無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

文字の大きさ
上 下
108 / 129
5章 シャドウバレー編

実力差

しおりを挟む

 ナコという魔族、とんでもない速度で迫ってくる。
 不意だったため俺は急いでエーテルバフを纏った。

 そして拳同士が直撃した――

 何度もぶつかり、力が拮抗する――

「あなた……何者?  」

 激しい攻防の中、ナコはそう口にした。

「俺は友達を探しに来た、ただの人間だよ  」

「そんなやつが……私たちダークオーダーと渡り合えるわけがない  」

「それじゃあ……神の後継者とでも言っておこうか?  」

 そう言うとナコは一瞬、動きがかたくなった。
 神という単語に何か引っかかったのだろうか。

 俺はその隙を見逃さず、一撃蹴りを加えた。

「うっ!  」

 ナコは大きく後方へ飛ばされる。
 だが、決定打とはならず体勢すら崩せていない。
 ここはさすがダークオーダーといったところだ。

 物理的に距離が取れてからは、お互い近づかずにただ相手を互いに睨み合っている。
 いや、正確に言うと睨まれてる、か。

 そしてナコは一瞬違う方に視線を送り、小さく頷いた。
 その後はすぐさま俺に目をやる。

 なんだ? 
 あのナコって子、今どこ見た?
 一瞬向いた視線の先に目を向けると、さっきまで重力魔法をかけていた兄が立ち上がっている。
 そのうえ既に魔人化まで遂げていた。

「ナコ、1人で戦わせて悪いなっ!  この僕ダークオーダー第五席『イヴィル・ドレッドハンド』の名においてお前をここで倒してみせる! 」

 あの整った顔で重力魔法に逆らうことができ、更にはこんなにかっこいいセリフ。

 最早、主人公といっても相応しい風格だ。
 加えて妹のためというのも主人公感を助長させる一因だと感じさせられる。

 そう考えると、一概にこの2人も悪いやつではない気もしてくる。

「お兄ちゃん……この人強いよ。 2人で倒そう  」

「ナコがそう言うなんて珍しいな! たしかにあの重力魔法から考えてかなりの魔力量なんだろう。 よし、2人で一気に攻めるか! 」

 ダークオーダー2人同時に相手なんて初めてだ。
 ここは俺もひとつ本気を出すしかないな。

 魔人化――

 俺が新しくイメージで手にした力。
 イメージの中では、闇のエネルギーを纏うため心身共に壊れてしまう可能性があった。
 しかし俺は無意識に自分の中の無属性エネルギーによるエーテルバフを同時に纏うことで中和していたらしい。

 かといって本来の魔人化に比べて力が劣る様子もなく、むしろ無属性エネルギーによって強化されたんじゃないかとも感じるほど力が溢れてくる。

 俺のこの白と黒のエネルギー。

 纏うには少し時間を要するが、敵が目の前に2人いる中、安全に纏うことができた。

「お前、なんだ……それっ……   」
「お兄ちゃん……怖いっ  」

 それは俺が纏い初めてから2人は血相を変えて、その場を立ち尽くしているからだ。

 ちょうど纏い終わったため、2人に声をかける。

「なんだって、これは君ら2人と同じ魔人化だけど  」

「ち、違う!!  そこまで禍々しい魔人化なんてゾルガン様でさえ纏っていないっ!  」
「お兄ちゃん……どうしよ……   」
「ナコ、お前は来た道を戻れ! 僕が時間を稼ぐ! 」
「でも……お兄ちゃんは……?  」
「お前を守れるだけで充分だ!  いいから早く行けっ!  」

 そう言ってイヴィルは俺にかかって来た。

 この流れ、完全に俺が悪役の気分だ。
 それだけでなく、そもそも2人は悪いやつには見えない。
 やはりゾルガンと同じく人間に戻してあげるべきか。

 そんなことを考えている間に彼はすでに俺の目の前までやってきていた。

 しかし俺も魔人化しているおかげか、身体能力が格段にあがっているようで、イヴィルの動きがまるでスローのように感じてしまう。

 シュッシュッ――

 そのため全ての打撃を難なく躱し、部屋中には空振っている拳の風きり音が鳴り響いている。

「くそっ! なんで攻撃が当たらないっ!  」

「ちょっと話があるんだが……  」

「うるさいっ! 僕はここで時間を稼ぐんだっ!  」

 だめだ。
 完全に気が動転して話を聞いてもらえない。
 仕方ない。
 不可抗力だと思ってくれ。

「ごめんな、1回大人しくしてくれっ!! 」

 俺は語尾を終えると同時に、拳をイヴィルの頭上から振り下ろした。

「――――ッ!? 」

 ドカンッ――

 イヴィルは地へと叩きつけられた。
 それも床がひび割れてしまったほどに。

「お、お兄ちゃん……  」

 ナコはそんな兄の様子を見て、その場にへたりこんでいる。
 出口はすぐそこなのに、逃げるほどの余裕はなかったようだ。

「ちょっと、ナコさん? ちょっと話があるんだけど、こっち来てくれない?  」

「ヒィィッ……。 は、はい   」

 魔族に関しての話をしてパージをかけようと思ってるだけなんだが、ナコはもう逃げられないと悟った犯人の如く俯いて、トボトボと近づいてくるのであった。
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...