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第5章 道化師は憎む
第106話 世話焼き
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清らかな土地に、心地良い空気、安心するような森。そんなエルフの森の少し外れに二人の男が歩いていた。
「んー、かー気持ちいよなここは。是非とも余生はここで過ごさせてもらいたいぐらいだぜ。クラウンもそう思わないか?」
「まあ、そうかもな」
クラウンは周りを見渡す。現在入り場所は集落の丁度真ん中辺りなので、周りにある屋台やツリーハウス共々含めて見てみると何とも幻想的な雰囲気と言えよう。
木漏れ日の光がその空間にさらに未知の世界へと誘う。その光が優しく辺りを照らし出す。
今までだったら嫌っていたかもしれない雰囲気だ。必要ないと思っていた光景だ。しかし、今となっては存外悪くない。
「お前さんのことだから、どうせ昔は死ねばもろとも精神だったんだろ?」
「否定はしない。だが、それは結構早くからセレネに否定されていたな。リリスが『目的が終わったなら、私の目的に付き合いなさい』とか言ってたような」
「ははは、そこの気の強さは前から変わらないようだな。だが、お前さんに付き合うぐらいだ。そんぐらいじゃないとお前さんでも割りに合わないんじゃないか?」
「愚問だな」
クラウンはそう言うと森の周囲へと向かって歩き出す。その隣を頭で手を組みながら、カムイも歩いていく。
族長の話を聞いてから翌日の今日は、初日に言った「結界を張る」という約束を守るためだ。それで、聖樹へ訪れる権利は約束されている。
それに一度言った言葉を放り投げるのはクラウン自身としても気分が悪いので、この行動はプライドの問題という言い方も出来る。
クラウンは自分達が戻って来れるギリギリまで歩いていくとその木に手を触れる。そして、その木に糸をくっつけながら、近くにある木へと触れていく。
それから、また次の木へと触れてとそれを続けていき、糸を張っていく。さらにそれを何周も繰り返していく。さながら蜘蛛の巣を張っていくように。
「そういえば、不思議だよな。ここから数メートル離れるだけで、この場所を見失っちまうんだぜ? これが聖樹の力だとしても不思議だとしか思えないよな」
すると突然、話題に尽きたカムイがクラウンに話しかけてきた。しかもそれは、この森に関すること。
カムイが言ったのは、クラウンがこの集落に来る前に方向感覚が狂うと思ったことだ。そして、それにはわけがあった。
族長曰く、この土地には聖樹から様々な恩恵がもたらされている。そして、「方向感覚が狂う」というのはその恩恵の一つらしい。
この土地はもとより魔物が住み着くことはなかった。それは聖樹の近くまで魔物がやってくること自体がなかったから。
そして、それは聖樹が特殊は魔力波で魔物を寄せ付けないようにしていたらしい。さらに、その効果は人にも及んだ。
だが、ここでエルフが安全に通行できるのはエルフが聖樹に作られた守護者的存在とか、昔にいた精霊の生まれ変わりとか諸説あるらしい。
なので、この土地はエルフ以外が住むことは難しいとされているのだ。
そんな話を他愛もない会話のネタとしてカムイはクラウンに話しかけている。それに対し、カムイは適当に相槌を打っていく。
だが、さすがにクラウンも思うことがある。
「カムイ、お前は暇なんだな」
「暇じゃねぇよ。お前さんと話してんだろ?」
「それを暇と言うんだろうが、俺に飽きもせずよく話しかけられるもんだな」
「それが俺の役目だからな。そっちの方が悪いことを考えなくて済むだろ?」
カムイはそう言うと二カッとした笑みを見せる。その表情を見てクラウンは......
