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第9章 道化師は堕ちる
第204話 絶望の幕開け
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仁は鋭く凶悪な殺気を乗せたひと振りをレグリアへと振り下ろしていく。しかし、レグリアは死の間際にも関わらず、ただただ不敵な笑みを浮かべて動かなかった――――――まるで動く必要もないかのように。
そして、ただ一言告げる。
「『止まりなさい。愚か者』」
「!」
その瞬間、クラウンの体は時間が止まったかのように突然動きが止まっていく。そのせいで振り下ろしていた勢いは途中で死に、その隙をレグリアに狙われた。
「くはっ!」
レグリアはクラウンに空いた僅かな腹部への隙間にノーモーションからの強烈な拳の一撃を与えていく。その衝撃波クラウンの腹部から背中へと振動を与えながら通過していき、クラウンは思わず肺の空気を漏らす。
そして、そのまま吹き飛ばされると地面へと転がっていく。本来なら受け身でも取っているような状況であっても、クラウンにはそれすらできなかった。
「『楽にして結構ですよ。ただ他の方は少し集まって待っていてください』」
レグリアはまたもやどこの誰かに言っているように言葉を発する。そして、その言葉にクラウンは体が軽くなるのを感じ、リリス達は密集形態になるように集まり始めた。
クラウンはその光景を見てハッキリとわかった。これまでどうして響や雪姫、朱里やクラスの皆が急に態度を変えたのか。
「いい加減、気づいたはずでしょう? 君が仲間を無力化せずに私のところへとやって来たということは」
「ああ、胸糞悪い真相だけどな」
クラウンは刀を支えにしながら立ち上がる。そして、すぐに動けるように刀を軽く構えた。それから、様子を伺うようにリリス達の方をチラッと見る。
すると突然、レグリアは両腕を大きく広げ、クラウン達に向かって大声で話し始めた。
「他の方達もお気づきの方が多いでしょう! そう、これは私がもらい受けた力の一つ『神言」です! この世界は神の遊戯の盤上。ここにいる以上、あなた方は神によって生かされ、神によって死するのです! 故に、神の制約からは逃れられない。それを身に感じて体験しましたがいかがでしたか?」
レグリアはクラウンに向かって――――――否、雪姫と朱里に向かって醜い笑みを向けた。そして、その笑みと言葉は二人に確かなダメージを与えていく。
「神の制約.......?」
「また.......またこの感覚になっているのは本当に......」
二人は安堵と恐怖が同時に襲ってきていた。それは自分達が故意にクラウンを傷つけてはいないということ。
もとより、そのようには感じていなかったが、体に勝手にとはいえ行動してしまったことは事実であったので、その罪に後悔していた。
しかし、それが真実でなく。誰かによって行動させられたものであったなら話は別になりるだろう。だが、それでも傷つけたという事実は変わらないが。
そして、恐怖は現在も過去のあの時と同じような状況になっているということ。ということは、下手すればまたあの時の繰り返しをしてしまうかもしれない。
そうなれば、あの時より強くなった今の力ではクラウンを殺すことは可能になるだろう。そしてそうなれば.......いや、その前に攻撃した時点で精神は崩壊するだろう。
そんな相反する感情が頭の中を駆け巡る。そんな中、雪姫は一瞬レグリアのニヤついた笑みの口角がさらに上がったような気がした。
「ああ、どうですか? 真実を知っても尚、動けない様子は? ですが、安心してください。この先であなた方の死は永遠に無駄にはなりません。この世界に新たな魔王が誕生するのですから」
「魔王?」
クラウンは思わず反応した。そして同時に、前に言っていた言葉を思い出した。そうあれは確か―――――
「お前、前に俺に『魔王の因子』って言っていたが何のことだ?」
「おやおや、私の思わず出た言葉を今も覚えてもらっているのなら光栄ですね」
「御託はいい。さっさと答えろ」
