無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

文字の大きさ
上 下
127 / 129
5章 シャドウバレー編

涙の再会と別れ

しおりを挟む
 そして目の前には俺の魔法にとって再構築された絶世の美女が現れた。
 金髪ロングのにポニーテールに美しいというより可愛いが似合う童顔な顔立ち。
 妖精とは違う人間サイズだが、それでも小柄な身長で、曲線的で凹凸のはっきりとした体つき。
 胸も大きく……っとそこで気づいたが、

「え、はだか……!? 」

「「あ――――っ!! ダメダメっ! 」」

 突如大きく声を出して駆け寄ってきたのはミアとナコだ。
 さっきまで静かに舞台を静観していたようだが、ここにきて1番の声を張り上げてきた。
 そして彼女達が羽織っていた服の一部をセレスティアの器へ急いで羽織らせる。

 どうやらこの魔法で再構築できるのは器のみで以前身に付けていたものは難しいようだ。
 それでもすごい魔法のなのだが。

「セレスティア様、それにしてもすごい体つき……じゃなかった、えっと再構築した見た目で間違いないでしょうか? 」

「え……うん合ってるけど 」

 セレスティア様が冷たい目で俺を見てくる。
 一緒に旅をしていた妖精の姿のこの子にそんな目を向けられことがないのでなんとも悲しい気持ちになった。

「えっとじゃあ魂の移動的なことはできますでしょうか? 」

「うん、できるよ。 ただ一瞬この身体は気を失うからその間、支えてあげて? 」

「はい、わかりました 」
 
 セレスティアは近付いてきたので、彼女を支えられるように俺は両手の平を上にして差し出した。

「じゃ、お願いね。それと……ありがとう 」

 彼女はそう言った途端、意識を失った。

 それと同時にミアとナコによって支えられている金髪美女の器は少しずつ目をあけ、意識を取り戻す。

「……ん、えーっとこれで戻ったのかしら? 」

 彼女達に支えられていたセレスティア様は自分で少し動き、肩を回したり背伸びをしたりしている。
 身体が動くか試しているのだろう。

「戻れたみたいですね 」

 俺がそう口にすると、

「えぇ、本当に戻れるなんて……  」

 そう言う彼女は目に涙を浮かべている。
 そりゃ念願の復活だ。
 思うところも色々あるのだろう。

「良かったですね 」

「えぇ、本当にありがとう。あなた達も私の身体を支えてくれてありがとう。あとこの服もね 」

 そう言って彼女はミアとナコを撫で回る。
 2人して少し嬉しそうにしているが、このセレスティア様は姉御肌的なものなのだろうか。

 そうしているとすぐに、俺の手元にも少し反応があった。
 ふと目を落とすと、

「ん……春陽? もしかして成功したの? 」

 眠たそうな目を擦りながら、妖精の姿をした彼女は目を覚ました。

「ティア……じゃなくてレイラ、だったな。 レイラ、目が覚めて良かった! 」

 俺は嬉しさのあまり強く手を握ってしまい、

「い、痛い――っ! 痛いよ、春陽――っ! 」

「あ、ごめんごめん。無事なのが嬉しくて。それよりレイラ、動けるか? 」

「うん、なんとか動けそうだよ 」

 そう言って彼女はその妖精の羽で身体を浮かせてみせた。

「お姉さんも目を覚ましたよ。 いってあげな 」

「いいえ、私が行くわ 」

 そう言ったセレスティアはもうすでに俺の目の前にいた。

 レイラは姉を見て、少し困惑している。
 妹としては神を全て殺すこと、身体を乗っ取られたこと……納得できないことは多いはずだ。
 そんな反応になるのも無理はない。

「おねーちゃん……  」

「レイラ、本当にごめん。私不器用なの。こんなやり方しか思いつかなかった。レイラがもう私のことを信じられない、顔も見たくない色んな気持ちがあるのも仕方がないと思う。私はそれだけのことをした、あなたを裏切ってしまったのだから。でも私は何よリもレイラが大切、それは変わらないわ。それだけは分かっていて欲しいの 」

「ねぇ! そんな風に思ってたの? ボクがおねーちゃんのこと嫌いになるわけないでしょ? 」

「レイラ…… 」

「仮にボクがおねーちゃんのことが嫌いなら最初っから手伝ってないよ? たしかにさ、神を殺すことだって乗っ取られることだって思いもしなかったけど、それはきっとボクを気遣ってだって分かってた。 だからね、そんな顔しないでよ。おねーちゃん……  」

「ありがとう、レイラ 」

 2人の姉妹はお互いの気持ちを確かめた後、力強い抱擁を交わし、共に泣き合っている。
 そんな姉妹の姿を見て、俺は疎か周りの皆も感動していた。

 本当にこれでハッピーエンドだな。

 そんな時心の中から声がかかった。

 (春陽、感動のところ悪いが時間だ )

 アウロラ?
 時間ってのはどういうことだ?

 (そういえば【聖・龍人セイントドラゴニュート】のデメリット話してなかったな )

 そうだ、あの魔法を使う前、アウロラがそんな話をしていたな。
 そのデメリットってなんだ?

 (なに、お前には関係のないことだ。我が消える、それだけのこと。全ての魔力を使わなければあの力は発揮できなかったのだ。ただ春陽には別れを言っておきたくてな )

 なんだって!?
 なんでそんな大事なこと黙ってたんだよ。

 (あの状況だ。一つの判断が命取りになっていた。我が初めにそれを伝えていたら結果それでも力を使ったかもしれないが、春陽は我を思って少しでも躊躇したであろう? あの場ではそうするしかなかったのだ )

 たしかにあの時そのことを伝えられていたら少し迷ったかもしれない。
 いやかなり迷った、そしてその躊躇している間に攻め込まれていてもおかしくなかった。
 彼はそれが分かっていたために苦渋の選択をしてくれたのだ。


 (悪いな、本当にもう時間のようだ。ありがとう。お前とあの時出会えて良かった。初めはただ依代としてだったが、お前の成長を見届けているうちになんだか親心みたいなものが芽生えていたのかもな。だから本当はまだずっとここにいたかったが、我はここまでのようだ。これからも息子の幸せを祈っている。じゃあな、春陽 )

 あ……あぁ、この胸の中にあったアウロラの魔力、たしかにここにあったものが少しずつ消えていくのが分かる。
 待ってくれ、俺だってこれからまだまだ過ごしたかった。
 今まで助けられてきたのだ、恩返しすらまだできていない。
 こんなところで別れるなんてやりきれないじゃないか……。

 そういつものように心の中でアウロラに訴えるが、返事はない。
 もちろんさっきまで感じていた魔力も感じなくなっていた。
 俺はそこで初めて確信した、もう彼はいないのだと。

 周りが姉妹愛をみて感動している中、俺1人悲しみの涙を静かに流したのであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...