「ふっ」
「おい、今のは友情が芽生えるところだろ! 鼻で笑う所じゃねぇ!」
「お前はそういうタイプだ。空回りする感じだな」
「止めてくれ。ルナにも同じことを言われてるから......っとそうだ。ルナで思い出したんだが、ここの近くに大きな湖を見つけたんだ。そこは安全圏に入ってるから、少し行ってみないか?」
「.....まあ、いいだろう」
クラウンの返答を聞くとカムイは湖の場所へと向かって歩いていく。そして、その後をクラウンはついて行く。
それから数分後、そこそこの大きさの湖にやって来た。その湖は透明度が高く、深くまで透き通っている。
水面は陽の光でキラキラと輝き、そしてその湖はマングローブのような植物が育っている。
その光景を見たカムイは思わず感嘆な声を漏らした。
「やっぱ、何度見てもキレイなものだよな。ルナにも絶対見せたい」
「......そういえば、前から思っていたことがある。お前が重度のシスコンであることは知っていたが、だとしたら妹がいないことは相当なダメージがあるはずだ。攫われたなら尚更な。なのに、どうしてそんなに明るくいられるんだ?」
クラウンは妹の過去話を聞いてから、カムイの態度に常々違和感を感じていた。それは妹の話題が出てもやたら明るいのだ。
出会った当初は変に勘繰りされたくないとか、悟られたくないとかいろいろと理由をつけることが出来ただろう。
しかし、出会ってから2週間ほど経つ今はかなり印象が違う。今の今まで一度たりとも悲観的な表情を見せたことがないのだ。
だからこそ、あまりのカムイの変化のなさに疑問しか浮かばないのだ。すると、カムイは少しだけ哀愁を見せるような顔で答える。
「なんつーかさ、いざ妹が会えた時のためにこんな感じでテンションを維持してんだよ。ルナにとって、一番知っているのは明るい顔をしている時の俺なんだ。だから、俺が前のままだったら、会いやすいかなって思ってな。俺もルナも」
「......」
「もちろん、その態度で本当にいいのかと言われればそれはわからない。ただ、俺がその方が良いと勝手に思っているだけだ。俺にとってルナが無事であればそれでいい」
カムイはその場に座ると立てた膝に腕を置きながら、湖を眺める。その時の表情は何かを思い出しているように澄んだ顔であった。
「お前はどっちの方が良いと思う? 俺は明るい方が良いのか、それとも―――――――――」
「俺にはわかりかねないことだ。だが、少なくともお前の妹のことぐらいはお前が一番知ってるだろ。だから、お前が思うままにした行動が正解になると俺は思う」
クラウンはそう返答するとカムイの隣に座った。そして、近くにあった石を拾うと湖へと投げた。すると、水面は波立って波紋を作っていく。
それから、水面に反射していた自分の顔は広がった波紋によって微かに揺れる。するとその時、揺れた自分の顔がまだ裏切られる前の自分の顔のように見えた。
その瞬間、刀を引き抜き、その顔へと刀を当てる。その刀は前の顔を隠すように水面を波立たせ、刀を戻した時には現在の顔に戻っていた。
その光景を見ていたカムイは思わず頭を抱え、ため息を吐いた。
「お前さんも大概だな。バリバリ仲間のことを引きづってんじゃねぇか。やっぱり、仲間が神の使いとなったことを不審に思ってるんじゃねぇか?」
「そういうわけじゃない。それにそのことに関してはもう割り切った......はずだ。俺はただ弱い頃の自分が嫌いなだけだ。見ているだけで虫唾が走る。今の自分の存在が否定されるような気がしてな」
「俺はそうは思わないな。むしろ、お前さんの存在は強調されているように感じる。本当はお前さん、その力がその当時からあればと思ってるんじゃないか? 顔にそう書いてあるぜ」
「考え過ぎだ。俺がこの力を求めたのは全ては神に対する復讐のため。俺の全てを狂わせた、絶望の深淵を覗かせた神を殺すためだけに存在する力だ」
「それが違うと思うんだけどな......」
カムイはなんかうまく伝わらないことに歯噛みした。
クラウンはそう言っているが、カムイは「それはやはり違うんじゃないか」と感じている。なぜなら、クラウンの元仲間に対する行動はあまりに甘いような気がしたからだ。