「ははは、それほど焦らずに。ですがまあ、良いでしょう」
教皇はおもむろに歩き出し、少し離れたクラウンとリリス達の間ぐらいへと進んでいく。
「『魔王の因子』とは簡単に言えば魔王になれる素質を持つもののことです。しかし、当然ながらそれは魔族の間でしか継がれることはなく、それを持つ保有者は王として育てられていきます」
「だが、俺は人間だが? それに勇者として呼ばれたはずだ――――――俺達が呼び出したあの魔法陣が?」
「いえいえ、あれに関しては本物ですよ。まあ、もっとも『魔王が賢者を石を持っていて、それを取り返せばもとの世界に帰れる』というのは嘘ですが」
「うそ........」
その言葉を聞いた雪姫は思わず言葉を漏らした。そして、朱里もまた同じ表情で口を開けたまま呆然とした表情をしている。
それは当然の反応かもしれない。この世界に来てから頑張ってきた理由はいろいろとあるが、その根幹は「もとの世界へ戻る」という目標であったからだ。
そのために魔物を斬る感覚を覚え、何度か命を危機に脅かされそうになっても頑張って来ていた。そして、人を斬る感覚でさえ覚えた人もいる。
そんな人達になんと真実を伝えられたらいいのか。今の二人にはまるで分らなかった。そして、教皇だとっていた人は敵で、あの時のことは仕向けられたということ。
でれもこれもが情報量が多いもので、容易には伝えられなくて、分かることは少なからず場は荒れるということ。
すると、教皇は続けて話していく。
「そして、私は長年実験を繰り返した結果、人工的に魔王の因子を作ることに成功しました。それがあなたの体に宿っているのです」
「.......?」
「そもそも私の目的は我らが主を楽しませることが一番なのです。そして、我らが主が求めるのは絶望の表情をする人々と狂乱の行動をする人々。それだけでは理不尽な天災や存在を送り込むだけで済む話でしたが、それだけではバリエーションにかけますし、他の方法を探す意味でも何度もリセットしては同じような文明を作り上げました」
「.......!」
クラウンはその言葉を聞くと理解した。そして同時に、恐怖した。そのレグリアの頭のイカレ具合に。
レグリアが言っているのは簡単に言えば神を楽しませるだけに世界を終わらせたということだ。
レグリアは神が好む絶望と狂乱のためにこの世界に理不尽をまき散らし、その度に世界を終わらせた。
だが、それだけでは一回きりである。もう一度理不尽を引き起こすためにはどうすればいいか。簡単な話だ作ればいい。
神と神の使徒であるために死とは程遠い永遠の時を生きていくであろう。ならどれほど世界を作り戻すために待とうが関係ない。
そして、レグリアは挙句の果てに実験のためにも世界を終わらせ始めた。そのために作り出され、生かされる人間。これに恐怖しないことがあろうか。
いわば積み上げた積み木を壊すのと一緒だ。積み上げるのも、壊すのも神と神の使徒ならば一瞬にすら感じるのだろう。
そして、その幾度となく繰り返された再生と破壊の中で一体どれだけの人が絶望を抱いたまま死んでいったのか。考えたくもないことだ。
「クソ野郎が.......!」
クラウンは恨みがましい気持ちを吐き出すように言葉を告げだした。それに対し、レグリアは気持ち悪いほどに嬉しそうな反応をする。
「ですが、それは前回までの話です。ついに完成したのですよ。人という複雑に絡み合った感情を持つ存在を使って、また新たな絶望を作り出すことが! それに絶望に染まった魔力というのは我らが主が欲する者でありますからね~」
「もういい、黙ってろ。俺を動かせることにしたことを後悔させてやる」
「いえいえ、わざとですから。君を縛るのに半端な魔力ではレジストされてしまいますからね。それに後悔するのは君ですよ――――――――『仲間を殺せ』」
「!」
クラウンはレグリアが何か言い出す前に動き出した。だが、レグリアに発せられた言葉によってすぐに止まってしまう。
葉を食いしばって必死に抵抗しても徐々に体の向きはリリス達へと向かっていく。そして、顔を向けた方向には苦しそうな顔をしたリリス達の姿が。
