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第10章 決戦
第213話 意味深な言葉
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「さあ、早く立って。この場を離れて」
「あ、ありがとうございます! 勇者様!」
響は背後にいる兵士に声をかけるとすぐに周りの様子を伺っていく。そして、背後から気配が遠ざかっていくのを感じるとすぐさま聖剣を強く握りしめて駆け出していく。
前方から迫ってくる魔族の兵士に対して、相手が攻撃モーションを取るよりも早くに間合いをつめ、下から上へと袈裟切りしていく。
その兵士を思いっきり蹴飛ばして後方から続く兵士にぶつけて牽制すると背後から迫ってきた槍の魔族兵に意識を向けた。
迫りくる金属の刃を響は冷静に躱していくと左手で槍を掴み、手前に引いていく。それによって、バランス崩した魔族兵に聖剣で心臓一突き。
そして、動かなくなるとすぐに引き抜く。引き抜いた際に聖剣についた血が雨の滴のように飛びちり、その滴に響の無機質の瞳が映っていく。
それから、響は左手に持った槍を振り回すように体を回転させていく。それによって、魔族兵を自分に近づけ無くし、一番集まっている方向に向かって投擲した。
すると、その槍はすぐ目の前にいた魔族兵を筆頭に次々と胴体を貫通させていく。その攻撃によって運良く死ななかった者もいたが、その者は大抵代わりに腕や脚が吹き飛んでいった。
「破光」
響は小さく呟くと聖剣を両手に持ち、背後へと回転させながら横なぎに振るった。その瞬間、聖剣からは光の斬撃が飛び出していき、衝撃波とともに多くの魔族兵を飲み込んでいく。
周囲の温度が僅かに上がる。斬撃が伴う光の熱量のせいだ。その攻撃によって、直撃した者から焼かれる痛みと共にいつの間にか胴体を斬られていき、斬撃の近くにいた者は衝撃波で天高く打ち上げられていく。
そして、落下して多くの魔族兵を巻き込んで地面に戻りながら、運の悪いものは頭から地面に到達したり、仲間同士に頭や武器に当たって死んでいく。
そんな光景が目の前で、それも自分の手によって起こったことにも眉を一切動かすことなくすぐに周囲へと目を配っていく。
以前の響なら魔族兵を攻撃することはあっても、腕や脚を斬って戦闘不能にさせることがほとんどだっただろう。
しかし、今の響には魔族兵に向ける情けは当然なく、もはや魔族兵に向ける感情すら持ちえていない。まるで路傍の石を見ているよう。
魔族兵や仲間兵士の断末魔も、戦いの過激さを表すような爆発音も、耳障りなほどの戦場の活気も全てが響に届いていないかのように。
そうして何も考えないようにしているのか。はたまた全く別の影響なのか。それは定かではないが、少なくとも今の響はまるで人のような雰囲気を感じさせなかった。
そんな響に周囲を囲っていた魔族兵は剣を向けながらも、引け腰になっていた。剣がカタカタと震えるのは響の強さに恐怖しているせいであり、これから待ち受ける死に絶望しているから。
しかし、響はその魔族兵に一向に斬りかかる素振りは見せなかった。ただ無機質な目で魔族兵の顔色を伺うと無視して魔王城に向かって走り出す。
そんな響に道を開けるように魔族兵は引いていいく。その時の表情は拍子抜けといった感じで、助かった喜びに浸る代わりにただただ呆然としていた。
するとその時、その魔族兵の頭上から巨大なこん棒が飛んでいく、そのこん棒は激しく立て回転しながら風切り音を立てていき、真っ直ぐ響に向かって跳んでいく。
響はそれを背後から感じると素早く方向転換。そして、バックステップしながら左手でタイミングよく柄の部分を掴んだ。
「誰だ?」
「俺は魔王軍パワー部隊の一人だ。名は知らんでもいい」
「そうか。邪魔をするなら、僕はお前を殺さなければいけない。それでも戦うか?」
「無論。それしか俺達には選択肢がないからな」
