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第5章 道化師は憎む
第119話 魔族の襲撃
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「ギシャアアア!」
「邪魔」
クラウンは目の前にやって来たハエの魔物を抜刀で切り伏せる。そして、リリス達も空中からやって来た魔物や聖樹を登ってやって来た魔物を殺していく。
「それにしても、予想通りの動きである意味面白みがないな」
「こんなことに面白みを持つのはあんたぐらいよ。それよりも、集落の方へと向かった方が良いんじゃないかしら?」
「そうだぞ。お前さんの仲間があっちにいるんだろ? だったら、早く助けに行かねぇと」
「それでやられるほど軟な精神の鍛え方をしてない......とはいえ、これだけの魔物軍勢だ。苦戦は強いられているだろうな」
************************************************
「この! 魔物の数が多すぎる!」
朱里は背中の矢筒から矢を引き抜くとすぐに弓につがえる。それから、その矢に魔力を通して射出した。
すると、その矢は正面にいた魔物を貫いていき、そのまま背後にいる数体も貫いた。だが、周囲にはまだまだ魔物達はいる。
本当は高い位置から安全圏の狙撃がメインの職業【狙撃手】なので、敵陣に囲まれている状況は非常にまずい。
「どうにかしてここから離れなければ」そう朱里が考えていた時、両端から魔物が飛び掛かってきた。その魔物は鋭い牙でもって噛みつこうと口を大きく開けている。
その距離はほぼ同じ。まるで図ったかのように。どちらか片方が離れていれば、まだ対処の使用があったというのに。
その時、何かが急速に背後から近づいてきた。そして、その何かは朱里の横を勢いよく通り抜けていく。
「「ラリアットおおおおおお!」」
「え、ええええええ!?」
通り過ぎていった何かは二人のエルフの男であった。そして、その二人のエルフは鍛え上げた自慢の上腕二頭筋で魔物の頭を跳ね上げる。
そのことに朱里は思わず目を白黒させた。なぜ武器ではなく筋肉なのか。なぜ魔法ではなく筋肉なのか。そこが全くわからない。
「あ、あの......弓とか槍とかってありましたよね? それにエルフって魔法が凄いんじゃ......」
「「筋肉さえあれば問題ない! 筋肉最高! 筋肉ワッショイ!」」
「あ、はい」
朱里は考えるのをやめた。そして、ふと周囲を見てみると他にも筋肉でドロップキックであったり、ソウマトウであったり、ジャーマンスープレックスであったりとプロレス技が何かと目立つ。
しかも、それをやっているのが一人や二人ではない。見る限り大概の人がやっている。ベルが鍛えていたのは知っているが、人格すら変わっている気がする。なぜか自信たっぷり。
「グガアアアア!」
「休憩終わり!」
朱里は矢を手に持つとそれを背後へと突き刺した。そして、すぐに魔物を蹴飛ばしながら、刺した矢を引く抜くとそれを弓につがえる。
それから、その矢を放つとすぐに矢筒から矢を2本引き抜いて射出する。すると、その三本の矢はそれぞれ別々に的確に魔物の頭を射抜いていく。
「伊達に弓道続けてたわけじゃないよ! これでも正確さだけは売りだからね!」
また職業補正によって速射、連射、同時射撃が出来るようになっている朱里はまさにこの国の人達から見ればチートレベル。それはエルフの射撃を凌駕する。
それに加え、クラウンから半強制的に鍛えられたメンタルは大量の魔物に襲われた今も平常心を保てている。
とはいえ、魔物がどこから溢れているのか。未だに減る様子はない。するとその時、朱里の正面から炎の矢が飛んでくる。
「!」
朱里は咄嗟にそれを横っ跳びで避ける。すると、正面から一人の男が歩いてくる。
「ん? なんだ避けたのか? 勘のいいやつだ。だが、案外それは好都合だったりするのかもな」
「あ、あなたは......魔族!?」
朱里は思わず叫んだ。それは歩いてきた男がこめかみ辺りから角を突き出し、褐色の肌をしているから。
そして、その男は「そうだが?」と肯定的な言葉を返すと腰から剣を引き抜いた。
「なんつーか。いろいろと情報が違うな。エルフはやたらゴツイし、なぜかこの森に人族がいるし。だがまあ、これが魔王の命令だというのなら仕方ないだがな」
「魔王の......一体どうしてこの森を!」
「それをお前に言う義理はねぇな。お前が言うのはせいぜい快楽に堕ちた言葉だけだ」
「!」
