250 / 303
第3章 道化師は嘆く
第54話 ただの変態ではないみたい
しおりを挟む
「ねぇ、だ・ん・な・さ・ま♡少しベットでイチャイチャしてみないかしら?思わずエキサイティングなことに発展してしまうかもしれないけど、きっと楽しいわよ」
「リリス、これがサキュバスというものだ。あくまで俺の世界でのことだがな」
「あんたの世界、インモラルすぎるでしょ。私の同族でもここまでは稀よ。というか、竜人族はお堅い人が多いと聞いていたけど?」
「それは勝手な偏見よ。私のような健全ような同族もいれば、エッチがダメな不健全な同族もいるの。もちろん、これは例えの一つよ」
「例えが酷過ぎるでしょ......それにどこが健全よ!」
リリスは座っているクラウンに背後から抱きつくように絡みついているエキドナに思わず怒鳴った。しかし、エキドナはどこ吹く風といった様子で微笑むのみ。そして、クラウンにまた淫語を囁く。一方、クラウンはエキドナをまるで空気のように無視していく。
そのことにリリスは思わずため息を吐いた。クラウンが竜人族であるエキドナを欲しがったのはなんとなくわかる、わかるのだが......なぜこうも変態が集まるのか。いや、ベルはおかしくなってしまったのだけど。
それにしても「旦那様」とは何か。まだ自分も呼んだことないのに。一応、その呼び名の経緯を聞いているが、そう簡単に納得していいものなのか。まあ、この世界にはハーレムというのも存在するし、強い者は色を好むとも言う。クラウンの場合は現状、変態を好むになってしまうが。まあ、これに関してはそうそうに諦めた方が良いか。
「ふふっ、そう無視されると放置プレイの一環だと思って逆に興奮してきちゃうわ。熱を帯びて来るの特に下腹部辺りが」
「チッ、こいつ無敵か。黙ってろ、色欲竜が」
「なるほど、こうすれば主様は振り向くのですね」
「待たれよ、ベル。あれは学んではいかん。ベルはそのままのベルでいてくれ」
「はあ......混沌が舞い降りたわ」
エキドナが何かを話すたびに出て来る混沌さん。お呼びでないのにしゃしゃり出てくる。もはやエキドナのマブダチと言っても過言ではないであろう。この混沌さんをぶちのめすのは、クラウンしかいないのだが、そのクラウンもやられ気味。この収拾を誰がつけようというのか。
するとクラウンは時計を見て時間を確認すると立ち上がった。そして、何か目的が出来たかのように酒場を出ていく。エキドナはそれに興味本位でついていく。そのことにリリスと兵長は安堵した。それぞれ「この場に平穏が訪れる」、「ベルが染まらずに済む」と。
**********************************************
「なぜついてくる?」
「ふふっ、それはまだ旦那様のことを知り得てないからよ。駒として動くなら旦那様のことをより良く知っていた方が良い動きができるでしょ?あ、もちろん、ベットの上でもやりたいことはドンドン言ってみて、四十八手は全て知っているから」
「お前はそっちの流れに持って行かないと気が済まないのか。何を得たらそんなことを覚えるんだ?」
「あら、忘れてないかしら?私は情報屋よ。このくらいの知識は一般的な範囲よ」
「お前のどこが一般的なのか。歩くわいせつ物そのものじゃねぇか」
クラウンはそう言うとエキドナの服を見る。すると、相変わらずのベリーダンスの衣装。しかも、胸元はパックリと開いていて、下はまるで隠す気があるのかというぐらいのスケスケのスカート。それから周りの男どもの目線を集めて止まないほぼティーバッグといっていいパンツ。
「こいつには恥じらいの『は』の字も感じられない」と思わずため息を吐いた。別にどの恰好をしていようともこちらが気にすることはないのだが、周りの視線を一緒に感じるのがこの上なくうざったい。しかも.....
