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間章 勇者の苦悩
第49話 たまにはゆっくりとした一日を
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「お疲れさまでした。大丈夫でしたか?」
翌日、スティナが響の部屋を訪れるとまずその一声をかけた。すると、響はドアを開けてスティナに「問題ないよ」と声をかけると部屋に招き入れた。
「あんな感じなんだな。人が死ぬのってさ。誰かが死んだって言うのは聞くけど、こんな気持ちになるとは思わなかった。それがたとえ憎む相手であったとしてもさ」
「そうですね。人が死ぬというのは、なんであっても辛く悲しいものです。ですが、この世界ではそれを背負って前向きに生きている人がほとんどです。ですから、あまり思い詰めないようにしte
ください」
「......そうするよ」
そうは言いつつも、響はその事を考えずにはいられなかった。気がつけば思い出すあの光景。あの感触。あのにおい。どれもこれもが衝撃的であった。そもそも人を殺すことさえ初めてなのだ。そう考えても仕方がない。
スティナもそんな響の心中を察してか、それ以上言葉を付け足すことはなかった。しかし、このままではいけないとも思ったのか、立ち上がると響の前に立った。
「たまには遊びましょう。響さんのおかげでこの国の協力も貰えました。ですから、正直言って帰るだけなのですが、まだこの国を十分に知り尽くしたわけではありません。なので、遊びます。ついてきてください」
「ちょ、待って、スティナ!?」
「問答無用です!」
スティナは響の手を掴むと無理やり立たせた。そして、そのまま手を引っ張って城下町へと向かっていった。
―――――――城下町
「コロシアムが終わったというのにまだこんなにいるんだな」
「そうですね。この国は元傭兵国家ですから、そういう武器関係では有名なんですよ」
そう言って指をさしながら説明してくれるスティナを響は優しい目で見ていた。そして、スティナの行動もなんとなく分かっていた。おそらく自分に気を遣ってのことだろうと。そんな優しさが身に染みて嬉しく感じる。
すると、スティナが「ここ、有名なんですよ」と言いながらその店に入っていく。響はそのスティナの後に続いて入ると思わずその人物に目を疑った。
「お久しぶりです。ご無沙汰していましたか?」
「あらやだん。誰かと思えば、スティナちゃんじゃない。もしかして、またお忍びで......と思っていたけど、どうやら違うようね。イイ男じゃない♡」
「ひっ!」
響はまさに女豹のような目をしたその女性?に舌なめずりしながら見られた瞬間、咄嗟にスティナの後ろに隠れた。身が......いや、もはや貞操が危険だと本能が告げていた。その女性?はそんな響の態度になぜか喜んだような表情をする。
「あらやだん、僕ちゃんは初心なのね。いや、もしかすると、私の魅力に溺れちゃったのかしらん。私って罪なお・ん・な♡」
「ひっ!」
その女性?はそう言いながら女豹の目で響にウインクをした。だが、そのウインクは響から見れば心臓を止める死神の鎌に等しい。なので、必死に見て見ぬふりをした。すると、そんな響を見かねたスティナが苦笑いをしながら話を進める。
「それでですね、今日訪れたのは、たまたまここの国に来る用事があって挨拶しようと思ったのもそうなんですけど、響さんに良い装備を買ってあげたいと思いまして」
「僕に?いいよ、そこまでしなくても」
響はスティナの言葉を聞くとすぐに否定した。これは「申し訳ない」という気持ちもあったが、それ以上に自分がもっと鍛えなければならないのはもっと別にあるのだ。それに今の勇者専用装備でも特に問題があると思ったことは一度もない。なので、特に装備を必要としていることはないのだ。
しかし、スティナは響の言うことを想定していたのか言葉をサラッと返す。
「これは私の無理な願いを叶えてくれた感謝の気持ちです。なので、受け取ってくれると嬉しいのです。それにもう一つ別の理由もあります」
「別の?」