「―――――――やめろ」
クラウンは小刻みに震える右手をゆっくりリリス達の方へと向けていく。それから、左手は右腕を支えていくように触れていく。
「―――――止まれ」
すぐに右手に魔力が溜まっていく。高密度の光の球体が手のひらの前に浮かび上がる。そして、その球体は徐々に体積を大きくしていく。
「―――――――止まれって言ってんだろ!」
クラウンは焦りと恐怖が混じったような顔をする。そして、どれほど言葉に出そうとも自分の動きは全く止まる気配はない。むしろ、勢いを増している。
「やめり、やめろ――――――」
クラウンの声は少しだけ弱弱しくなった。それはクラウン脳内で自分が処刑された時の光景を思い出したからだ。
いわば今の状況はその時の反対だ。あの時の雪姫や朱里の行動がわかったからこそ、故意じゃないとわかったからこそ、嫌がる自分の意志を無視して行動してしまう恐怖、罪悪感により強く襲われていく。
「止まれ、止まってくれ―――――――――」
クラウンの声がさらに弱弱しくなっていく。それだけリリス達に対する信頼や絆が深まっているという証明なのだが、今はそれが猛毒となってクラウンを苦しめていく。
「止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれ!」
クラウンは増々苦しそうな顔をする。しかし、自分の意志ではどうにもならない。どうにかもなってくれない。
光の球体はやがてクラウンの手の大きさを超えるとそこで動きは止まった。すると今度はさらに密度を高めていくように小さくなっていく。
一粒の滴が流れていく。そして、それはクラウンの足元に落ちて床に当たると僅かに弾けていく。
リリス達の顔が絶望に染められていく。また同様にクラウンの表情も絶望に染められていく。
そして―――――――時が満ちてしまった。
「止めろおおおおおおおおおおおお!」
「クラウン......!」
クラウンの嘆きの声が虚しく響き渡るとともに右手からは光の波動がリリス達に向かって一直線に伸びていく。
その光は真っ直ぐ突き進み、床を抉り消滅させながらリリス達を飲み込むと壁を破壊して彼方まで煌めく一線が続いていった。
*********************************************************
『凶気度が 10 上がりました。現在の凶気度レベル 100 』
そして、ただ一言告げる。
「『止まりなさい。愚か者』」
「!」
その瞬間、クラウンの体は時間が止まったかのように突然動きが止まっていく。そのせいで振り下ろしていた勢いは途中で死に、その隙をレグリアに狙われた。
「くはっ!」
レグリアはクラウンに空いた僅かな腹部への隙間にノーモーションからの強烈な拳の一撃を与えていく。その衝撃波クラウンの腹部から背中へと振動を与えながら通過していき、クラウンは思わず肺の空気を漏らす。
そして、そのまま吹き飛ばされると地面へと転がっていく。本来なら受け身でも取っているような状況であっても、クラウンにはそれすらできなかった。
「『楽にして結構ですよ。ただ他の方は少し集まって待っていてください』」
レグリアはまたもやどこの誰かに言っているように言葉を発する。そして、その言葉にクラウンは体が軽くなるのを感じ、リリス達は密集形態になるように集まり始めた。
クラウンはその光景を見てハッキリとわかった。これまでどうして響や雪姫、朱里やクラスの皆が急に態度を変えたのか。
「いい加減、気づいたはずでしょう? 君が仲間を無力化せずに私のところへとやって来たということは」
「ああ、胸糞悪い真相だけどな」
クラウンは刀を支えにしながら立ち上がる。そして、すぐに動けるように刀を軽く構えた。それから、様子を伺うようにリリス達の方をチラッと見る。
すると突然、レグリアは両腕を大きく広げ、クラウン達に向かって大声で話し始めた。
「他の方達もお気づきの方が多いでしょう! そう、これは私がもらい受けた力の一つ『神言」です! この世界は神の遊戯の盤上。ここにいる以上、あなた方は神によって生かされ、神によって死するのです! 故に、神の制約からは逃れられない。それを身に感じて体験しましたがいかがでしたか?」
レグリアはクラウンに向かって――――――否、雪姫と朱里に向かって醜い笑みを向けた。そして、その笑みと言葉は二人に確かなダメージを与えていく。
「神の制約.......?」
「また.......またこの感覚になっているのは本当に......」
二人は安堵と恐怖が同時に襲ってきていた。それは自分達が故意にクラウンを傷つけてはいないということ。
もとより、そのようには感じていなかったが、体に勝手にとはいえ行動してしまったことは事実であったので、その罪に後悔していた。
しかし、それが真実でなく。誰かによって行動させられたものであったなら話は別になりるだろう。だが、それでも傷つけたという事実は変わらないが。
そして、恐怖は現在も過去のあの時と同じような状況になっているということ。ということは、下手すればまたあの時の繰り返しをしてしまうかもしれない。
そうなれば、あの時より強くなった今の力ではクラウンを殺すことは可能になるだろう。そしてそうなれば.......いや、その前に攻撃した時点で精神は崩壊するだろう。
そんな相反する感情が頭の中を駆け巡る。そんな中、雪姫は一瞬レグリアのニヤついた笑みの口角がさらに上がったような気がした。
「ああ、どうですか? 真実を知っても尚、動けない様子は? ですが、安心してください。この先であなた方の死は永遠に無駄にはなりません。この世界に新たな魔王が誕生するのですから」
「魔王?」
クラウンは思わず反応した。そして同時に、前に言っていた言葉を思い出した。そうあれは確か―――――
「お前、前に俺に『魔王の因子』って言っていたが何のことだ?」
「おやおや、私の思わず出た言葉を今も覚えてもらっているのなら光栄ですね」
「御託はいい。さっさと答えろ」
「ははは、それほど焦らずに。ですがまあ、良いでしょう」
教皇はおもむろに歩き出し、少し離れたクラウンとリリス達の間ぐらいへと進んでいく。
「『魔王の因子』とは簡単に言えば魔王になれる素質を持つもののことです。しかし、当然ながらそれは魔族の間でしか継がれることはなく、それを持つ保有者は王として育てられていきます」
「だが、俺は人間だが? それに勇者として呼ばれたはずだ――――――俺達が呼び出したあの魔法陣が?」
「いえいえ、あれに関しては本物ですよ。まあ、もっとも『魔王が賢者を石を持っていて、それを取り返せばもとの世界に帰れる』というのは嘘ですが」
「うそ........」
その言葉を聞いた雪姫は思わず言葉を漏らした。そして、朱里もまた同じ表情で口を開けたまま呆然とした表情をしている。
それは当然の反応かもしれない。この世界に来てから頑張ってきた理由はいろいろとあるが、その根幹は「もとの世界へ戻る」という目標であったからだ。
そのために魔物を斬る感覚を覚え、何度か命を危機に脅かされそうになっても頑張って来ていた。そして、人を斬る感覚でさえ覚えた人もいる。
そんな人達になんと真実を伝えられたらいいのか。今の二人にはまるで分らなかった。そして、教皇だとっていた人は敵で、あの時のことは仕向けられたということ。
でれもこれもが情報量が多いもので、容易には伝えられなくて、分かることは少なからず場は荒れるということ。
すると、教皇は続けて話していく。
「そして、私は長年実験を繰り返した結果、人工的に魔王の因子を作ることに成功しました。それがあなたの体に宿っているのです」
「.......?」
「そもそも私の目的は我らが主を楽しませることが一番なのです。そして、我らが主が求めるのは絶望の表情をする人々と狂乱の行動をする人々。それだけでは理不尽な天災や存在を送り込むだけで済む話でしたが、それだけではバリエーションにかけますし、他の方法を探す意味でも何度もリセットしては同じような文明を作り上げました」
「.......!」
クラウンはその言葉を聞くと理解した。そして同時に、恐怖した。そのレグリアの頭のイカレ具合に。
