無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

文字の大きさ
上 下
119 / 129
5章 シャドウバレー編

彼女の目的

しおりを挟む
 アーカシス様の突き止めた真実は見事に的を得ていたようだ。

「しかしアーカシス、どうやってここまできたの? シャドウバレーには神が侵入できない結界が外にあったでしょ? 例え空間を使ったとしても通れないはずだけど? 」

「それはね、これを使ったんだ! 」

 彼は小さな手のひらサイズの箱のようなものを握っている。

 それを見たセレスティアは首を傾げていた。
 もちろん俺も全く分からない。

「アーカシス様、それは? 」

「これはだね、んー特に名前をつけているわけじゃないからなぁ……。僕が作ったんだけど、これは神様を無力化して封印することができる箱さ。これで封印されたままシャドウバレーへ到着して彼らに封印を解いてもらったってわけだ。セレスティアやマルコスがこの大陸にいるんだ、通れないことはないだろうと思ってね。少し賭けだったけど 」

 つまりは神様のままじゃ通れないから神様としての力を封印した状態で通って、その後解放したってことだな。
 さすがアーカシス様、考えたものだ。

「そうだったんですね。 あ!それと2人とも、ナイトフォールの戦いからそんなに経ってないだろ? なんで身体大丈夫なんだ? 」

「あーえっとだな、実は俺達2日後からきたんだ! 」

「……はい? 」

 それってタイムリープ的なやつか?
 そんなバカなことができてたまりますか。
 いや……でもカイルは正直なやつだし、そういえばあいつの魔法、時空間魔法とか言ってたような気もする。

「カイルくんっ! 春陽さん頭いっぱいになってる! 説明が少なすぎるよ! 」

「あぁ悪い悪い! 俺の魔法はどうやら過去や未来に移動することもできるみたいでな。俺達はあの戦いから2日間身体を休めてからこっちに来たんだ。 おかげで俺の魔力はスッカラカンだけどなっ!  」

 魔法を仕組みは分からんけど、とりあえず未来から来たことだけは分かった。
 よくそんなもんリスクなくできるな。

「でもアーカシス、君がここに来てくれてよかった。 どうせこの後殺しに行くつもりだったしねっ! 」

 セレスティアはいつもの口調でそう口にする。
 本当にこれが彼女なのか?
 未だに信じられない自分がいる。

「そうか、それはちょうどよかったな。 ならついでに質問だ。 セレスティア、お前は神全ての力を手に入れて何をするつもりだ? まさか姉を蘇らしたいだけじゃないだろうな?  」

「そうだけど、なんか問題ある?  」

「お前、それだけのことでこの世界を司る神全員を殺すってのか?」

「それだけのこと……?  ボクからしたらこの世界の神なんかよりおねーちゃんの方が大事だって思うのは当たり前のことでしょ?  」

「……そうか。 そうだよな  」

 アーカシス様は返す言葉を失っている。

「春陽、ボク……君には死んで欲しくないって思うんだ。 だから大人しくノクティスの力譲ってよ。 さっきの鎖の魔法を使えば簡単でしょ?  」

「ティア、ありがとう。 でも俺がこの力を渡したら、お前はアーカシス様やアリア様を殺しに行くだろ?  」

「うん。  でもね、もし春陽が渡さなかったとしても2人を殺しに行くつもりだよ  」

 セレスティアはどうしても残りの神様を殺すつもりらしい。
 俺は……どうするべきなんだろう。

すると彼女はいつも通りの表情で俺の傍にやってきて、

「ボクはどうしてもおねーちゃんにもう一度会いたいんだっ! 頼むよ  」

 セレスティアは以前とは何も変わらないその表情で俺に訴えかけてくる。

「ティア……他の方法を考えないか?  神様を殺さずにおねーちゃんを生き返らせる方法を! どれだけ時間がかかってもいい! 俺も一緒に探すからさ  」

 俺の言葉に対して彼女はため息をつき、

「はぁ……。 春陽もそんなきれいごと言うんだね。 だからそんな方法あったらボクだってそうしたいさ! 」

 そう言うが、そんな彼女の目には拭いきれないほどの涙が溜め込まれていた。

 きっと彼女も試行錯誤したんだろう。
 みんなが幸せになる方法を。
 だけどなかった。
 それが今の現状……といったところか。

「もういい……  」

 セレスティアは俯きながらそう言葉を洩らす。

「ティア?  」

 俺がそう声をかけると彼女は顔を上げ、

「ボクの魔力全部使って丸ごと世界を壊すっ!  聖属性魔法【  ホーリーロウ⠀】」

 魔法を唱えた。

 セレスティアは両手を天に掲げ、その手を介して彼女の全ての魔力が上空へ昇っていく。

「あれは……っ!? 」

 アーカシス様には何か覚えがあるようだ。

「アーカシス様……知ってるんですか?  」

「あぁ、彼女の姉……本当のセレスティアが魔力抗争で使った大魔法だっ! しかもあいつ全魔力ぶち込みやがったか  」

 彼の表情からして、ヤバいことが起こるみたいだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

劣等冒険者の成り上がり無双~現代アイテムで世界を極める~

絢乃
ファンタジー
 F級冒険者のルシアスは無能なのでPTを追放されてしまう。  彼は冒険者を引退しようか悩む。  そんな時、ルシアスは道端に落ちていた謎のアイテム拾った。  これがとんでもない能力を秘めたチートアイテムだったため、彼の人生は一変することになる。  これは、別の世界に存在するアイテム(アサルトライフル、洗濯乾燥機、DVDなど)に感動し、駆使しながら成り上がる青年の物語。  努力だけでは届かぬ絶対的な才能の差を、チートアイテムで覆す!

千技の魔剣士 器用貧乏と蔑まれた少年はスキルを千個覚えて無双する

大豆茶
ファンタジー
とある男爵家にて、神童と呼ばれる少年がいた。 少年の名はユーリ・グランマード。 剣の強さを信条とするグランマード家において、ユーリは常人なら十年はかかる【剣術】のスキルレベルを、わずか三ヶ月、しかも若干六歳という若さで『レベル3』まで上げてみせた。 先に修練を始めていた兄をあっという間に超え、父ミゲルから大きな期待を寄せられるが、ある日に転機が訪れる。 生まれ持つ【加護】を明らかにする儀式を受けたユーリが持っていたのは、【器用貧乏】という、極めて珍しい加護だった。 その効果は、スキルの習得・成長に大幅なプラス補正がかかるというもの。 しかし、その代わりにスキルレベルの最大値が『レベル3』になってしまうというデメリットがあった。 ユーリの加護の正体を知ったミゲルは、大きな期待から一転、失望する。何故ならば、ユーリの剣は既に成長限界を向かえていたことが判明したからだ。 有力な騎士を排出することで地位を保ってきたグランマード家において、ユーリの加護は無価値だった。 【剣術】スキルレベル3というのは、剣を生業とする者にとっては、せいぜい平均値がいいところ。王都の騎士団に入るための最低条件すら満たしていない。 そんなユーリを疎んだミゲルは、ユーリが妾の子だったこともあり、軟禁生活の後に家から追放する。 ふらふらの状態で追放されたユーリは、食料を求めて森の中へ入る。 そこで出会ったのは、自らを魔女と名乗る妙齢の女性だった。 魔女に命を救われたユーリは、彼女の『実験』の手伝いをすることを決断する。 その内容が、想像を絶するものだとは知らずに――

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

処理中です...