「はい。それは私の国には優秀な付与術師が少ないのです。響さんのお仲間にも一人おられますが、その方に手伝っていただいても手が回っていないのです。それで訪れたのが、この方です。こう見えて優秀な付与術師なんですよ?」
「あら、スティナちゃん?『こう見えて』ってどう見えてるのかしら?」
その女性?はにこやかな笑みを浮かべながらも威圧感を感じさせるような口調で言った。その口調を聞いた瞬間、響はゾワッと来る間隔に襲われた。間違いない。この人は強者である。そう思ってか思わず唾を飲み込んだ。
そんな響の一方で、スティナは慈愛の籠ったような表情で「怪物という意味ですよ」と答えた。その言葉を見いた瞬間、響は心臓を掴まれたような気がした。明らかに知り合いとは言え、こういうタイプには絶対的なNGワードとも言える言葉をサラッと言ったのだ。しかも、その時の声は表情とは正反対に真顔で言う時の声で。
響は思わずスティナから数歩離れて、その女性とスティナを交互に見た。
「ふふふっ、スティナちゃん。面白い冗談を言うわねん」
「そうですか?私的には本気で言ったつもりだったんですが、毎日鏡見ておられます?」
「見てるわよ。隅から隅までね」
「「ふふふふふっ」」
「ひっ!」
響は思わず声が漏れた。明らかにキレてもいいような状況で二人ともニコニコした笑みを浮かべている。しかも、スティナに至っては今まで聞くことがないような口調である。そのことが響には恐怖でしかなかった。例えるならば、予選の時の殺気にまみれたフィールドと同じかもしれない。いや、精神的にはこっちの方が辛いかも。
「さて、小話はここまでにして......」
「こ、小話なの!?今のが!?」
「そうですよ?ですよね?」
「ええ、そうね。こんなものよ。まあ、スティナちゃんが私以外にこんな口調を見せるのは初めてだけど......あらん?あらあらあら、もしかしてスティナちゃん。そういうこと?」
「さあ、どうでしょう?ですが、なくはないですね」
「???」
響は二人の会話内容がわからなかった。スティナが他の人には見せないようなことをしたから何だというのか??それが分かるこのかいぶ.......ゲフンゲフン、女性らしき人物もどうなのだろうか?まあ、無理してこちらから聞くようなことはしないけど。
「それでですね、今ってオススメってありますか?あればそちらを見せてもらいたいんですけど」
「そうね......少し待っててもらえるかしらん」
そう言ってその女性?が店の奥に入ってから数分後、籠手やらローブやら弓やらを持ってきた。しかも、それぞれ色違いのものや若干形が違うものまで。おそらくこちらへと良いものを選んでもらうために持ってきたものであろう。見た目の割に親切な人である。
「響さん、こんな籠手とか良いんじゃないですか?」
「それは魔力の継続微弱回復と魔法効果強化が付与されているわん。昔はその二つは魔術師用のローブにつけていたことが多かったのだけど、ここ最近は魔法剣士または殴り魔術師っていうのが増えてきてね。案外そっちの方が需要があったりするのよ」
「そうだな......これなら僕に合うかもね。僕はタイプ的に言えば魔法剣士に入ると思うし」
「なら、これにしましょうか。色はどうします?」
「やっぱ、合わせるだったら白じゃないか?そもそもやっぱ目立つと思うんだよなー、あの色」
響はそう言いながらふと自分の装備を思い出した。その装備は基本的にはシンプルなのだが、絵に描いたような装備でまず基本的に白に近い銀色といった感じで実に目立つのだ。これを着て皆に見せた時の男子の笑いようといったら。とはいえ、せっかく用意してくれたものを無下には出来ないので、結局のところあのまま。
それを考えれば、逆に色の選択しなどないに等しい。全身が白に近くて、籠手だけが赤色なんてアンバランスさがいったいどれだけ際立つというのか。想像するのはそう難しくない。
「それではこれを頂きたいと思います」
「わかったわ。それで他にも何かあるかしら?」
「そうですね......響さん、雪姫さん達にもなにか買っていきたいので、少し時間を頂いても良いですか?
「構わないよ」
それから、スティナと響は終始楽しそうに話していた。時にはちょっとした思い出話も混じりながら。そして、数十分が経ったところで二人は買い物を終えた。いろんなものを物色しているとそれらの品はどれも質が高くて、値段は意外と高くない。なので、予想外にも多くのものを買ってしまった。全くあのかいぶ......ゲフンゲフン、女性らしき人はいい仕事をしてくれる。
「ふふふっ、まいどあり。これからもご贔屓にね。それから......」
「ひっ!」
その女性?は突如として響の首に腕を回すと顔を近づけた。その行動に響は思わず怯えた声を漏らす。するとその女性?は響の耳元でそっと呟く。
「あんまりスティナちゃんを蔑ろにしちゃダメよ。もし、そんなことをしたら私が化けて出るわよ?」
響はその言葉に驚きながらも首がもげるほど縦に頷いた。今の心象としては出来る限りこの女性から離れたかったのだ。特に異常にガッチリした胸板からは。
「!」
するとスティナがその女性?から響をガっと奪い取ると響を胸元へと引き寄せた。響は先ほどの板とは全く違う柔らかい感触を心なしか感じてしまった。そして、スティナから香る匂いはとても安心するものであった。
「ふふふっ、おいたはいけませんよ。それをするなら、まずは性別を変えてください」
「あらん、私はこれでも十分に魅力的よ?何十人もの男を通りすがりにノックアウトしてきたもの。もちろん、私が何かしら訳じゃないわよ」
「それは全く別の意味のノックアウトじゃなかろうか。いや、きっとそうだ。そうに違いない」と響が思ったのも無理はない。なんせ先ほど自分もそっちの意味でノックアウトさせられかけたのだから。
「ふふふっ、寝言は寝ていってください」
「ふふふっ、言うわね」
「「ふふふふふっ」」
響は思った。「早くこの場から去りたい」と。
翌日、スティナが響の部屋を訪れるとまずその一声をかけた。すると、響はドアを開けてスティナに「問題ないよ」と声をかけると部屋に招き入れた。
「あんな感じなんだな。人が死ぬのってさ。誰かが死んだって言うのは聞くけど、こんな気持ちになるとは思わなかった。それがたとえ憎む相手であったとしてもさ」
「そうですね。人が死ぬというのは、なんであっても辛く悲しいものです。ですが、この世界ではそれを背負って前向きに生きている人がほとんどです。ですから、あまり思い詰めないようにしte
ください」
「......そうするよ」
そうは言いつつも、響はその事を考えずにはいられなかった。気がつけば思い出すあの光景。あの感触。あのにおい。どれもこれもが衝撃的であった。そもそも人を殺すことさえ初めてなのだ。そう考えても仕方がない。
スティナもそんな響の心中を察してか、それ以上言葉を付け足すことはなかった。しかし、このままではいけないとも思ったのか、立ち上がると響の前に立った。
「たまには遊びましょう。響さんのおかげでこの国の協力も貰えました。ですから、正直言って帰るだけなのですが、まだこの国を十分に知り尽くしたわけではありません。なので、遊びます。ついてきてください」
「ちょ、待って、スティナ!?」
「問答無用です!」
スティナは響の手を掴むと無理やり立たせた。そして、そのまま手を引っ張って城下町へと向かっていった。
―――――――城下町
「コロシアムが終わったというのにまだこんなにいるんだな」
「そうですね。この国は元傭兵国家ですから、そういう武器関係では有名なんですよ」
そう言って指をさしながら説明してくれるスティナを響は優しい目で見ていた。そして、スティナの行動もなんとなく分かっていた。おそらく自分に気を遣ってのことだろうと。そんな優しさが身に染みて嬉しく感じる。
すると、スティナが「ここ、有名なんですよ」と言いながらその店に入っていく。響はそのスティナの後に続いて入ると思わずその人物に目を疑った。
