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第7章 道化師は攻略する
第143話 鬼ヶ島へ出発
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「もう行かれてしまうのですね。仕方ないとはいえ、名残惜しいものです」
「大丈夫だよ。これでもう会えなくなるわけじゃないから」
「そうそう、朱里達はお困り事があればいつでもどこでも参上するよ」
「ふふっ、頼もしくて何よりです。それでは改めて、この国を救っていただきありがとうございます。そして、行ってらっしゃいませ」
「「行ってきます」」
シュリエールは朱里と雪姫の二人に挨拶を済ませると丁寧にお辞儀しながら見送った。その両サイドにはシュリエールの父親やその他の人の兵士、メイド、執事といった総出のお見送りであった。
そんな彼女らに雪姫と朱里は背後を顔を向けながら、姿が遠くまでなるように見送っていく。そしてそのまま、門をくぐり抜けてハザドールを出ていった。
そんな二人の様子を後目にクラウンは指笛を高らかに慣らしていく。すると、遠くの方から白い何かが勢いよく走り向かってくる。
その白いのは何か大きなものを引きずっているのか、走るたびに砂煙が盛大に空中へと待っていく。そして、その白いの――――ロキはクラウンにその勢いのまま突っ込んでいく。
それから、その勢いでクラウンを多少吹っ飛ばしながらも、すぐに近づいていくと押し倒した状態で顔を舐めていく。
「遅くなって悪かった。それに、心配もかけさせたな。だから、そんなに舐めないでくれ」
「ウォン」
「よし、いいぞ」
クラウンはロキのあご下を撫でながら、状態を起こしていく。それから、もう片方の手で頭を撫でていく。しばらくぶりのロキとのスキンシップだ。こればかりは止められない。
ロキが頭をクラウンの肩に乗せてくるので、その首に腕を回して抱擁するように撫でていく。これで溜め込んだストレスも開放されるというものだ。
そして、ある程度ストレスが減り気分が良くなったところで、クラウンはロキの顔に触れながら、朱里と雪姫に聞いた。
「俺達はこれから鬼族の島である鬼ヶ島へと行くつもりだ。それも急用案件だ。お前達の仲間探しに付き合っている時間はない。それでお前達はこれからどうするつもりだ?」
「私達は......」
雪姫は僅かに迷っているような表情を見せた。そして、助けを求めるように朱里へと視線を投げる。すると、朱里はただ何も言わずに雪姫の肩へと手を置いた。
その表情は優しい笑みをうかべていた。そして同時に力強い目をしていた。「きっと雪姫の好きなようにしていい」ということなのだろう。
雪姫はその表情に僅かに目を見開いたが、すぐに「ありがとう」と告げてクラウンへと視線を移す。
「正直なところ、皆のことは探したい。でも、あてがあって向かうべき場所は今のところないし、情報も何も無いから多分さまようだけになると思う」
「つまりは?」
「仁の旅について行かせて。もしかしたら、仁の行く先に私達の知っている誰かがいるかもしれないから。お願いします」
「お願いします」
朱里と雪姫はクラウンに丁寧に頭を丁寧に下げる。その姿を見ながら、クラウンは他の仲間の意見を確認するように、リリス達に順に目線を移していく。
だが、その反応は分かりきったものだ。全員が「別に構わない」という意味のうなづき方をする。心なしか顔が晴れやかであるようにも見える。
「俺は別に構わない。ただ、あまり足を引っ張るようなことはするなよ。俺から言うことはそれだけだ」
クラウンはそう言うと顔をそっぽ向ける。照れくさかったのだろうか。いや、クラウンに限ってそういう可能性は低いだろうが、最近は何かと丸くなってきたのでその可能性はあるかもしれない。
その言葉に朱里と雪姫は顔を合わせると互いに笑い合う。なんだかんだで上手く言っているような気がする。これがたとえどのような形であったとしても、前みたいに戻れる可能性があるのなら、それに越したことはない。
