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第5章 道化師は憎む
第103話 そう簡単に予想は外れてくれないよね
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翌日、リリスが目覚めるとすでにクラウンとロキは起きていた。相変わらず仲睦まじい様子で寄り添っている。
しかし、いつもと違うことがあるとすれば、ロキを枕にして横になってる構図ではなく、森のある方向を見て並んで座っている。
そのことを怪訝に思ったリリスはクラウンの隣に座り、挨拶も兼ねて聞いてみた。
「おはよう、クラウン。森の方を見て何かあったの?」
「いや、特に動きはない。だが、視線を感じるのは確かだ。俺の気配察知で捉えられないとなるとかなり遠くから見ているようだ」
「それでわかるあんたは獣のそれね。まあ、今更なんだけど」
リリスはクラウンが見ている先を眺めてみる。だが、そこに映るのは青々とした緑溢れる森ばかり。視線など微塵も感じられない。
しかし、クラウンに加えてロキまでその視線に気づいている様子だ。だとすれば、かなり信憑性があるというもの。
「自分も伊達にクラウンとそばにいるわけではない」とリリスもその視線の先を凝視して見てみる。すると、あるところで点のような黒いものが見えた。
その黒い点はほんのわずかな小ささだ。見間違えと言えばそうなるかもしれないし、気を抜けば見失ってしまいそうだ。
だが、その点は段々と大きくなっていく。しかも、その変化は速い。気のせいか近づいて来ているような感じさえする。
そして、リリスがその点の正体を視認したのは数秒後であった。だが、その数秒はあまりに大きかった。
「ねぇ、あれって矢じゃ――――――――――!」
リリスに向かってやって来たのは何の変哲もない普通の木の矢。矢じりは鉄で出来ている。そして、その矢にリリスが気づいた時にはすでに眼前まで迫っていた。
そして、そのことに目を見開きながら言った言葉が先ほどのやつだ。
つまり、リリスが矢だと確認できる前に、その矢は銃弾以上の速さで飛んできていたということだ。
「――――――動くな」
リリスが言葉を告げている間にクラウンは小さな声で言った。そして、リリスの顔に向かって腕を伸ばす。
それから、リリスの眉間数センチというところでその矢を受け止めた。その瞬間、クラウンとリリスを通り抜けるように風が吹く。
その風は物理的にクラウン達の体を押し付け、周囲に砂埃を立たせるほどの威力で。
クラウンは受け止めた矢を見てみる。その矢の木の部分には言葉はわからないが、何か文字のようなものが見て取れた。
ということは、この矢は簡単に言えば使い捨ての魔道具のようなものだと言うこと。そして、それを使って敵意を持って攻撃をしてきたということ。
未だ呆然とした表情のリリスを尻目にクラウンは立ち上がる。そして、その矢の臭いをロキに嗅がせると矢が向かってきた先を見た。
「この方向か。俺のものに手を出したことは到底許せることではない。死で償え」
クラウンは足を軽く上下に開くと矢を持った手を大きく引く。そして、もう片方の手で標準を定める。それから、矢をその方向に向かって投擲した。
投げられた矢はまるで光の速さとでもいう速さで飛んでく。
「リリス、俺はロキと後を追う。お前らは俺の糸をあてにしてついてこい......なぜ顔を赤くしている?」
「え? い、いやなんでもないわよ。それよりも、わかったわ。仲間を起こして追うから、あんた達は先に行ってなさい」
「わかった」
「ウォン」
すると、クラウンは糸をリリスに向かって垂らす。そして、リリスはその糸を簡単にほどけないように手に何重にも巻いていく。
それから、クラウンはロキに先導してもらいながら、森の中へと走っていった。そんな後ろ姿を手を振りながら見ていたリリスは思わず肺に溜まっていた空気を思いっきり吐いた。
「はぁ~、危ない危ない。危うくクラウンに言われた言葉に思わず反応しちゃったことがバレるかと思ったわ」
「まあ、私達にはどうしようもなくバレてるけれどね」
「バレるって誰によ......って起きてたの!?」
リリスは火照った顔を手で仰ぎながら振り返る。すると、そこにはニンマリとしたエキドナの顔があった。「ああ、めんどくさいのに捕まった」とリリスが思うのは当然のこと。
「起きるも何も先ほどの強い風を感じれば誰だって起きるわよ。だから、何かあったのかと思って前を見てみれば、耳を真っ赤にしたリリスちゃんがいるじゃない」
「でもまあ、同時に主様が森に向かって矢を投げていたのはわかってるです。ですから、エキドナ様の言葉はリリス様へのただの煽りです」
「ダメよ、そんなこと言っては。ただ私はリリスちゃんが攻めにどうしようもなく、体を小刻みに震わせる姿が見たいだけよ。それが何だか殿方の竿で攻め立て――――――――――」
「おーっとストップ、スト――――――ップ! それ異常はベルの前で話すことは厳禁だぜ。清らかにいてもらわなければ」
「妹じゃないです」
「......あんた達、やっぱり神経図太くなってるわよね」
リリスはそんなある意味たくましい3人に呆れたため息を吐く。するとここで、ふとここがどこであるかを思い出した。
ここは確か霊山の裏側でその周辺の岩石地帯というところだ。そしてまた、近くにはエルフの森がある。
それから、矢が飛んできたのは森の方。クラウンは森に向かって矢を投げ返した......
