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第7章 道化師は攻略する
第156話 リルリアーゼの交渉
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―――――二十秒
クラウン達はリルリアーゼがいた空間から脱出すると急いで来た道を戻っていく。リリスが全員を重力で浮かして進行方向へと落としていく。
それによって大きな疲労もなく距離を稼いでいた。とはいえ、これで逃げ切れるかどうかと問われればそれはわからないと答えるだろう。
神代兵器リルリアーゼはなぜ戦闘を始めずいきなり自爆という手段を取ったのか。それは単純だ。現在の侵入者を確実に殺すためである。
少なくともクラウン達にはそう感じている。これ以外に何か意図があるとするならば、それはさすがに自分達の知るところではない。
クラウンが大きな扉を抜けた先は先ほど通ってきた道と大きく変わっていた。それはすぐ目の前にふすまの扉が現れていたからだ。
本来ならそこはクラウン達三グループに分かれていた大きな鉄の扉のようなものがあった。
だが、今が違うということはやはりあらかじめこういう状況になるように仕組まれていたという方が高い。
「マスターの最重要命令」とあのリルリアーゼは言っていた。そのマスターが誰だかハッキリとは測らないが、確信に近い予想は出来る。
だが、それは今考えるべきではない。今やるべきことはこの神殿からの脱出のみ。
―――――十五秒
頭の中で数えている秒数が確実に減っていって死へと近づいている。死神の足音でも聞こえる気分だ。
幸いなことにクラウン達が脱出を試みてから敵や罠に一回も遭遇していない。
何択かある道を最短で進んでいるだけなのだが、ただ運が良いというだけなのか。それとも、そんなことをしなくても確実に殺せるからだろうか。
だが、生きてここに出れたとしても「本当にこれだけか?」という気持ちがクラウンの中にずっと存在していた。
今回に神殿守護者はこれまでとは一切違う。とにかく違うのは攻撃の速さ。それはまさしく「神に代わる」かのような感じであった。
たった一撃ぐらいでもわかる。現に攻撃された仲間達がその動きを読み取れていないからだ。だが、逆に言えば必ず穴があるとも言える。
リルリアーゼは結局はロボットのようなものである。攻撃や防御に関しては正確無比の行動ができるだろう。だが、イレギュラーには弱いはずだ。
もし戦うことがあるとすればその隙を突くしかない。
―――――十秒
「皆、光が見えて来たわよ!」
リリスの言葉にクラウンは没頭していた思考を一度頭の片隅に置いて、リリスが指差した方向を見る。
すると、その道の先は両開きにされたふすまがその奥から白い光を放ちながら立っている。
<気配察知>で確認するがその奥から気配は感じない。頭の中に見えてくる風景はたくさんの瓦礫の山に煙―――――つまりは外だ。
―――――五秒
クラウン達はそのまま勢いよくそのふすまを抜けていく。すると案の定、見覚えのある焦土へと出てきた。
だが、まだ安心はできない。自爆の規模がどれくらいかわからない以上、出来るだけ離れた方が得策だ。
―――――三秒
秒数が残り三秒へと迫った。だが、ここまで来れば十分だろうという距離まで離れることが出来た。
ここまで来れたのはリリスの魔法があったからだろう。リリスの魔法が無ければ残り三秒ほどで神殿を脱出するかしないかぐらいだっただろう。
――――――一秒
クラウン達はその神殿の方へと目線を向ける。全員、あのリルリアーゼの結末が気になっているようだ。
だが、その中で楽観的な表情をしている者は誰一人いない。むしろ全員が最悪な状況にならないように願っているような顔だ。
―――――ゼロ
クラウンの頭の中でタイムリミットを告げた瞬間、神殿は勢いよく爆発し始めた。その爆発は周囲の瓦礫を爆風で吹き飛ばし、地面をどんどん飲み込んでいく。
轟音を響かせる白き半円は留まることも知らずに大きくなっていく。見た目からして半径300メートルほどの大きさだろうか。
はるか遠くに避難したと思っていたクラウン達もその爆風で吹き飛ばされそうになり、高温の熱波が肌を焦がしてくるように迫っていく。
