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第4章 道化師は知る
第81話 探し人
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「おお~、うんめ~!」
「それはよかったわ。それにしてもよく食べるわねー」
カムイとクラウンの決闘が終わった後、動き過ぎた二人は腹が減り過ぎて動けなっていた。なので、リリス達が分担して料理を次々と作っていく。それは主に大食らいのクラウンように作ったものであったが、どうやら大食らいは一人ではないらしく、カムイも水を飲むかのように料理を胃に流し込んでいく。
そのせいで買い込んでいた食料はみるみるうちに減っていく。なので、少しは遠慮して欲しいところであるのだが、クラウンによってたった今さっき仲間となったのであまり強いことは言えなくなった。まあそれは、まだカムイという人物を測りかねているということもあるのだが。
「それにしても、でかい犬だな。うちの国じゃまず見かけない。名前は何て言うんだ?」
「ロキだ。よく話すし、よく寝るぞ」
「ウォン」
クラウンに紹介されたロキはカムイのもとへと近づいていくと信用できるか確かめるように匂いを嗅いでいく。そして、信用基準に達したのかカムイの顔を舐め始めた。それによって、カムイの顔は唾液でベットリとなるが、カムイは嫌な顔一つしなかった。加えて、自分の装った料理を食べさせるほどにロキを甘やかしている。
それからしばらく、食事は続いた。そして、終わった頃には貯蓄の半分ぐらいをクラウンとカムイの二人が平らげた。もちろん、リリス達も食事をしたが、二人に比べれば微々たるもの。あまりに食料を減ったことにリリスは思わずため息を吐いた。
「それで、そろそろ聞きたいんだが、お前さんはどうしてその刀を持っている?」
すると、カムイは満腹になった腹を擦りながら、遂に本題へと切り込んだ。それに対し、クラウンはそのまま刀を得た経緯を話した。やましいこともないし、嘘をつくことでもない。それに、たとえそんなことをしてもカムイには容易に見抜かれる。それは自分とは違い、剣士としての目で。
そして、全てを聞き終えたカムイは特に怒るような感情の起伏を見せることはなかった。ただ腕を組みながら聞いた内容を自分の知っている内容と擦り合わせていた。それから、腕組みを解いて、腕をあぐらをかいた膝へと乗せると口火を切る。
「なるほど、どうやら誰かが取り返してくれたみたいだな。本当なら、その人に感謝したいぐらいだが、いないなら仕方ない。せめて、持ってくれていたお前らに感謝させてくれ」
「それ別に構わないが、これは俺の大事な武器だ。返せと言われても返すことは出来ない」
「それは別に構わないさ。その刀は喜んでいる。お前さんに使われることにな」
「そんなことがわかるのか?」
「ああ、わかる。他の武器はわからないが、刀に関してはどの種族よりもしっかりと向き合っているからな。そして、その刀が俺に告げているのさ。『やっと役目を果たせる』ってな」
「役目......それは気配で見たのか?」
「違うな。この場合は、五感で感じたんだ。これも気配を見ることが出来て派生した技術だ。ちなみに、お前さんが言った『無機物の気配を読んだ先』ってのはこんなものじゃすまないほど、よく見えるし、よく聞こえる。それはこの場にあるすべてが死角など存在せずにな。だから、俺は『気配を見た』と言ったんだ。まあ、<気配察知>のさらに向こう側と言ったところかな......わりぃ、脱線させちまったな」
「構わん。それにしても、これほどまでの刀を無くすなど普通では考えられない。いくら切っても刃こぼれしない刀など」
「言っただろ、それは『守るべきもののために敵を狩る』という名がついた刀だと。俺達鬼族が作る刀にはな、作り手の意志が乗るんだ。そして、その刀に刻まれた名に合わせた能力がその刀には宿るんだ。俺の場合は、この刀の名が『炎滅』といって所有者が放った炎はどんなことをしても消えることはない。例え海に放ったとしてもな。そして、お前さんにも何か能力が付与されているはずだ」
クラウンはカムイの言葉を聞くと鞘から刀を引き抜いて、その刀身に刻まれた名を見た。その刀身には「守狩」とあった。字面から考えてみれば、「守」とは「約束を守る」といった意味合いで使われる。なら、自分にとっての約束はなんだ。それは一つだ。手にした時から抱いている神殺しという誓い。
「守るべきもののために敵を狩る」だから、刃こぼれ一つしないのだろう。自分が神殺しを果たすまで、これからもずっと。そんな話を聞いてか、クラウンは自身が持つ黒き刀に一層の愛着が湧いた。思わず微笑むほどに。そんな様子を見ていたリリスは若干引き気味だが。
すると、カムイが話題を変えた。
「それじゃあ、俺の目的を聞いてくれないか?その刀とも関係するからな」
そして、カムイが話し始めたことはこうであった。鬼族で英雄的な活躍をしたカムイは、その言葉に見合った暮らしが待ち受けていた。しかし、それは自分の性に合わないということで断り、「世界をもっと知ってみれば?」妹の勧めで鬼族が住む鬼ヶ島から聖王国がある本土に移ることを決意した。
しかし、鬼ヶ島は鎖国状態で、加えて英雄であるカムイを外に出そうとするものはいなかった。だが、そこを強行突破してカムイは本土へと向かった。その選択が間違っていたということを知らず。
カムイが自国を出てから数年後、(時間の流れとしてはクラウンが聖王国襲撃を企てている頃に)鬼ヶ島で事件が起こった。それは黒い法衣を着た男による襲撃。その男は一人でありながら、カムイに勝らずとも劣らない剣士達を一方的に虐殺していった。
その男は誰しもが「自分達種族を殺しに来たのだ」と思ったが、その男の目的は別にあった。そしてその男の目的とは、特別な力を持っているカムイの妹を攫うこと。そのためだけにやって来て、襲い来る剣士達に傷一つつけられずこともなく、逆に剣士達を殺していく。
だが、唯一対抗した剣士がいた。それが、妹の護衛であり、カムイと互角に渡り合える友であった男。その男は法衣を着た男と戦った。腕が吹き飛ぼうと、脚が千切れようと、まだ動ける脚と刀を持てる手がある限り。
しかし、圧倒的な力の前でその男は倒れ伏した。もう二度と目覚めることのない永遠の眠りに誘われて。その周りにいた者は知っていた、その男の強さを。だからこそ、絶望した。希望という名の光を目の前で儚げに消えていったから。
そして、カムイの妹も容赦なくひっ捕らえられた。なのに、もう助け出そうとする人は誰もいない。そんな気概はほんの今さっき失われた。もうその男に抗おうとする人たちはいない。にもかかわらず、その男は周りにいる鬼族をウザったそうに殺そうとする......その時だった。
一人の女性が空から舞ってきて、その男と対峙した。すると、その男は戦闘行為を中止してすぐさまその場から消えた。そのことに、女性は悔しそうに歯噛みすると倒れているカムイの友である男に話しかけて、刀を持ち去ったという。
「......これが全て真実だとは当然思っちゃいない。きっとまだマシな状態だと信じている。俺も俺に伝えようと海を渡ってきた同族から聞き伝えられたが、それだけの突拍子もない話をあれだけ真剣な目で話されれば、その話が嘘かどうかわすぐにわかるからな」
「それじゃあ、お前の目的は友を殺した敵と攫われた妹の行方ということか」
「まあ、そうだな。そのためにいろんなところを歩き回っていたんだが、どこもそこも冷たいもんだ。おそらくは鬼族という存在をあまり認知していないんだろうな。さすがにオーガと間違えられた時はカチンと来たが」
クラウンはカムイの話を聞いて内容を整理した。まず確実にわかることは、黒い法衣を着た男。それは神の使いと断定してもいいだろう。そして、助けに来た女性。その人物はリリスの母親である、いや、この場合は元神の一人であったリゼリアであろう。
カムイを仲間にしたのは正解だったかもしれない。これはただの感覚だが、カムイの目的を手伝うことで神に関する何かがわかるような気がする。それこそ、正義感の強かった響がなぜ俺が人を殺したと簡単に信じてしまったのかと。俺と響は長い付き合いだ。もしかしたら、何かあったのかもしれない。本物の神の使いがあれほどの強さだったのだ。何か特殊な魔法が使えてもおかしくない。
ただ一つ懸念があるとすれば、響達は未だ神の使いの本拠地にいる。響がさすがに神の使いとして能力を得ていると思いたくないが、もしそうなっていたなら......俺はどうするべきだろうか。さすがに心の動向までは読めない。その時の俺に任せるしかないか。ただ、良くない感情になりそうで不安だが。
クラウンは一先ずカムイの事情が分かるとあぐらから片膝だけ立てる。そして、その膝に腕を置いた。
「お前の目的はわかった。そして、俺の目的は前に告げたはずだ」
「『この世界を壊す』だっけ?正気だから余計に突っ込みづらいんだが、お前さんらはその目的に同意しているということだよな?」
「そうね。私の目的の延長線上にクラウンの目的があるから、同じといっても過言じゃないわね」
「私は主様について行くだけです。たとえどこに行こうとも主様のいる場所が私のいる場所です」
「私は違う目的よ。ただ病の床にいる息子を助けたいだけ。そのための薬とか幻の薬草とかを探しているのよ。私は息子が助かればそれでいいの。この世界がどうなろうとも、最後まで息子といれたならね」
「ヒュ~、モテモテじゃないか、お前さん。こんなにも美女・美少女を心酔させるなんて」
「俺が好きにそうさせたわけじゃない。勝手にそうなっただけだ......だが、こいつらのおかげで俺の芯はブレずに済んでいる。俺はこいつらに深いことを求めない。ただ近くにいてくれればいいんだ」
「クラウン......」
「主様......」
「旦那様......」
「あー!やめやめやめ、俺の目の前でそんな甘い雰囲気を出すんじゃねぇ!」
カムイはクラウン達が作り出す甘い雰囲気を目の前で見せつけられて、思わず口から大量の砂糖が出るような気分になった。そして、その雰囲気をぶち壊そうとあえて大声で叫ぶが、どうにも簡単には破壊できないようだ。全く、この面子でこの中の良さで何があれば、クラウンはあれだけの殺気を出せるのだろうか。
目の前に広がる甘ったるい光景にやや苦笑いする。そして、一人立ち上がって待ちぼうけのロキへと話しかけに行った。そして、ロキの頭に触れようと腕を伸ばした時、和服の胸の合わせから何がが落ちた。
「!」
丁度位置的にその落ちる何かが見えたクラウンは、思わず見なかったことにした。
「それはよかったわ。それにしてもよく食べるわねー」
カムイとクラウンの決闘が終わった後、動き過ぎた二人は腹が減り過ぎて動けなっていた。なので、リリス達が分担して料理を次々と作っていく。それは主に大食らいのクラウンように作ったものであったが、どうやら大食らいは一人ではないらしく、カムイも水を飲むかのように料理を胃に流し込んでいく。
そのせいで買い込んでいた食料はみるみるうちに減っていく。なので、少しは遠慮して欲しいところであるのだが、クラウンによってたった今さっき仲間となったのであまり強いことは言えなくなった。まあそれは、まだカムイという人物を測りかねているということもあるのだが。
「それにしても、でかい犬だな。うちの国じゃまず見かけない。名前は何て言うんだ?」
「ロキだ。よく話すし、よく寝るぞ」
「ウォン」
クラウンに紹介されたロキはカムイのもとへと近づいていくと信用できるか確かめるように匂いを嗅いでいく。そして、信用基準に達したのかカムイの顔を舐め始めた。それによって、カムイの顔は唾液でベットリとなるが、カムイは嫌な顔一つしなかった。加えて、自分の装った料理を食べさせるほどにロキを甘やかしている。
それからしばらく、食事は続いた。そして、終わった頃には貯蓄の半分ぐらいをクラウンとカムイの二人が平らげた。もちろん、リリス達も食事をしたが、二人に比べれば微々たるもの。あまりに食料を減ったことにリリスは思わずため息を吐いた。
「それで、そろそろ聞きたいんだが、お前さんはどうしてその刀を持っている?」
すると、カムイは満腹になった腹を擦りながら、遂に本題へと切り込んだ。それに対し、クラウンはそのまま刀を得た経緯を話した。やましいこともないし、嘘をつくことでもない。それに、たとえそんなことをしてもカムイには容易に見抜かれる。それは自分とは違い、剣士としての目で。