響は一言「わかった」と告げると左手に持ったこん棒をやり投げのように投げていく。すると、巨人であるその魔族兵はその素早く飛んでくるこん棒を見極めて柄を掴むと力任せに横なぎに振るう。
やり投げの直後に走り出していた響はその横なぎの攻撃を体勢を低くしながら避けていく。そしてすぐに、両手で聖剣を突き立て巨人へと迫っていく。
しかし、巨人は力任せにその横なぎの動きを途中で止めるとこん棒の柄の頭の方で響に殴り掛かった。その動きに響は咄嗟に聖剣を右側面に掲げ、聖剣の腹で受け止めるようにして防いだ。
空中にいたのでその勢いまでは殺せなかったが、地面に体を打ち付けられる前に素早く体勢を立て直す。そして、巨人に向かって斬撃を放った。
「おらああああ!」
その斬撃を巨人はこん棒を両手に持って力任せに振り下ろす。そして、雄叫びを上げながらその斬撃を蹴散らしていくとその瞬間、響が目前にいた。
響はそのままがら空きになった首筋を斬りつけていく。
「――――――――」
「!」
聖剣が首から離れると同時に頸動脈を斬ったことによる出血が空中の一部を染めていく刹那、響は確かに聞いた。巨人から紡がれた言葉を。
響が着地すると同時に巨人も後ろ向きに地面へと横たわった。ドスンという振動を足元で感じながら、尻目で巨人の死体を見る。その時に響の瞳には多少の色が戻っていたが、すぐに消えていく。
そして、再び魔王城に向かって走り出した。迫りくる敵の波を響は最小限の動きで斬りつけながら、道を開けていく。
もう後に続く兵士はいない。そこら中で戦ったり死んでいったりしたのだろう。戦いが始まってから十分ほどが経過した。この十分の間でどれくらいの敵味方が死んでいったのだろうか。
きっと数えるのもしんどくなる量であることは確かだ。それに魔法や巨人、魔物の一撃によって原型もとどめずに死んでいった者だっているだろう。
そうなると自分が想定しているよりも十倍は死んでいるかもしれない。大げさかもしれないが、過言でないと思われる。
響は左側面から激しい熱量を感じた。そして、咄嗟に避けていくと多くの敵味方を含んで響のいた場所に火炎放射器のようなブレスが放たれている。
すると、地面に降り立った響に対してカメレオンのような魔物に乗った魔物使いは告げた。
「俺は魔王軍スピード部隊の一人だ。名前は知らなくていい」
「さっき戦った奴もそう言っていたが、どういう意味だ?」
響は巨人が言っていたような自己紹介をそのままパクったかのような紹介に思わず疑問を投げかけた。その質問に魔物使いは悲し気に答えていく。
「ワイにも名前はある。けど、この戦いにおいては意味のないだ。それはこの戦いが無情だからというわけではない。人の尊厳を持って死ねないからだ」
「どういうことだ?」
その意味深な発言に響は思わず眉を顰める。すると、魔物使いは未だ戦場を見続ける魔王の方を恐る恐る見ながら答えていく。
「今は何も起こってないみたいだが油断するなよ。今を地獄だと思っているならすぐにその考えを捨てることだ。ここ最近に魔王になったあいつは頭がイカレてやがる。正気の沙汰じゃない。人の死を容赦なく弄び、狂った笑いをする化け物だ。あいつを殺してくれるなら、それはワイらからも本望だ。いいか、もっと多くの人が死ぬ」
魔物使いは何かに怯えるように顔を戻し俯かせた。
「だからどういうことだ?」
「それは―――――――」
「もうそれ以上話すな」
増々言葉の謎が深まっていく響は詳しくわけを聞こうとした瞬間、響に話していた魔物使いを制止するようにコモドドラゴンのような魔物に乗った別の魔物使いが現れた。
その魔物使いは響と話していた魔物使いへと「見るな」と言いながら目配せしていく。その見た方向は二か所で魔物使いと魔物使いの後方の城―――――――つまり魔王だ。
「敵を撹乱して戦うのが俺達の部隊だ。にもかかわらず、いつまでも動かずに勇者と見つめ合っていることが不審に思われている。どっちにしろ殺されるなら、どっちに殺されたいか決めろ!」
「.......?」
「わかった」
