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第7章 道化師は攻略する
第155話 破壊のリルリアーゼ
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クラウン達がその道を抜けるとそこは広い空間であった。体育館よりも一回り小さいというぐらいであったが、クラウン達の人数を合わせても十分に動ける大きさだ。ただ、エキドナが竜化すれば少し窮屈になるだろうが。
入ってすぐ見えて来たのは大きな台座にいる―――――一人の少女らしきもの。その少女は美しい緑色のロングの髪に胸も出るところは出ているが全体的にはスラッとした印象を与えるような体躯をしている。
またその女性は頭にボクシングのヘッドギアにも似た機械装置をつけていて、両手にも腕の細さにに使わないほど巨大な手の装置を肘辺りまでつけている。
それから、そのヘッドギアも手の装置もそれぞれの後ろにコードのようなものが伸びていて、それが台座へと繋がっている。
他にもまるでライダースーツのようなデザインの服で腹の中心には円形状の枠がデザインされていた。また服のその背中辺りからもコードが伸びているといった感じで特徴をあげるとキリがない。
その少女は動かない。クラウン達がこの部屋に来たというにもかかわらず、他の守護者とは違う行動を見せている。
そのことがクラウンには不気味に感じた。むしろ、いつもの調子で部屋に入った時には臨戦態勢の方がやりやすいというものだ。
「動かないわね」
「壊れているです?」
「いや、一定の条件を満たすと動くって感じじゃねぇか? 一先ずあれがヤバイと言うのは確かだ」
「エキドナ、何か知っているのか?」
リリス、ベル、カムイがその少女を見て感想を各々口にする。すると、クラウンはふと無言のまま黙っているエキドナに気付いた。
エキドナの顔は「どうしてこんなものがここに......」とでも言いたそうな唖然とした表情をしている。情報屋のエキドナのことだ。何かを知っているのかもしれない。
すると、クラウンの言葉を聞いたエキドナがその少女を見続けたまま言葉を告げていく。
「あれは恐らく『破壊のリルリアーゼ』......神代兵器の一つよ」
「神代兵器って嘘でしょ!? あれは超古代文明で存在しているかも怪しいって―――――」
「だが、確か前にお前は言ったはずだ。リゼリアからの言葉で『神代兵器も集めろ』ってな。リゼリアの言葉からすればあってもおかしくはずない。俺達はお前の母の正体を知っているんだからな」
「......」
クラウンの言葉にリリスは思わず押し黙る。それはクラウンの言っていることが正しかったからだ。襲撃の後リリスはクラウンにリゼリアからの指令を言った。その時に確かに「神代兵器も集めろ」とを伝えたはずだ。
ということは、今この神殿を守護しているのは神代兵器ということになる。
神代兵器は神の使徒と同等さを誇るぐらいのイカれた代物だ。伊達に「神代」とつかないぐらいに。ただ、それがどれくらいのものかは実際には知らない。リリスもエキドナも知っているのは文献程度であるからだ。
一方で、クラウンはその少女を見て思わず顎に手を当てて考える。今更だが、超古代文明の別称にも神代「兵器」とついていることに気付いた。
確か、あの時言ったリリスの言葉から神代兵器はこの世界で三つあったはずだ。それらの兵器全てを同一人物が作ったとは思わないが可能性はなくはない。
もっと言えばこの神殿を作った人物とも同一人物かもしれないと考えられる。だが、それを証明できる根拠は何もなくただの憶測にすぎない。
ただ、胸の中に宿る確信的なものはずっと燻ぶり続けている。やはり情報が足りないということなのだろうか。
ともかく、たとえ相手が神に準ずるものだろうと関係ない。
――――斬って殺すのみ。
クラウンは動いてない今がチャンスとばかりに意識を深く落としていく。再び世界が白と黒だけの世界に切り替わり、踏み込んで宙に舞った砂埃さえもゆっくりと流れていく。
クラウンは腰を少し落とすと左手で鞘を持ったまま親指で鍔を押し上げる。そして、右手で柄を持つとさらに深く息を吸って吐く。