リリスは何やら悪い予感がしてきてたまらない。その気持ちを表すように先ほどまで火照って赤くなっていた顔はみるみる内に冷めて青ざめていく。
そして、すぐにその悪い予感を拭い払うかのようにエキドナへと質問した。
「ねぇ、エキドナ? すぐ近くにエルフの森があるじゃない? それでふと思ったんだけど、エルフってどんな性格していたっけ?」
「そうね......基本的に排他的な種族であるわよ。他の種族に近づかないし、近づけさせもしない。自分達で全てを完結させるような、そんな営みをする種族よ。まあ、それはエルフが食菜主義だから関わる必要がないとか、プライドが高いからとか諸説あるけれど」
「そ、それじゃあ、エルフが敵対行動を取るときはどんな時?」
「敵対行動? エルフは基本的に慎重で、悪く言えば憶病な性格の人が多いと聞くから、ちょっとやそっとでは反撃して来ないと思ったわよ。でも、もしそうでなくて自ら攻撃しに行くとすれば、その相手がそうしなければならないほど危険な存在ということかしら」
「危険......」
リリスは思わずその単語を呟いた。つまり、エルフにとってクラウンは危険な存在に判定されたということ。
いや、さすがにそれは悪く考えすぎかもしれない。確かに、可能性が上がってしまったことは事実だが、それだけの情報で判断するのはまだ早いだろう。
とはいえ、リリスの顔は先ほどよりも青ざめているが。
「リリス様、大丈夫です?」
「え、ええ、大丈夫よ。でも、少し癒しが欲しいから、ベルこっちに来てくれない?」
リリスはあぐらの体勢になるとベルを手招きする。そして、やってきたベルがリリスのあぐらの上に座ると包み込むように腕を回した。
それから、モフモフの尻尾を堪能しながら、エキドナにさらに質問する。
「危険な存在ってどういうこと?」
「まあ、簡単に言えば一族を滅ぼしに来る敵なんだけど、エルフの場合はあの森に隠れている聖樹を護るためって意味合いの方が正しいかしら」
「聖樹......神殿攻略......それじゃあ、エルフは基本的にどんな武器を使うの?」
「基本的には私達とあまり変わらないわよ。ただ、森をむやみに気づ付けないという意味と自然に溶け込むのが上手いという意味から弓を使ったのが一般的ね」
「それじゃあ、魔法は!? 魔法はどんなのを使うの?」
「おいおい、どうしたリリス? さっきから様子がおかしいぞ?」
「ですです」
リリスの異様な顔色といい、エルフに関する質問といい、エキドナ、ベル、カムイの3人はその様子が不思議でたまらなかった。
まあ、考えられることはクラウンとロキが森へと走っていったことがリリスの言葉に繋がっているのだろうということ。
とりあえず、リリスの様子を気にかけながらも、エキドナはリリスの質問に答える。
「エルフの魔法は私達に比べれば芸達者なものよ。昔にはある冒険者が一人のエルフを助けて、見返りとして魔法を教えてもらったら、最後にはその魔法で邪竜を倒して英雄になったという逸話があるもの。まあ、それは当然よね。千年という時を生きるんですもの」
「なら、矢を異常なまでの速度にして飛ばすことは可能ということなの?」
「結論から言うならば可能ね」
「......そうなのね」
リリスはその言葉を聞くと思わず暗い顔をする。もう現状としてはかなりの確率でやっちまった感がある。
しかし、そんなことを信じたくない自分がいるのは確かだ。だからこそ、何としてでも違うとハッキリ思える何かが欲しい。
