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第3章 道化師は嘆く
第55話 もはや才能の域
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「ねぇ、とりあえずその服変えない?」
「そう?この服とてもに合ってると思うのだけど、ほら周りの男の人達も視線がこちらへと向いてるし」
「それはお前がエロい恰好をしているからだろ。目立つのはあまり好きではない。早く着替えろ」
「ふふっ、そうなのね。自分の妻をあまり人目につかせたくなくて、独占するタイプなのね。そして、私を生まれたての姿にしたうえで、興奮して濡らしてしまうようなピ―――――――――やピ―――――――――とかピ―――――――」
「ぶちのめすぞ、色魔竜!」
「な、ななな、何をこんな所で言ってるのよ!?それになんでそんなに知ってるのよ!?」
「それは情報屋だからよ」
エキドナが話せばもれなくこの場に濃いピンクをさらに濃くしたような空間に包まれる。それはサキュバスであるリリスを真っ赤にさせるほどに。エキドナのハッキリとした言葉を聞いた周りの男達はその場にうずくまる。
クラウンはそんなエキドナにどうしようもないため息を吐いた。今や一体どちらがサキュバスなのか。まず初見で判断しろと言われれば、間違いなくエキドナを指すであろう。まさに歩くモザイク女。淫猥な言葉を吐きながらそれに対するポージングを無意識に取っているのも始末が悪い。
「なぜ変態が集まるんだ......」とクラウンは思わず遠い目を向ける。それは仕方ないと思ってもいいだろう。なんせ今回の変態が度が過ぎてキツイ。歩くわいせつ物、歩くモザイク女、歩く官能辞典となんとでも言えるほどに変態なのだから。
しかも、リリスやベルのように一部に尖っているわけではない。オールジャンルに精通するザ・変態。だからこそどうすることも出来ない。一を言えば、十の淫語が返って来る。これにはさすがのクラウンでもお手上げである。
しかし、エキドナが仲間になった以上、神殿には一緒に潜ってもらう。なら、さすがにその恰好は悪い。作るという手段もあるが、もう目前に神殿があるというのにここで時間はかけられない。
「そういえば、お前に聞く情報を言ってなかったな」
「そうね、なんでも聞いて。スリーサイズから性感帯までなんでも教えちゃうわよ」
「せ、せいか.......////」
「はあ.......俺が聞きたいのは、今の聖王国の情報だ。それから帝国もな」
クラウンが呆れながらも上げたのは聖王国と帝国の二つの国。それはクラウンが敵に回した国である。あまり気にしてはいないが、なにか動きがあったとなればそれを知っていることは悪いことではない。
そして、その言葉を聞いたエキドナは微笑む。
「なるほど、それらの国の首謀者は旦那様だったのね。随分とやんちゃしていたのね」
「それでどうなんだ?」
「そうね、あるわよ?情報。けど、あまり気にすることはないと思わよ。旦那様が気にするような情報はないから」
「一応聞かせろ」
「聖王国が魔王討伐のために帝国と手を結んだみたいよ。でも、旦那様に関する情報は特に出回ってないみたい。それは旦那様をお得意様にしたリックからの情報よ」
「そうか」
クラウンは聞きたいことが聞けるとそれ以降の話すことはなかった。一体どこでリックと自分が会ったことを知ったのか疑問ではあるが、もしかしたら自分達がまだ獣王国にいた頃にどこかで情報を交換していたかもしれない。
すると、リリスが口火を切った。
「そういえば、少し寄りたいところがあるんだけどいい?」
「場所は?」
「この先を少し歩いた場所よ」
そして、三人がたどり着いた場所は主に徒手格闘をメインとする人に向けた専門屋であった。しかし、この店はリリスにとって関係ないはずだ。リリスは足技で戦うのだから。だが、リリスはその店に入ってくとその店のドワーフに話しかける。そして、そのドワーフから頼んでいたであろう品を受け取ると戻ってくる。
「それはなんだ?」
「これはロキちゃんのものよ。ほらこれ」
そうして、見せてきたのは鋭いかぎ爪であった。しかもそれは、人の手につけるには大きく、確かにロキの手のサイズにはぴったりだ。もしかしなくても、ロキのためにやってくれたのだろう。
するとすぐに、クラウンは指笛を吹いた。その時、横から勢いよく白い獣が駆けてきて、クラウンに突っ込んだ。そんなロキを軽く抱擁するような形でクラウンは受け止める。
その光景にはエキドナも僅かばかり目を見開く。今までの魔物の速度では考えられない速さで、しかも空中からやってきたロキに対して、その場から一歩も動かず受け止めたのだから。それから、ロキに顔を舐められても微動だにしていない。
「ロキ、遊ぶのは後だ。まずはリリスからお前にあげたいものがあるそうだ」
「ほら、これよ。これで爪が割れる心配もないでしょ?」
「ウォ―ン!」
「あ、こら、やめなさい!」
リリスが例のかぎ爪を見せるとロキは嬉しそうに尻尾を振ってリリスを押し倒して、怒涛の顔舐め。尻尾もぶんぶんと振り回して。ロキの尾の近くにあるものが次々に宙を舞っている。すると、エキドナがロキに近づいていく。
「フワフワ.......気持ちよさそうね」
そう言って瞳を輝かせながらエキドナはレオの抱きついた。そして、純白の毛に顔をうずめていく。よほど気持ち良かったのかそのまましばらく制止した。そんな光景を見ていたクラウンは周りからの視線に気づいた。それは動けなくなった男達。まるで「女を魔物に取られてざまあ」とでも言っているかのような視線だ。
クラウンはそんな男達にめんどくさそうに瞳孔を収縮させた瞳を見せるとその男達は蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。そして、うざったい視線が消えるとロキへと向いた。
「ロキ、座れ」
「ウォン」
クラウンの一言でロキはすぐにリリスから離れて、座った。そして、クラウンがロキの前にかぎ爪を置くとロキはそれを咥えて、器用に自分でつけ始める。それから、つけ終わるとまるでお手をするように前足を上下に振って動きを確かめていく。
「ウォ―――――――ン!」
ロキは気に入ったのか一吠えすると立ち上がって、体を横に向けながらクラウン達を見た。その姿はまるで脚部を見せつけるポージングをしているように様になっていた。そんなロキにクラウンは思わず優しい笑みを浮かべる。
「似合ってるぞ、ロキ」
「ウォン」
「ロキちゃんには甘い.....」
「ふふふっ、大丈夫よ。リリスちゃんはもう少しだから」
ロキを愛でるクラウンを見て、リリスはどこか悔しそうな顔をする。そんなリリスをエキドナが背中をさすって慰める。そこからしばらく、そんな不思議な空間が広がった。
それから、ロキを宿へと帰らせると目的の店へと向かう。それはもちろん服屋。エキドナの戦闘服を買うためだ。これに対して、エキドナの拒否権などない。
そして、服屋に入るとエキドナとリリスは物色し始めた。そこには普通の服もあるが、女性用アーマーもある。また、魔導服もあれば、ビキニアーマーもあった。すると、エキドナはさも当然かのようにビキニアーマーを手に取る。
「おい、やめろ。それを着ていくのは」
「あら、お気に召さないかしら。まあ確かに、このサイズじゃポロリしちゃうかもしれないわね」
「違う、そういう意味じゃない。単純にもっとマシなのがあるだろうと言っているんだ」
そう言うとクラウンは服を見てパッと手に取るとそれをエキドナに渡した。その服は七袖の上に、動きやすいズボンといったありふれた組み合わせであった。しかし、それを受け取ったエキドナは不満そうな顔をする。
「これねぇ......露出が少ないような気がするのだけど」
「当たり前だろ。これから俺達は神殿に行くんだ。なぜわざわざ防御を薄くする必要があるんだ」
「まあ、そうだけど私のアイデンティティがね.......」
「露出狂のアイデンティティなんてくそくらえだ。それが嫌だったらそれぐらいを基準にした服を選べ。それでも譲歩した方だ」
「ふふっ、私のことを思ってくれたなんて濡れるじゃない。少し探してみるわ」
そう言ってエキドナは、再び物色し始めた。そんなエキドナの様子を見てクラウンはため息が絶えない。同時に頭痛もしてくる。この世界に来てこんな変態に出会うとはさすがに夢にも思わない。しかし、この変態は使える変態だ。それがクラウンを悩ませる。
それに、この変態はまだ何か隠している。それがなんなのかはわからないが、神に関することかもしれないので知る必要はある。だが、今はまだいいだろう。
「ねぇ、こんなのどうかしら?」
「却下だ」
「それじゃあ、こっちは?」
「却下だ」
エキドナが持ってきたのはどちらもビキニアーマーと変わらないぐらい露出度が高い服であった。「この変態、人の言葉を何にも聞いてねぇ」と思いながら、エキドナが折れるまで却下し続けた。
**********************************************
「今から神殿に入る。準備はいいか?」
クラウンがそう呼びかけると全員が頷いた。そして、案内役のドワーフの方へ向くと進むよう促した。その神殿に入るとすぐに道がいくつにも分かれていた。人工的に掘られている穴だ。これがおそらく炭鉱の道なのだろう。
「お、こんな所に良いもんがあったぜ」
「それなんです?」
「これは薬蜘蛛と言ってな、この蜘蛛が出す糸は治療効果があるんだ。まあ、さすがに回復薬には負けるがな」
「そうか、それならありがたく頂く」
「いいぜ......ってえええ!?」
そのドワーフはクラウンに蜘蛛を渡した瞬間、その蜘蛛をそのまま食い始めたことに驚いた。そのことはエキドナも思わず目を丸くした。すると隣にいるリリスが説明する。
「クラウンは覚醒魔力の効果でああして魔物を食べることで魔法を得るのよ」
「なるほどね。どうりで普通の人族にはありえない膂力と魔法があるのね。ねぇねぇ、だったらあっちの意味で食べられたらどうなってしまうのかしら?」
「凄いわね。もう逆に感心するわ、すぐにそっちの方に意識が向くなんて。もはや才能よ」
リリスはエキドナのその尋常なタフさに「さすが竜人族か」と思った。普通は目の前でゲテモノを食うところを見させられれば、引くのは当たり前。自分だって少しは引いた。だがまあ、なんとも慣れというのは恐ろしいものだ。
それから、案内されること5階層。ここでドワーフは止まった。
「それじゃあ、ここから先は頑張ってくれ。何があっても自己責任だぞ?」
「わかっている。ここまで感謝する」
そう言うとクラウンを筆頭に神殿攻略を開始した。
「そう?この服とてもに合ってると思うのだけど、ほら周りの男の人達も視線がこちらへと向いてるし」
「それはお前がエロい恰好をしているからだろ。目立つのはあまり好きではない。早く着替えろ」
「ふふっ、そうなのね。自分の妻をあまり人目につかせたくなくて、独占するタイプなのね。そして、私を生まれたての姿にしたうえで、興奮して濡らしてしまうようなピ―――――――――やピ―――――――――とかピ―――――――」
「ぶちのめすぞ、色魔竜!」
「な、ななな、何をこんな所で言ってるのよ!?それになんでそんなに知ってるのよ!?」
「それは情報屋だからよ」
エキドナが話せばもれなくこの場に濃いピンクをさらに濃くしたような空間に包まれる。それはサキュバスであるリリスを真っ赤にさせるほどに。エキドナのハッキリとした言葉を聞いた周りの男達はその場にうずくまる。
クラウンはそんなエキドナにどうしようもないため息を吐いた。今や一体どちらがサキュバスなのか。まず初見で判断しろと言われれば、間違いなくエキドナを指すであろう。まさに歩くモザイク女。淫猥な言葉を吐きながらそれに対するポージングを無意識に取っているのも始末が悪い。
「なぜ変態が集まるんだ......」とクラウンは思わず遠い目を向ける。それは仕方ないと思ってもいいだろう。なんせ今回の変態が度が過ぎてキツイ。歩くわいせつ物、歩くモザイク女、歩く官能辞典となんとでも言えるほどに変態なのだから。
しかも、リリスやベルのように一部に尖っているわけではない。オールジャンルに精通するザ・変態。だからこそどうすることも出来ない。一を言えば、十の淫語が返って来る。これにはさすがのクラウンでもお手上げである。
しかし、エキドナが仲間になった以上、神殿には一緒に潜ってもらう。なら、さすがにその恰好は悪い。作るという手段もあるが、もう目前に神殿があるというのにここで時間はかけられない。
「そういえば、お前に聞く情報を言ってなかったな」
「そうね、なんでも聞いて。スリーサイズから性感帯までなんでも教えちゃうわよ」
「せ、せいか.......////」
「はあ.......俺が聞きたいのは、今の聖王国の情報だ。それから帝国もな」
クラウンが呆れながらも上げたのは聖王国と帝国の二つの国。それはクラウンが敵に回した国である。あまり気にしてはいないが、なにか動きがあったとなればそれを知っていることは悪いことではない。
そして、その言葉を聞いたエキドナは微笑む。
「なるほど、それらの国の首謀者は旦那様だったのね。随分とやんちゃしていたのね」
「それでどうなんだ?」
「そうね、あるわよ?情報。けど、あまり気にすることはないと思わよ。旦那様が気にするような情報はないから」
「一応聞かせろ」
「聖王国が魔王討伐のために帝国と手を結んだみたいよ。でも、旦那様に関する情報は特に出回ってないみたい。それは旦那様をお得意様にしたリックからの情報よ」
「そうか」
クラウンは聞きたいことが聞けるとそれ以降の話すことはなかった。一体どこでリックと自分が会ったことを知ったのか疑問ではあるが、もしかしたら自分達がまだ獣王国にいた頃にどこかで情報を交換していたかもしれない。
すると、リリスが口火を切った。
「そういえば、少し寄りたいところがあるんだけどいい?」
「場所は?」
「この先を少し歩いた場所よ」
そして、三人がたどり着いた場所は主に徒手格闘をメインとする人に向けた専門屋であった。しかし、この店はリリスにとって関係ないはずだ。リリスは足技で戦うのだから。だが、リリスはその店に入ってくとその店のドワーフに話しかける。そして、そのドワーフから頼んでいたであろう品を受け取ると戻ってくる。
「それはなんだ?」
「これはロキちゃんのものよ。ほらこれ」
そうして、見せてきたのは鋭いかぎ爪であった。しかもそれは、人の手につけるには大きく、確かにロキの手のサイズにはぴったりだ。もしかしなくても、ロキのためにやってくれたのだろう。
するとすぐに、クラウンは指笛を吹いた。その時、横から勢いよく白い獣が駆けてきて、クラウンに突っ込んだ。そんなロキを軽く抱擁するような形でクラウンは受け止める。
その光景にはエキドナも僅かばかり目を見開く。今までの魔物の速度では考えられない速さで、しかも空中からやってきたロキに対して、その場から一歩も動かず受け止めたのだから。それから、ロキに顔を舐められても微動だにしていない。
「ロキ、遊ぶのは後だ。まずはリリスからお前にあげたいものがあるそうだ」
「ほら、これよ。これで爪が割れる心配もないでしょ?」
「ウォ―ン!」
「あ、こら、やめなさい!」
リリスが例のかぎ爪を見せるとロキは嬉しそうに尻尾を振ってリリスを押し倒して、怒涛の顔舐め。尻尾もぶんぶんと振り回して。ロキの尾の近くにあるものが次々に宙を舞っている。すると、エキドナがロキに近づいていく。
「フワフワ.......気持ちよさそうね」
そう言って瞳を輝かせながらエキドナはレオの抱きついた。そして、純白の毛に顔をうずめていく。よほど気持ち良かったのかそのまましばらく制止した。そんな光景を見ていたクラウンは周りからの視線に気づいた。それは動けなくなった男達。まるで「女を魔物に取られてざまあ」とでも言っているかのような視線だ。
クラウンはそんな男達にめんどくさそうに瞳孔を収縮させた瞳を見せるとその男達は蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。そして、うざったい視線が消えるとロキへと向いた。
「ロキ、座れ」
「ウォン」
クラウンの一言でロキはすぐにリリスから離れて、座った。そして、クラウンがロキの前にかぎ爪を置くとロキはそれを咥えて、器用に自分でつけ始める。それから、つけ終わるとまるでお手をするように前足を上下に振って動きを確かめていく。
「ウォ―――――――ン!」
ロキは気に入ったのか一吠えすると立ち上がって、体を横に向けながらクラウン達を見た。その姿はまるで脚部を見せつけるポージングをしているように様になっていた。そんなロキにクラウンは思わず優しい笑みを浮かべる。
「似合ってるぞ、ロキ」
「ウォン」
「ロキちゃんには甘い.....」
「ふふふっ、大丈夫よ。リリスちゃんはもう少しだから」
ロキを愛でるクラウンを見て、リリスはどこか悔しそうな顔をする。そんなリリスをエキドナが背中をさすって慰める。そこからしばらく、そんな不思議な空間が広がった。
それから、ロキを宿へと帰らせると目的の店へと向かう。それはもちろん服屋。エキドナの戦闘服を買うためだ。これに対して、エキドナの拒否権などない。
そして、服屋に入るとエキドナとリリスは物色し始めた。そこには普通の服もあるが、女性用アーマーもある。また、魔導服もあれば、ビキニアーマーもあった。すると、エキドナはさも当然かのようにビキニアーマーを手に取る。
「おい、やめろ。それを着ていくのは」
「あら、お気に召さないかしら。まあ確かに、このサイズじゃポロリしちゃうかもしれないわね」
「違う、そういう意味じゃない。単純にもっとマシなのがあるだろうと言っているんだ」
そう言うとクラウンは服を見てパッと手に取るとそれをエキドナに渡した。その服は七袖の上に、動きやすいズボンといったありふれた組み合わせであった。しかし、それを受け取ったエキドナは不満そうな顔をする。
「これねぇ......露出が少ないような気がするのだけど」
「当たり前だろ。これから俺達は神殿に行くんだ。なぜわざわざ防御を薄くする必要があるんだ」
「まあ、そうだけど私のアイデンティティがね.......」
「露出狂のアイデンティティなんてくそくらえだ。それが嫌だったらそれぐらいを基準にした服を選べ。それでも譲歩した方だ」
「ふふっ、私のことを思ってくれたなんて濡れるじゃない。少し探してみるわ」
そう言ってエキドナは、再び物色し始めた。そんなエキドナの様子を見てクラウンはため息が絶えない。同時に頭痛もしてくる。この世界に来てこんな変態に出会うとはさすがに夢にも思わない。しかし、この変態は使える変態だ。それがクラウンを悩ませる。
それに、この変態はまだ何か隠している。それがなんなのかはわからないが、神に関することかもしれないので知る必要はある。だが、今はまだいいだろう。
「ねぇ、こんなのどうかしら?」
「却下だ」
「それじゃあ、こっちは?」
「却下だ」
エキドナが持ってきたのはどちらもビキニアーマーと変わらないぐらい露出度が高い服であった。「この変態、人の言葉を何にも聞いてねぇ」と思いながら、エキドナが折れるまで却下し続けた。
**********************************************
「今から神殿に入る。準備はいいか?」
クラウンがそう呼びかけると全員が頷いた。そして、案内役のドワーフの方へ向くと進むよう促した。その神殿に入るとすぐに道がいくつにも分かれていた。人工的に掘られている穴だ。これがおそらく炭鉱の道なのだろう。
「お、こんな所に良いもんがあったぜ」
「それなんです?」
「これは薬蜘蛛と言ってな、この蜘蛛が出す糸は治療効果があるんだ。まあ、さすがに回復薬には負けるがな」
「そうか、それならありがたく頂く」
「いいぜ......ってえええ!?」
そのドワーフはクラウンに蜘蛛を渡した瞬間、その蜘蛛をそのまま食い始めたことに驚いた。そのことはエキドナも思わず目を丸くした。すると隣にいるリリスが説明する。
「クラウンは覚醒魔力の効果でああして魔物を食べることで魔法を得るのよ」
「なるほどね。どうりで普通の人族にはありえない膂力と魔法があるのね。ねぇねぇ、だったらあっちの意味で食べられたらどうなってしまうのかしら?」
「凄いわね。もう逆に感心するわ、すぐにそっちの方に意識が向くなんて。もはや才能よ」
リリスはエキドナのその尋常なタフさに「さすが竜人族か」と思った。普通は目の前でゲテモノを食うところを見させられれば、引くのは当たり前。自分だって少しは引いた。だがまあ、なんとも慣れというのは恐ろしいものだ。
それから、案内されること5階層。ここでドワーフは止まった。
「それじゃあ、ここから先は頑張ってくれ。何があっても自己責任だぞ?」
「わかっている。ここまで感謝する」
そう言うとクラウンを筆頭に神殿攻略を開始した。
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