視界の端々を切り捨てて目の前にいるリルリアーゼへと意識を深く深く集中させていく。それから、ゆっくりと前のめりに倒れていくように体重をかけ――――――地面を蹴り込んだ。
周囲が高速で流れていく。それだけ自分が速い速度で走っているということなのだろうか。足をつけて舞い上がろうとする砂埃さえも置き去りにして、クラウンはただ真っ直ぐ進んでいく。
そして、リルリアーゼを間合いに入れると一気に抜刀。
「一刀流居合、狼の型―――――そうてん――――――」
クラウンはリルリアーゼの首元目掛けて刀を振り抜こうとした。だが、その前に気付いてしまった。リルリアーゼの口元が僅かに微笑していることに。
そして、閉ざされていた翡翠色の両目がゆっくりと開き――――――確かに目が合った。
その瞬間、リルリアーゼの右手からビームサーベルのような高熱振動刃が飛び出していき、それを横なぎに振るっていく。
その振った速さは未だクラウンの世界がスローであるにもかかわらず、クラウンが腕を振る速度と変わらなかった。
つまりはリルリアーゼの攻撃速度はクラウンの<超集中>でようやく同等ぐらいであるということ。それはラズリの攻撃速度と同じということだ。
リルリアーゼの右腕から伸びた高熱振動刃は横に長く伸びていくと端の壁を抉りながら進んでいく。しかも、どこまでも長く続いているのか動かしていても刃先が見えてくることはない。
ということは、その刃はこのまま自分が避けてしまえば仲間達は斬られたことも理解できずに死んでいくということ。
だが、その攻撃をクラウン自体もまともに受けるわけにはいかない。
未だ白黒の世界の中、クラウンへと迫りくる凶悪な刃は障害物全てを切り裂いていく。その刃に対して、クラウンは踏み込んでいた足の膝を思いっきり曲げた。
そしてその流れでもう片方の脚の膝も曲げていき、地面と平行辺りになるまで体勢を変形させていく。
また振り抜こうとしていた右腕を左手から飛ばした糸で強制的に止め、逆に引き戻していく。
クラウンの眼前にその刃がスレスレで通っていこうとする。その時、クラウンは刀を思いっきりその体勢のまま横に振った。
それによって、高熱振動刃を出していた右腕は上へと弾かれていき、壁を横真っ直ぐに斬っていた刃は斜め上へと進行方向を変えていく。
その動きは迫りつつあった仲間を避けていくように動いていき、やがて天井を中心近くまで抉って止まった。その隙にクラウンはバク転で体勢を立て直しながら距離を取っていく。
その二人の攻防は時間にして一秒と少し程度。その間に何があったかを理解できる人物は誰もいなかった。
いわば気づいたらクラウンが目の前に戻っていて、リルリアーゼは動き出しているという状況だ。
「ねぇ、クラウンは何をしたの? というか、いつの間にあれは動いているの?」
「はあはあはあ......俺が動いている最中にだ。あれは俺の行動についてきやがった」
クラウンは荒く呼吸しながら額にかいた汗を顎から滴り落とす。だが、臨戦態勢だけは解除せず、右手に持った刀を上段に構えて左手で標的を定めるようにかかげている。
クラウンが使う<超集中>は酷く消耗するのだ。それは全神経を敏感にさせて周りのありとあらゆる情報を瞬時に取捨選択して理解していくから。
だから、クラウンの見る世界は必要ない色彩は排除して白と黒だけが残り、僅かな動きも逃さないようにゆっくりと動いて見える。
故に、体力の消耗は激しい。この<超集中>は冷静で心を落ち着けた時にしか出来ないので小出し小出しで使うのはそれなりにきついのだが、それ以上に長時間使う方がきついのである。
現状、クラウンが最大で使える時間は五秒ほど。ただそこまで使えば一時的に電池が切れかけたロボットみたいに鈍った動きしか出来なくなるが。
「現状、確認。視界、良好。感度、上々。周囲確認、敵は複数。マスターの命によりこの神殿に入りし敵の排除を実行します」
リルリアーゼはロボットのような機械的な確認動作をしていく。しかし、その声は良く知っているような機械音のような声でなく、もっと人に近いような声だった。
すると、リルリアーゼはは人のように一つ息を吐いて上げた肩をストンと落としていく。そして、髪色に似た翡翠色の瞳でクラウン達を見て告げた。
「これからあなた達を排除します。これはマスターからの最重要命令であるからです。異論は認めません」
