもそうだろうが」
「僕が動かないのはまだ助けてくれる人がいると信じてくれているからだ。だから僕は――――――その人がやってくるまで力を温存しているだけだ」
仁がそう言うとクラウンは腰に手をつきながら肺に溜まった空気を全て吐き出すかのようにため息をついた。そして、ゆっくりとクラウンの方へと歩いて行く。
「あのな、理想も語り過ぎれば面白みがねェもんだ。『現実を見ろ』で一蹴される。それに本来なら理想論すらも語るのはおかしいはずだ。なぜなら、現実の人間の醜さを知っている。その醜さに騙され、裏切られここまで堕ちてきたはずだ」
「それは違う。お前を仕掛けた本人はあの時僕の仲間を操った。それが全てだ。お前が現実を語れというのなら、それが真実だ。そのせいで僕は勝手に逆恨みしていて、操られ、傷つけ、騙された。けど、それを知っている今ならきっと助けに来てくれる」
「はあ......全く甘ちゃんな考えだな。大甘すぎて反吐が出そうだ。なら、一つ情報を教えてやるよ。レグリアが使った<神言>はな、少なからず相手にその感情がないと発動しない。たとえば、相手に恨みを持っている人物とかな」
「なっ!」
「つまりあの時お前の仲間をレグリアが操ったのは事実だ。しかし、その魔法にかかるという時点でその感情が心に芽生えていたということだ。それにな、驚くことは不自然だ。お前はもう16年も生きている。その生きている間にどれだけの恨みを買ったか覚えてねぇだろ」
「僕は恨みを売った覚えも、行動もしていない!」
「それはお前の意識下での話だろうが。人間誰しも生きているだけで恨みを売っている。それは無意識下での話だからな。気が付かなくても当然だ。お前がほんの些細だと思っていることも、相手にとっては爆弾の可能性もある。それが上手く爆発しないでここに来たというだけのこと。そんで爆発したらあのザマってことさ。おわかり?」
「嘘だ! そんなデタラメを僕は信じない!」
「信じなくても結構。信じてくれなんて言った覚えはないしな。だがな、それで起こったことが今のお前まで繋がっている。聞いたことあるだろ? 何気ない行動が人を傷つけることもあるって。お前はそれを積み重ねてきた結果がこうであるというだけさ。ただ俺は少なからずお前の中に存在し続けたんだ。それなりの愛着はある。だから、お前には嘘はつかねぇ」
その言葉が真実か否か。その判断を現状で決めつけるのは難しい。しかし、その言葉を信じるにはクラウンとの信頼が明らかに不足していた。
そいつによって地獄と思われた森で力を得て、森を抜けた。そんな力を授けてくれた時もあった。だが、それは最初だけで、それ以外何もない。
そいつは自分の心が乱れた時に乗り移ろうとした。今のような一歩手前の感じだ。それはリリスのおかげで防がれ、それ以来一切動きを見せなかった。
しかし、その兆候は突然来た。それは腕に出来た黒い籠手。長らく現れなかったし、神の使徒や神代兵器との戦い、カムイの妹の奪還と立て続けにあったのでそれがその兆候だと考えるのに時間を割く余裕がなかった。
そして、その時は突然やって来た。それはレグリアが自分を魔王化させたときのことだ。精神的に不安定になっていた自分に「仲間を救う方法がある」と甘い言葉をささやき捕食した。
思い返してみれば信じれる要素はどこにもなく、むしろ不信ばかりが募っていくような出来事ばかりだ。
だからこそ、危険なのだ。今まで通りなら信じないと判断するのが妥当だろう。しかし、ここで自分の考えと逆を突いてきたら? それによって何か起こるのだとしたら?