「あ、あんなところに太くて大きいのが♡」
「......」
もちろん、見ている先は通りにあるフランクフルトのような料理を売っている屋台だ。それに対してあの発言。しかも舌なめずりまで添えて。もはやわざとやっているとしか思えない言動。だが、これは自然とやっている言動なのだ。人を疑うことで培われた人の性を見抜くクラウンの観察眼はそれを真と答えた。それが分かって以降、クラウンはスルーという独自スキルを覚え始めた。
「ねぇ、少し食べてもいいかしら?時間をかけさせないわ。それから、旦那様の――――――――――」
「さっさと買って、勝手に食ってろ。俺は待たない」
「もういけず」
クラウンは冷ややかな目をしながらそう言って、立ち止まったエキドナを置いていって歩き始めた。その塩対応にはさすがのエキドナも不満そうに頬を膨らましたが、クラウンの後についていく。
そんなエキドナの言動を見ていた男達は柱に前のめりに決めポーズをしながら立ち止まっていたり、ベンチに座って足を組んだり、その場で突然腹筋を鍛え始める者もいた。その男達の全員に共通して言えるのは、股間あたりを隠していること。もうおわかりだろう。そういうことなのだ。
「突然だけれど、どうして仮面をつけているか聞いていいかしら?」
「......やはり気になるか?」
「さすがにそう思うわよ。会った当初は初対面であったから、聞くこともなかったけれど。こうして旦那様の妻になったからには――――――――」
「ねつ造するな。駒だろうが。......だが、言いたいことはわかる。しかし、お前を信用していない以上言えることは一つ。これは戒めだ」
「戒め?」
エキドナは思わず聞き返した。その仮面をつけていることにはなにかしらの意味があるだろうとは思っていたが、「戒め」とだけ言われてはさすがにわからない。それに、これを聞くことで何かを知れるかもしれないし。
すると、クラウンはゆっくりと口を開く。
「この仮面は俺の弱さの象徴だ。この仮面がある限り、俺は最強とはなれない」
「弱さね......それは、力のことかしら?それとも――――――」
エキドナはクラウンの前に立と真っ直ぐ瞳を合わせた。その目は先ほどとは一転して一切の曇りが無かった。そして、おそらく核心である方を言った。
「心かしら?」
「!」
「図星のようね......」
エキドナはクラウンの一瞬見開いた目を見逃さなかった。そして、そのことに思わず微笑んだ。最初に酒場で会った時はどんなイカれた少年だと思っていた。戦った時のあの殺気は特に。しかし、ふたを開けてみれば、ちゃんと心揺らめいている少年ではないか。
まあおそらくは、リリスとベルという二人の少女が、この少年の心をそこまでにしていったのだろう。だとしたら、自分が出来ることはあの二人が入りやすいようにもう少し心のスペースを広げてあげることだ。
「別に無理して外せなんてことは言わないわよ。ただ、周りにもちゃんと目を向けてあげて欲しいと思っているの。じゃなきゃ、あの二人が可哀そうよ?」
「......」
「旦那様は一人で生きているわけではない。支えがあって生きているのよ。それがわからないわけではないでしょ?」
「......そうだな、そうかもしれない」
クラウンはその言葉を聞いて過去のことを思い出した。それはあの森でロキという相棒を得て、リリスという協力者のおかげで聖王国を襲撃出来て、次なる目的地であった獣王国にも行けた。また、ベルと兵長の存在と協力があって獣王国にも入れた。そのことにはちゃんと感謝している。
「旦那様は自分の心の弱さに自信がないだけよ。弱さを隠そうとしているだけ。それは悪いことではないけれど、支えてくれる人がいるなら甘えてもいいんじゃない?それはもう『信用』よ。そうすれば、別に仮面を取ってしまってもいいんじゃないかしら?」
「......考えておく」
クラウンは何かを掴むように拳を握るとそこから一言も話さず歩き始めた。そして、その空気に合わせるようにエキドナも静かに数歩後ろをついていく。
そして、クラウンが着いた店は初日に訪れた道具屋である。そこに頼んでいた品を受け取りに来たのだ。
「よう、来たか。ちゃんと例の品は出来てるぜ。素材がとんでもなく固いもんだったから多少は時間がかかってしまったがな」
「構わん。見せてくれ」
クラウンはそれを受け取ると軽く上下に動かした。すると、手元から伸びた回転する駒のようなものはクラウンの動きに合わせて上下していく。その動きに異常がないことを確認するとクラウンは笑った。
「いい出来だ。これなら、遠くからでもそれなりに攻撃できるだろう。それにこの鉱石は魔法耐性があるんだったよな?」
「そうさな。正確には魔法に対して破壊されにくいといった感じだが。まあ、その認識でも間違っていない。後、追加で頼まれた服を作っておいたぞ?」
「服?」
クラウンは思わず聞き返した。なぜならそんなものを頼んだ覚えはないからだ。すると、そのドワーフは言葉を付け足す。
「一昨日に赤髪の嬢ちゃんがこの店に訪れたんだよ。それでお前さんと同じように『素材から作ってくれ』と頼んできたんだよ。そんで聞いてみれば、お前さんの仲間だって言うじゃないか。なら、出来上がったついでに渡しちまおうと思ってな」