「なんだこいつは? 急に流暢になりやがったぞ?」
「なんだか人みたいだね......」
「朱里ちゃんと全く同じ気持ちだよ.......」
「それはマスターが私をそういう風に作り上げたからです」
「「!」」
リルリアーゼの様子を見て思わず呟いた朱里と雪姫の言葉にリルリアーゼは割り込むように言葉を告げた。その声はやはり柔らかな年齢も近そうな女性の声でそれがなんだか不気味でもあったが。
そんな様子にリルリアーゼは人のように少ししょんぼりとさせた顔をする。まるで朱里と雪姫の少し怯えたような態度に悲しく感じたかのように。
すると、そんなリルリアーゼにクラウンが尋ねた。
「お前はマスターに作られたと言っていたがそいつは誰だ?」
「それはお答えできません。それに予測できる質問にも答えておきますと私を作り出したマスターと今私に命令に下しているマスターは同一人物ではございません」
「そうか......なら、ここにある宝珠はどこだ?」
「一番安全な場所に隠してあります。それがどこであるかはわかりますよね?」
リルリアーゼはまるで人のようにイタズラっぽい笑みを浮かべて逆に聞き返した。その質問の答えをクラウンは理解した。つまりはあの円形状の枠は蓋のようになっていて内部に隠してあるという感じだろう。
だが、それを聞いたとして奪って逃げるということは難しそうだ。
すると、リルリアーゼは両手を大きく広げると目を閉じた。そして、告げる。
「それでは皆さん、生きて会えることを願って―――――自爆プログラム起動」
「「「「「!!!」」」」」
その言葉に全員が思わず耳を疑った。こんな地下空間でそれもどこまで下に来たかもわからない神殿内部で自爆? 正気の沙汰じゃない。
だが、相手はそもそも人ではない。ならば、理解しても無駄なのかもしれない。
リルリアーゼがそう言った瞬間、リルリアーゼは神々しい光に満たされた。そして、誰にでも「明らかに高エネルギーを蓄えているだろう」とわかる高熱波を放ち始めた。
そして、次第にリルリアーゼはその姿が霞んでいくほど眩い光に包まれていく。
「走れ!」
クラウンは刀を元に戻すと全力で走り始める。その後を仲間達も続いて走り始める。
「残り三十秒、さてどこまで逃げ切れるでしょうか」
リルリアーゼは笑いながらそう言った。
入ってすぐ見えて来たのは大きな台座にいる―――――一人の少女らしきもの。その少女は美しい緑色のロングの髪に胸も出るところは出ているが全体的にはスラッとした印象を与えるような体躯をしている。
またその女性は頭にボクシングのヘッドギアにも似た機械装置をつけていて、両手にも腕の細さにに使わないほど巨大な手の装置を肘辺りまでつけている。
それから、そのヘッドギアも手の装置もそれぞれの後ろにコードのようなものが伸びていて、それが台座へと繋がっている。
他にもまるでライダースーツのようなデザインの服で腹の中心には円形状の枠がデザインされていた。また服のその背中辺りからもコードが伸びているといった感じで特徴をあげるとキリがない。
その少女は動かない。クラウン達がこの部屋に来たというにもかかわらず、他の守護者とは違う行動を見せている。
そのことがクラウンには不気味に感じた。むしろ、いつもの調子で部屋に入った時には臨戦態勢の方がやりやすいというものだ。
「動かないわね」
「壊れているです?」
「いや、一定の条件を満たすと動くって感じじゃねぇか? 一先ずあれがヤバイと言うのは確かだ」
「エキドナ、何か知っているのか?」
リリス、ベル、カムイがその少女を見て感想を各々口にする。すると、クラウンはふと無言のまま黙っているエキドナに気付いた。
エキドナの顔は「どうしてこんなものがここに......」とでも言いたそうな唖然とした表情をしている。情報屋のエキドナのことだ。何かを知っているのかもしれない。
すると、クラウンの言葉を聞いたエキドナがその少女を見続けたまま言葉を告げていく。
「あれは恐らく『破壊のリルリアーゼ』......神代兵器の一つよ」
「神代兵器って嘘でしょ!? あれは超古代文明で存在しているかも怪しいって―――――」