「お久しぶりです。ご無沙汰していましたか?」
「あらやだん。誰かと思えば、スティナちゃんじゃない。もしかして、またお忍びで......と思っていたけど、どうやら違うようね。イイ男じゃない♡」
「ひっ!」
響はまさに女豹のような目をしたその女性?に舌なめずりしながら見られた瞬間、咄嗟にスティナの後ろに隠れた。身が......いや、もはや貞操が危険だと本能が告げていた。その女性?はそんな響の態度になぜか喜んだような表情をする。
「あらやだん、僕ちゃんは初心なのね。いや、もしかすると、私の魅力に溺れちゃったのかしらん。私って罪なお・ん・な♡」
「ひっ!」
その女性?はそう言いながら女豹の目で響にウインクをした。だが、そのウインクは響から見れば心臓を止める死神の鎌に等しい。なので、必死に見て見ぬふりをした。すると、そんな響を見かねたスティナが苦笑いをしながら話を進める。
「それでですね、今日訪れたのは、たまたまここの国に来る用事があって挨拶しようと思ったのもそうなんですけど、響さんに良い装備を買ってあげたいと思いまして」
「僕に?いいよ、そこまでしなくても」
響はスティナの言葉を聞くとすぐに否定した。これは「申し訳ない」という気持ちもあったが、それ以上に自分がもっと鍛えなければならないのはもっと別にあるのだ。それに今の勇者専用装備でも特に問題があると思ったことは一度もない。なので、特に装備を必要としていることはないのだ。
しかし、スティナは響の言うことを想定していたのか言葉をサラッと返す。
「これは私の無理な願いを叶えてくれた感謝の気持ちです。なので、受け取ってくれると嬉しいのです。それにもう一つ別の理由もあります」
「別の?」
「はい。それは私の国には優秀な付与術師が少ないのです。響さんのお仲間にも一人おられますが、その方に手伝っていただいても手が回っていないのです。それで訪れたのが、この方です。こう見えて優秀な付与術師なんですよ?」
「あら、スティナちゃん?『こう見えて』ってどう見えてるのかしら?」
その女性?はにこやかな笑みを浮かべながらも威圧感を感じさせるような口調で言った。その口調を聞いた瞬間、響はゾワッと来る間隔に襲われた。間違いない。この人は強者である。そう思ってか思わず唾を飲み込んだ。
そんな響の一方で、スティナは慈愛の籠ったような表情で「怪物という意味ですよ」と答えた。その言葉を見いた瞬間、響は心臓を掴まれたような気がした。明らかに知り合いとは言え、こういうタイプには絶対的なNGワードとも言える言葉をサラッと言ったのだ。しかも、その時の声は表情とは正反対に真顔で言う時の声で。
響は思わずスティナから数歩離れて、その女性とスティナを交互に見た。
「ふふふっ、スティナちゃん。面白い冗談を言うわねん」
「そうですか?私的には本気で言ったつもりだったんですが、毎日鏡見ておられます?」
「見てるわよ。隅から隅までね」
「「ふふふふふっ」」
「ひっ!」
響は思わず声が漏れた。明らかにキレてもいいような状況で二人ともニコニコした笑みを浮かべている。しかも、スティナに至っては今まで聞くことがないような口調である。そのことが響には恐怖でしかなかった。例えるならば、予選の時の殺気にまみれたフィールドと同じかもしれない。いや、精神的にはこっちの方が辛いかも。
「さて、小話はここまでにして......」
「こ、小話なの!?今のが!?」
「そうですよ?ですよね?」
「ええ、そうね。こんなものよ。まあ、スティナちゃんが私以外にこんな口調を見せるのは初めてだけど......あらん?あらあらあら、もしかしてスティナちゃん。そういうこと?」
「さあ、どうでしょう?ですが、なくはないですね」
「???」
響は二人の会話内容がわからなかった。スティナが他の人には見せないようなことをしたから何だというのか??それが分かるこのかいぶ.......ゲフンゲフン、女性らしき人物もどうなのだろうか?まあ、無理してこちらから聞くようなことはしないけど。
「それでですね、今ってオススメってありますか?あればそちらを見せてもらいたいんですけど」
「そうね......少し待っててもらえるかしらん」
そう言ってその女性?が店の奥に入ってから数分後、籠手やらローブやら弓やらを持ってきた。しかも、それぞれ色違いのものや若干形が違うものまで。おそらくこちらへと良いものを選んでもらうために持ってきたものであろう。見た目の割に親切な人である。
「響さん、こんな籠手とか良いんじゃないですか?」
「それは魔力の継続微弱回復と魔法効果強化が付与されているわん。昔はその二つは魔術師用のローブにつけていたことが多かったのだけど、ここ最近は魔法剣士または殴り魔術師っていうのが増えてきてね。案外そっちの方が需要があったりするのよ」
「そうだな......これなら僕に合うかもね。僕はタイプ的に言えば魔法剣士に入ると思うし」
「なら、これにしましょうか。色はどうします?」
「やっぱ、合わせるだったら白じゃないか?そもそもやっぱ目立つと思うんだよなー、あの色」
響はそう言いながらふと自分の装備を思い出した。その装備は基本的にはシンプルなのだが、絵に描いたような装備でまず基本的に白に近い銀色といった感じで実に目立つのだ。これを着て皆に見せた時の男子の笑いようといったら。とはいえ、せっかく用意してくれたものを無下には出来ないので、結局のところあのまま。
それを考えれば、逆に色の選択しなどないに等しい。全身が白に近くて、籠手だけが赤色なんてアンバランスさがいったいどれだけ際立つというのか。想像するのはそう難しくない。
「それではこれを頂きたいと思います」
「わかったわ。それで他にも何かあるかしら?」
「そうですね......響さん、雪姫さん達にもなにか買っていきたいので、少し時間を頂いても良いですか?
「構わないよ」
それから、スティナと響は終始楽しそうに話していた。時にはちょっとした思い出話も混じりながら。そして、数十分が経ったところで二人は買い物を終えた。いろんなものを物色しているとそれらの品はどれも質が高くて、値段は意外と高くない。なので、予想外にも多くのものを買ってしまった。全くあのかいぶ......ゲフンゲフン、女性らしき人はいい仕事をしてくれる。
「ふふふっ、まいどあり。これからもご贔屓にね。それから......」
「ひっ!」
その女性?は突如として響の首に腕を回すと顔を近づけた。その行動に響は思わず怯えた声を漏らす。するとその女性?は響の耳元でそっと呟く。
「あんまりスティナちゃんを蔑ろにしちゃダメよ。もし、そんなことをしたら私が化けて出るわよ?」
響はその言葉に驚きながらも首がもげるほど縦に頷いた。今の心象としては出来る限りこの女性から離れたかったのだ。特に異常にガッチリした胸板からは。
「!」
するとスティナがその女性?から響をガっと奪い取ると響を胸元へと引き寄せた。響は先ほどの板とは全く違う柔らかい感触を心なしか感じてしまった。そして、スティナから香る匂いはとても安心するものであった。
「ふふふっ、おいたはいけませんよ。それをするなら、まずは性別を変えてください」
「あらん、私はこれでも十分に魅力的よ?何十人もの男を通りすがりにノックアウトしてきたもの。もちろん、私が何かしら訳じゃないわよ」
「それは全く別の意味のノックアウトじゃなかろうか。いや、きっとそうだ。そうに違いない」と響が思ったのも無理はない。なんせ先ほど自分もそっちの意味でノックアウトさせられかけたのだから。
「ふふふっ、寝言は寝ていってください」
「ふふふっ、言うわね」
「「ふふふふふっ」」
響は思った。「早くこの場から去りたい」と。
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