このままいけば100%終わったへとまっしぐらに走り抜けてしまう。だが、ここでまだ何かがあるのだとしたら、その何かの部分で予想が外れることだってある。
だとすれば、ここは一か八か直接目にするのが早いか。
今はクラウンから受け取った糸がある。この糸を辿って行けばクラウンのもとへと辿り着き、全てが明らかになる。
正直、あって欲しくないのは最もだが、ここで不安がっているよりはずっとマシかもしれない。
「よし、あんた達。すぐに出発するからすぐに準備しなさい」
「リリスちゃん、本当にどうしちゃったの?」
「様子がおかしいです。さっきまでこの世の終わりみたいな顔をしていたのに、急に吹っ切れてるです」
「いや、それよりも半分ヤケになっているような感かもな。予想するに自分の考えたくもない方向に進んでいるから、それを否定したいがために直接確かめに行くとか」
「そんなことはどうでもいいでしょ! 早くいくわよ!」
「あ、図星だ」と3人は思わなくもなかったが、一先ずリリスの言葉に従って行動していく。そして、準備が出来るとリリスは糸の先を頼りにしながら走り始めた。
それから、鬱蒼とした森の中を全速力に近い速さで駆け抜けていく。そして、遠くからクラウンとロキの姿を確認した。
リリスはその二人の後ろに辿り着くと声をかける。
「どうしたの? 何かあったの?」
「......」
リリスの言葉にクラウンは反応しない。それを怪訝に思ったリリスはクラウンとロキの間に割って入る。そして、そこで見た光景は......
左胸に矢が刺さったまま動かない金髪で、耳の尖ったエルフの男性の姿であった。
「お、終わった......」
リリスは久々に吐いた言葉とともにガックシと膝を崩した。
しかし、いつもと違うことがあるとすれば、ロキを枕にして横になってる構図ではなく、森のある方向を見て並んで座っている。
そのことを怪訝に思ったリリスはクラウンの隣に座り、挨拶も兼ねて聞いてみた。
「おはよう、クラウン。森の方を見て何かあったの?」
「いや、特に動きはない。だが、視線を感じるのは確かだ。俺の気配察知で捉えられないとなるとかなり遠くから見ているようだ」
「それでわかるあんたは獣のそれね。まあ、今更なんだけど」
リリスはクラウンが見ている先を眺めてみる。だが、そこに映るのは青々とした緑溢れる森ばかり。視線など微塵も感じられない。
しかし、クラウンに加えてロキまでその視線に気づいている様子だ。だとすれば、かなり信憑性があるというもの。
「自分も伊達にクラウンとそばにいるわけではない」とリリスもその視線の先を凝視して見てみる。すると、あるところで点のような黒いものが見えた。
その黒い点はほんのわずかな小ささだ。見間違えと言えばそうなるかもしれないし、気を抜けば見失ってしまいそうだ。
だが、その点は段々と大きくなっていく。しかも、その変化は速い。気のせいか近づいて来ているような感じさえする。
そして、リリスがその点の正体を視認したのは数秒後であった。だが、その数秒はあまりに大きかった。
「ねぇ、あれって矢じゃ――――――――――!」
リリスに向かってやって来たのは何の変哲もない普通の木の矢。矢じりは鉄で出来ている。そして、その矢にリリスが気づいた時にはすでに眼前まで迫っていた。
そして、そのことに目を見開きながら言った言葉が先ほどのやつだ。