「なるほど。それでその服というのは?」
クラウンはそのドワーフから作られた服を手に取った。素材が良いのか柔らかく、触り心地も悪くない。加えて、軽く伸ばしてみるが耐久度もかなりいいし、魔力を当てても魔力耐性もかかなり高い。これはおそらく自分へのお返しのつもりなのだろう。
するとその時、後方から大声が聞こえた。
「ああ!嘘......せっかく渡そうと思っていたのに......」
その声の主はリリス。そして、その悲しんだ声にドワーフは「しまった!」というような顔をする。
「そうだったのか!?悪い、そこまで気が回らんかった」
「いいわよ、こっちも言ってないしね」
リリスは「仕方ない」といったため息を吐きながらもクラウンに近づく。
「それでどう?私はあんたみたいに器用じゃないから作れないけど、これならいいでしょ?」
「そうだな、悪くない。助かる」
「!」
クラウンは通り過ぎざまにリリスの肩に手を置くとそう言いながら道具屋を後にした。その言葉にリリスは思わず肩を震わせる。それは嬉しさから来るもの。「助かる」その一言で、こんなにも嬉しくなるとは自分はどれだけチョロくなってしまったのか。
「良かったわね。思いはちゃんと伝わってるわよ」
「......そう......みたいね。良いことも言えるのね」
「ふふっ、これぐらいの気持ちならわかるわよ。私にも似たような子がいるから」
エキドナはそんなリリスに優しく声をかける。リリスはその言葉に同意しながらクラウンの後を追った。エキドナは微笑ましそうにその後をついていく。
「リリス、これがサキュバスというものだ。あくまで俺の世界でのことだがな」
「あんたの世界、インモラルすぎるでしょ。私の同族でもここまでは稀よ。というか、竜人族はお堅い人が多いと聞いていたけど?」
「それは勝手な偏見よ。私のような健全ような同族もいれば、エッチがダメな不健全な同族もいるの。もちろん、これは例えの一つよ」
「例えが酷過ぎるでしょ......それにどこが健全よ!」
リリスは座っているクラウンに背後から抱きつくように絡みついているエキドナに思わず怒鳴った。しかし、エキドナはどこ吹く風といった様子で微笑むのみ。そして、クラウンにまた淫語を囁く。一方、クラウンはエキドナをまるで空気のように無視していく。
そのことにリリスは思わずため息を吐いた。クラウンが竜人族であるエキドナを欲しがったのはなんとなくわかる、わかるのだが......なぜこうも変態が集まるのか。いや、ベルはおかしくなってしまったのだけど。
それにしても「旦那様」とは何か。まだ自分も呼んだことないのに。一応、その呼び名の経緯を聞いているが、そう簡単に納得していいものなのか。まあ、この世界にはハーレムというのも存在するし、強い者は色を好むとも言う。クラウンの場合は現状、変態を好むになってしまうが。まあ、これに関してはそうそうに諦めた方が良いか。
「ふふっ、そう無視されると放置プレイの一環だと思って逆に興奮してきちゃうわ。熱を帯びて来るの特に下腹部辺りが」
「チッ、こいつ無敵か。黙ってろ、色欲竜が」
「なるほど、こうすれば主様は振り向くのですね」
「待たれよ、ベル。あれは学んではいかん。ベルはそのままのベルでいてくれ」
「はあ......混沌が舞い降りたわ」
エキドナが何かを話すたびに出て来る混沌さん。お呼びでないのにしゃしゃり出てくる。もはやエキドナのマブダチと言っても過言ではないであろう。この混沌さんをぶちのめすのは、クラウンしかいないのだが、そのクラウンもやられ気味。この収拾を誰がつけようというのか。
するとクラウンは時計を見て時間を確認すると立ち上がった。そして、何か目的が出来たかのように酒場を出ていく。エキドナはそれに興味本位でついていく。そのことにリリスと兵長は安堵した。それぞれ「この場に平穏が訪れる」、「ベルが染まらずに済む」と。
**********************************************
「なぜついてくる?」
「ふふっ、それはまだ旦那様のことを知り得てないからよ。駒として動くなら旦那様のことをより良く知っていた方が良い動きができるでしょ?あ、もちろん、ベットの上でもやりたいことはドンドン言ってみて、四十八手は全て知っているから」
「お前はそっちの流れに持って行かないと気が済まないのか。何を得たらそんなことを覚えるんだ?」
「あら、忘れてないかしら?私は情報屋よ。このくらいの知識は一般的な範囲よ」
「お前のどこが一般的なのか。歩くわいせつ物そのものじゃねぇか」
クラウンはそう言うとエキドナの服を見る。すると、相変わらずのベリーダンスの衣装。しかも、胸元はパックリと開いていて、下はまるで隠す気があるのかというぐらいのスケスケのスカート。それから周りの男どもの目線を集めて止まないほぼティーバッグといっていいパンツ。
「こいつには恥じらいの『は』の字も感じられない」と思わずため息を吐いた。別にどの恰好をしていようともこちらが気にすることはないのだが、周りの視線を一緒に感じるのがこの上なくうざったい。しかも.....