あいつに言われっぱなしは癪なのでとりあえず否定の言葉を吐き出したが.......檻の隙間から見えるあいつのニヤついたような目や口からすれば自分の思っていることなど全てお見通しなのだろう。
安易に答えを出してはいけない。こいつは平気で嘘をつく。自分を完全に捕食するためには手段を選ばない「蛇」だ。
するとその時、クラウンのニヤついた笑みからスッと表情が消える。そして、右手からどこからともなく黒い刃を作り出した。
クラウンは仁の顔を見ながら告げる。
「てめぇの反応は退屈を通り越してもはや存在が苦痛だ」
「ぐっ!」
クラウンは刀を鉄格子の隙間から刺し込んでいく。その刀は仁の左肩に刺さっていき、その刺さった周辺が赤くにじんでいく。仁は思わず右手で刀身を掴んで引き離そうとするが、なぜか離れない。
「お前が動かないのはよぉ、信じてるとかでもなんでもなく―――――――ただまた傷つくのが怖いだけだろ?」
「―――――――!」
「お前が仲間が助けに来て待つというのは呈のいい戯言だ。本当はオレとお前の間にある覆せない力の前に臆して、安全圏から他人がなんとかしてくれるのを待っているだけだ。その他人をなんつったけなー.......ああ、そうそう―――――――『仲間』だ」
「ざけんな!」
響が怒りのままに刀を握って折るとガゴンッと響かせるように鉄格子に掴みかかった。そして、格子越しにあるクラウンの顔を睨む。
自分の顔ながらなんとも憎たらしい顔だ。けど、それ以上に仲間が侮辱されたことに腹が立った。自分はそんな風に一切思っていないし、早くここから出て響達をもなんとかしようとさえ思っている。
やるべきことはいろいろとある。この先にある。こいつを相手している暇はない。しかし、ここから出てこいつを倒さないことには意味がない。
すると、クラウンは臆することもなく相変わらずの憎しみを抱かせるような顔で告げる。
「で? お前の言い分はそれだけで終わりか? くくくっ、ははは、ははははは! 結局威勢だけじゃねぇか! お前は!.......仲間を大事に思っているのは本物かもしれねぇ。でもな、お前がこうしてお前の鉄格子から出ない時点で結果が出てるじゃねぇか」
「.......っ!」
「睨んだって無駄だ。お前は結局のところ怖いんだ。オレと一人で戦うことが。仲間と戦う、それも十分素晴らしい戦い方だ。だが―――――――なぜその仲間が裏切らないと言い切れる?」
「.......!」
クラウンはグッと顔を鉄格子に近づける。
「お前は曲がりなりにも一度信じて痛い目にあってんだ。それがたとえ誰かによる意志であってもなぁ。一人で戦えない奴が仲間がいれば大丈夫だって? はっ、笑わせんな。一人でも戦えねぇ奴が仲間と戦えるわけねぇだろ」
「.......」
「お前の行動も言葉もただ自分の弱さをひた隠しにしようとしているに過ぎない。そんな奴にいくら仲間が集まってもオレに勝てる道理はねぇな。ほら、かかってこいよ。もう今のお前ならこの鉄格子の中からどうやって出るかぐらい思いつくだろ? それが思いついても動けない時点でお前の『負け』だ。オレにはどうあがいたって勝てない」
クラウンはその言葉を聞いてゆっくりと膝を崩していく。それら全ての言葉が全くもっての正論であったからだ。
するとその時、クラウンは興味を無くしたように鉄格子から別とある場所に目を向けていく。そして、クラウンは重わずニヤリと笑った。
その見つめている先に突如としてヒビが入る。そのヒビは何度も壁にドン気によって打ちつけられたような鈍い音を響かせながら、その面積を大きくしていく。
そして、ヒビはやがて亀裂となり、それでもなお打打ちつける音ともにスッと一人の人物が現れた。
その人物は所々黒ずんだ肌をしていて、本来の健康体の肌と比べれば一目瞭然なほどに色が悪かった。また、外傷はないのに酷く疲れている顔をしていた。
それでも、まだ死んでいない瞳でその人物は告げる。
「待たせたわね、クラウン」
リリスは堂々と胸を張って二人の男を見据えた。
その一人を否定したとしても今の自分に出来ることなどなにもない。気が付けば周囲から人が消えていって、最終的には何も残らない。
自分が何をしたわけでもなく消されて、今度は自分が消した。そこに明確な自分の意志が含まれていなくても、その事実だけがこの世界の現実として現れている。
今は鉄格子の中だ。自分以外の誰からも観測されない狭い鉄格子の中。自分以外の誰もが話しかけてくることのない空虚な白い空間。そう、自分以外だ。
「くくくっ、ははははは! 惨めだなぁ、その姿はよ」
「.......」
「まあ、睨むなって。オレとお前の立場が入れ替わっただけの話じゃねぇか。オレは随分と長い間お前に待たされ続けたと思うぜ? そして、その精神の中でもオレはお前に話しかけすらされなかった。今思えば、こうして俺が話しかけてやってることに感謝の言葉すら欲しいぐらいだ」