男がニヤッとした笑みを浮かべた瞬間、朱里は体が芯にから冷えるような寒気に襲われた。それは完全に凌辱しようとしている人の目だ。もう人として見ていない。
朱里は思わず足が動かなかった。しかし、咄嗟には弓を構えることが出来た。とはいえ、実際に放てるかどうかは別だ。
朱里はバリエルートで魔族との戦闘の際、魔族の放った炎によって瀕死の状態になったのだ。そしてすぐに、雪姫に治療してもらったのだが、その時のトラウマが残っているのだ。
つまりは今の朱里の行動はただの牽制。しかし、朱里の怯えた表情を見れば、すぐにその行動が虚勢であることはわかってしまう。
だからこそ、魔族の男は笑った。
「なんだ? そのバレバレな虚勢は? まあ、怖いだろうな。なんせ俺達とお前達人族は敵対関係。しかも、今現在でもいがみ合ってるぐらいだからな。だからこそ、魔王様を殺すための勇者を用意したんだろ?」
「......」
「そんな怯えたような顔すんなって。時期に気持ち良くなることしてやるよ。まあ、もっともお前達にとっては死よりも屈辱的なことだろうけどな」
朱里は思わず目に涙を溢れさせながら悔しそうな目をする。だが、弓を持つ手は恐怖しているように震えている。
「どうした? 撃たないのか? いや、撃てないんだろ? なら、大人しくしてろ。すぐに楽にしてやる」
「来ないで!」
朱里は思わず引っ張っていた弦を放した。その瞬間、矢は男に向かって通り抜けていく。だが、その矢は男の頬を掠めていくだけであった。
すると、男は血が流れてくる頬を親指で拭った。そして、自分が傷つけられたとわかった瞬間、朱里に掴みかかった。
「お前、雑魚のくせに何してくれてんだ? 人族風情が魔族様に傷つけていいと思ってんのか!? 人族の女は黙ってケツふってりゃいいんだよ!」
「や、やめて!」
「―――――――伏せてなお前さん。今すぐこの口うるせぇ奴を黙らせてやる。見たくなっかったら目を閉じてな」
その瞬間、背後から聞き覚えのある声がした。その言葉は気さくな感じではなく、男らしく頼りになるような温かみがあった。
そして、朱里が気づいた時にはもう魔族の男の首から上が存在していなかった。それから、その男の後ろには切った構えでいるカムイの姿が。
魔族の体は切られた勢いで朱里のすぐそばで崩れ落ちていく。だが、朱里は魔族の男が切られたことにも、目の前で首なしの死体が倒れたのも眼中になかった。
熱のこもった瞳で見つめる先はカムイの背中。先ほどからドクンドクンとうるさいほど心臓音が高まっている。
「お前さん、大丈夫か?」
「は、はい! だだだ大丈夫です!」
「どこら辺も大丈夫そうに見えないんだが......」
カムイはその様子にため息を吐きながらも、朱里を引っ張り起こす。一方で朱里は差し出された手を掴んだことに自身でもかなり恥ずかしがっている。
「それにしても、お前さんが生きててくれて良かったぜ」
「え?」
「別に深い意味はねぇよ」
本当は「クラウンに対して朱里が死ぬのは不味いのではないか?」という気持ちは抱えていたものの、それは何やら拗らせそうな雰囲気がしたので言わないことにしていた。
だが、その言葉が朱里の気持ちを若干勘違い方向にもっていかせていることに本人は気づいていない。
すると、その二人にクラウンとリリスが近づいて来る。
「生きていたか」
「海堂君......なんとかね。海堂君の特訓が無かったら危なかったかも」
「クラウンのを特訓と捉えてはいけないわよ。あれは常人が出来るレベルをはるかに超えているから」
リリスは朱里の特訓内容を知っているため思わず呆れたため息を吐いた。
それは殺す気で挑みかかって(本当は殺しはしない)殺らなければ殺られる状況に持っていく。そして、もはや半強制的に矢を放つように仕向けていくというもの。
心に恐怖耐性を持たせるという意味合いでクラウンはやっていたのだが、傍から見ればそんなことを思えるはずもない特訓であった。
だがまあ、その行動が結果的に朱里を救ったのならそれはそれで良かったのだろう。リリスは浅く前向きに考えることにした。
するとその時、クラウンは朱里へと告げる。
「橘、お前はもっと力が欲しいか?」
「え?......欲することが出来るなら、私は欲しい。海堂君達ばかりに頼るわけにはいかないし、それに海堂君に言われたこともある。だから、雪姫を護れるぐらいの力はどれだけでも欲する。それに皆も」
「それはどのくらいの覚悟だ?」
「どのくらい......」
朱里は咄嗟に考える。この質問はクラウンに試されていると考えたからだ。この返答に半端な答えはいけない。
クラウンが求める答えはもっと強気の言葉だからだ。それこそ言うべきは......
「人を殺せるぐらい」
「なら、お前自身も死ぬ覚悟はあるということでいいんだな」
「うん」
朱里は自身の戸惑いや不安が漏れる前に答えた。本当はまだそんな気持ちをしっかりと持つことや考えることすらしていない。
とはいえ、この言葉は別にクラウンのご機嫌取りで言ったわけではない。自分自身がいい加減覚悟をつけさせるための行動だ。
すると、その返答を聞いたクラウンはリリスにあるものを渡すように言った。そして、リリスから受け取ったのは赤いラインが入ったマグナムぐらいの二丁魔力銃だ。
そして、そのうちの一つを朱里へと渡す。渡された朱里は思わず驚いたような表情をしている。
「海堂君、これって―――――――――」
「橘、お前には一度死んでもらう」
朱里がその銃の所在を聞こうとクラウンの方を向く。するとそこには、自分へと銃口を向けているクラウンの姿が。
そして、朱里は何かを答えることも出来ずに射出された魔力によって額を打ち抜かれた。
「邪魔」
クラウンは目の前にやって来たハエの魔物を抜刀で切り伏せる。そして、リリス達も空中からやって来た魔物や聖樹を登ってやって来た魔物を殺していく。
「それにしても、予想通りの動きである意味面白みがないな」
「こんなことに面白みを持つのはあんたぐらいよ。それよりも、集落の方へと向かった方が良いんじゃないかしら?」
「そうだぞ。お前さんの仲間があっちにいるんだろ? だったら、早く助けに行かねぇと」
「それでやられるほど軟な精神の鍛え方をしてない......とはいえ、これだけの魔物軍勢だ。苦戦は強いられているだろうな」
************************************************
「この! 魔物の数が多すぎる!」
朱里は背中の矢筒から矢を引き抜くとすぐに弓につがえる。それから、その矢に魔力を通して射出した。
すると、その矢は正面にいた魔物を貫いていき、そのまま背後にいる数体も貫いた。だが、周囲にはまだまだ魔物達はいる。
本当は高い位置から安全圏の狙撃がメインの職業【狙撃手】なので、敵陣に囲まれている状況は非常にまずい。
「どうにかしてここから離れなければ」そう朱里が考えていた時、両端から魔物が飛び掛かってきた。その魔物は鋭い牙でもって噛みつこうと口を大きく開けている。
その距離はほぼ同じ。まるで図ったかのように。どちらか片方が離れていれば、まだ対処の使用があったというのに。
その時、何かが急速に背後から近づいてきた。そして、その何かは朱里の横を勢いよく通り抜けていく。
「「ラリアットおおおおおお!」」
「え、ええええええ!?」
通り過ぎていった何かは二人のエルフの男であった。そして、その二人のエルフは鍛え上げた自慢の上腕二頭筋で魔物の頭を跳ね上げる。
そのことに朱里は思わず目を白黒させた。なぜ武器ではなく筋肉なのか。なぜ魔法ではなく筋肉なのか。そこが全くわからない。
「あ、あの......弓とか槍とかってありましたよね? それにエルフって魔法が凄いんじゃ......」
「「筋肉さえあれば問題ない! 筋肉最高! 筋肉ワッショイ!」」
「あ、はい」
朱里は考えるのをやめた。そして、ふと周囲を見てみると他にも筋肉でドロップキックであったり、ソウマトウであったり、ジャーマンスープレックスであったりとプロレス技が何かと目立つ。
しかも、それをやっているのが一人や二人ではない。見る限り大概の人がやっている。ベルが鍛えていたのは知っているが、人格すら変わっている気がする。なぜか自信たっぷり。
「グガアアアア!」
「休憩終わり!」
朱里は矢を手に持つとそれを背後へと突き刺した。そして、すぐに魔物を蹴飛ばしながら、刺した矢を引く抜くとそれを弓につがえる。
それから、その矢を放つとすぐに矢筒から矢を2本引き抜いて射出する。すると、その三本の矢はそれぞれ別々に的確に魔物の頭を射抜いていく。
「伊達に弓道続けてたわけじゃないよ! これでも正確さだけは売りだからね!」
また職業補正によって速射、連射、同時射撃が出来るようになっている朱里はまさにこの国の人達から見ればチートレベル。それはエルフの射撃を凌駕する。
それに加え、クラウンから半強制的に鍛えられたメンタルは大量の魔物に襲われた今も平常心を保てている。
とはいえ、魔物がどこから溢れているのか。未だに減る様子はない。するとその時、朱里の正面から炎の矢が飛んでくる。
「!」
朱里は咄嗟にそれを横っ跳びで避ける。すると、正面から一人の男が歩いてくる。
「ん? なんだ避けたのか? 勘のいいやつだ。だが、案外それは好都合だったりするのかもな」
「あ、あなたは......魔族!?」
朱里は思わず叫んだ。それは歩いてきた男がこめかみ辺りから角を突き出し、褐色の肌をしているから。
そして、その男は「そうだが?」と肯定的な言葉を返すと腰から剣を引き抜いた。
「なんつーか。いろいろと情報が違うな。エルフはやたらゴツイし、なぜかこの森に人族がいるし。だがまあ、これが魔王の命令だというのなら仕方ないだがな」
「魔王の......一体どうしてこの森を!」
「それをお前に言う義理はねぇな。お前が言うのはせいぜい快楽に堕ちた言葉だけだ」
「!」
男がニヤッとした笑みを浮かべた瞬間、朱里は体が芯にから冷えるような寒気に襲われた。それは完全に凌辱しようとしている人の目だ。もう人として見ていない。
朱里は思わず足が動かなかった。しかし、咄嗟には弓を構えることが出来た。とはいえ、実際に放てるかどうかは別だ。
朱里はバリエルートで魔族との戦闘の際、魔族の放った炎によって瀕死の状態になったのだ。そしてすぐに、雪姫に治療してもらったのだが、その時のトラウマが残っているのだ。
つまりは今の朱里の行動はただの牽制。しかし、朱里の怯えた表情を見れば、すぐにその行動が虚勢であることはわかってしまう。
だからこそ、魔族の男は笑った。
「なんだ? そのバレバレな虚勢は? まあ、怖いだろうな。なんせ俺達とお前達人族は敵対関係。しかも、今現在でもいがみ合ってるぐらいだからな。だからこそ、魔王様を殺すための勇者を用意したんだろ?」
「......」
「そんな怯えたような顔すんなって。時期に気持ち良くなることしてやるよ。まあ、もっともお前達にとっては死よりも屈辱的なことだろうけどな」
朱里は思わず目に涙を溢れさせながら悔しそうな目をする。だが、弓を持つ手は恐怖しているように震えている。
「どうした? 撃たないのか? いや、撃てないんだろ? なら、大人しくしてろ。すぐに楽にしてやる」
「来ないで!」
朱里は思わず引っ張っていた弦を放した。その瞬間、矢は男に向かって通り抜けていく。だが、その矢は男の頬を掠めていくだけであった。
すると、男は血が流れてくる頬を親指で拭った。そして、自分が傷つけられたとわかった瞬間、朱里に掴みかかった。
「お前、雑魚のくせに何してくれてんだ? 人族風情が魔族様に傷つけていいと思ってんのか!? 人族の女は黙ってケツふってりゃいいんだよ!」
「や、やめて!」
「―――――――伏せてなお前さん。今すぐこの口うるせぇ奴を黙らせてやる。見たくなっかったら目を閉じてな」
その瞬間、背後から聞き覚えのある声がした。その言葉は気さくな感じではなく、男らしく頼りになるような温かみがあった。
そして、朱里が気づいた時にはもう魔族の男の首から上が存在していなかった。それから、その男の後ろには切った構えでいるカムイの姿が。
魔族の体は切られた勢いで朱里のすぐそばで崩れ落ちていく。だが、朱里は魔族の男が切られたことにも、目の前で首なしの死体が倒れたのも眼中になかった。
熱のこもった瞳で見つめる先はカムイの背中。先ほどからドクンドクンとうるさいほど心臓音が高まっている。
「お前さん、大丈夫か?」
「は、はい! だだだ大丈夫です!」
「どこら辺も大丈夫そうに見えないんだが......」
カムイはその様子にため息を吐きながらも、朱里を引っ張り起こす。一方で朱里は差し出された手を掴んだことに自身でもかなり恥ずかしがっている。
「それにしても、お前さんが生きててくれて良かったぜ」
「え?」
「別に深い意味はねぇよ」
本当は「クラウンに対して朱里が死ぬのは不味いのではないか?」という気持ちは抱えていたものの、それは何やら拗らせそうな雰囲気がしたので言わないことにしていた。
だが、その言葉が朱里の気持ちを若干勘違い方向にもっていかせていることに本人は気づいていない。
すると、その二人にクラウンとリリスが近づいて来る。
「生きていたか」
「海堂君......なんとかね。海堂君の特訓が無かったら危なかったかも」
「クラウンのを特訓と捉えてはいけないわよ。あれは常人が出来るレベルをはるかに超えているから」
リリスは朱里の特訓内容を知っているため思わず呆れたため息を吐いた。
それは殺す気で挑みかかって(本当は殺しはしない)殺らなければ殺られる状況に持っていく。そして、もはや半強制的に矢を放つように仕向けていくというもの。
心に恐怖耐性を持たせるという意味合いでクラウンはやっていたのだが、傍から見ればそんなことを思えるはずもない特訓であった。
だがまあ、その行動が結果的に朱里を救ったのならそれはそれで良かったのだろう。リリスは浅く前向きに考えることにした。
するとその時、クラウンは朱里へと告げる。
「橘、お前はもっと力が欲しいか?」
「え?......欲することが出来るなら、私は欲しい。海堂君達ばかりに頼るわけにはいかないし、それに海堂君に言われたこともある。だから、雪姫を護れるぐらいの力はどれだけでも欲する。それに皆も」
「それはどのくらいの覚悟だ?」
「どのくらい......」
朱里は咄嗟に考える。この質問はクラウンに試されていると考えたからだ。この返答に半端な答えはいけない。
クラウンが求める答えはもっと強気の言葉だからだ。それこそ言うべきは......
「人を殺せるぐらい」
「なら、お前自身も死ぬ覚悟はあるということでいいんだな」
「うん」
朱里は自身の戸惑いや不安が漏れる前に答えた。本当はまだそんな気持ちをしっかりと持つことや考えることすらしていない。
とはいえ、この言葉は別にクラウンのご機嫌取りで言ったわけではない。自分自身がいい加減覚悟をつけさせるための行動だ。
すると、その返答を聞いたクラウンはリリスにあるものを渡すように言った。そして、リリスから受け取ったのは赤いラインが入ったマグナムぐらいの二丁魔力銃だ。
そして、そのうちの一つを朱里へと渡す。渡された朱里は思わず驚いたような表情をしている。
「海堂君、これって―――――――――」
「橘、お前には一度死んでもらう」
朱里がその銃の所在を聞こうとクラウンの方を向く。するとそこには、自分へと銃口を向けているクラウンの姿が。
そして、朱里は何かを答えることも出来ずに射出された魔力によって額を打ち抜かれた。
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