クラウンが霊山近くで勇者と会った時、勇者が神の使いとなったと聞いて酷く嫌悪感を抱いた。それはクラウンが考えていた最悪の方向に進んでしまったから。
クラウンは神に関することになると理性よりも感情の方がやや勝る。そうなれば、たとえ仲間であっても殺すことは躊躇わなかったはずだ。
そして、クラウンは実際に勇者と戦った。その時、刀で勇者を傷つけることはあった。だが、その時の攻撃をカムイはしっかりと見抜いていた。あの攻撃では勇者に少ししかダメージを与えられないことに。
もちろん、突き刺そうとした場面もあったが、その時のクラウンの腕に殺気があまり宿っていなかった。つまりはそういうことなのだろう。
それから、ずっとクラウンと勇者の戦いを見ていたが、クラウンはその時1回も致死に至るようなダメージを与えていないのだ。
確かにクラウンが「嬲る」という言葉を使ったからかもしれない。だが、神の眷属のような立場となった勇者に対しては、クラウンの行動はあまりにも稚拙だった。
それはまるで殺したくないとでも伝えるかのように。
だから、カムイは何だかんだでクラウンは元仲間達に対して思いれがあると感じていたのだ。そして、そのことを伝えようとしたのだが、クラウンはどうにもそういう風に捉えるつもりは無いらしい。
その行動は吉と出るか凶と出るかは今のところ分かることではない。ただ、このまま蔑ろにすれば確実に凶が出ることはなんとなくだがわかる。
「こんな暴君にも人を思う気持ちがあるのだな」と思うと少しだけ笑みがこぼれる。しかし、それは一歩間違えればどうにでも変わってしまえるということ。
今のクラウンは狂気でありながらも若干濁っていても白色をしている。そして、それはリリス達が必死にその色へと変えてきたものであり、染まらないように維持してきたものである。
だからこそ、危うい。白色はどんな色にも染まる。そして、一度染まったら二度と元の色に戻れない色だってある。それが悪意だ。
「はあ、全く世話のかかる奴だな」
「俺はお前にそこまで世話になったつもりは無い」
「いーや、世話してるな。あくまでお前さんが気づかないだけな話さ。まあ、苦労自慢をするつもりもないし、勝手に世話焼いてる俺自身の問題だ」
そう言うとカムイは立ちあがる。そして、クラウンへと手を差し伸べる。
「ま、仲良くやって行こうぜってことだ」
「.....よくわからん奴だ」
そう言いつつもクラウンはカムイの手を握ると立ち上がる。そして、リリス達のいる村の方へと戻っていった。
「んー、かー気持ちいよなここは。是非とも余生はここで過ごさせてもらいたいぐらいだぜ。クラウンもそう思わないか?」
「まあ、そうかもな」
クラウンは周りを見渡す。現在入り場所は集落の丁度真ん中辺りなので、周りにある屋台やツリーハウス共々含めて見てみると何とも幻想的な雰囲気と言えよう。
木漏れ日の光がその空間にさらに未知の世界へと誘う。その光が優しく辺りを照らし出す。
今までだったら嫌っていたかもしれない雰囲気だ。必要ないと思っていた光景だ。しかし、今となっては存外悪くない。
「お前さんのことだから、どうせ昔は死ねばもろとも精神だったんだろ?」
「否定はしない。だが、それは結構早くからセレネに否定されていたな。リリスが『目的が終わったなら、私の目的に付き合いなさい』とか言ってたような」
「ははは、そこの気の強さは前から変わらないようだな。だが、お前さんに付き合うぐらいだ。そんぐらいじゃないとお前さんでも割りに合わないんじゃないか?」
「愚問だな」
クラウンはそう言うと森の周囲へと向かって歩き出す。その隣を頭で手を組みながら、カムイも歩いていく。
族長の話を聞いてから翌日の今日は、初日に言った「結界を張る」という約束を守るためだ。それで、聖樹へ訪れる権利は約束されている。
それに一度言った言葉を放り投げるのはクラウン自身としても気分が悪いので、この行動はプライドの問題という言い方も出来る。
クラウンは自分達が戻って来れるギリギリまで歩いていくとその木に手を触れる。そして、その木に糸をくっつけながら、近くにある木へと触れていく。
それから、また次の木へと触れてとそれを続けていき、糸を張っていく。さらにそれを何周も繰り返していく。さながら蜘蛛の巣を張っていくように。