「だが、確か前にお前は言ったはずだ。リゼリアからの言葉で『神代兵器も集めろ』ってな。リゼリアの言葉からすればあってもおかしくはずない。俺達はお前の母の正体を知っているんだからな」
「......」
クラウンの言葉にリリスは思わず押し黙る。それはクラウンの言っていることが正しかったからだ。襲撃の後リリスはクラウンにリゼリアからの指令を言った。その時に確かに「神代兵器も集めろ」とを伝えたはずだ。
ということは、今この神殿を守護しているのは神代兵器ということになる。
神代兵器は神の使徒と同等さを誇るぐらいのイカれた代物だ。伊達に「神代」とつかないぐらいに。ただ、それがどれくらいのものかは実際には知らない。リリスもエキドナも知っているのは文献程度であるからだ。
一方で、クラウンはその少女を見て思わず顎に手を当てて考える。今更だが、超古代文明の別称にも神代「兵器」とついていることに気付いた。
確か、あの時言ったリリスの言葉から神代兵器はこの世界で三つあったはずだ。それらの兵器全てを同一人物が作ったとは思わないが可能性はなくはない。
もっと言えばこの神殿を作った人物とも同一人物かもしれないと考えられる。だが、それを証明できる根拠は何もなくただの憶測にすぎない。
ただ、胸の中に宿る確信的なものはずっと燻ぶり続けている。やはり情報が足りないということなのだろうか。
ともかく、たとえ相手が神に準ずるものだろうと関係ない。
――――斬って殺すのみ。
クラウンは動いてない今がチャンスとばかりに意識を深く落としていく。再び世界が白と黒だけの世界に切り替わり、踏み込んで宙に舞った砂埃さえもゆっくりと流れていく。
クラウンは腰を少し落とすと左手で鞘を持ったまま親指で鍔を押し上げる。そして、右手で柄を持つとさらに深く息を吸って吐く。
視界の端々を切り捨てて目の前にいるリルリアーゼへと意識を深く深く集中させていく。それから、ゆっくりと前のめりに倒れていくように体重をかけ――――――地面を蹴り込んだ。
周囲が高速で流れていく。それだけ自分が速い速度で走っているということなのだろうか。足をつけて舞い上がろうとする砂埃さえも置き去りにして、クラウンはただ真っ直ぐ進んでいく。
そして、リルリアーゼを間合いに入れると一気に抜刀。
「一刀流居合、狼の型―――――そうてん――――――」
クラウンはリルリアーゼの首元目掛けて刀を振り抜こうとした。だが、その前に気付いてしまった。リルリアーゼの口元が僅かに微笑していることに。
そして、閉ざされていた翡翠色の両目がゆっくりと開き――――――確かに目が合った。
その瞬間、リルリアーゼの右手からビームサーベルのような高熱振動刃が飛び出していき、それを横なぎに振るっていく。
その振った速さは未だクラウンの世界がスローであるにもかかわらず、クラウンが腕を振る速度と変わらなかった。
つまりはリルリアーゼの攻撃速度はクラウンの<超集中>でようやく同等ぐらいであるということ。それはラズリの攻撃速度と同じということだ。
リルリアーゼの右腕から伸びた高熱振動刃は横に長く伸びていくと端の壁を抉りながら進んでいく。しかも、どこまでも長く続いているのか動かしていても刃先が見えてくることはない。
ということは、その刃はこのまま自分が避けてしまえば仲間達は斬られたことも理解できずに死んでいくということ。
だが、その攻撃をクラウン自体もまともに受けるわけにはいかない。
未だ白黒の世界の中、クラウンへと迫りくる凶悪な刃は障害物全てを切り裂いていく。その刃に対して、クラウンは踏み込んでいた足の膝を思いっきり曲げた。
そしてその流れでもう片方の脚の膝も曲げていき、地面と平行辺りになるまで体勢を変形させていく。
また振り抜こうとしていた右腕を左手から飛ばした糸で強制的に止め、逆に引き戻していく。
クラウンの眼前にその刃がスレスレで通っていこうとする。その時、クラウンは刀を思いっきりその体勢のまま横に振った。
それによって、高熱振動刃を出していた右腕は上へと弾かれていき、壁を横真っ直ぐに斬っていた刃は斜め上へと進行方向を変えていく。
その動きは迫りつつあった仲間を避けていくように動いていき、やがて天井を中心近くまで抉って止まった。その隙にクラウンはバク転で体勢を立て直しながら距離を取っていく。