黒髪で左目に傷がある鋭い目つきをした少年は鉄格子の中にいる黒髪の少年に話しかけていく。その二人の顔立ちは正確無比なほど揃っていて、傷があるかないかや目つきの違いを除けばドッペルゲンガーと言っても差し支えない。
当然だ。その二人は同時に【クラウン】であり、【海堂 仁】なのだから。しかし、その二人に区別をつけるとするならば、目つきの悪い方がクラウンで、どこにでもいそうな方が仁であるだろう。
そして、クラウンは鉄格子の中にいる仁をを見て思わず嘲笑った。どこも面白い要素はない。しかし、クラウン本人は仁が鉄格子の中にいるという時点で滑稽なのだ。
「で? お前はいつまでそんな中でジッとしてるつもりだ? 少しは暴れて楽しませてみろよ。こっちはあいにく捕らえられちまって退屈だからよ」
「.......」
「だんまりか。まあいい。お前が何を言おうと何を行動しようと俺には一切届かない。なぜなら、お前はオレに負けたからな。その結果は今更言うことでもないよな」
「―――――――ない」
「あ?」
「俺はまだ負けてない。それに、お前が勝つこともない」
「はあ? お前ついに頭でもおかしくなったのか? お前がこうして体とのリンクの主導権をお前に握られている時点で終わりだ。勝負はついたんだよ。お前が動かないのもそうだろうが」
「僕が動かないのはまだ助けてくれる人がいると信じてくれているからだ。だから僕は――――――その人がやってくるまで力を温存しているだけだ」
仁がそう言うとクラウンは腰に手をつきながら肺に溜まった空気を全て吐き出すかのようにため息をついた。そして、ゆっくりとクラウンの方へと歩いて行く。
「あのな、理想も語り過ぎれば面白みがねェもんだ。『現実を見ろ』で一蹴される。それに本来なら理想論すらも語るのはおかしいはずだ。なぜなら、現実の人間の醜さを知っている。その醜さに騙され、裏切られここまで堕ちてきたはずだ」
「それは違う。お前を仕掛けた本人はあの時僕の仲間を操った。それが全てだ。お前が現実を語れというのなら、それが真実だ。そのせいで僕は勝手に逆恨みしていて、操られ、傷つけ、騙された。けど、それを知っている今ならきっと助けに来てくれる」
「はあ......全く甘ちゃんな考えだな。大甘すぎて反吐が出そうだ。なら、一つ情報を教えてやるよ。レグリアが使った<神言>はな、少なからず相手にその感情がないと発動しない。たとえば、相手に恨みを持っている人物とかな」
「なっ!」
「つまりあの時お前の仲間をレグリアが操ったのは事実だ。しかし、その魔法にかかるという時点でその感情が心に芽生えていたということだ。それにな、驚くことは不自然だ。お前はもう16年も生きている。その生きている間にどれだけの恨みを買ったか覚えてねぇだろ」
「僕は恨みを売った覚えも、行動もしていない!」
「それはお前の意識下での話だろうが。人間誰しも生きているだけで恨みを売っている。それは無意識下での話だからな。気が付かなくても当然だ。お前がほんの些細だと思っていることも、相手にとっては爆弾の可能性もある。それが上手く爆発しないでここに来たというだけのこと。そんで爆発したらあのザマってことさ。おわかり?」
「嘘だ! そんなデタラメを僕は信じない!」
「信じなくても結構。信じてくれなんて言った覚えはないしな。だがな、それで起こったことが今のお前まで繋がっている。聞いたことあるだろ? 何気ない行動が人を傷つけることもあるって。お前はそれを積み重ねてきた結果がこうであるというだけさ。ただ俺は少なからずお前の中に存在し続けたんだ。それなりの愛着はある。だから、お前には嘘はつかねぇ」
その言葉が真実か否か。その判断を現状で決めつけるのは難しい。しかし、その言葉を信じるにはクラウンとの信頼が明らかに不足していた。
そいつによって地獄と思われた森で力を得て、森を抜けた。そんな力を授けてくれた時もあった。だが、それは最初だけで、それ以外何もない。
そいつは自分の心が乱れた時に乗り移ろうとした。今のような一歩手前の感じだ。それはリリスのおかげで防がれ、それ以来一切動きを見せなかった。
しかし、その兆候は突然来た。それは腕に出来た黒い籠手。長らく現れなかったし、神の使徒や神代兵器との戦い、カムイの妹の奪還と立て続けにあったのでそれがその兆候だと考えるのに時間を割く余裕がなかった。
そして、その時は突然やって来た。それはレグリアが自分を魔王化させたときのことだ。精神的に不安定になっていた自分に「仲間を救う方法がある」と甘い言葉をささやき捕食した。
思い返してみれば信じれる要素はどこにもなく、むしろ不信ばかりが募っていくような出来事ばかりだ。
だからこそ、危険なのだ。今まで通りなら信じないと判断するのが妥当だろう。しかし、ここで自分の考えと逆を突いてきたら? それによって何か起こるのだとしたら?