そう言うとその魔物使いは別の場所へと走り出す。そして、響に向かい合っている魔物使いは響との間合いを測るように動き出す。
響はそのやり取りに謎を深める一方であった。少なからず思ったことはこの戦争はただの戦争ではなく、魔王によって何かが仕組まれている可能性があるということ。
「さあ、戦おう。この命を終わらせるなら、お前に終わらせてもらいたい」
「......わかった」
響は聖剣を両手に構えると背筋を伸ばし、足を肩幅に開いていく。そして、自分を中心に動き続ける魔物使いの動きを見ながら、タイミングを計っていく。
すると、響の背後に回った魔物使いが魔物を突っ込ませる。その動きに合わせ響はすぐさま反転、聖剣を振り下ろそうとする。
「させない」
「くっ!」
しかし、魔物は金属の針のようなものがついた鋭い尾の先で響の動きを封じる。そして、勢いのまま噛みつこうと大きな口を開けた。
響は咄嗟に横っ飛びすると聖剣を左側下段に構える。そして、ブレスを放ってきた魔物に対して斬撃で蹴散らしていく。
すると、すぐさま響の間合いを詰めて尾の先で攻撃してくる。だが、それをタイミングよく尾の上に乗って跳躍すると空中から真下に向かって聖剣を投げた。
その聖剣は魔物頭部を地面と固定するように突き刺さっていき、その魔物の上に着地すると魔物使いに向かって殴り掛かる。
その時、魔物使いは告げた。
「いいか、よく聞け。ワイ達は死んでも死なない」
「――――――光罰」
響は魔物使いの目の前で右手を向けるとその右手から高密度の光の砲撃を放った。その一撃は直線状にいた巨人を数体巻き込んでいきながら、徐々に光の一線は消滅していった。
魔物使いの全身は跡形もなく消滅。体が小人サイズであったためか、その砲撃で逃れる部分はなかったようだ。
そして、響は思うことがある顔で聖剣を魔物から抜き、魔王城に向かって動き出そうとすると――――――事態は起きた。
響の背後で巨大な何かが動き出す音が鳴り響いたのだ。その音の正体を確かめるように後ろを振り向くと―――――
「なんで.......?」
殺したはずの魔物使いの魔物が大きな口を開けていた。
「あ、ありがとうございます! 勇者様!」
響は背後にいる兵士に声をかけるとすぐに周りの様子を伺っていく。そして、背後から気配が遠ざかっていくのを感じるとすぐさま聖剣を強く握りしめて駆け出していく。
前方から迫ってくる魔族の兵士に対して、相手が攻撃モーションを取るよりも早くに間合いをつめ、下から上へと袈裟切りしていく。
その兵士を思いっきり蹴飛ばして後方から続く兵士にぶつけて牽制すると背後から迫ってきた槍の魔族兵に意識を向けた。
迫りくる金属の刃を響は冷静に躱していくと左手で槍を掴み、手前に引いていく。それによって、バランス崩した魔族兵に聖剣で心臓一突き。
そして、動かなくなるとすぐに引き抜く。引き抜いた際に聖剣についた血が雨の滴のように飛びちり、その滴に響の無機質の瞳が映っていく。
それから、響は左手に持った槍を振り回すように体を回転させていく。それによって、魔族兵を自分に近づけ無くし、一番集まっている方向に向かって投擲した。
すると、その槍はすぐ目の前にいた魔族兵を筆頭に次々と胴体を貫通させていく。その攻撃によって運良く死ななかった者もいたが、その者は大抵代わりに腕や脚が吹き飛んでいった。
「破光」
響は小さく呟くと聖剣を両手に持ち、背後へと回転させながら横なぎに振るった。その瞬間、聖剣からは光の斬撃が飛び出していき、衝撃波とともに多くの魔族兵を飲み込んでいく。
周囲の温度が僅かに上がる。斬撃が伴う光の熱量のせいだ。その攻撃によって、直撃した者から焼かれる痛みと共にいつの間にか胴体を斬られていき、斬撃の近くにいた者は衝撃波で天高く打ち上げられていく。
そして、落下して多くの魔族兵を巻き込んで地面に戻りながら、運の悪いものは頭から地面に到達したり、仲間同士に頭や武器に当たって死んでいく。