「あ、あんなところに太くて大きいのが♡」
「......」
もちろん、見ている先は通りにあるフランクフルトのような料理を売っている屋台だ。それに対してあの発言。しかも舌なめずりまで添えて。もはやわざとやっているとしか思えない言動。だが、これは自然とやっている言動なのだ。人を疑うことで培われた人の性を見抜くクラウンの観察眼はそれを真と答えた。それが分かって以降、クラウンはスルーという独自スキルを覚え始めた。
「ねぇ、少し食べてもいいかしら?時間をかけさせないわ。それから、旦那様の――――――――――」
「さっさと買って、勝手に食ってろ。俺は待たない」
「もういけず」
クラウンは冷ややかな目をしながらそう言って、立ち止まったエキドナを置いていって歩き始めた。その塩対応にはさすがのエキドナも不満そうに頬を膨らましたが、クラウンの後についていく。
そんなエキドナの言動を見ていた男達は柱に前のめりに決めポーズをしながら立ち止まっていたり、ベンチに座って足を組んだり、その場で突然腹筋を鍛え始める者もいた。その男達の全員に共通して言えるのは、股間あたりを隠していること。もうおわかりだろう。そういうことなのだ。
「突然だけれど、どうして仮面をつけているか聞いていいかしら?」
「......やはり気になるか?」
「さすがにそう思うわよ。会った当初は初対面であったから、聞くこともなかったけれど。こうして旦那様の妻になったからには――――――――」
「ねつ造するな。駒だろうが。......だが、言いたいことはわかる。しかし、お前を信用していない以上言えることは一つ。これは戒めだ」
「戒め?」
エキドナは思わず聞き返した。その仮面をつけていることにはなにかしらの意味があるだろうとは思っていたが、「戒め」とだけ言われてはさすがにわからない。それに、これを聞くことで何かを知れるかもしれないし。
すると、クラウンはゆっくりと口を開く。
「この仮面は俺の弱さの象徴だ。この仮面がある限り、俺は最強とはなれない」
「弱さね......それは、力のことかしら?それとも――――――」
エキドナはクラウンの前に立と真っ直ぐ瞳を合わせた。その目は先ほどとは一転して一切の曇りが無かった。そして、おそらく核心である方を言った。
「心かしら?」
「!」
「図星のようね......」
エキドナはクラウンの一瞬見開いた目を見逃さなかった。そして、そのことに思わず微笑んだ。最初に酒場で会った時はどんなイカれた少年だと思っていた。戦った時のあの殺気は特に。しかし、ふたを開けてみれば、ちゃんと心揺らめいている少年ではないか。
まあおそらくは、リリスとベルという二人の少女が、この少年の心をそこまでにしていったのだろう。だとしたら、自分が出来ることはあの二人が入りやすいようにもう少し心のスペースを広げてあげることだ。
「別に無理して外せなんてことは言わないわよ。ただ、周りにもちゃんと目を向けてあげて欲しいと思っているの。じゃなきゃ、あの二人が可哀そうよ?」
「......」
「旦那様は一人で生きているわけではない。支えがあって生きているのよ。それがわからないわけではないでしょ?」
「......そうだな、そうかもしれない」
クラウンはその言葉を聞いて過去のことを思い出した。それはあの森でロキという相棒を得て、リリスという協力者のおかげで聖王国を襲撃出来て、次なる目的地であった獣王国にも行けた。また、ベルと兵長の存在と協力があって獣王国にも入れた。そのことにはちゃんと感謝している。
「旦那様は自分の心の弱さに自信がないだけよ。弱さを隠そうとしているだけ。それは悪いことではないけれど、支えてくれる人がいるなら甘えてもいいんじゃない?それはもう『信用』よ。そうすれば、別に仮面を取ってしまってもいいんじゃないかしら?」
「......考えておく」
クラウンは何かを掴むように拳を握るとそこから一言も話さず歩き始めた。そして、その空気に合わせるようにエキドナも静かに数歩後ろをついていく。
そして、クラウンが着いた店は初日に訪れた道具屋である。そこに頼んでいた品を受け取りに来たのだ。
「よう、来たか。ちゃんと例の品は出来てるぜ。素材がとんでもなく固いもんだったから多少は時間がかかってしまったがな」
「構わん。見せてくれ」
クラウンはそれを受け取ると軽く上下に動かした。すると、手元から伸びた回転する駒のようなものはクラウンの動きに合わせて上下していく。その動きに異常がないことを確認するとクラウンは笑った。
「いい出来だ。これなら、遠くからでもそれなりに攻撃できるだろう。それにこの鉱石は魔法耐性があるんだったよな?」