そして、全てを聞き終えたカムイは特に怒るような感情の起伏を見せることはなかった。ただ腕を組みながら聞いた内容を自分の知っている内容と擦り合わせていた。それから、腕組みを解いて、腕をあぐらをかいた膝へと乗せると口火を切る。
「なるほど、どうやら誰かが取り返してくれたみたいだな。本当なら、その人に感謝したいぐらいだが、いないなら仕方ない。せめて、持ってくれていたお前らに感謝させてくれ」
「それ別に構わないが、これは俺の大事な武器だ。返せと言われても返すことは出来ない」
「それは別に構わないさ。その刀は喜んでいる。お前さんに使われることにな」
「そんなことがわかるのか?」
「ああ、わかる。他の武器はわからないが、刀に関してはどの種族よりもしっかりと向き合っているからな。そして、その刀が俺に告げているのさ。『やっと役目を果たせる』ってな」
「役目......それは気配で見たのか?」
「違うな。この場合は、五感で感じたんだ。これも気配を見ることが出来て派生した技術だ。ちなみに、お前さんが言った『無機物の気配を読んだ先』ってのはこんなものじゃすまないほど、よく見えるし、よく聞こえる。それはこの場にあるすべてが死角など存在せずにな。だから、俺は『気配を見た』と言ったんだ。まあ、<気配察知>のさらに向こう側と言ったところかな......わりぃ、脱線させちまったな」
「構わん。それにしても、これほどまでの刀を無くすなど普通では考えられない。いくら切っても刃こぼれしない刀など」
「言っただろ、それは『守るべきもののために敵を狩る』という名がついた刀だと。俺達鬼族が作る刀にはな、作り手の意志が乗るんだ。そして、その刀に刻まれた名に合わせた能力がその刀には宿るんだ。俺の場合は、この刀の名が『炎滅』といって所有者が放った炎はどんなことをしても消えることはない。例え海に放ったとしてもな。そして、お前さんにも何か能力が付与されているはずだ」
クラウンはカムイの言葉を聞くと鞘から刀を引き抜いて、その刀身に刻まれた名を見た。その刀身には「守狩」とあった。字面から考えてみれば、「守」とは「約束を守る」といった意味合いで使われる。なら、自分にとっての約束はなんだ。それは一つだ。手にした時から抱いている神殺しという誓い。
「守るべきもののために敵を狩る」だから、刃こぼれ一つしないのだろう。自分が神殺しを果たすまで、これからもずっと。そんな話を聞いてか、クラウンは自身が持つ黒き刀に一層の愛着が湧いた。思わず微笑むほどに。そんな様子を見ていたリリスは若干引き気味だが。
すると、カムイが話題を変えた。
「それじゃあ、俺の目的を聞いてくれないか?その刀とも関係するからな」
そして、カムイが話し始めたことはこうであった。鬼族で英雄的な活躍をしたカムイは、その言葉に見合った暮らしが待ち受けていた。しかし、それは自分の性に合わないということで断り、「世界をもっと知ってみれば?」妹の勧めで鬼族が住む鬼ヶ島から聖王国がある本土に移ることを決意した。
しかし、鬼ヶ島は鎖国状態で、加えて英雄であるカムイを外に出そうとするものはいなかった。だが、そこを強行突破してカムイは本土へと向かった。その選択が間違っていたということを知らず。
カムイが自国を出てから数年後、(時間の流れとしてはクラウンが聖王国襲撃を企てている頃に)鬼ヶ島で事件が起こった。それは黒い法衣を着た男による襲撃。その男は一人でありながら、カムイに勝らずとも劣らない剣士達を一方的に虐殺していった。
その男は誰しもが「自分達種族を殺しに来たのだ」と思ったが、その男の目的は別にあった。そしてその男の目的とは、特別な力を持っているカムイの妹を攫うこと。そのためだけにやって来て、襲い来る剣士達に傷一つつけられずこともなく、逆に剣士達を殺していく。
だが、唯一対抗した剣士がいた。それが、妹の護衛であり、カムイと互角に渡り合える友であった男。その男は法衣を着た男と戦った。腕が吹き飛ぼうと、脚が千切れようと、まだ動ける脚と刀を持てる手がある限り。
しかし、圧倒的な力の前でその男は倒れ伏した。もう二度と目覚めることのない永遠の眠りに誘われて。その周りにいた者は知っていた、その男の強さを。だからこそ、絶望した。希望という名の光を目の前で儚げに消えていったから。
そして、カムイの妹も容赦なくひっ捕らえられた。なのに、もう助け出そうとする人は誰もいない。そんな気概はほんの今さっき失われた。もうその男に抗おうとする人たちはいない。にもかかわらず、その男は周りにいる鬼族をウザったそうに殺そうとする......その時だった。
一人の女性が空から舞ってきて、その男と対峙した。すると、その男は戦闘行為を中止してすぐさまその場から消えた。そのことに、女性は悔しそうに歯噛みすると倒れているカムイの友である男に話しかけて、刀を持ち去ったという。
「......これが全て真実だとは当然思っちゃいない。きっとまだマシな状態だと信じている。俺も俺に伝えようと海を渡ってきた同族から聞き伝えられたが、それだけの突拍子もない話をあれだけ真剣な目で話されれば、その話が嘘かどうかわすぐにわかるからな」
「それじゃあ、お前の目的は友を殺した敵と攫われた妹の行方ということか」
「まあ、そうだな。そのためにいろんなところを歩き回っていたんだが、どこもそこも冷たいもんだ。おそらくは鬼族という存在をあまり認知していないんだろうな。さすがにオーガと間違えられた時はカチンと来たが」
クラウンはカムイの話を聞いて内容を整理した。まず確実にわかることは、黒い法衣を着た男。それは神の使いと断定してもいいだろう。そして、助けに来た女性。その人物はリリスの母親である、いや、この場合は元神の一人であったリゼリアであろう。
カムイを仲間にしたのは正解だったかもしれない。これはただの感覚だが、カムイの目的を手伝うことで神に関する何かがわかるような気がする。それこそ、正義感の強かった響がなぜ俺が人を殺したと簡単に信じてしまったのかと。俺と響は長い付き合いだ。もしかしたら、何かあったのかもしれない。本物の神の使いがあれほどの強さだったのだ。何か特殊な魔法が使えてもおかしくない。
ただ一つ懸念があるとすれば、響達は未だ神の使いの本拠地にいる。響がさすがに神の使いとして能力を得ていると思いたくないが、もしそうなっていたなら......俺はどうするべきだろうか。さすがに心の動向までは読めない。その時の俺に任せるしかないか。ただ、良くない感情になりそうで不安だが。
クラウンは一先ずカムイの事情が分かるとあぐらから片膝だけ立てる。そして、その膝に腕を置いた。
「お前の目的はわかった。そして、俺の目的は前に告げたはずだ」
「『この世界を壊す』だっけ?正気だから余計に突っ込みづらいんだが、お前さんらはその目的に同意しているということだよな?」
「そうね。私の目的の延長線上にクラウンの目的があるから、同じといっても過言じゃないわね」
「私は主様について行くだけです。たとえどこに行こうとも主様のいる場所が私のいる場所です」
「私は違う目的よ。ただ病の床にいる息子を助けたいだけ。そのための薬とか幻の薬草とかを探しているのよ。私は息子が助かればそれでいいの。この世界がどうなろうとも、最後まで息子といれたならね」
「ヒュ~、モテモテじゃないか、お前さん。こんなにも美女・美少女を心酔させるなんて」
「俺が好きにそうさせたわけじゃない。勝手にそうなっただけだ......だが、こいつらのおかげで俺の芯はブレずに済んでいる。俺はこいつらに深いことを求めない。ただ近くにいてくれればいいんだ」
「クラウン......」
「主様......」
「旦那様......」
「あー!やめやめやめ、俺の目の前でそんな甘い雰囲気を出すんじゃねぇ!」
カムイはクラウン達が作り出す甘い雰囲気を目の前で見せつけられて、思わず口から大量の砂糖が出るような気分になった。そして、その雰囲気をぶち壊そうとあえて大声で叫ぶが、どうにも簡単には破壊できないようだ。全く、この面子でこの中の良さで何があれば、クラウンはあれだけの殺気を出せるのだろうか。
目の前に広がる甘ったるい光景にやや苦笑いする。そして、一人立ち上がって待ちぼうけのロキへと話しかけに行った。そして、ロキの頭に触れようと腕を伸ばした時、和服の胸の合わせから何がが落ちた。
「!」
丁度位置的にその落ちる何かが見えたクラウンは、思わず見なかったことにした。
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