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5章 シャドウバレー編
裏切り
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刺さった剣柄に座っているセレスティアは両手にあごを乗せてこちらへ微笑んでいる。
「ティア……何……してるんだ? ジークが死んじゃうじゃないか 」
「え? 春陽、ボクたちの目的を思い出してよ。魔族を倒す。初めからそうだったじゃない? 」
「そ、そうなんだけど……。そいつらさジークもナコも悪いやつじゃないんだよ。実は闇のエネルギーに操られていただけで…… 」
するとセレスティアは俺の言葉を遮るように、
「良いやつか悪いやつかなんてどうでもいい!! ボクが欲しかったのは、マルコスが持っている神3人分の魔力、それだけだよ 」
ティアのやつ悪い冗談を言っているのか?
それともこれは夢で……いや、間違いなく現実だ。
もしかして彼女は元からその魔力が欲しくて俺達を利用していた……?
いや、その前にあの剣からジークを助け出さないと。
俺は急いで魔人化を行い、ティアに向かっていく。
「ティア! まずはそこを退いてくれ。 話はジークを助けた後だ 」
「そんなことはさせない!! 」
セレスティアは何も魔法を発さず、素振りすらしない状態で無造作に俺の動きを宙で止め、弾き返した。
「うわあ――っ! 」
今、彼女は何をした!?
俺が視える範囲では何もしていなかったように感じる。
実はあいつ、あんなに強かったのか。
まぁ……神様だもんな、今更だけど。
すると時間が経ちすぎたのか、剣先のジークは少しずつ存在が薄れていき足の先から粒子になっていっている。
「ジーク!! 」
「ジーク様――っ! 」
俺とナコの悲痛な叫びが届いた頃にはジークは粒子となって消え去ってしまっていた。
セレスティアはジークが消えた途端、満足そうに、
「よし、これであと3人だねっ! 」
そう口にした。
「おい! なんなんだよそれ! 何が目的なんだ! 」
くそ、涙が止まらない。
ティアはなんのためにこんなことをしたのか。
分からないことが多すぎる。
「目的なんかいいじゃない。 さ、春陽! ノクティスの力を渡して? 」
セレスティアはいつも通りの口調で近づいてくる。
もはやそれが1番よく分からず怖い。
「いや、これは君の兄さんの力で…… 」
「そうだよ? だから渡してって言ってるじゃん! さぁ! 」
どんどん彼女の口調は憤りを露わにしてくる。
こんな彼女の怒声は初めてだ。
そして彼女は俺の目の前までやってきた。
「春陽? 最後の警告。 力を渡して? 君は頷くだけでいいんだよ? 」
「ティア……俺は―― 」
「春陽く~ん!! 渡しちゃダメだっ! 」
後ろから聞いたことのある声、さらにはそれに続くように
「春陽! 悪いな! 遅くなった! 」
「春陽さん……大丈夫ですか? 」
そして聞き慣れた声が2人。
俺は急いで後ろを振り向く。
「ミア! カイル! それと……アーカシス様っ!? なんで? 」
3人は異次元空間から姿を現した。
「アーカシス……なんで? 」
彼の姿を見て、一瞬セレスティアの動きが止まったので、その間に俺はナコを担いで3人の元へ向かった。
「なんでってそりゃ、お前に会いにきたんだよ、セレスティア……いや違う。今初めて顔を見たが。そうか、お前セレスティアの妹か? 」
「え? アーカシス様、でもティアとはアルカナで会ってますよね? その時普通に話してたんじゃ? 」
「あぁ、そうだ。 あの時確かにセレスティアと君が僕の領域にきた。 でもな、セレスティアは……200年前の魔力抗争でもう死んでいるんだ 」
いや、そんなわけがない。
俺はこの世界にきてからずっとティアと旅をしてきたんだ。
それならば今ここにいる彼女は幽霊だって言うのか?
今のところ俺は全く話を飲み込めていない。
そんな俺の表情がわかってか、アーカシスは話を続ける。
「悪い、意味が分からないよな。だから要約する。さっきも言ったが、セレスティアは200年前に死んだ。目の前のあいつはその妹で、セレスティアと名乗っている。そしてそれを可能にしたのがセレスティアから引き継いだ神技《記憶操作》だ 」
さすがアーカシス様の説明、分かりやすい。
だけど今まで一緒に旅してきた相手が裏切っていたなんて信じられない。
「アーカシス、全部正解! やっぱり君はすごいや! 記憶を操作しても尚、ここまでの真相に辿り着けるなんて! 」
彼女のその言葉は、俺が信じていたもの、そう簡単に疑うことのできなかった気持ちを至極簡単にひっくり返したのである。
「ティア……何……してるんだ? ジークが死んじゃうじゃないか 」
「え? 春陽、ボクたちの目的を思い出してよ。魔族を倒す。初めからそうだったじゃない? 」
「そ、そうなんだけど……。そいつらさジークもナコも悪いやつじゃないんだよ。実は闇のエネルギーに操られていただけで…… 」
するとセレスティアは俺の言葉を遮るように、
「良いやつか悪いやつかなんてどうでもいい!! ボクが欲しかったのは、マルコスが持っている神3人分の魔力、それだけだよ 」
ティアのやつ悪い冗談を言っているのか?