つまり、リリスが矢だと確認できる前に、その矢は銃弾以上の速さで飛んできていたということだ。
「――――――動くな」
リリスが言葉を告げている間にクラウンは小さな声で言った。そして、リリスの顔に向かって腕を伸ばす。
それから、リリスの眉間数センチというところでその矢を受け止めた。その瞬間、クラウンとリリスを通り抜けるように風が吹く。
その風は物理的にクラウン達の体を押し付け、周囲に砂埃を立たせるほどの威力で。
クラウンは受け止めた矢を見てみる。その矢の木の部分には言葉はわからないが、何か文字のようなものが見て取れた。
ということは、この矢は簡単に言えば使い捨ての魔道具のようなものだと言うこと。そして、それを使って敵意を持って攻撃をしてきたということ。
未だ呆然とした表情のリリスを尻目にクラウンは立ち上がる。そして、その矢の臭いをロキに嗅がせると矢が向かってきた先を見た。
「この方向か。俺のものに手を出したことは到底許せることではない。死で償え」
クラウンは足を軽く上下に開くと矢を持った手を大きく引く。そして、もう片方の手で標準を定める。それから、矢をその方向に向かって投擲した。
投げられた矢はまるで光の速さとでもいう速さで飛んでく。
「リリス、俺はロキと後を追う。お前らは俺の糸をあてにしてついてこい......なぜ顔を赤くしている?」
「え? い、いやなんでもないわよ。それよりも、わかったわ。仲間を起こして追うから、あんた達は先に行ってなさい」
「わかった」
「ウォン」
すると、クラウンは糸をリリスに向かって垂らす。そして、リリスはその糸を簡単にほどけないように手に何重にも巻いていく。
それから、クラウンはロキに先導してもらいながら、森の中へと走っていった。そんな後ろ姿を手を振りながら見ていたリリスは思わず肺に溜まっていた空気を思いっきり吐いた。
「はぁ~、危ない危ない。危うくクラウンに言われた言葉に思わず反応しちゃったことがバレるかと思ったわ」
「まあ、私達にはどうしようもなくバレてるけれどね」
「バレるって誰によ......って起きてたの!?」
リリスは火照った顔を手で仰ぎながら振り返る。すると、そこにはニンマリとしたエキドナの顔があった。「ああ、めんどくさいのに捕まった」とリリスが思うのは当然のこと。
「起きるも何も先ほどの強い風を感じれば誰だって起きるわよ。だから、何かあったのかと思って前を見てみれば、耳を真っ赤にしたリリスちゃんがいるじゃない」
「でもまあ、同時に主様が森に向かって矢を投げていたのはわかってるです。ですから、エキドナ様の言葉はリリス様へのただの煽りです」
「ダメよ、そんなこと言っては。ただ私はリリスちゃんが攻めにどうしようもなく、体を小刻みに震わせる姿が見たいだけよ。それが何だか殿方の竿で攻め立て――――――――――」
「おーっとストップ、スト――――――ップ! それ異常はベルの前で話すことは厳禁だぜ。清らかにいてもらわなければ」
「妹じゃないです」
「......あんた達、やっぱり神経図太くなってるわよね」
リリスはそんなある意味たくましい3人に呆れたため息を吐く。するとここで、ふとここがどこであるかを思い出した。
ここは確か霊山の裏側でその周辺の岩石地帯というところだ。そしてまた、近くにはエルフの森がある。
それから、矢が飛んできたのは森の方。クラウンは森に向かって矢を投げ返した......
リリスは何やら悪い予感がしてきてたまらない。その気持ちを表すように先ほどまで火照って赤くなっていた顔はみるみる内に冷めて青ざめていく。
そして、すぐにその悪い予感を拭い払うかのようにエキドナへと質問した。
「ねぇ、エキドナ? すぐ近くにエルフの森があるじゃない? それでふと思ったんだけど、エルフってどんな性格していたっけ?」
「そうね......基本的に排他的な種族であるわよ。他の種族に近づかないし、近づけさせもしない。自分達で全てを完結させるような、そんな営みをする種族よ。まあ、それはエルフが食菜主義だから関わる必要がないとか、プライドが高いからとか諸説あるけれど」
「そ、それじゃあ、エルフが敵対行動を取るときはどんな時?」
「敵対行動? エルフは基本的に慎重で、悪く言えば憶病な性格の人が多いと聞くから、ちょっとやそっとでは反撃して来ないと思ったわよ。でも、もしそうでなくて自ら攻撃しに行くとすれば、その相手がそうしなければならないほど危険な存在ということかしら」
「危険......」
リリスは思わずその単語を呟いた。つまり、エルフにとってクラウンは危険な存在に判定されたということ。
いや、さすがにそれは悪く考えすぎかもしれない。確かに、可能性が上がってしまったことは事実だが、それだけの情報で判断するのはまだ早いだろう。
とはいえ、リリスの顔は先ほどよりも青ざめているが。
「リリス様、大丈夫です?」
「え、ええ、大丈夫よ。でも、少し癒しが欲しいから、ベルこっちに来てくれない?」
リリスはあぐらの体勢になるとベルを手招きする。そして、やってきたベルがリリスのあぐらの上に座ると包み込むように腕を回した。
それから、モフモフの尻尾を堪能しながら、エキドナにさらに質問する。
「危険な存在ってどういうこと?」
「まあ、簡単に言えば一族を滅ぼしに来る敵なんだけど、エルフの場合はあの森に隠れている聖樹を護るためって意味合いの方が正しいかしら」
「聖樹......神殿攻略......それじゃあ、エルフは基本的にどんな武器を使うの?」
「基本的には私達とあまり変わらないわよ。ただ、森をむやみに気づ付けないという意味と自然に溶け込むのが上手いという意味から弓を使ったのが一般的ね」
「それじゃあ、魔法は!? 魔法はどんなのを使うの?」
「おいおい、どうしたリリス? さっきから様子がおかしいぞ?」
「ですです」
リリスの異様な顔色といい、エルフに関する質問といい、エキドナ、ベル、カムイの3人はその様子が不思議でたまらなかった。
まあ、考えられることはクラウンとロキが森へと走っていったことがリリスの言葉に繋がっているのだろうということ。
とりあえず、リリスの様子を気にかけながらも、エキドナはリリスの質問に答える。
「エルフの魔法は私達に比べれば芸達者なものよ。昔にはある冒険者が一人のエルフを助けて、見返りとして魔法を教えてもらったら、最後にはその魔法で邪竜を倒して英雄になったという逸話があるもの。まあ、それは当然よね。千年という時を生きるんですもの」
「なら、矢を異常なまでの速度にして飛ばすことは可能ということなの?」
「結論から言うならば可能ね」
「......そうなのね」
リリスはその言葉を聞くと思わず暗い顔をする。もう現状としてはかなりの確率でやっちまった感がある。
しかし、そんなことを信じたくない自分がいるのは確かだ。だからこそ、何としてでも違うとハッキリ思える何かが欲しい。
このままいけば100%終わったへとまっしぐらに走り抜けてしまう。だが、ここでまだ何かがあるのだとしたら、その何かの部分で予想が外れることだってある。
だとすれば、ここは一か八か直接目にするのが早いか。
今はクラウンから受け取った糸がある。この糸を辿って行けばクラウンのもとへと辿り着き、全てが明らかになる。
正直、あって欲しくないのは最もだが、ここで不安がっているよりはずっとマシかもしれない。
「よし、あんた達。すぐに出発するからすぐに準備しなさい」
「リリスちゃん、本当にどうしちゃったの?」
「様子がおかしいです。さっきまでこの世の終わりみたいな顔をしていたのに、急に吹っ切れてるです」
「いや、それよりも半分ヤケになっているような感かもな。予想するに自分の考えたくもない方向に進んでいるから、それを否定したいがために直接確かめに行くとか」
「そんなことはどうでもいいでしょ! 早くいくわよ!」
「あ、図星だ」と3人は思わなくもなかったが、一先ずリリスの言葉に従って行動していく。そして、準備が出来るとリリスは糸の先を頼りにしながら走り始めた。
それから、鬱蒼とした森の中を全速力に近い速さで駆け抜けていく。そして、遠くからクラウンとロキの姿を確認した。
リリスはその二人の後ろに辿り着くと声をかける。
「どうしたの? 何かあったの?」
「......」
リリスの言葉にクラウンは反応しない。それを怪訝に思ったリリスはクラウンとロキの間に割って入る。そして、そこで見た光景は......
左胸に矢が刺さったまま動かない金髪で、耳の尖ったエルフの男性の姿であった。
「お、終わった......」
リリスは久々に吐いた言葉とともにガックシと膝を崩した。
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