「エキドナ、ここから鬼ヶ島までの距離はどのくらいだ?」
「率直に言うとかなり遠いわね。もともと鬼ヶ島に最も近い陸地までもそれなりに遠いのに、さらに海を渡らなくちゃいけないから」
「だとすると、エキドナの竜化が頼みになるわけだが......それだとどのくらいで着く? それにこの人数は乗せれるか?」
「そうね......私の最速モードである(空)に変化すれば、半日で着くと思うけど、この人数だと恐らく乗り切れない。だから、もし人数に合わせるだったら、通常モードの(地)になって行くしかないわね。それだと、早くても一日かしら」
「カムイはどうする? お前だけ先に鬼ヶ島へと行くか、それとも時間はかかるが俺達も一緒に連れていくか」
「俺はお前らがいてくれた方が助かる。だから、後者かな。たとえ早く行けても俺一人じゃどうにもならないこともありそうだしな」
「そうか。なら、エキドナ、頼めるか?」
「ええ、任せて」
クラウンの言葉にエキドナは竜化していく。体積は千倍以上になり、力強い手足、太くて長い尻尾、それから全身を白い竜鱗で包んだ白竜が現れた。
その白竜はもちろんエキドナで、エキドナは体を伏せると乗るように視線を投げかけてきた。その背中に全員が乗っていく。その際、馬車はもはや仕方ないので、その場に放置していく。
そして、エキドナは力強く羽ばたくと一気に大空を駆けていった。近くに見えていた馬車はどんどんと小さくなり、同時にシュリエールの国の全体をも視界に収めるほど高い位置までやってきた。
その光景に全員が僅かに心躍らせる中、クラウンはなんとも言えない顔をしていた。その原因はあぐらで座っている自分に正面から抱きつくように座っているベルだ。
そのベルはこれでもかというぐらいにクラウンの体にしがみついており、胸の辺りに顔を埋めている。まあ、簡単に言えば、これまで不足分だった筋肉成分を回収してるのだ。
僅かにスーハーと匂いを嗅ぎながら、その筋肉と匂いに興奮させたように尻尾を振っていく。そんな様子のベルにクラウンは何も言えなかったのだ。
ただ、ベルにはもうかなりの割合で諦めた目しており、頭を撫でてそのままである。
「ふぁふふぃふぁふぁふぉふぃんふぃふぅふぁふぁふぃふぉふふぇふ(主様の筋肉は最高です)」
「もはや何を言っているかわからんが、とにかくもう治まれ」
クラウンは呆れたようにそう言うがベルに伝わっていないようで、ただずっと尻尾を振るばかり。そんな二人の様子をリリス達は生暖かい目で見つめており、雪姫に至っては若干羨ましそうな顔をしていた。
すると、ある程度堪能したベルは依然としてクラウンから離れることは無いが、クラウンを背もたれにするように体の向きを変えた。
そして、通り過ぎていく景色を見ながら、クラウンに話しかけた。
「主様の匂い、前よりも暖かい匂いになった気がするです。なんというか角が取れたというかです?」
「どういう意味だ? 俺は別に角を丸くした覚えはないぞ。むしろ、そんなことをすれば俺は殺られる」
「そんなことないです。現に、主様はこうして私の近くにいて、温もりを伝えてくれているです。だから、そんなことはないです」
「俺にはお前達が俺のことをどういう風に捉えているのかとても疑問なんだが......」
「気にすることでもないです。きっと誰に聞いても同じような言葉が帰ってくるだけです」
「余計に気になるんだが......」
クラウンはそう呟きながら、近くいいたロキへと視線を投げかけた。すると、伏せていたロキは立ち上がるとのそのそとクラウンの背後へとやってきて、再び伏せた。
そんなロキをクラウンは枕にするように寝転がる。そして、目に映るは一面に広がる青い空。雲は僅かにしかなく、エキドナによって風が感じないため、非常に心地よい。
すると、クラウンはぼんやりと空を眺めながら、ベルへと呟いた。
「そういえば、お前って全然駒らしくないよな。さすがに自由過ぎだろ」
「それを今更聞くです?」
「まあ、そうなんだが......けど、お前はよくやってくれている。使える駒としてはかなり重宝しているな」