しかも、その二つに耐えるのが精いっぱいというのに高速で無数の瓦礫がクラウン達に襲いかかる。さらに、爆発による地揺れで上手く体勢を取ることさえ敵わない。
魔法を行使しようとも暑すぎて集中力が散漫になってしまう。このままでは最悪な状況になった時に全員が重症の状態で戦わなければならなくなる。
―――――その時一人の男が動いた。
「天元鬼人流――――――凍土!」
カムイは地面に刺した「氷絶」から魔力を流し込んでいく。その瞬間、カムイを中心に氷が地面を侵食していく。
「氷壁!」
さらに、カムイはもう片方の刀「炎滅」を支えにして「氷絶」を引き抜くと横なぎに振るった。
すると、目の前に氷の壁ができ、前から迫って来ていた瓦礫は衝突するとことごとく氷漬けにされていき、その瓦礫が積み重なってさらに大きな氷の壁を作り上げた。
その壁は触れた瓦礫から氷漬けにして壁の一部としていくので壁はどんどんと分厚くなる一方で、背後にいるクラウン達はその壁から発する冷気で熱波を緩和していた。
「カムイ、助かった」
「ははは、良いってことよ。俺もグレンに助けられたようなものだからな」
カムイは左手に持った「氷絶」をどこか懐かしそうな目で見つめる。恐らくグレンがその刀を使用していた時のことを思い出したのだろう。
しばらくすると、白く輝く高温の半円は勢力を落としていき、やがて消えた。カムイが壁を取り壊してその爆発があった場所を見えるようにするとそこは悲惨であった。
そこにはポッカリと大きな穴が開いていて、そこから大量の煙が湧き上がっている。しかも、一部はマグマのような高温の液体状になっており、近づくだけでも確実に火傷する。
「来るぞ」
クラウンはその煙の先を睨むように見ながら一言だけ告げる。その言葉に全員が反応して同じ方向へと視線を移していく。
すると、その煙の奥から人影らしきものが見えて来た。その人影は頭の先が少し膨らんでいて、全身のバランスにに使わないほどの巨大な手をしている。しかも、その人影は悠然と近づいて来る。
クラウンは牽制と煙払い、そしてあわよくばダメージの意味で斬撃を放っていく。その斬撃は横向きで積み重なった瓦礫を斬り飛ばしながら真っ直ぐと進んでいく。
そして、斬撃が煙を上下に煙を吹き飛ばしていくあるところで直角に曲がるように斬撃が情報へと弾き飛ばされていく。
それによって、払われた煙から出てきたのは斬撃を弾き飛ばした右腕を掲げたリルリアーゼの姿であった。
リルリアーゼは微笑みながらクラウン達の方を見る。そのことに朱里と雪姫は思わずビクッとさせてそばにいるロキの毛並みを強めに掴んだ。その手は僅かに震えている。
「ね、ねぇ、どうしてあれは普通に生きてるの?」
「そ、そうだよ。確かに朱里達は聞いた『自爆プログラム』だって。なのに、全然体に傷一つついてないじゃん」
「常識でものを押し測ってはダメです。相手は理不尽の存在です。固定観念で考えているとすぐに殺られるです」
「ベルちゃんの言う通りよ。私達の戦いは常に死と隣り合わせだったりするの。悪いことは言わないわ。早くここから離れなさい」
エキドナはリルリアーゼから視線を外すことなく淡々と朱里と雪姫に対して言った。その言葉に対し、朱里と雪姫は互いに視線を合わせていく。
そして何かを確かめ合ったようにうなづくと告げた。
「私達だけ逃げることはしない。仁が、皆が命を張って戦おうとしている時に二人だけ逃げることはしたくない」
「それに朱里達自身が逃げることしたくない。でも、戦力になるとは思ってないから、皆のサポートをするつもり」
「ってわけだけど、どうするクラウン? あんたに似て頑固よ、あの二人は」
「はあ、雪姫があんなのは前からだ。それに付き従うように橘も同意することは読めていた......ロキ、二人をよろしく頼むぞ」
「ウォン!」
クラウンは半分諦めたようにため息を吐くとロキへと告げていく。その言葉にロキは元気よく返事して、二人は嬉しそうな表情した。恐らく絶対断られるだろうと思っていたのだろう。
「お話は終わりましたか?」
「律儀に待ってくれるようだな」
「てっきり別れの言葉かと思いましたから。でも、そうじゃないみたいですね。本当にそれで良かったのですか?」
「随分と人にやさしいみたいじゃないか、殺戮兵器よ?」
「今のリルは少なからず自制プログラムが起動しています。それはあくまでマスターの命令がない限り無駄な殺生はしないということです。ですが、それを解除する権限をリルには持ち合わせております。それがどう意味かお分かりですよね?」
「このまま逃げれば見逃すと?」
「半分正解です」
リルリアーゼは巨大な両手をクラウン達に向ける。そして、その手を組み合わせると巨大な手の装甲が変形して一つの大砲のような形になった。
さらに同時に肩や背中から地面に向けて数本のアンカーらしきものが刺さっていく。まるでこれからやろうとしていることは自身に大きな衝撃が伴うことであるかのように。
その行動にクラウン達はすぐさま臨戦態勢に入っていく。一人一人がピりついた緊張感の中で額に汗をかいていく。
殺気はないので殺伐とした雰囲気ではない。なのに、異様な緊張感を感じる。それに体におもりがつけられているかのように重量感も感じてくる。
晴れていた空は再び曇っていき、どんよりとした空気が辺りを包み込んでいく。
「正式な答えを申し上げましょう。まず半分正解の部分は逃げられるのはそこの白いデスグレイファウンドに乗っている少女二人だけです。残り全員には抹殺命令が出ています......っと一人は違いましたね」
リルリアーゼは軽い口調で答えを告げていく一方で、両手で作り出した大砲にはどんどんと魔力を収束していく。
空気中にある光がリルリアーゼの大砲の中へと吸い込まれていくように集まって光の球体に凝縮していく。
「―――――なのでこれは警告です。一人でも大切な人は生きて居て欲しいでしょ?」
そう言うとリルリアーゼは収束させた光を放った。その光は音速を超えて周囲の瓦礫を吹き飛ばしながら、クラウン達の僅か上を通っていく。
そして、光はそのまま直進していくと鬼ヶ島の象徴とも言える巨大な山の頂上付近にある小さな二つの山の内の一つを消し飛ばした。
クラウン達はそのあまりの速さに思わず動けなかった。食らえば確実に死ぬという一撃をまざまざと見せつけられた。正しく「警告」だろう。
リルリアーゼは大砲の口から出ている煙をそのままに頭をコテンと傾けて尋ねる。
「さあ、考えは変わりましたか?」
「.......」
その問いにクラウンはすぐに答えなかった。だが、刀の先を向けると真っ直ぐリルリアーゼを見る。その動きに合わせ全員が同じような決意の目で見た。
そして、告げる。
「てめぇに時間をかけてる暇はねぇ。死ね、ガラクタ」
「どうやら交渉決裂のようですね」
クラウン達はリルリアーゼがいた空間から脱出すると急いで来た道を戻っていく。リリスが全員を重力で浮かして進行方向へと落としていく。
それによって大きな疲労もなく距離を稼いでいた。とはいえ、これで逃げ切れるかどうかと問われればそれはわからないと答えるだろう。
神代兵器リルリアーゼはなぜ戦闘を始めずいきなり自爆という手段を取ったのか。それは単純だ。現在の侵入者を確実に殺すためである。
少なくともクラウン達にはそう感じている。これ以外に何か意図があるとするならば、それはさすがに自分達の知るところではない。
クラウンが大きな扉を抜けた先は先ほど通ってきた道と大きく変わっていた。それはすぐ目の前にふすまの扉が現れていたからだ。
本来ならそこはクラウン達三グループに分かれていた大きな鉄の扉のようなものがあった。
だが、今が違うということはやはりあらかじめこういう状況になるように仕組まれていたという方が高い。
「マスターの最重要命令」とあのリルリアーゼは言っていた。そのマスターが誰だかハッキリとは測らないが、確信に近い予想は出来る。
だが、それは今考えるべきではない。今やるべきことはこの神殿からの脱出のみ。
―――――十五秒
頭の中で数えている秒数が確実に減っていって死へと近づいている。死神の足音でも聞こえる気分だ。
幸いなことにクラウン達が脱出を試みてから敵や罠に一回も遭遇していない。
何択かある道を最短で進んでいるだけなのだが、ただ運が良いというだけなのか。それとも、そんなことをしなくても確実に殺せるからだろうか。
だが、生きてここに出れたとしても「本当にこれだけか?」という気持ちがクラウンの中にずっと存在していた。
今回に神殿守護者はこれまでとは一切違う。とにかく違うのは攻撃の速さ。それはまさしく「神に代わる」かのような感じであった。
たった一撃ぐらいでもわかる。現に攻撃された仲間達がその動きを読み取れていないからだ。だが、逆に言えば必ず穴があるとも言える。
