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第7章 道化師は攻略する

第154話 兵器の屋敷 ウェポノイド#3

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「カムイ、少しだけ時間を稼ぐことは出来るか?」

「出来るっちゃえきるけど、お前さんは一体何をする気だ?」

「鍵を探せっていうならただの一本道のはずがないだろう。どうせ迷路のようになっているはずだ。だったら、あらかじめその地形を把握するまでのことだ」

 クラウンの言葉にカムイが迫りくる炎の方へと体を向ける一方で、クラウンはしゃがむと地面へと手を付けた。

 それからすぐに、<気配察知>で周囲の状況を把握していく。すると、クラウンの脳内には立体迷路を上から見て平面にしたかのように全体像が見えてくる。

 そして、その全体像からさらに鍵のある三ルートを探り出していく。クラウンはただ地面を呆然と見つめながら、エキドナとベルにその三ルートのうちぞれぞれ一つずつを言葉づてで伝えていく。

 その言葉をエキドナは腰ポーチから取り出したメモ帳に箇条書きにルート順を書いていき、ベルはその言葉を脳内にしっかりと刻み込ませる様に目を閉じて聞いていた。

「二人ともルートをはわかったか?」

「バッチしよ」

「バッチしです」

「なら、カムイと橘とベル、エキドナとリリス、俺と雪姫とロキでそれぞれ鍵を持って集まるぞ。行くぞ!」

「「「「「了解!」」」」」

 クラウンはそう言うと真ん中の道を走り出し、エキドナ達は右の道、ベル達は左の道へと向かっていった。

「雪姫、お前が俺達の走力に合わせると間に合わない。ロキの背中に乗って不意打ちの攻撃に備えてくれ」

「わかった」

 雪姫はクラウンの言葉に納得するとすぐ隣にいて雪姫を守護していたロキへと視線を送る。そして、ロキが一吠えして一時的に体勢を低くするとそこに雪姫が飛び移った。

 すると、前方から立ち塞がるように一体の武士とその両脇に並ぶ二丁のマシンガンが立ち並ぶ。それからクラウン達が一定の距離に来た直後、武士はクラウン達に向かって走り、二丁のマシンガンの銃撃が始まった。

 クラウンはその武士に向かい合うように走力をあげて迫っていく。だが、その前にハチの巣にするような数の弾丸がクラウンに襲いかかる。

「双璧の盾!」

 雪姫は机を横に構えて意識を集中させていく。そして、閉じた目をカッと開かせると両腕を前方に伸ばしていく。

 その瞬間、クラウンの前には二つの半透明な壁が現れ、それが武士を挟んで右と左から来る無数の弾丸を弾き返していく。

 一方、クラウンは上段から振り下ろされてきた刀を黒き刀を横に振るって迎え撃つ。そして、武士の刀を弾いた刹那の間に右足の前蹴りで武士の胸辺りを体ごと吹き飛ばしていく。

 だが、武士は上体を大きく逸らしながら地面に左手をつけて、吹き飛ばされた勢いを殺すようにバク転していく。そして、すぐさま武士は体勢を立て直し刀を上段に構えた。

 しかし、武士が見た目の前にはクラウンはおらず白き獣が眼前へと迫っていた。その白き獣―――――ロキは走りながら口を大きく開けると衝撃波を伴った咆哮をしていく。

 その衝撃波はロキ達よりもはるかに速く武士と二丁のマシンガンへと迫っていき、そのマシンガンを微塵に粉砕しながら武士も吹き飛ばしていく。

 そして、武士が空中で横にスライドしていくように動いていく一方で、ロキは地面を抉るように爪を立てるとさらに速度を上げていく。

 その突然上がった速度でロキにしがみついていた雪姫は吹き飛ばされそうになるが、その後ろに乗っていたクラウンによってそれは防がれた。

「ありがとう、仁」

「.......」

 クラウンは何も答えなかったが雪姫はクラウンに抱えられるように肩を掴まれていることに安堵感を感じた。無茶してついて来てしまった感じも否めないが、それでも昔の仁を背中から感じるような気がして。

 するとしばらくして、クラウンは一言だけ告げる。

「このまま突破するぞ」

「うん!」

「ウォン!」

 ロキはトップスピードで武士へと近づくと通り過ぎながら鋭く立てた爪で引き裂いていく。そして、クラウンがロキの背中に立って背後を振り向くとトドメとばかりに斬撃を放って武士の胴体を両断した。

 それから、入り組んだ道をクラウンの指示によってロキが的確に進んでいく。それによって、詰まることはなく、炎からもだいぶ距離が取れた。

「ウォン!」

「前方から扉が迫ってきているだと?」

「何言ってるのかわかるんだね」

 クラウンは驚いた様子の雪姫を視界に収めつつ前方に迫っている障子扉を見た。そして、その扉はまるで誘い込むかのように勢いよく両側に開き、何もない暗闇をその奥から覗かせている。

 ロキはその暗闇に躊躇なく突っ込んでいくと丁度クラウン達を囲うように同じような障子扉が現れた。

 その空間は真っ暗で他に何もないはずなのに暗くは感じない。それに、背景が暗いからか白い紙が張られた障子扉がやたらと明るく見える。

 背後に開いていた(クラウン達が入ってきた)障子扉が閉まるとその円形に並ぶ障子扉の周りに大きな炎の壁が出来上がった。

 その炎から伝わってくる熱波はまるですぐ近くで炙られているみたいにジリジリとした痛みを感じる。さらに、問題はそれだけじゃない。

 雪姫の耐久時間が問題だ。クラウンとロキは過酷な森にいたことでどんな環境でもすぐに完全適応できるが雪姫はそうではない。

 雪姫はすでに顔から滝のように汗を流し始めた。額から頬へ伝ってあごから滴り落ちる。地面に立っていればちょっとした水たまりでも作れそうな勢いだ。

 すると、丁度入ってきた入り口と迎え合う位置に立っていた障子扉が一度開き、そして閉じた。それから直後に全ての障子扉がグルグルと回転し始める。

 そしてやがて、その障子扉は止まった。まるでどこに出口があるか探せと言っているみたいだ。

 だが、それぐらいなら問題ない。たとえ目では捉えきれない速度で回転しようともクラウンは常人ではないのだ。<超集中>を駆使すればすぐに見つけられる。

 そして、クラウンはロキから降りると出口であろう障子扉へと向かって行く。それから、勢いよく障子扉を開ける――――――

「!」

 ――――――バババババッ!

 クラウンが開いた障子扉からはマシンガンが飛び出してきた。そしてすぐに、そのマシンガンは銃撃を開始する。

 その瞬間、クラウンは大きく体を仰け反らせるとその銃機の初弾を躱していく。同時に、バク転しながら足でそのサブマシンガンを蹴り上げる。

 すると、そのサブマシンガンは身を引くように障子扉の奥へと引っ込んでいき、障子扉は閉まる。それから、クラウンの右側の方で一つの障子扉がからかうように居場所を示すと再び高速回転し始めた。

 その間にクラウンは思考する。今のは明らかにおかしいと。なぜなら、<超集中>を使って追っていたのに完全に見失っているからだ。

 見間違いということは恐らくない。だとすれば、他に考えられることは回転している間に障子扉の位置が移動しているということ。

 なら、視覚を頼りにしても仕方ないのかもしれない。だが、<気配察知>を使っても等しく同じような気配を感じる。

 クラウンは障子扉の後ろに大きく燃え上がっている炎を見る。先ほどよりも大きい気がする。もしかしたら、近づいて来ているのかもしれない。

「ウォン」

 クラウンはロキが吠えた先を見ると雪姫が暑さでぐったりとした様子である。自身に氷魔法使って冷却しているみたいだが、暑さで集中力が削がれてしまっているらしい。

 時間がない。このままでは雪姫は脱水症状で危険な状態に入るだろう。だが、現時点でこの空間を攻略する方法は思いついていな――――――

 その瞬間、クラウンはあることを思いついた。そして、気づいた。この空間において出入口を探す必要なんてないことに。

「ロキ、雪姫を咥えていつでもこの空間を抜け出せるように準備しろ!」

「ウォン!」

 クラウンの指示にロキが雪姫の服を咥えると視線で「準備万端」と伝えてくる。その行動を尻目にクラウンは止まった障子扉全てに糸を飛ばしていく。

 そして、その糸が全て障子扉にしっかりとくっついたことを確認するとそれらの糸の集合した一本の太い糸を持つクラウンが思いっきり空中へと駆けて、全ての障子扉を引きはがした。

 その瞬間、一つを残した全ての障子からマシンガンが飛び出してきて、出入口であろう扉は丁度クラウン達が入ってきた位置へと現れていた。

「走れ!」

 クラウンの言葉と共に一斉に全方位から銃撃が始まった。その銃弾全てがクラウンとロキを囲うように迫ってくる。

 ロキは持ち味の瞬間トップスピードで出入口を抜け、クラウンは<超集中>で針の穴に糸を通すような細い隙間を的確に潜り抜けていった。

 抜け出た先は黒い炭の壁で覆われた一本道。先ほどでは感じなかった刺激臭が鼻を突き抜けていく。

 クラウン達は銃弾の監獄から抜けた。だが、安心するにはまだ早い。その抜けた障子扉は閉まることなく、その暗闇が広がる奧から熱波を伴った炎の波が迫ってきたからだ。

 クラウンとロキはそのまま勢いを殺さずにできるだけ距離を取るように走っていく。しかし、その炎の波の勢いはすごく簡単には引き離せない。

 すると、前方からキランと輝く何かを捉えた。それは台座に置かれていた黄金の鍵であった。それから、台座の両脇には通り抜けられそうな道がある。

 クラウンは取り逃さないようにその鍵へ糸を飛ばしていき、手に収めるとそのまま手ごと鍵を糸でグルグル巻きにした。

 そして、台座を通り抜けて走っていく。炎の波は全てを飲み込みながら追いかけて来る。クラウンが背後をチラッと見れば、その炎は驚くべき形をしていた。

 その炎の波は口を大きく開き、その口から牙を生やし、口元には大きく長いひげを生やした東洋の龍であったからだ。

 その龍はもちろん全てを炎で作られている。だが、問題はそこじゃない。このデザインだ。

 この世界は「りゅう」と言えば全て西洋のデザインである。しかし、ここで東洋の「龍」が出てくるということはこの神殿を作ったのが同じ世界出身であることは明らかになった。

 クラウンとロキは目の前にある大きな扉を勢いよく駆け抜けていく。そらから、その扉はクラウン達が抜けた瞬間、すぐに閉まり炎の龍の侵入を防いだ。

 すると、どうやらクラウン達は一番乗りだったらしく、数分後にエキドナ達、ベル達と合流した。全員何かを乗り越えてきたらしく、消耗している様子だ。

 なので、全員の体調が回復するまで数分だけこの場で過ごすと回収してきた三つのカギを使って、目の前にある十メートルほどの扉を開錠した。すると、扉は勝手に開いていく。

「行くぞ」

 クラウンは一言だけ告げると先陣を切って扉を抜けていく。
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