その二人の攻防は時間にして一秒と少し程度。その間に何があったかを理解できる人物は誰もいなかった。
いわば気づいたらクラウンが目の前に戻っていて、リルリアーゼは動き出しているという状況だ。
「ねぇ、クラウンは何をしたの? というか、いつの間にあれは動いているの?」
「はあはあはあ......俺が動いている最中にだ。あれは俺の行動についてきやがった」
クラウンは荒く呼吸しながら額にかいた汗を顎から滴り落とす。だが、臨戦態勢だけは解除せず、右手に持った刀を上段に構えて左手で標的を定めるようにかかげている。
クラウンが使う<超集中>は酷く消耗するのだ。それは全神経を敏感にさせて周りのありとあらゆる情報を瞬時に取捨選択して理解していくから。
だから、クラウンの見る世界は必要ない色彩は排除して白と黒だけが残り、僅かな動きも逃さないようにゆっくりと動いて見える。
故に、体力の消耗は激しい。この<超集中>は冷静で心を落ち着けた時にしか出来ないので小出し小出しで使うのはそれなりにきついのだが、それ以上に長時間使う方がきついのである。
現状、クラウンが最大で使える時間は五秒ほど。ただそこまで使えば一時的に電池が切れかけたロボットみたいに鈍った動きしか出来なくなるが。
「現状、確認。視界、良好。感度、上々。周囲確認、敵は複数。マスターの命によりこの神殿に入りし敵の排除を実行します」
リルリアーゼはロボットのような機械的な確認動作をしていく。しかし、その声は良く知っているような機械音のような声でなく、もっと人に近いような声だった。
すると、リルリアーゼはは人のように一つ息を吐いて上げた肩をストンと落としていく。そして、髪色に似た翡翠色の瞳でクラウン達を見て告げた。
「これからあなた達を排除します。これはマスターからの最重要命令であるからです。異論は認めません」
「なんだこいつは? 急に流暢になりやがったぞ?」
「なんだか人みたいだね......」
「朱里ちゃんと全く同じ気持ちだよ.......」
「それはマスターが私をそういう風に作り上げたからです」
「「!」」
リルリアーゼの様子を見て思わず呟いた朱里と雪姫の言葉にリルリアーゼは割り込むように言葉を告げた。その声はやはり柔らかな年齢も近そうな女性の声でそれがなんだか不気味でもあったが。
そんな様子にリルリアーゼは人のように少ししょんぼりとさせた顔をする。まるで朱里と雪姫の少し怯えたような態度に悲しく感じたかのように。
すると、そんなリルリアーゼにクラウンが尋ねた。
「お前はマスターに作られたと言っていたがそいつは誰だ?」
「それはお答えできません。それに予測できる質問にも答えておきますと私を作り出したマスターと今私に命令に下しているマスターは同一人物ではございません」
「そうか......なら、ここにある宝珠はどこだ?」
「一番安全な場所に隠してあります。それがどこであるかはわかりますよね?」
リルリアーゼはまるで人のようにイタズラっぽい笑みを浮かべて逆に聞き返した。その質問の答えをクラウンは理解した。つまりはあの円形状の枠は蓋のようになっていて内部に隠してあるという感じだろう。
だが、それを聞いたとして奪って逃げるということは難しそうだ。
すると、リルリアーゼは両手を大きく広げると目を閉じた。そして、告げる。
「それでは皆さん、生きて会えることを願って―――――自爆プログラム起動」
「「「「「!!!」」」」」
その言葉に全員が思わず耳を疑った。こんな地下空間でそれもどこまで下に来たかもわからない神殿内部で自爆? 正気の沙汰じゃない。
だが、相手はそもそも人ではない。ならば、理解しても無駄なのかもしれない。
リルリアーゼがそう言った瞬間、リルリアーゼは神々しい光に満たされた。そして、誰にでも「明らかに高エネルギーを蓄えているだろう」とわかる高熱波を放ち始めた。
そして、次第にリルリアーゼはその姿が霞んでいくほど眩い光に包まれていく。
「走れ!」
クラウンは刀を元に戻すと全力で走り始める。その後を仲間達も続いて走り始める。
「残り三十秒、さてどこまで逃げ切れるでしょうか」
リルリアーゼは笑いながらそう言った。
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