「そうさな。正確には魔法に対して破壊されにくいといった感じだが。まあ、その認識でも間違っていない。後、追加で頼まれた服を作っておいたぞ?」
「服?」
クラウンは思わず聞き返した。なぜならそんなものを頼んだ覚えはないからだ。すると、そのドワーフは言葉を付け足す。
「一昨日に赤髪の嬢ちゃんがこの店に訪れたんだよ。それでお前さんと同じように『素材から作ってくれ』と頼んできたんだよ。そんで聞いてみれば、お前さんの仲間だって言うじゃないか。なら、出来上がったついでに渡しちまおうと思ってな」
「なるほど。それでその服というのは?」
クラウンはそのドワーフから作られた服を手に取った。素材が良いのか柔らかく、触り心地も悪くない。加えて、軽く伸ばしてみるが耐久度もかなりいいし、魔力を当てても魔力耐性もかかなり高い。これはおそらく自分へのお返しのつもりなのだろう。
するとその時、後方から大声が聞こえた。
「ああ!嘘......せっかく渡そうと思っていたのに......」
その声の主はリリス。そして、その悲しんだ声にドワーフは「しまった!」というような顔をする。
「そうだったのか!?悪い、そこまで気が回らんかった」
「いいわよ、こっちも言ってないしね」
リリスは「仕方ない」といったため息を吐きながらもクラウンに近づく。
「それでどう?私はあんたみたいに器用じゃないから作れないけど、これならいいでしょ?」
「そうだな、悪くない。助かる」
「!」
クラウンは通り過ぎざまにリリスの肩に手を置くとそう言いながら道具屋を後にした。その言葉にリリスは思わず肩を震わせる。それは嬉しさから来るもの。「助かる」その一言で、こんなにも嬉しくなるとは自分はどれだけチョロくなってしまったのか。
「良かったわね。思いはちゃんと伝わってるわよ」
「......そう......みたいね。良いことも言えるのね」
「ふふっ、これぐらいの気持ちならわかるわよ。私にも似たような子がいるから」
エキドナはそんなリリスに優しく声をかける。リリスはその言葉に同意しながらクラウンの後を追った。エキドナは微笑ましそうにその後をついていく。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー
紫電のチュウニー
ファンタジー
第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)
転生前も、転生後も 俺は不幸だった。
生まれる前は弱視。
生まれ変わり後は盲目。
そんな人生をメルザは救ってくれた。
あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。
あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。
苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。
オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~
ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。
対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。
これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。
防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。
損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。
派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。
其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。
海上自衛隊版、出しました
→https://ncode.syosetu.com/n3744fn/
※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。
「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。
→https://ncode.syosetu.com/n3570fj/
「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。
→https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる