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2話 魔法の修行
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次の日、俺は父さんに連れられて庭に出ていた。
ウチはどうやら田舎にあるようで、外を見渡しても畑、畑、時々家屋みたいな環境。
もしかしたらこの世界自体がこういう土地しかないのかもしれないし、遠い山の向こうに都会があるのかもしれない。
だからこそ庭では目一杯魔法を使っても大丈夫そうだ。
「よし、エリアス! 今日はお前の大好きな父さんが、魔法を教えてやる! ビシビシ行くからな」
「はい、お願いします!」
「お、エリアスは礼儀正しい子だな~。見たかレイナ! ウチの子は天才なのかもしれないぞ!」
俺がひょこっと頭を下げただけでこの騒ぎ、端で見ている母さんも「そりゃ私とセルディの子なんだから」と鼻高々に笑む。
こんな親バカが師匠だなんてと思ったが、一応彼も名の通った魔導士らしい。
どの程度かは聞いたことない、そもそも3歳の子供相手に細かい説明なんてしないだろうしな。
「さてエリアス、一応父さんA級冒険者の魔導師でな、ちょっとばかし魔法は得意なんだっ!」
「へぇ父さんすごい人なんだ!」
「それほどでもないぞ、ナハハッ!!」
ニタニタと褒めろとばかりに視線を送ってくる父親をとりあえずスゴイスゴイしてあげたが、本当にすごいことらしい。
A級とは魔導士の中でも最高位であるS級の次に高い階級で上から数えて2番目に高く、世界規模でみても1割もいないレベルだという。
ならS級はどんだけ難しいって話だが。
……と話が少し脇道に逸れたが、いよいよ今から修行の時間だ。
「いいか、魔法に必要なのは魔力。この魔力は元々体に宿っているんだ。まずはそれを感じるところから始めよう」
父曰く、俺達人族にはちょうどお腹の辺りに魔力器官という小さな組織があるらしく、そこから全身に魔力を巡らせるらしい。
もっとも、脳からの指令によって魔力器官が作用するため、一説では脳の一部から魔力が送られているんじゃないかとも言われているとのことだ。
ったく3歳児にどんな難しい説明をしてんだよ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「全身に魔力を流すように……」
俺は頭の中でイメージをしていく。
こういう時、転生者の特権っていうの?
前世の時にあったアニメの記憶じゃ、なんかパーッと集中してサッとできちゃったりしてたよな。
もしかして今の俺にもそれだけの実力があるんじゃないかなんて思いながら、閉眼して体内の魔力を探し出す。
なんたって元剣聖だからな、それくらいの才能があってもいいじゃないか。
それから少し時間が経過する。
体感的には10分くらいか。
「なんっにも分かんないよっ!!」
ついににしびれを切らして父さんへそう訴えた。
何が元剣聖だ、自分で思ってて恥ずかしくなってきたぞ。
「ははっ! 最初はそんなもんさ。エリアス、手貸してみろ」
「え、こう?」
俺は掌を上に向けてから差し出すと、父は同じ目線になるようしゃがみ込み、優しく手を握ってくる。
「今、俺の魔力をエリアスに流している。どうだ、感じるか?」
どうやら父は自分の魔力を俺に流すことで、まずは感じ方を教えてくれているようだ。
たしかになんか感じる。
体を巡っている何か。
血液とは違う、全身があったかくなるような。
父親のだからかめっちゃ濃い。
濃いくて青い感じのイメージ。
今思えば、俺が剣聖だった頃は『氣』というエネルギーを使っていた。
これは誰もが持つ体を動かすためのエネルギー。
俺達はそれを全身に巡らせることで身体能力を向上させ戦うことができていたのだが、この魔力の流れというのはその感覚に似ている気がする。
「あったかくて青いものを感じるような……」
「おっ! いいぞ、そのまま集中だ」
俺は指示に従って目を瞑ったままそれを循環させていく。
今自分の中で確実に何かが巡っている。
無色透明の『氣』とは違う青い何か。
これがおそらく『魔力』ってやつなのだろう。
「エリアス、感じられたか?」
「うん、多分わかった気がする」
「そうか。レイナッ! やっぱりウチの子は天才だぞぉ!!!」
愉しげな父さんに母さんは「はいはい」と苦笑を浮かべている。
「父さん、次はどうすればいいの?」
セルディの親バカにより修行が進まないので自ら話を進行させた。
「おぉ、エリアスは真面目な子だな。次から難易度はグッと上がる。よく見ててくれ」
そう言った父さんが掌を上に向けたと思えば、手掌全体からさっき俺が感じたのと同じ青いエネルギーが具現化し、天へ立ち昇っていく。
「わぁ、すごい……」
「今のが2段階目、体の中に感じた魔力を掌の上で具現化させる。魔法を使う上で一番の基礎的な部分だ。人によっては会得するのに半年、いや1年近くかかることだってある。それに皆これを覚えるのは学校に行き始めた6歳頃からだし、そんなに焦って今練習しなくてもいい……」
「父さん、こう、かな?」
なんとなく真似してみたらできた。
とはいえ、父さんみたいに何メートルも高く立ち昇るわけじゃなく、パッと見5センチ程度のものだけど。
「おま……っ! エリアス、どうやって……!?」
「どうやってって父さんの真似をしただけだよ」
父は目を丸くして、驚きを隠せないといった様子。
それに母のレイナも口元を手で覆い隠し、キャー、と悲鳴をあげている。
ちょっと2人とも、何その反応。
せめていいのか悪いのかを教えてくれ。
2人揃って俺をまじまじと見てくるけど、これ異端児過ぎて山に捨てられるとかないよな?
やめて、マジで怖いって。
あとゆっくり俺に近づいてくるのマジで怖いから。
後ずさる俺と完全に両親が距離を詰めきったところで、まずセルディが声を上げる。
「魔力の具現化を1発で成功させるなど聞いたことない! レイナ、やっぱりウチの子は天才だったぞ!!」
いやいや、そんな大袈裟なことをなんて思っていると、
「ええ、あなた……っ! この子は私達の力で立派な魔導士にしてあげましょっ!」
母親まで舞い上がり始め、2人は熱い抱擁を交わす。
「あの……父さん、続きを」
いや、まだ炎とか雷とか出してないんだけど?
早く修行の続きしたいんだけど!?
「やはり俺の目に狂いはなかったな!」
「伝説のS級冒険者になれる逸材かもしれないわ!」
相も変わらず2人は騒ぎ立てている。
今日はもう修行進まないだろうな、と俺は親バカ2人を眺めつつ諦めのムードを漂わせるのだった。
――それから半年後
4歳になった俺は、魔法習得の3段階目『性質変化』を半年余りでなんとか形にした。
そして1番の変化、これまで禁止されてきた外でのお散歩が可能になったのである。
ウチはどうやら田舎にあるようで、外を見渡しても畑、畑、時々家屋みたいな環境。
もしかしたらこの世界自体がこういう土地しかないのかもしれないし、遠い山の向こうに都会があるのかもしれない。
だからこそ庭では目一杯魔法を使っても大丈夫そうだ。
「よし、エリアス! 今日はお前の大好きな父さんが、魔法を教えてやる! ビシビシ行くからな」
「はい、お願いします!」
「お、エリアスは礼儀正しい子だな~。見たかレイナ! ウチの子は天才なのかもしれないぞ!」
俺がひょこっと頭を下げただけでこの騒ぎ、端で見ている母さんも「そりゃ私とセルディの子なんだから」と鼻高々に笑む。
こんな親バカが師匠だなんてと思ったが、一応彼も名の通った魔導士らしい。
どの程度かは聞いたことない、そもそも3歳の子供相手に細かい説明なんてしないだろうしな。
「さてエリアス、一応父さんA級冒険者の魔導師でな、ちょっとばかし魔法は得意なんだっ!」
「へぇ父さんすごい人なんだ!」
「それほどでもないぞ、ナハハッ!!」
ニタニタと褒めろとばかりに視線を送ってくる父親をとりあえずスゴイスゴイしてあげたが、本当にすごいことらしい。
A級とは魔導士の中でも最高位であるS級の次に高い階級で上から数えて2番目に高く、世界規模でみても1割もいないレベルだという。
ならS級はどんだけ難しいって話だが。
……と話が少し脇道に逸れたが、いよいよ今から修行の時間だ。
「いいか、魔法に必要なのは魔力。この魔力は元々体に宿っているんだ。まずはそれを感じるところから始めよう」
父曰く、俺達人族にはちょうどお腹の辺りに魔力器官という小さな組織があるらしく、そこから全身に魔力を巡らせるらしい。
もっとも、脳からの指令によって魔力器官が作用するため、一説では脳の一部から魔力が送られているんじゃないかとも言われているとのことだ。
ったく3歳児にどんな難しい説明をしてんだよ、俺でなきゃ見逃しちゃうね。
「全身に魔力を流すように……」
俺は頭の中でイメージをしていく。
こういう時、転生者の特権っていうの?
前世の時にあったアニメの記憶じゃ、なんかパーッと集中してサッとできちゃったりしてたよな。
もしかして今の俺にもそれだけの実力があるんじゃないかなんて思いながら、閉眼して体内の魔力を探し出す。
なんたって元剣聖だからな、それくらいの才能があってもいいじゃないか。
それから少し時間が経過する。
体感的には10分くらいか。
「なんっにも分かんないよっ!!」
ついににしびれを切らして父さんへそう訴えた。
何が元剣聖だ、自分で思ってて恥ずかしくなってきたぞ。
「ははっ! 最初はそんなもんさ。エリアス、手貸してみろ」
「え、こう?」
俺は掌を上に向けてから差し出すと、父は同じ目線になるようしゃがみ込み、優しく手を握ってくる。
「今、俺の魔力をエリアスに流している。どうだ、感じるか?」
どうやら父は自分の魔力を俺に流すことで、まずは感じ方を教えてくれているようだ。
たしかになんか感じる。
体を巡っている何か。
血液とは違う、全身があったかくなるような。
父親のだからかめっちゃ濃い。
濃いくて青い感じのイメージ。
今思えば、俺が剣聖だった頃は『氣』というエネルギーを使っていた。
これは誰もが持つ体を動かすためのエネルギー。
俺達はそれを全身に巡らせることで身体能力を向上させ戦うことができていたのだが、この魔力の流れというのはその感覚に似ている気がする。
「あったかくて青いものを感じるような……」
「おっ! いいぞ、そのまま集中だ」
俺は指示に従って目を瞑ったままそれを循環させていく。
今自分の中で確実に何かが巡っている。
無色透明の『氣』とは違う青い何か。
これがおそらく『魔力』ってやつなのだろう。
「エリアス、感じられたか?」
「うん、多分わかった気がする」
「そうか。レイナッ! やっぱりウチの子は天才だぞぉ!!!」
愉しげな父さんに母さんは「はいはい」と苦笑を浮かべている。
「父さん、次はどうすればいいの?」
セルディの親バカにより修行が進まないので自ら話を進行させた。
「おぉ、エリアスは真面目な子だな。次から難易度はグッと上がる。よく見ててくれ」
そう言った父さんが掌を上に向けたと思えば、手掌全体からさっき俺が感じたのと同じ青いエネルギーが具現化し、天へ立ち昇っていく。
「わぁ、すごい……」
「今のが2段階目、体の中に感じた魔力を掌の上で具現化させる。魔法を使う上で一番の基礎的な部分だ。人によっては会得するのに半年、いや1年近くかかることだってある。それに皆これを覚えるのは学校に行き始めた6歳頃からだし、そんなに焦って今練習しなくてもいい……」
「父さん、こう、かな?」
なんとなく真似してみたらできた。
とはいえ、父さんみたいに何メートルも高く立ち昇るわけじゃなく、パッと見5センチ程度のものだけど。
「おま……っ! エリアス、どうやって……!?」
「どうやってって父さんの真似をしただけだよ」
父は目を丸くして、驚きを隠せないといった様子。
それに母のレイナも口元を手で覆い隠し、キャー、と悲鳴をあげている。
ちょっと2人とも、何その反応。
せめていいのか悪いのかを教えてくれ。
2人揃って俺をまじまじと見てくるけど、これ異端児過ぎて山に捨てられるとかないよな?
やめて、マジで怖いって。
あとゆっくり俺に近づいてくるのマジで怖いから。
後ずさる俺と完全に両親が距離を詰めきったところで、まずセルディが声を上げる。
「魔力の具現化を1発で成功させるなど聞いたことない! レイナ、やっぱりウチの子は天才だったぞ!!」
いやいや、そんな大袈裟なことをなんて思っていると、
「ええ、あなた……っ! この子は私達の力で立派な魔導士にしてあげましょっ!」
母親まで舞い上がり始め、2人は熱い抱擁を交わす。
「あの……父さん、続きを」
いや、まだ炎とか雷とか出してないんだけど?
早く修行の続きしたいんだけど!?
「やはり俺の目に狂いはなかったな!」
「伝説のS級冒険者になれる逸材かもしれないわ!」
相も変わらず2人は騒ぎ立てている。
今日はもう修行進まないだろうな、と俺は親バカ2人を眺めつつ諦めのムードを漂わせるのだった。
――それから半年後
4歳になった俺は、魔法習得の3段階目『性質変化』を半年余りでなんとか形にした。
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