リルリアーゼは結局はロボットのようなものである。攻撃や防御に関しては正確無比の行動ができるだろう。だが、イレギュラーには弱いはずだ。
もし戦うことがあるとすればその隙を突くしかない。
―――――十秒
「皆、光が見えて来たわよ!」
リリスの言葉にクラウンは没頭していた思考を一度頭の片隅に置いて、リリスが指差した方向を見る。
すると、その道の先は両開きにされたふすまがその奥から白い光を放ちながら立っている。
<気配察知>で確認するがその奥から気配は感じない。頭の中に見えてくる風景はたくさんの瓦礫の山に煙―――――つまりは外だ。
―――――五秒
クラウン達はそのまま勢いよくそのふすまを抜けていく。すると案の定、見覚えのある焦土へと出てきた。
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秒数が残り三秒へと迫った。だが、ここまで来れば十分だろうという距離まで離れることが出来た。
ここまで来れたのはリリスの魔法があったからだろう。リリスの魔法が無ければ残り三秒ほどで神殿を脱出するかしないかぐらいだっただろう。
――――――一秒
クラウン達はその神殿の方へと目線を向ける。全員、あのリルリアーゼの結末が気になっているようだ。
だが、その中で楽観的な表情をしている者は誰一人いない。むしろ全員が最悪な状況にならないように願っているような顔だ。
―――――ゼロ
クラウンの頭の中でタイムリミットを告げた瞬間、神殿は勢いよく爆発し始めた。その爆発は周囲の瓦礫を爆風で吹き飛ばし、地面をどんどん飲み込んでいく。
轟音を響かせる白き半円は留まることも知らずに大きくなっていく。見た目からして半径300メートルほどの大きさだろうか。
はるか遠くに避難したと思っていたクラウン達もその爆風で吹き飛ばされそうになり、高温の熱波が肌を焦がしてくるように迫っていく。
しかも、その二つに耐えるのが精いっぱいというのに高速で無数の瓦礫がクラウン達に襲いかかる。さらに、爆発による地揺れで上手く体勢を取ることさえ敵わない。
魔法を行使しようとも暑すぎて集中力が散漫になってしまう。このままでは最悪な状況になった時に全員が重症の状態で戦わなければならなくなる。
―――――その時一人の男が動いた。
「天元鬼人流――――――凍土!」
カムイは地面に刺した「氷絶」から魔力を流し込んでいく。その瞬間、カムイを中心に氷が地面を侵食していく。
「氷壁!」
さらに、カムイはもう片方の刀「炎滅」を支えにして「氷絶」を引き抜くと横なぎに振るった。
すると、目の前に氷の壁ができ、前から迫って来ていた瓦礫は衝突するとことごとく氷漬けにされていき、その瓦礫が積み重なってさらに大きな氷の壁を作り上げた。
その壁は触れた瓦礫から氷漬けにして壁の一部としていくので壁はどんどんと分厚くなる一方で、背後にいるクラウン達はその壁から発する冷気で熱波を緩和していた。
「カムイ、助かった」
「ははは、良いってことよ。俺もグレンに助けられたようなものだからな」
カムイは左手に持った「氷絶」をどこか懐かしそうな目で見つめる。恐らくグレンがその刀を使用していた時のことを思い出したのだろう。
しばらくすると、白く輝く高温の半円は勢力を落としていき、やがて消えた。カムイが壁を取り壊してその爆発があった場所を見えるようにするとそこは悲惨であった。
そこにはポッカリと大きな穴が開いていて、そこから大量の煙が湧き上がっている。しかも、一部はマグマのような高温の液体状になっており、近づくだけでも確実に火傷する。
「来るぞ」
クラウンはその煙の先を睨むように見ながら一言だけ告げる。その言葉に全員が反応して同じ方向へと視線を移していく。
すると、その煙の奥から人影らしきものが見えて来た。その人影は頭の先が少し膨らんでいて、全身のバランスにに使わないほどの巨大な手をしている。しかも、その人影は悠然と近づいて来る。
クラウンは牽制と煙払い、そしてあわよくばダメージの意味で斬撃を放っていく。その斬撃は横向きで積み重なった瓦礫を斬り飛ばしながら真っ直ぐと進んでいく。
そして、斬撃が煙を上下に煙を吹き飛ばしていくあるところで直角に曲がるように斬撃が情報へと弾き飛ばされていく。
それによって、払われた煙から出てきたのは斬撃を弾き飛ばした右腕を掲げたリルリアーゼの姿であった。