「そういえば、不思議だよな。ここから数メートル離れるだけで、この場所を見失っちまうんだぜ? これが聖樹の力だとしても不思議だとしか思えないよな」
すると突然、話題に尽きたカムイがクラウンに話しかけてきた。しかもそれは、この森に関すること。
カムイが言ったのは、クラウンがこの集落に来る前に方向感覚が狂うと思ったことだ。そして、それにはわけがあった。
族長曰く、この土地には聖樹から様々な恩恵がもたらされている。そして、「方向感覚が狂う」というのはその恩恵の一つらしい。
この土地はもとより魔物が住み着くことはなかった。それは聖樹の近くまで魔物がやってくること自体がなかったから。
そして、それは聖樹が特殊は魔力波で魔物を寄せ付けないようにしていたらしい。さらに、その効果は人にも及んだ。
だが、ここでエルフが安全に通行できるのはエルフが聖樹に作られた守護者的存在とか、昔にいた精霊の生まれ変わりとか諸説あるらしい。
なので、この土地はエルフ以外が住むことは難しいとされているのだ。
そんな話を他愛もない会話のネタとしてカムイはクラウンに話しかけている。それに対し、カムイは適当に相槌を打っていく。
だが、さすがにクラウンも思うことがある。
「カムイ、お前は暇なんだな」
「暇じゃねぇよ。お前さんと話してんだろ?」
「それを暇と言うんだろうが、俺に飽きもせずよく話しかけられるもんだな」
「それが俺の役目だからな。そっちの方が悪いことを考えなくて済むだろ?」
カムイはそう言うと二カッとした笑みを見せる。その表情を見てクラウンは......
「ふっ」
「おい、今のは友情が芽生えるところだろ! 鼻で笑う所じゃねぇ!」
「お前はそういうタイプだ。空回りする感じだな」
「止めてくれ。ルナにも同じことを言われてるから......っとそうだ。ルナで思い出したんだが、ここの近くに大きな湖を見つけたんだ。そこは安全圏に入ってるから、少し行ってみないか?」
「.....まあ、いいだろう」
クラウンの返答を聞くとカムイは湖の場所へと向かって歩いていく。そして、その後をクラウンはついて行く。
それから数分後、そこそこの大きさの湖にやって来た。その湖は透明度が高く、深くまで透き通っている。
水面は陽の光でキラキラと輝き、そしてその湖はマングローブのような植物が育っている。
その光景を見たカムイは思わず感嘆な声を漏らした。
「やっぱ、何度見てもキレイなものだよな。ルナにも絶対見せたい」
「......そういえば、前から思っていたことがある。お前が重度のシスコンであることは知っていたが、だとしたら妹がいないことは相当なダメージがあるはずだ。攫われたなら尚更な。なのに、どうしてそんなに明るくいられるんだ?」
クラウンは妹の過去話を聞いてから、カムイの態度に常々違和感を感じていた。それは妹の話題が出てもやたら明るいのだ。
出会った当初は変に勘繰りされたくないとか、悟られたくないとかいろいろと理由をつけることが出来ただろう。
しかし、出会ってから2週間ほど経つ今はかなり印象が違う。今の今まで一度たりとも悲観的な表情を見せたことがないのだ。
だからこそ、あまりのカムイの変化のなさに疑問しか浮かばないのだ。すると、カムイは少しだけ哀愁を見せるような顔で答える。
「なんつーかさ、いざ妹が会えた時のためにこんな感じでテンションを維持してんだよ。ルナにとって、一番知っているのは明るい顔をしている時の俺なんだ。だから、俺が前のままだったら、会いやすいかなって思ってな。俺もルナも」
「......」
「もちろん、その態度で本当にいいのかと言われればそれはわからない。ただ、俺がその方が良いと勝手に思っているだけだ。俺にとってルナが無事であればそれでいい」
カムイはその場に座ると立てた膝に腕を置きながら、湖を眺める。その時の表情は何かを思い出しているように澄んだ顔であった。
「お前はどっちの方が良いと思う? 俺は明るい方が良いのか、それとも―――――――――」
「俺にはわかりかねないことだ。だが、少なくともお前の妹のことぐらいはお前が一番知ってるだろ。だから、お前が思うままにした行動が正解になると俺は思う」
クラウンはそう返答するとカムイの隣に座った。そして、近くにあった石を拾うと湖へと投げた。すると、水面は波立って波紋を作っていく。
それから、水面に反射していた自分の顔は広がった波紋によって微かに揺れる。するとその時、揺れた自分の顔がまだ裏切られる前の自分の顔のように見えた。
その瞬間、刀を引き抜き、その顔へと刀を当てる。その刀は前の顔を隠すように水面を波立たせ、刀を戻した時には現在の顔に戻っていた。
その光景を見ていたカムイは思わず頭を抱え、ため息を吐いた。
「お前さんも大概だな。バリバリ仲間のことを引きづってんじゃねぇか。やっぱり、仲間が神の使いとなったことを不審に思ってるんじゃねぇか?」
「そういうわけじゃない。それにそのことに関してはもう割り切った......はずだ。俺はただ弱い頃の自分が嫌いなだけだ。見ているだけで虫唾が走る。今の自分の存在が否定されるような気がしてな」
「俺はそうは思わないな。むしろ、お前さんの存在は強調されているように感じる。本当はお前さん、その力がその当時からあればと思ってるんじゃないか? 顔にそう書いてあるぜ」
「考え過ぎだ。俺がこの力を求めたのは全ては神に対する復讐のため。俺の全てを狂わせた、絶望の深淵を覗かせた神を殺すためだけに存在する力だ」
「それが違うと思うんだけどな......」
カムイはなんかうまく伝わらないことに歯噛みした。
クラウンはそう言っているが、カムイは「それはやはり違うんじゃないか」と感じている。なぜなら、クラウンの元仲間に対する行動はあまりに甘いような気がしたからだ。
クラウンが霊山近くで勇者と会った時、勇者が神の使いとなったと聞いて酷く嫌悪感を抱いた。それはクラウンが考えていた最悪の方向に進んでしまったから。
クラウンは神に関することになると理性よりも感情の方がやや勝る。そうなれば、たとえ仲間であっても殺すことは躊躇わなかったはずだ。
そして、クラウンは実際に勇者と戦った。その時、刀で勇者を傷つけることはあった。だが、その時の攻撃をカムイはしっかりと見抜いていた。あの攻撃では勇者に少ししかダメージを与えられないことに。
もちろん、突き刺そうとした場面もあったが、その時のクラウンの腕に殺気があまり宿っていなかった。つまりはそういうことなのだろう。
それから、ずっとクラウンと勇者の戦いを見ていたが、クラウンはその時1回も致死に至るようなダメージを与えていないのだ。
確かにクラウンが「嬲る」という言葉を使ったからかもしれない。だが、神の眷属のような立場となった勇者に対しては、クラウンの行動はあまりにも稚拙だった。
それはまるで殺したくないとでも伝えるかのように。
だから、カムイは何だかんだでクラウンは元仲間達に対して思いれがあると感じていたのだ。そして、そのことを伝えようとしたのだが、クラウンはどうにもそういう風に捉えるつもりは無いらしい。
その行動は吉と出るか凶と出るかは今のところ分かることではない。ただ、このまま蔑ろにすれば確実に凶が出ることはなんとなくだがわかる。
「こんな暴君にも人を思う気持ちがあるのだな」と思うと少しだけ笑みがこぼれる。しかし、それは一歩間違えればどうにでも変わってしまえるということ。
今のクラウンは狂気でありながらも若干濁っていても白色をしている。そして、それはリリス達が必死にその色へと変えてきたものであり、染まらないように維持してきたものである。
だからこそ、危うい。白色はどんな色にも染まる。そして、一度染まったら二度と元の色に戻れない色だってある。それが悪意だ。
「はあ、全く世話のかかる奴だな」
「俺はお前にそこまで世話になったつもりは無い」
「いーや、世話してるな。あくまでお前さんが気づかないだけな話さ。まあ、苦労自慢をするつもりもないし、勝手に世話焼いてる俺自身の問題だ」
そう言うとカムイは立ちあがる。そして、クラウンへと手を差し伸べる。
「ま、仲良くやって行こうぜってことだ」
「.....よくわからん奴だ」
そう言いつつもクラウンはカムイの手を握ると立ち上がる。そして、リリス達のいる村の方へと戻っていった。
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