それともこれは夢で……いや、間違いなく現実だ。
もしかして彼女は元からその魔力が欲しくて俺達を利用していた……?
いや、その前にあの剣からジークを助け出さないと。
俺は急いで魔人化を行い、ティアに向かっていく。
「ティア! まずはそこを退いてくれ。 話はジークを助けた後だ 」
「そんなことはさせない!! 」
セレスティアは何も魔法を発さず、素振りすらしない状態で無造作に俺の動きを宙で止め、弾き返した。
「うわあ――っ! 」
今、彼女は何をした!?
俺が視える範囲では何もしていなかったように感じる。
実はあいつ、あんなに強かったのか。
まぁ……神様だもんな、今更だけど。
すると時間が経ちすぎたのか、剣先のジークは少しずつ存在が薄れていき足の先から粒子になっていっている。
「ジーク!! 」
「ジーク様――っ! 」
俺とナコの悲痛な叫びが届いた頃にはジークは粒子となって消え去ってしまっていた。
セレスティアはジークが消えた途端、満足そうに、
「よし、これであと3人だねっ! 」
そう口にした。
「おい! なんなんだよそれ! 何が目的なんだ! 」
くそ、涙が止まらない。
ティアはなんのためにこんなことをしたのか。
分からないことが多すぎる。
「目的なんかいいじゃない。 さ、春陽! ノクティスの力を渡して? 」
セレスティアはいつも通りの口調で近づいてくる。
もはやそれが1番よく分からず怖い。
「いや、これは君の兄さんの力で…… 」
「そうだよ? だから渡してって言ってるじゃん! さぁ! 」
どんどん彼女の口調は憤りを露わにしてくる。
こんな彼女の怒声は初めてだ。
そして彼女は俺の目の前までやってきた。
「春陽? 最後の警告。 力を渡して? 君は頷くだけでいいんだよ? 」
「ティア……俺は―― 」
「春陽く~ん!! 渡しちゃダメだっ! 」
後ろから聞いたことのある声、さらにはそれに続くように
「春陽! 悪いな! 遅くなった! 」
「春陽さん……大丈夫ですか? 」
そして聞き慣れた声が2人。
俺は急いで後ろを振り向く。
「ミア! カイル! それと……アーカシス様っ!? なんで? 」
3人は異次元空間から姿を現した。
「アーカシス……なんで? 」
彼の姿を見て、一瞬セレスティアの動きが止まったので、その間に俺はナコを担いで3人の元へ向かった。
「なんでってそりゃ、お前に会いにきたんだよ、セレスティア……いや違う。今初めて顔を見たが。そうか、お前セレスティアの妹か? 」
「え? アーカシス様、でもティアとはアルカナで会ってますよね? その時普通に話してたんじゃ? 」
「あぁ、そうだ。 あの時確かにセレスティアと君が僕の領域にきた。 でもな、セレスティアは……200年前の魔力抗争でもう死んでいるんだ 」
いや、そんなわけがない。
俺はこの世界にきてからずっとティアと旅をしてきたんだ。
それならば今ここにいる彼女は幽霊だって言うのか?
今のところ俺は全く話を飲み込めていない。
そんな俺の表情がわかってか、アーカシスは話を続ける。
「悪い、意味が分からないよな。だから要約する。さっきも言ったが、セレスティアは200年前に死んだ。目の前のあいつはその妹で、セレスティアと名乗っている。そしてそれを可能にしたのがセレスティアから引き継いだ神技《記憶操作》だ 」
さすがアーカシス様の説明、分かりやすい。
だけど今まで一緒に旅してきた相手が裏切っていたなんて信じられない。
「アーカシス、全部正解! やっぱり君はすごいや! 記憶を操作しても尚、ここまでの真相に辿り着けるなんて! 」
彼女のその言葉は、俺が信じていたもの、そう簡単に疑うことのできなかった気持ちを至極簡単にひっくり返したのである。
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