「未だに駒という言葉を使うです。もしかして、仲間というのが照れくさいです?」
「お前も随分と容赦なく聞くようになったな」
クラウンはそう言うとそれ以上何も答えずな目を閉じた。体は脱力させて、暖かさを運ぶ太陽の光を全身で感じる。すると、ベルはクラウンの腹の上から下りるとすぐ側の脇の下へと潜り込み、腕を枕にしながら目を閉じた。
静かな時間が流れる。二人を起こさないようにリリス達が気を遣っているのだ。ただ、本音としてはそんな二人の様子を眺めていたいだけだったりするのだが。
すると、雪姫はポケットから魔道具カメラを取り出す。そして、そのカメラを目元に合わせると二人を捉えてカシャり。それから、撮った写真は現像するために日陰へと隠す。
そんな雪姫の行動を見ていた朱里は思わず言った。
「雪姫の写真撮りの趣味はまさか異世界まで続くとは......お父さんの趣味だっけ?」
「うん、そうだよ。それで私も撮り始めたら止まんなくなっちゃって。だから、学校でも写真部だったんだ」
「確か、一日一枚は海堂君の写真を撮ることが目標だといって、もはやストーカーレベルで――――」
「静かに! 朱里ちゃん! これ以上は言ってはいけない」
「それでたまたま私が雪姫の部屋に入った時は――――」
「黙って! 朱里ちゃん! 壁に仁の写真をたくさん貼ってるなんて仁に知られたら私は生きていけない!」
「確か今の部屋も――――」
「朱里ちゃん、シャーラップ!」
朱里はニタニタした笑みで雪姫をいじっていく。そんな朱里に雪姫は恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にさせながら、頬を膨らませていく。
だが、その目に少し涙目になっているので迫力は半減だ。そして、そんな雪姫に朱里は悪びれた感じもせずにひょうひょうとしている。
そんな険悪にも見える雰囲気だが、実際にはそれほどまでに険悪でもなかった。ただ、いつも通りの日常で会話するようなことを話して楽しんでいるだけのようであった。
ただ一方で、リリス、カムイ、エキドナは雪姫にも宿る変態性を敏感に感じ取っている様子であった。
「大丈夫だよ。これでもう会えなくなるわけじゃないから」
「そうそう、朱里達はお困り事があればいつでもどこでも参上するよ」
「ふふっ、頼もしくて何よりです。それでは改めて、この国を救っていただきありがとうございます。そして、行ってらっしゃいませ」
「「行ってきます」」
シュリエールは朱里と雪姫の二人に挨拶を済ませると丁寧にお辞儀しながら見送った。その両サイドにはシュリエールの父親やその他の人の兵士、メイド、執事といった総出のお見送りであった。
そんな彼女らに雪姫と朱里は背後を顔を向けながら、姿が遠くまでなるように見送っていく。そしてそのまま、門をくぐり抜けてハザドールを出ていった。
そんな二人の様子を後目にクラウンは指笛を高らかに慣らしていく。すると、遠くの方から白い何かが勢いよく走り向かってくる。
その白いのは何か大きなものを引きずっているのか、走るたびに砂煙が盛大に空中へと待っていく。そして、その白いの――――ロキはクラウンにその勢いのまま突っ込んでいく。
それから、その勢いでクラウンを多少吹っ飛ばしながらも、すぐに近づいていくと押し倒した状態で顔を舐めていく。
「遅くなって悪かった。それに、心配もかけさせたな。だから、そんなに舐めないでくれ」
「ウォン」
「よし、いいぞ」
クラウンはロキのあご下を撫でながら、状態を起こしていく。それから、もう片方の手で頭を撫でていく。しばらくぶりのロキとのスキンシップだ。こればかりは止められない。
ロキが頭をクラウンの肩に乗せてくるので、その首に腕を回して抱擁するように撫でていく。これで溜め込んだストレスも開放されるというものだ。
そして、ある程度ストレスが減り気分が良くなったところで、クラウンはロキの顔に触れながら、朱里と雪姫に聞いた。
「俺達はこれから鬼族の島である鬼ヶ島へと行くつもりだ。それも急用案件だ。お前達の仲間探しに付き合っている時間はない。それでお前達はこれからどうするつもりだ?」
「私達は......」
雪姫は僅かに迷っているような表情を見せた。そして、助けを求めるように朱里へと視線を投げる。すると、朱里はただ何も言わずに雪姫の肩へと手を置いた。
その表情は優しい笑みをうかべていた。そして同時に力強い目をしていた。「きっと雪姫の好きなようにしていい」ということなのだろう。
雪姫はその表情に僅かに目を見開いたが、すぐに「ありがとう」と告げてクラウンへと視線を移す。
「正直なところ、皆のことは探したい。でも、あてがあって向かうべき場所は今のところないし、情報も何も無いから多分さまようだけになると思う」
「つまりは?」
「仁の旅について行かせて。もしかしたら、仁の行く先に私達の知っている誰かがいるかもしれないから。お願いします」
「お願いします」
朱里と雪姫はクラウンに丁寧に頭を丁寧に下げる。その姿を見ながら、クラウンは他の仲間の意見を確認するように、リリス達に順に目線を移していく。
だが、その反応は分かりきったものだ。全員が「別に構わない」という意味のうなづき方をする。心なしか顔が晴れやかであるようにも見える。
「俺は別に構わない。ただ、あまり足を引っ張るようなことはするなよ。俺から言うことはそれだけだ」
クラウンはそう言うと顔をそっぽ向ける。照れくさかったのだろうか。いや、クラウンに限ってそういう可能性は低いだろうが、最近は何かと丸くなってきたのでその可能性はあるかもしれない。
その言葉に朱里と雪姫は顔を合わせると互いに笑い合う。なんだかんだで上手く言っているような気がする。これがたとえどのような形であったとしても、前みたいに戻れる可能性があるのなら、それに越したことはない。
「エキドナ、ここから鬼ヶ島までの距離はどのくらいだ?」
「率直に言うとかなり遠いわね。もともと鬼ヶ島に最も近い陸地までもそれなりに遠いのに、さらに海を渡らなくちゃいけないから」
「だとすると、エキドナの竜化が頼みになるわけだが......それだとどのくらいで着く? それにこの人数は乗せれるか?」
「そうね......私の最速モードである(空)に変化すれば、半日で着くと思うけど、この人数だと恐らく乗り切れない。だから、もし人数に合わせるだったら、通常モードの(地)になって行くしかないわね。それだと、早くても一日かしら」
「カムイはどうする? お前だけ先に鬼ヶ島へと行くか、それとも時間はかかるが俺達も一緒に連れていくか」
「俺はお前らがいてくれた方が助かる。だから、後者かな。たとえ早く行けても俺一人じゃどうにもならないこともありそうだしな」
「そうか。なら、エキドナ、頼めるか?」
「ええ、任せて」
クラウンの言葉にエキドナは竜化していく。体積は千倍以上になり、力強い手足、太くて長い尻尾、それから全身を白い竜鱗で包んだ白竜が現れた。
その白竜はもちろんエキドナで、エキドナは体を伏せると乗るように視線を投げかけてきた。その背中に全員が乗っていく。その際、馬車はもはや仕方ないので、その場に放置していく。
そして、エキドナは力強く羽ばたくと一気に大空を駆けていった。近くに見えていた馬車はどんどんと小さくなり、同時にシュリエールの国の全体をも視界に収めるほど高い位置までやってきた。
その光景に全員が僅かに心躍らせる中、クラウンはなんとも言えない顔をしていた。その原因はあぐらで座っている自分に正面から抱きつくように座っているベルだ。
そのベルはこれでもかというぐらいにクラウンの体にしがみついており、胸の辺りに顔を埋めている。まあ、簡単に言えば、これまで不足分だった筋肉成分を回収してるのだ。
僅かにスーハーと匂いを嗅ぎながら、その筋肉と匂いに興奮させたように尻尾を振っていく。そんな様子のベルにクラウンは何も言えなかったのだ。
ただ、ベルにはもうかなりの割合で諦めた目しており、頭を撫でてそのままである。
「ふぁふふぃふぁふぁふぉふぃんふぃふぅふぁふぁふぃふぉふふぇふ(主様の筋肉は最高です)」
「もはや何を言っているかわからんが、とにかくもう治まれ」
クラウンは呆れたようにそう言うがベルに伝わっていないようで、ただずっと尻尾を振るばかり。そんな二人の様子をリリス達は生暖かい目で見つめており、雪姫に至っては若干羨ましそうな顔をしていた。
すると、ある程度堪能したベルは依然としてクラウンから離れることは無いが、クラウンを背もたれにするように体の向きを変えた。
そして、通り過ぎていく景色を見ながら、クラウンに話しかけた。
「主様の匂い、前よりも暖かい匂いになった気がするです。なんというか角が取れたというかです?」
「どういう意味だ? 俺は別に角を丸くした覚えはないぞ。むしろ、そんなことをすれば俺は殺られる」
「そんなことないです。現に、主様はこうして私の近くにいて、温もりを伝えてくれているです。だから、そんなことはないです」
「俺にはお前達が俺のことをどういう風に捉えているのかとても疑問なんだが......」
「気にすることでもないです。きっと誰に聞いても同じような言葉が帰ってくるだけです」
「余計に気になるんだが......」
クラウンはそう呟きながら、近くいいたロキへと視線を投げかけた。すると、伏せていたロキは立ち上がるとのそのそとクラウンの背後へとやってきて、再び伏せた。
そんなロキをクラウンは枕にするように寝転がる。そして、目に映るは一面に広がる青い空。雲は僅かにしかなく、エキドナによって風が感じないため、非常に心地よい。
すると、クラウンはぼんやりと空を眺めながら、ベルへと呟いた。
「そういえば、お前って全然駒らしくないよな。さすがに自由過ぎだろ」
「それを今更聞くです?」
「まあ、そうなんだが......けど、お前はよくやってくれている。使える駒としてはかなり重宝しているな」
「未だに駒という言葉を使うです。もしかして、仲間というのが照れくさいです?」
「お前も随分と容赦なく聞くようになったな」
クラウンはそう言うとそれ以上何も答えずな目を閉じた。体は脱力させて、暖かさを運ぶ太陽の光を全身で感じる。すると、ベルはクラウンの腹の上から下りるとすぐ側の脇の下へと潜り込み、腕を枕にしながら目を閉じた。
静かな時間が流れる。二人を起こさないようにリリス達が気を遣っているのだ。ただ、本音としてはそんな二人の様子を眺めていたいだけだったりするのだが。
すると、雪姫はポケットから魔道具カメラを取り出す。そして、そのカメラを目元に合わせると二人を捉えてカシャり。それから、撮った写真は現像するために日陰へと隠す。
そんな雪姫の行動を見ていた朱里は思わず言った。
「雪姫の写真撮りの趣味はまさか異世界まで続くとは......お父さんの趣味だっけ?」
「うん、そうだよ。それで私も撮り始めたら止まんなくなっちゃって。だから、学校でも写真部だったんだ」
「確か、一日一枚は海堂君の写真を撮ることが目標だといって、もはやストーカーレベルで――――」
「静かに! 朱里ちゃん! これ以上は言ってはいけない」
「それでたまたま私が雪姫の部屋に入った時は――――」
「黙って! 朱里ちゃん! 壁に仁の写真をたくさん貼ってるなんて仁に知られたら私は生きていけない!」
「確か今の部屋も――――」
「朱里ちゃん、シャーラップ!」
朱里はニタニタした笑みで雪姫をいじっていく。そんな朱里に雪姫は恥ずかしさと怒りで顔を真っ赤にさせながら、頬を膨らませていく。
だが、その目に少し涙目になっているので迫力は半減だ。そして、そんな雪姫に朱里は悪びれた感じもせずにひょうひょうとしている。
そんな険悪にも見える雰囲気だが、実際にはそれほどまでに険悪でもなかった。ただ、いつも通りの日常で会話するようなことを話して楽しんでいるだけのようであった。
ただ一方で、リリス、カムイ、エキドナは雪姫にも宿る変態性を敏感に感じ取っている様子であった。
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