そんな光景が目の前で、それも自分の手によって起こったことにも眉を一切動かすことなくすぐに周囲へと目を配っていく。
以前の響なら魔族兵を攻撃することはあっても、腕や脚を斬って戦闘不能にさせることがほとんどだっただろう。
しかし、今の響には魔族兵に向ける情けは当然なく、もはや魔族兵に向ける感情すら持ちえていない。まるで路傍の石を見ているよう。
魔族兵や仲間兵士の断末魔も、戦いの過激さを表すような爆発音も、耳障りなほどの戦場の活気も全てが響に届いていないかのように。
そうして何も考えないようにしているのか。はたまた全く別の影響なのか。それは定かではないが、少なくとも今の響はまるで人のような雰囲気を感じさせなかった。
そんな響に周囲を囲っていた魔族兵は剣を向けながらも、引け腰になっていた。剣がカタカタと震えるのは響の強さに恐怖しているせいであり、これから待ち受ける死に絶望しているから。
しかし、響はその魔族兵に一向に斬りかかる素振りは見せなかった。ただ無機質な目で魔族兵の顔色を伺うと無視して魔王城に向かって走り出す。
そんな響に道を開けるように魔族兵は引いていいく。その時の表情は拍子抜けといった感じで、助かった喜びに浸る代わりにただただ呆然としていた。
するとその時、その魔族兵の頭上から巨大なこん棒が飛んでいく、そのこん棒は激しく立て回転しながら風切り音を立てていき、真っ直ぐ響に向かって跳んでいく。
響はそれを背後から感じると素早く方向転換。そして、バックステップしながら左手でタイミングよく柄の部分を掴んだ。
「誰だ?」
「俺は魔王軍パワー部隊の一人だ。名は知らんでもいい」
「そうか。邪魔をするなら、僕はお前を殺さなければいけない。それでも戦うか?」
「無論。それしか俺達には選択肢がないからな」
響は一言「わかった」と告げると左手に持ったこん棒をやり投げのように投げていく。すると、巨人であるその魔族兵はその素早く飛んでくるこん棒を見極めて柄を掴むと力任せに横なぎに振るう。
やり投げの直後に走り出していた響はその横なぎの攻撃を体勢を低くしながら避けていく。そしてすぐに、両手で聖剣を突き立て巨人へと迫っていく。
しかし、巨人は力任せにその横なぎの動きを途中で止めるとこん棒の柄の頭の方で響に殴り掛かった。その動きに響は咄嗟に聖剣を右側面に掲げ、聖剣の腹で受け止めるようにして防いだ。
空中にいたのでその勢いまでは殺せなかったが、地面に体を打ち付けられる前に素早く体勢を立て直す。そして、巨人に向かって斬撃を放った。
「おらああああ!」
その斬撃を巨人はこん棒を両手に持って力任せに振り下ろす。そして、雄叫びを上げながらその斬撃を蹴散らしていくとその瞬間、響が目前にいた。
響はそのままがら空きになった首筋を斬りつけていく。
「――――――――」
「!」
聖剣が首から離れると同時に頸動脈を斬ったことによる出血が空中の一部を染めていく刹那、響は確かに聞いた。巨人から紡がれた言葉を。
響が着地すると同時に巨人も後ろ向きに地面へと横たわった。ドスンという振動を足元で感じながら、尻目で巨人の死体を見る。その時に響の瞳には多少の色が戻っていたが、すぐに消えていく。
そして、再び魔王城に向かって走り出した。迫りくる敵の波を響は最小限の動きで斬りつけながら、道を開けていく。
もう後に続く兵士はいない。そこら中で戦ったり死んでいったりしたのだろう。戦いが始まってから十分ほどが経過した。この十分の間でどれくらいの敵味方が死んでいったのだろうか。
きっと数えるのもしんどくなる量であることは確かだ。それに魔法や巨人、魔物の一撃によって原型もとどめずに死んでいった者だっているだろう。
そうなると自分が想定しているよりも十倍は死んでいるかもしれない。大げさかもしれないが、過言でないと思われる。
響は左側面から激しい熱量を感じた。そして、咄嗟に避けていくと多くの敵味方を含んで響のいた場所に火炎放射器のようなブレスが放たれている。
すると、地面に降り立った響に対してカメレオンのような魔物に乗った魔物使いは告げた。