レグリアが言っているのは簡単に言えば神を楽しませるだけに世界を終わらせたということだ。
レグリアは神が好む絶望と狂乱のためにこの世界に理不尽をまき散らし、その度に世界を終わらせた。
だが、それだけでは一回きりである。もう一度理不尽を引き起こすためにはどうすればいいか。簡単な話だ作ればいい。
神と神の使徒であるために死とは程遠い永遠の時を生きていくであろう。ならどれほど世界を作り戻すために待とうが関係ない。
そして、レグリアは挙句の果てに実験のためにも世界を終わらせ始めた。そのために作り出され、生かされる人間。これに恐怖しないことがあろうか。
いわば積み上げた積み木を壊すのと一緒だ。積み上げるのも、壊すのも神と神の使徒ならば一瞬にすら感じるのだろう。
そして、その幾度となく繰り返された再生と破壊の中で一体どれだけの人が絶望を抱いたまま死んでいったのか。考えたくもないことだ。
「クソ野郎が.......!」
クラウンは恨みがましい気持ちを吐き出すように言葉を告げだした。それに対し、レグリアは気持ち悪いほどに嬉しそうな反応をする。
「ですが、それは前回までの話です。ついに完成したのですよ。人という複雑に絡み合った感情を持つ存在を使って、また新たな絶望を作り出すことが! それに絶望に染まった魔力というのは我らが主が欲する者でありますからね~」
「もういい、黙ってろ。俺を動かせることにしたことを後悔させてやる」
「いえいえ、わざとですから。君を縛るのに半端な魔力ではレジストされてしまいますからね。それに後悔するのは君ですよ――――――――『仲間を殺せ』」
「!」
クラウンはレグリアが何か言い出す前に動き出した。だが、レグリアに発せられた言葉によってすぐに止まってしまう。
葉を食いしばって必死に抵抗しても徐々に体の向きはリリス達へと向かっていく。そして、顔を向けた方向には苦しそうな顔をしたリリス達の姿が。
「―――――――やめろ」
クラウンは小刻みに震える右手をゆっくりリリス達の方へと向けていく。それから、左手は右腕を支えていくように触れていく。
「―――――止まれ」
すぐに右手に魔力が溜まっていく。高密度の光の球体が手のひらの前に浮かび上がる。そして、その球体は徐々に体積を大きくしていく。
「―――――――止まれって言ってんだろ!」
クラウンは焦りと恐怖が混じったような顔をする。そして、どれほど言葉に出そうとも自分の動きは全く止まる気配はない。むしろ、勢いを増している。
「やめり、やめろ――――――」
クラウンの声は少しだけ弱弱しくなった。それはクラウン脳内で自分が処刑された時の光景を思い出したからだ。
いわば今の状況はその時の反対だ。あの時の雪姫や朱里の行動がわかったからこそ、故意じゃないとわかったからこそ、嫌がる自分の意志を無視して行動してしまう恐怖、罪悪感により強く襲われていく。
「止まれ、止まってくれ―――――――――」
クラウンの声がさらに弱弱しくなっていく。それだけリリス達に対する信頼や絆が深まっているという証明なのだが、今はそれが猛毒となってクラウンを苦しめていく。
「止まれ、止まれ止まれ止まれ止まれ!」
クラウンは増々苦しそうな顔をする。しかし、自分の意志ではどうにもならない。どうにかもなってくれない。
光の球体はやがてクラウンの手の大きさを超えるとそこで動きは止まった。すると今度はさらに密度を高めていくように小さくなっていく。
一粒の滴が流れていく。そして、それはクラウンの足元に落ちて床に当たると僅かに弾けていく。
リリス達の顔が絶望に染められていく。また同様にクラウンの表情も絶望に染められていく。
そして―――――――時が満ちてしまった。
「止めろおおおおおおおおおおおお!」
「クラウン......!」
クラウンの嘆きの声が虚しく響き渡るとともに右手からは光の波動がリリス達に向かって一直線に伸びていく。
その光は真っ直ぐ突き進み、床を抉り消滅させながらリリス達を飲み込むと壁を破壊して彼方まで煌めく一線が続いていった。
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