リルリアーゼは微笑みながらクラウン達の方を見る。そのことに朱里と雪姫は思わずビクッとさせてそばにいるロキの毛並みを強めに掴んだ。その手は僅かに震えている。
「ね、ねぇ、どうしてあれは普通に生きてるの?」
「そ、そうだよ。確かに朱里達は聞いた『自爆プログラム』だって。なのに、全然体に傷一つついてないじゃん」
「常識でものを押し測ってはダメです。相手は理不尽の存在です。固定観念で考えているとすぐに殺られるです」
「ベルちゃんの言う通りよ。私達の戦いは常に死と隣り合わせだったりするの。悪いことは言わないわ。早くここから離れなさい」
エキドナはリルリアーゼから視線を外すことなく淡々と朱里と雪姫に対して言った。その言葉に対し、朱里と雪姫は互いに視線を合わせていく。
そして何かを確かめ合ったようにうなづくと告げた。
「私達だけ逃げることはしない。仁が、皆が命を張って戦おうとしている時に二人だけ逃げることはしたくない」
「それに朱里達自身が逃げることしたくない。でも、戦力になるとは思ってないから、皆のサポートをするつもり」
「ってわけだけど、どうするクラウン? あんたに似て頑固よ、あの二人は」
「はあ、雪姫があんなのは前からだ。それに付き従うように橘も同意することは読めていた......ロキ、二人をよろしく頼むぞ」
「ウォン!」
クラウンは半分諦めたようにため息を吐くとロキへと告げていく。その言葉にロキは元気よく返事して、二人は嬉しそうな表情した。恐らく絶対断られるだろうと思っていたのだろう。
「お話は終わりましたか?」
「律儀に待ってくれるようだな」
「てっきり別れの言葉かと思いましたから。でも、そうじゃないみたいですね。本当にそれで良かったのですか?」
「随分と人にやさしいみたいじゃないか、殺戮兵器よ?」
「今のリルは少なからず自制プログラムが起動しています。それはあくまでマスターの命令がない限り無駄な殺生はしないということです。ですが、それを解除する権限をリルには持ち合わせております。それがどう意味かお分かりですよね?」
「このまま逃げれば見逃すと?」
「半分正解です」
リルリアーゼは巨大な両手をクラウン達に向ける。そして、その手を組み合わせると巨大な手の装甲が変形して一つの大砲のような形になった。
さらに同時に肩や背中から地面に向けて数本のアンカーらしきものが刺さっていく。まるでこれからやろうとしていることは自身に大きな衝撃が伴うことであるかのように。
その行動にクラウン達はすぐさま臨戦態勢に入っていく。一人一人がピりついた緊張感の中で額に汗をかいていく。
殺気はないので殺伐とした雰囲気ではない。なのに、異様な緊張感を感じる。それに体におもりがつけられているかのように重量感も感じてくる。
晴れていた空は再び曇っていき、どんよりとした空気が辺りを包み込んでいく。
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リルリアーゼは軽い口調で答えを告げていく一方で、両手で作り出した大砲にはどんどんと魔力を収束していく。
空気中にある光がリルリアーゼの大砲の中へと吸い込まれていくように集まって光の球体に凝縮していく。
「―――――なのでこれは警告です。一人でも大切な人は生きて居て欲しいでしょ?」
そう言うとリルリアーゼは収束させた光を放った。その光は音速を超えて周囲の瓦礫を吹き飛ばしながら、クラウン達の僅か上を通っていく。
そして、光はそのまま直進していくと鬼ヶ島の象徴とも言える巨大な山の頂上付近にある小さな二つの山の内の一つを消し飛ばした。
クラウン達はそのあまりの速さに思わず動けなかった。食らえば確実に死ぬという一撃をまざまざと見せつけられた。正しく「警告」だろう。
リルリアーゼは大砲の口から出ている煙をそのままに頭をコテンと傾けて尋ねる。
「さあ、考えは変わりましたか?」
「.......」
その問いにクラウンはすぐに答えなかった。だが、刀の先を向けると真っ直ぐリルリアーゼを見る。その動きに合わせ全員が同じような決意の目で見た。
そして、告げる。
「てめぇに時間をかけてる暇はねぇ。死ね、ガラクタ」
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