「俺は魔王軍スピード部隊の一人だ。名前は知らなくていい」
「さっき戦った奴もそう言っていたが、どういう意味だ?」
響は巨人が言っていたような自己紹介をそのままパクったかのような紹介に思わず疑問を投げかけた。その質問に魔物使いは悲し気に答えていく。
「ワイにも名前はある。けど、この戦いにおいては意味のないだ。それはこの戦いが無情だからというわけではない。人の尊厳を持って死ねないからだ」
「どういうことだ?」
その意味深な発言に響は思わず眉を顰める。すると、魔物使いは未だ戦場を見続ける魔王の方を恐る恐る見ながら答えていく。
「今は何も起こってないみたいだが油断するなよ。今を地獄だと思っているならすぐにその考えを捨てることだ。ここ最近に魔王になったあいつは頭がイカレてやがる。正気の沙汰じゃない。人の死を容赦なく弄び、狂った笑いをする化け物だ。あいつを殺してくれるなら、それはワイらからも本望だ。いいか、もっと多くの人が死ぬ」
魔物使いは何かに怯えるように顔を戻し俯かせた。
「だからどういうことだ?」
「それは―――――――」
「もうそれ以上話すな」
増々言葉の謎が深まっていく響は詳しくわけを聞こうとした瞬間、響に話していた魔物使いを制止するようにコモドドラゴンのような魔物に乗った別の魔物使いが現れた。
その魔物使いは響と話していた魔物使いへと「見るな」と言いながら目配せしていく。その見た方向は二か所で魔物使いと魔物使いの後方の城―――――――つまり魔王だ。
「敵を撹乱して戦うのが俺達の部隊だ。にもかかわらず、いつまでも動かずに勇者と見つめ合っていることが不審に思われている。どっちにしろ殺されるなら、どっちに殺されたいか決めろ!」
「.......?」
「わかった」
そう言うとその魔物使いは別の場所へと走り出す。そして、響に向かい合っている魔物使いは響との間合いを測るように動き出す。
響はそのやり取りに謎を深める一方であった。少なからず思ったことはこの戦争はただの戦争ではなく、魔王によって何かが仕組まれている可能性があるということ。
「さあ、戦おう。この命を終わらせるなら、お前に終わらせてもらいたい」
「......わかった」
響は聖剣を両手に構えると背筋を伸ばし、足を肩幅に開いていく。そして、自分を中心に動き続ける魔物使いの動きを見ながら、タイミングを計っていく。
すると、響の背後に回った魔物使いが魔物を突っ込ませる。その動きに合わせ響はすぐさま反転、聖剣を振り下ろそうとする。
「させない」
「くっ!」
しかし、魔物は金属の針のようなものがついた鋭い尾の先で響の動きを封じる。そして、勢いのまま噛みつこうと大きな口を開けた。
響は咄嗟に横っ飛びすると聖剣を左側下段に構える。そして、ブレスを放ってきた魔物に対して斬撃で蹴散らしていく。
すると、すぐさま響の間合いを詰めて尾の先で攻撃してくる。だが、それをタイミングよく尾の上に乗って跳躍すると空中から真下に向かって聖剣を投げた。
その聖剣は魔物頭部を地面と固定するように突き刺さっていき、その魔物の上に着地すると魔物使いに向かって殴り掛かる。
その時、魔物使いは告げた。
「いいか、よく聞け。ワイ達は死んでも死なない」
「――――――光罰」
響は魔物使いの目の前で右手を向けるとその右手から高密度の光の砲撃を放った。その一撃は直線状にいた巨人を数体巻き込んでいきながら、徐々に光の一線は消滅していった。
魔物使いの全身は跡形もなく消滅。体が小人サイズであったためか、その砲撃で逃れる部分はなかったようだ。
そして、響は思うことがある顔で聖剣を魔物から抜き、魔王城に向かって動き出そうとすると――――――事態は起きた。
響の背後で巨大な何かが動き出す音が鳴り響いたのだ。その音の正体を確かめるように後ろを振り向くと―――――
「なんで.......?」
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