あいつに言われっぱなしは癪なのでとりあえず否定の言葉を吐き出したが.......檻の隙間から見えるあいつのニヤついたような目や口からすれば自分の思っていることなど全てお見通しなのだろう。
安易に答えを出してはいけない。こいつは平気で嘘をつく。自分を完全に捕食するためには手段を選ばない「蛇」だ。
するとその時、クラウンのニヤついた笑みからスッと表情が消える。そして、右手からどこからともなく黒い刃を作り出した。
クラウンは仁の顔を見ながら告げる。
「てめぇの反応は退屈を通り越してもはや存在が苦痛だ」
「ぐっ!」
クラウンは刀を鉄格子の隙間から刺し込んでいく。その刀は仁の左肩に刺さっていき、その刺さった周辺が赤くにじんでいく。仁は思わず右手で刀身を掴んで引き離そうとするが、なぜか離れない。
「お前が動かないのはよぉ、信じてるとかでもなんでもなく―――――――ただまた傷つくのが怖いだけだろ?」
「―――――――!」
「お前が仲間が助けに来て待つというのは呈のいい戯言だ。本当はオレとお前の間にある覆せない力の前に臆して、安全圏から他人がなんとかしてくれるのを待っているだけだ。その他人をなんつったけなー.......ああ、そうそう―――――――『仲間』だ」
「ざけんな!」
響が怒りのままに刀を握って折るとガゴンッと響かせるように鉄格子に掴みかかった。そして、格子越しにあるクラウンの顔を睨む。
自分の顔ながらなんとも憎たらしい顔だ。けど、それ以上に仲間が侮辱されたことに腹が立った。自分はそんな風に一切思っていないし、早くここから出て響達をもなんとかしようとさえ思っている。
やるべきことはいろいろとある。この先にある。こいつを相手している暇はない。しかし、ここから出てこいつを倒さないことには意味がない。
すると、クラウンは臆することもなく相変わらずの憎しみを抱かせるような顔で告げる。
「で? お前の言い分はそれだけで終わりか? くくくっ、ははは、ははははは! 結局威勢だけじゃねぇか! お前は!.......仲間を大事に思っているのは本物かもしれねぇ。でもな、お前がこうしてお前の鉄格子から出ない時点で結果が出てるじゃねぇか」
「.......っ!」
「睨んだって無駄だ。お前は結局のところ怖いんだ。オレと一人で戦うことが。仲間と戦う、それも十分素晴らしい戦い方だ。だが―――――――なぜその仲間が裏切らないと言い切れる?」
「.......!」
クラウンはグッと顔を鉄格子に近づける。
「お前は曲がりなりにも一度信じて痛い目にあってんだ。それがたとえ誰かによる意志であってもなぁ。一人で戦えない奴が仲間がいれば大丈夫だって? はっ、笑わせんな。一人でも戦えねぇ奴が仲間と戦えるわけねぇだろ」
「.......」
「お前の行動も言葉もただ自分の弱さをひた隠しにしようとしているに過ぎない。そんな奴にいくら仲間が集まってもオレに勝てる道理はねぇな。ほら、かかってこいよ。もう今のお前ならこの鉄格子の中からどうやって出るかぐらい思いつくだろ? それが思いついても動けない時点でお前の『負け』だ。オレにはどうあがいたって勝てない」
クラウンはその言葉を聞いてゆっくりと膝を崩していく。それら全ての言葉が全くもっての正論であったからだ。
するとその時、クラウンは興味を無くしたように鉄格子から別とある場所に目を向けていく。そして、クラウンは重わずニヤリと笑った。
その見つめている先に突如としてヒビが入る。そのヒビは何度も壁にドン気によって打ちつけられたような鈍い音を響かせながら、その面積を大きくしていく。
そして、ヒビはやがて亀裂となり、それでもなお打打ちつける音ともにスッと一人の人物が現れた。
その人物は所々黒ずんだ肌をしていて、本来の健康体の肌と比べれば一目瞭然なほどに色が悪かった。また、外傷はないのに酷く疲れている顔をしていた。
それでも、まだ死んでいない瞳でその人物は告げる。
「待たせたわね、クラウン」
リリスは堂々と胸を張って二人の男を見据えた。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる